第125話 帰り道の死闘編 4

俺の父さんとティアの兄であるシグレさん

そして元英雄五傑だったクローディアさんがゾンネに飛びかかった


俺はその姿を見て安堵を浮かべる

助かったと思うにはいいだろう

しかし、それと同時に腹部から激痛が走った


いつ、斬られた?

防具を突き破り、傷ついて血が出ていた


ゾンネ

『雑魚めが!』


ゾンネは吐き捨てるように言いながら3人の攻撃を跳躍して避けた

俺はその場に両膝をつき、腹部を押さえているとティアが心配そうな顔を浮かべ、ケアを発動して怪我を治し始めた


クローディアさんを先頭に、俺の父さんとシグレさんはゾンネに物凄い殺意を放っているのがわかる


しかし、ゾンネはそれを心地よさそうな顔を浮かべながらも彼らに話しかけた


ゾンネ

『アカツキと似た匂い、お前は父のようだな』


『貴様、何者だ?』


ゾンネ

『暴君ゾンネ』


目を開いて首を傾げて見せたゾンネ、しかし父さんは驚かない

奴の存在は手紙で伝えていたからな

相手がそのゾンネだと知った父さんは額に青筋を浮かべ、両拳に魔力を込める


『お前が息子を狙う奴か、悪いが死ぬのはお前だ』


ゾンネ

『凄い自信だナ、が…しかし』


ゾンネは周りを見渡した

チラリと背後を確認し、襲いかかろうと傷付いた体で構えるティアマトとリリディそしてリュウグウにグラスカさんにギルハルド

正面にはクローディアさんに父さんそしてシグレさんだ


ゾンネは溜息を漏らした

明らかに不利だと悟ったのだろう


シグレ

『おいこら喋れや刺身野郎、醤油かけるぞ』


文句がルドラと変わらないシグレさんは両手に持つ短い鉄鞭をガンガンぶつけて威嚇する

するとゾンネは頭を掻いた

険しい顔つきが怠さへと変貌を遂げる


ゾンネ

『今はダメか』


クローディア

『あら?逃がすと思って?』


ゾンネ

『美人なのに中身は鬼か』


クローディア

『失礼な国王ね』


ゾンネ

『私が撤退しても、君らは追ってこれない……さらばだアカツキよ。次は必ず殺してその力を取り戻す』


ゾンネは不気味な笑みを浮かべると、森の中に体を向け、ゆっくりと歩き出したのだ

その姿は堂々過ぎて逆に誰もが目を奪われた

シグレさんは追いかけようとするが、俺の父さんに止められている


アカツキ

『助かった…』


ドッと疲れが押し寄せる

相当、体が興奮していたようだな


《ひやひやしたぜ兄弟》


『俺もだ。でも想定内だ』


一先ずは無事

でも仲間は傷だらけであり、誰もがその場に座り込んだ

父さんはシグレさんを落ち着かせると、俺の顔を見て近寄ってきた

凄いハグされたけど、痛い


腹部の傷はまだ治ってないけど、このくらい傷口が小さくなれば大丈夫な筈さ


シグレ

『新婚旅行の最後に揉め事とか流石だね』


アカツキ

『シグレさん…』


クローディア

『それよりも運ぶわよ!あんた馬車動かしなさい!』


グラスタ

『俺っ!?』


どちみちグリンピアまで来る予定だったのだ

何故そんな驚く?

だが早くグリンピアに戻りたい、無事な奴は誰もいない


2人を除いてだ


リゲル

『まぁこれで俺達の予定も進むな』


クワイエット

『大丈夫かな』


森の茂みから2人が顔をだしてこっち見てる

ルドラはどこだ?帰らせたのだろうか…


俺達は父さんとシグレさんに順番に馬車の中に肩を借りて運ばれていると

やることやったし帰るか、みたいな雰囲気に近い様子を2人は見せた

しかし、そうさせない女性がいた


クローディアさんはいつのまにか彼らの背後に回り込んでおり

リゲルとクワイエットさんはそれにとても驚いていた


リゲル

『なっ!何の用だ!』


クローディア

『賊は遊んであげないとね』


クワイエット

『違うんですけど…』


その姿を見てから俺は馬車に運ばれ、そのまま輸送される形でグリンピアに戻った

あまりにも疲れが溜まり、俺は途中で寝てしまったらしく








起きた時は久しぶりな光景が広がる

白い部屋、白い天井に横は仕切り

ベットの横には椅子が2つあるが誰も座ってはいない

机がある、そこに刀が立てかけてあった


『グリンピアギルドの治療室か』


上体を起こそうとすると腹筋から激痛が走る

よく見ると包帯が巻かれていて血が滲んでいた

そういえば怪我をしていたな、忘れていたよ


《兄弟が起きたぜ?》


テラ・トーヴァがそう告げると、声が聞こえてくる


『おぉ?起きたか』


『やれやれ…よく寝ますね』


ティアマトとリリディだった

ここは個室じゃなかったな、複数人で入院可能な広さがある

彼らもここに運ばれたんだと気づいた


仕切りの向こうにいるな

俺は彼らに聞いてみた


『今何時だ』


『21時ですよアカツキさん』


『リュウグウとティアちゃんは無事だぜ?』


『それなら安心だ…今はどんな状態だ』


『まぁ俺達の事情知ってる人間で会議してるぜ?しかもリゲルとクワイエットはクローディアさんから逃げられなくて連行されたぞ?』


あらら

だが俺達の予想とは違う感じで扱われているらしいが、それは俺もよくわかってない


《一応兄弟が寝ている時、助っ人の3人には俺のことは話したぜ?》


『大丈夫なのか?』


《ああ大丈夫さ、味方にするにはもってこいだしな》


なら俺達が色々説明する必要はないな

手紙では書いたけど、俺はまとめるのが苦手だ

テラ・トーヴァならちゃんと伝えたはずさ


軽く会話をすると、ドアが開く音が聞こえる

誰だろうと頭を僅かに上げると看護婦の声と共に仕切りの向こうから現れた


『包帯の取り換え時間です。腸まで傷ついてないからこの後はアカツキ君だけ夜食』


彼女は鼻歌を歌いながら俺の上体を起こし、包帯を外していく

俺だけ?と聞くと彼女は『みんなもう食べました』と答えた

ずいぶん寝ていたのか


包帯が完全に外れると、看護婦は傷口を湿ったタオルで拭いてから消毒し、新たな包帯を巻こうと準備する

傷が結構塞がってるのはティアのケアのおかげだ

本当に助かってる


『いつ斬られたんだろうな』


『興奮状態だと気づかない時はあります』


看護婦はそう言った


包帯が終わると、看護婦は笑顔で去っていく

それにしても、久しぶりに体が軽い

怪我をしているのにそう思えるんだ…


いつも無意識に気を張っていたからかもしれないな

でもここは俺の生まれ育った街だ

呼吸がしやすく、居心地がいい


また寝そうになるが、それは久しぶりなうざさで遮られる

再びドアが開くと、早歩きでこちらに近づいてくるんだけども

足音で誰かわかる


仕切りの向こうから勢いよく顔を出し、俺のベットに潜り込んでくるのは妹のシャーロット

彼女じゃないんだからそれはちょっとやめてほしいな


『アカ兄ぃ、久しぶり』


『久しぶり、父さんは?』


『シグレさんと2人でクローディアさんと浮気してる』


『ちょっとわからない』


声が聞こえていたらしく、仕切りの向こうでティアマトが笑っていた

俺がいない間、俺のベットで寝てたとかそんな報告はいらなかったが、この様子じゃいつも通りそうでよかったよ


勿論そのあと現れるのは母さんだ

息子の俺の顔を見ると慌てる様子を見せず、笑いながら俺を見ていた


『色々父さんから話は聞いたわよ、強くなったのね』


『まだそうでもない』


『でもそう感じるわよ?でも貴方は強いわ』


戻ってきたと実感できる

母さんは俺が疲れていると感じで気を使ったのか、明日に顔を出すわと言ってからシャーロットを連れて帰る

だが、シャーロットを連れていくのに手こずっていたのは悪いけど笑った


『僕たちまた骨折です』


『俺もさ』


リリディにティアマトがそう告げる

全治2週間半、俺は運動禁止1週間とまた安静にする羽目だ

夜食を食べ、ゆっくりしていると父さんが顔を見せに来た


どうやら話し合いは終わったらしい



『事情はあらかた手紙でクローディアと知っている。しかしなんだあの化け物は、本当にあれがマグナ国を作った初代国王なのか』


『そうだよ父さん。あれに記憶を戻したら駄目だ…みんな死ぬ』


『記憶を取り戻して力を取り戻していく元国王…か、初代もお前のスキルを持っていたとはな…』


父さんは頭を抱え、椅子に座る


『父さんは初めて会ってどう感じた』


『不気味過ぎる、笑みが人間じゃない…見た目は人間じゃないのは知ってるが、元人間だとしてもあれは愉快犯のような顔に近い。暴君の異名は本当か』


《そうじゃねぇ》


テラ・トーヴァが口を開くと、父さんは顔を上げて耳を傾けた


《あいつは暴君だが、暴君になるしか手が無かった可哀そうな国王だ》


『お前は何を知っている…』


《さぁな、今言えるのは今のゾンネは暴君の真似を未だにしている哀れな国王だ》


父さんは目を細めた

腕を組み、何かを考えているようだが

そうしていると部屋にクローディアさんが入ってきて仕切りを取り払った

ティアマトとリリディが見える、彼らもベットで包帯巻かれて横になってる

ん?リゲルとクワイエットさんもいる、しかも賊の格好のままだ


クワイエットさんは苦笑いしてるけどもリゲルは不満そうだ


クローディア

『聖騎士2人は貴方じゃないと口を割りそうにないから連れて来たわ』


父さん

『賊じゃないのか?』


リゲル

『おっさん違ぇよ』


父さん、キョトンとする

珍しい顔だな

クローディアさんは何かを彼らに聞こうとしたらしいけども、堅く口を閉ざしていたらしいな

『アカツキじゃないと話す気になれん』リゲルはそう告げたとクローディアさんが教えてくれた


ならば話すしかないだろう

遅れてティアが来る、しかしリュウグウはこない


俺はリゲルに顔を向けると、先ほどまで不満そうだった顔を浮かべていた彼がようやく口元に笑みを浮かべた


『助かったよ』


『敵に礼を言えるようになったか』


『1つ聞かせてくれ、時間稼ぎをしてくれたのは何でだ?俺の父さん達が助けに来ることがわかっていたようだが…』


リゲルは呆れた様子を見せると、驚くべきことを口にする


『情報収集は基本だぞ?俺はお前のいる街で金を稼ぐ必要があった、長期的な監視だったのはわかるな?』


『そうだな、金もなかったのも知ってる』


『日雇いの郵便仕分けしてた』


ティアマトとリリディの目が点になる

俺も同じだよ…似合わな過ぎだろお前ら


『日雇い…なんで?』


『馬鹿か?お前絶対手紙とかグリンピアに送りそうじゃん』


全ての視線が俺に来る

それを感じてしまい、息を大きく飲み込むとリゲルは追い打ちを仕掛ける


『お前も律儀に送り主の名前書くとは馬鹿だな、俺は無名で送るもんだと思って仕分けしながら本気で住所見て探す気だったが、デカデカとアカツキって名前書いてて爆笑したぞ…手紙の内容はお前の近況情報がわかりやすく書かれていると思ったから日雇いをクワイエットとやった』


俺に注がれる全ての視線が、呆れた目立った


ティア

『名前書いてたの?』


俺は無表情で頷いた


父さんは頭を抱えて顔を隠した

俺は…恥ずかしくて今死にたい


クワイエット

『狙われてるなら手紙って手段も見られているかもって思うべきだよ?てか1つ助言あるんだけど』


アカツキ

『…なんですか?』


リゲル

『俺がいってやるよ、2つ書くとか馬鹿か?実家に送ってその内容を共有させりゃいいじゃん、わざわざ2通書くとか手間だと思わないか?』


父さん

『…それは俺も思ったがな』


クローディア

『確かに思ったけども言わないことにしてたわ』


『許して…』


父さんの次に俺が頭を抱えた

リゲルはニヤニヤしながら話を続けた


『こっちの事情は省くぜ?恩を売っとけばこっちの考えも選択肢に入れてくれると思ってな』


『恩を?』


『おいおいこっちは何度お前らを助けたと思ってる?確かにお前はロイヤルフラッシュさんに好かれているけども。お前の彼女ならば俺達の考えている考えに少なからず現実味を覚えると思うがな』


ティア

『何を企んでるの?』


リゲル

『ロイヤルフラッシュさんと会え』


驚きの言葉に俺は驚くが、以前仲間たちと話したことはある

あれと一度接触するのもありかもしれない、と


リゲル

『捕まえる事が目的じゃない、最終的にお前と協力関係になれればロイヤルフラッシュさんは焦った考えをすることはない筈さ、楽に目的をこなすならばこっちがいいと思ってな…。』


クローディア

『あの堅物が大人しくなる?』


リゲル

『スキルに関してならなる筈だ、ロイヤルフラッシュさんは俺の連絡魔石で直接通信できる、それで説得してやる…あの人はグリンピアには迂闊に足を踏み入れれない。だがあんたらが大人しくあの人を入れてくれるんならこっちもロイヤルフラッシュさんをグリンピアに呼んでお互いの利益にちなんだ話し合いの場を設けれる。そうすれば俺とクワイエットの本来の目的に近いことが出来る』


アカツキ

『最初から強引に捕まえる気はなかったのか』


リゲル

『面倒臭いから考えてないな。双方の意見が割れ、片方に傾けばどうなると思う?』


ティアマト

『片方のルールになる?』


リゲル

『馬鹿熊。無益な争いに発展すんだろ?』


彼は壁に背中をつけ、溜息を漏らす

『どうする?』とリゲルが余裕っぷりな表情を見せて答えを求めてくる

テラ・トーヴァは《乗れ、敵の敵は仲間だ、イグニスとゾンネに対抗できる強さは揃えないと死ぬぞ》と真剣に話してきたため


俺はリゲルに頷いた


アカツキ

『条件がある』


リゲル

『なんだ?肩でも叩いてほしいか?』


アカツキ

『クローディアさんと父さんも同席させる』


リゲル

『そこは勝手にすればいいさ、こっちの条件は2つ…テラ・トーヴァとロイヤルフラッシュさんを会話させてほしい、その方があの人も納得する』


《いいだろう。》


リリディ

『それで?あと1つは』


クワイエットがその言葉でお腹を押さえた

リゲルはそれを見て苦笑いすると、口を開く


『飯を寄越せ。逃げてった仲間が携帯食も全部持ってった。金もない』


ティア

『聖騎士って貧乏なの?』


リゲル

『こいつ…』


どうやらルドラさんにはこちらの状況と監視を続ける為に残ると言ってきたらしい

だがしかし、食べ物も金も持っていかれたから飯を食えないと嘆いたんだ


クローディアさんは溜息を漏らし、肩の力を抜く

先ほどから張り詰めた様子で俺もちょっと怖かったからな

リゲルとクワイエットさんを警戒していたらしい


リリディ

『ギルハルドはどこですか?』


ティア

『リュウグウちゃんのベットの横で寝てるよ』


リリディ

『えぇ…』


ショックか?リリディ


それいいとして、だ

上手く話が丸くなりそうで安心する

しかしリゲル達はあまり俺達には心は開かない様子だな

飽く迄、提案しただけ


でも彼らにとって一番それは重要でもある


ティア

『なんとなく2人が違う事考えているのは気づいてたけど…』


リゲル

『イディオット、その中で頭を使うのはお前だけだったな…俺達の強さは身に染みている筈だ、指示を無視してごり押しでもお前らを蹂躙するやり方はいくらでもあったことくらい1人しか気づいてなかっただろうな』


俺とティアマト、リリディは顔を見合わせてしまう

ティアは苦笑いしているが、彼女はなんとなく気づいていた感じか


効率が悪い、だから彼らはしなかった

結局、この2人の思惑通りになっていたという事か

しかし彼らは1つ予想外なことがあると言ったのだ


クワイエット

『君たちが怒り散らすメスのバカでかい閻魔蠍を倒すとは思わなかったよ、リゲルは無理だろうなって予想して仕方なく助けてこんな日が来る時の為に恩を売る予定だったんだけど』


父さん

『本当に倒したのか…』


クローディア

『手紙見た時は盛ったわねぇと思ったけど』


アカツキ

『おい』


《それほどまでに俺のスキルは万能なのさ。人が長い年月をかけて手に入れる貴重なスキルをポンポンゲット出来るんだからな》


クローディア

『よくあれを倒したわね…でかかったでしょ』


リリディ

『次倒せと言われたら流石に辞退しますねぇ』


ティアマト

『ありゃ魔物じゃねぇ、デカすぎる…』


ティア

『10メートル軽くあったしね』


リゲル

『悪いが反省会に参加する気はねぇ、飯食わせろ…お前らの問題を1つ失くしてやるんだからな』


クローディア

『まぁこの冒険者ギルド内に緊急用の宿泊部屋があるから好きに使いなさい、食事は今手配するわ』


彼女はそう告げると右手をヒラヒラさせながら部屋を出ていく

クワイエットさんはご飯にありつけると思い、ニコニコしている

ロイヤルフラッシュの問題が終われば俺は1つに集中できるだろう


ゼペットの手下達だ

迎え撃つための準備はこの国、この街で出来る

僅かに光が見えてきた気がしたよ


リゲルとクワイエットさんは部屋を出ようとすると、俺は声をかけた


『助かった』


『は?お前の為じゃなくて俺のためだ、勘違いすんな馬鹿野郎』


父さんは目を細めてリゲルを見ると、彼はそれに気づいてそそくさ部屋を出ていった


《いい形になっていきそうで助かる》


父さん

『お前は本当に神なのか』


《ああ神さ。…あとメガネ小僧がお前に何か聞きたそうだぞ?》


父さんはリリディだとわかり、顔を向けた

彼の顔は少し真剣だ

何を話したいのか俺にはわからなかったが、それは直ぐにわかったよ


『ゲイルさん、僕のお爺さんと冒険者をしていたのですね…お爺さんはそんなこと教えてくれませんでしたが』


『ああ仲間だった、とても強い人だ…1度も勝てなかった。』


『こっちに来てもらえますか?』


父さんは真剣な表情を浮かべながら彼に近づくと、父さんにステータスを見せる

それには流石の父さんも驚愕を浮かべ、リリディに顔を向けたんだ


『…お爺さんはロットスターに追い出されたんですね』


『あの屑馬鹿にな。何度も殴りに行こうかと思ったがハイムヴェルトさんに止められてな』


『魔法騎士長の座を取られると思ってですね』


『そうだ…だが元凶は俺達のせいでもある』


『何故ですか』


『魔法使いとしてハイムヴェルトさんは異常すぎる強さだった、魔法という歴史を変える力を持っていた。俺は五傑になるクローディアに頼んだんだ。ハイムヴェルトさんを魔法騎士に推薦してくれって。それが無ければこんなことにはならなかった…仲間を助けるために化け物と戦い、彼は重傷を負った…君は覚えているかい?何度も通院していた彼を』


『…知っています』


『そうだよな。この街に戻ってからずっと通院した…でも引き裂かれた背中の大きな傷から入り込んだ菌を投薬で防いでいたが…最後には体が耐え切れずに亡くなった』


『…』


『許してくれとは言わない。私が推薦しなければこうならなかった筈だ』


『恨んでませんよ、ロットスターがそうさせたんですから』


リリディはそう告げると、父さんは彼に軽く頭を下げてドアに歩き出す


俺もうろ覚えだが、ハイムヴェルトさんは確かに何度もどこかに言っていたな

傷から入った菌を殺すために通院していたんだな…

元々歳も取っていたし、それで体が耐えれなかったんだと思う


父さんはドアを開け、一度振り返るとリリディに言ったんだ

どうする気だ?、と


リリディ

『続きを歩くだけです』


父さんは何も言わず、部屋を出ていった

リリディは自身のステータスを見ながらため息を漏らす

かなり彼は可愛がられていたからこそお爺さんっ子だったな


ティアマト

『まずは、そのステータスびっちり堅めねぇとな…』


リリディ

『そうですね。黒魔法が禁止とは面白い…それで魔法の頂点を公にすればどうなるか楽しみです』


ティアマト

『でかい壁だぞ?』


リリディ

『人生どこもそうですよ、僕は他人とは色の違う山を登っているだけです』


《ギールクルーガー、確かに完成させたのはこの星の歴史上…1人だけだ》


リリディ

『やはり最初にその称号を見つけたのはお爺さんですか』


《そうだ。マスターウィザードはバランスが良いだけ…、火力を求めるならばギールクルーガーにそして…》


そこまでテラ・トーヴァが口にすると、誰かが入ってきた

全員の視線が向く、シャルロットだ


『ベット遠い、やっとついた』


ティア

『…』


誰もが遠い目をしていた

意地でも俺の寝てるベットで寝たい理由はなんだ?!

その答えを導きだそうと考えようとした時には妹は俺のベットに入り込んでいた


リリディ

『帰ってきたと…実感できる光景がこれですか』


ティアマト

『最悪だ…くっくっく』


ティア

『私は帰るねみんな』


アカツキ

『ああ。リュウグウの具合は大丈夫なのか?』


ティア

『肺は片方潰れちゃってて動けないの、だから安静にしてる』


息苦しいあれか…あれ辛いよな

管を肺に刺して血を抜くんだけども、その管を指す時が痛い

経験済みだぜ


アカツキ

『ティアは無事でよかった』


ティア

『アカツキ君が頑張ったからだよ。でも私だけ無事ってのも何かと申し訳ないんだけどね』


ティアマト

『気にすんなティアちゃん、こいつ守る時じゃないと本気出せないからな』


リリディ

『確かにティアさんが敵に狙われると動きがより俊敏ですねぇ』


アカツキ

『お前ら…』


ティアはクスクスと笑いを堪えると、俺の頬をプニプニ触ってから去っていった

なんの意味かはさっぱりだ、きっと特に意味はない


《とりあえず怪我直せ、聖騎士の2人もそうしてから動くはずだ》


この状態じゃ、俺達何も出来ないからな

無理に動く理由もない、俺達の今のすることは休むことさ


良い方向に動きかけている

そう思うだけで今日の夜はよく眠れそうだ



帰り道の死闘編 終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る