第122話 帰り道の死闘編 1


森はもうすぐ暗くなる

その前に倒したいけども、直ぐに見つけるのは無理そうだな

早めにオイルランタンに灯りをつけて森の中を歩くと、灯りにつられて魔物が寄ってくる


『ギャギャギャ!』


ゴブリン3体

それはギルハルドが素早く倒し、1つ発光した魔石がドロップしたから前足をつけて吸収した

Fランクだとギルハルドも淡々と倒してしまうな


ティアマト

『また来るぜ?』


彼は嬉しそうにしながらも片手斧を構え、身構える

数秒後、森の奥から現れたのは赤猪2頭


『ブギッ!』


姿を現して早々と2頭が突っ込んでくる

ティアマトは意気揚々と前に躍り出ると、口元に笑みを浮かべながら言い放った


ティアマト

『今は猪鍋に興味はねぇ!』


彼はそういいながら先頭を走る赤猪をすり抜けるようにして避けつつ斬り裂き、後続の残りの1頭を体当たりを受ける前に片手斧を振り下ろし、地面に叩きつけた


『ギュピッ!』


ティアマト

『低ランクの森か、確かに新米には適度な魔物ばかりだ』


アカツキ

『そんな森にトロール3体は泣きたくなるよな』


ティア

『逃げるしかないよね』


会話を交えながら奥に進む

この森でCなんて滅多に現れない、しかも3体となると驚きだ

森の入口を守る警備兵がそう言っていたな


太陽は見えない、夕方にしても暗い…

そろそろアンデット系が現れそうだ


リュウグウ

『夜は飛躍的にランク高いアンデットが現れると有名な森だな』


ティア

『日中は適度なのに、夜は凄いらしいよ?』


リリディ

『それは嬉しい。ねぇギルハルド』


『ミャー』


アカツキ

『言ったそばからアンデットだぞ』


グールが2体、俺の持つオイルランタンの灯りにつられて走ってきた

手足の爪が鋭く、口が裂けた目のない魔物…人型だ

爪となるとリッパーが長いけども、こいつは数センチ程度だ

それでもひっかいてくるんだけどな

こいつはEランクのアンデット種さ


『ティア!リュウグウ!』


『もち!』


『言われずとも!』


二人はグールに向かって走る

ティアは豪快にドロップキックで顔面を蹴り、仰け反っている隙に落下しながら赤い魔法陣を出現させるとラビットファイアーを全弾命中させて燃やす


『グールごとき!』


リュウグウはリーチの長い槍で素早く頭部と胸部を貫き、容易く地面に沈めた

一瞬だな。


アカツキ

『後ろ、リリディ頼む』


後ろからの気配、リリディはニコニコしながら後方に体を向けるとゾンビナイトが2体同時に走ってきた


『カチ割りますか』


彼は構えていたギルハルドに『待て』と指示し、襲いかかるゾンビナイトを待った

その間、ティアとリュウグウが魔石を持って俺に近づいてくる


あまりリリディを気にしてないようだが、彼なら心配いらないだろう


『オオオ!』


『大振りですね』


振り下ろされた剣を最小限の動きで避けると、もう一体のゾンビナイトの剣による突きをしゃがんで避け、スタッフを振り上げて頭部を吹き飛ばした


『最後はあなたです』


『オオオ!』


ゾンビナイトは珍しいスキルを使う

連続斬りだ。

しかしリリディはそれをスタッフで受け止め、体を回転させてからスタッフをフルスイングし、顔面を叩いた

砕ける音が聞こえるとゾンビナイトはその場に倒れていく


疑い深い彼は僅かに後ろに下がって敵の様子を見る

ゾンビナイト2体の体から魔石が出てくると彼は構えを解いて魔石を回収した


リリディ

『夜は魔物が沢山ですね』


リュウグウ

『本当に魔法使いか?』


リリディ

『そうですが?』


ティア

『物理で攻める魔法使い…』


彼女がボソッと呟く

俺はリリディから魔物を受け取り、バックにいれた

いつの間にか暗く、普通の魔物なんか現れない

アンデットばかりだ。


リッパーという爪の長い人型の魔物が結構現れる

顔が包帯で巻かれた姿が特徴的なDランクのアンデット

ティアマトはそれを嬉しそうに薙ぎ倒していく


『トロールはどこだろうなぁ!』


『ギギャ!』


リッパーの胸部を片手斧で深々と切り裂く

体も暖まってくると、ティアは辺りを見回す


《トロールはこの先だ。問題ないだろうよ》


アカツキ

『油断せずに進むか』


ティア

『そだね、それにしても買った上着あったかい』


リリディ

『良い買い物です。痛めたくないですね』


俺も気に入ってる

顔に触れる風が冷たいが上着は暖かくて問題ない

早く倒して帰ろうと俺達の足取りも早くなる

しかし焦るのは禁物だ


《このペースだと1分後くらいにつく》


アカツキ

『それなら早く倒して帰ろう』


ティア

『長居は無用だね』


オイルランタンで前方を照らしながら進んでいく

見晴らしの良い森であり、茂みは少ない

奇襲されたりとかはあまりないだろう


アカツキ

『俺が即倒したらティアマト来い、スキル吸収したらリリディに加勢だ』


ティアマト

『おっけいだ!』


リリディ

『私とギルハルドで対処しときますのでよろしくお願いいたします』


リュウグウ

『私はティアとだな』


アカツキ

『こっちが終われば加勢する』


そう決め、俺達は奥にいたトロール3体を発見した

奴らの足元には鹿の遺体、どうやら食べていたらしい

口元に血がついていて不気味だ

俺達に気づいたトロール3体は鉄鞭を担ぎ、ゆっくりとこちらにくる

2メートルと普通サイズ、これならいけそうだ


『ドルル!』


先頭が走ってくる

それにつられて他の2体もだ


ならば先頭を頂くか


アカツキ

『開闢!』


鞘に納めていた刀を僅かに抜き、押し込んで音を出すと黒い煙が正面に吹き出し、鬼の仮面をした武将のような姿のテラが現れる


『!?』


先頭のトロールはそれに驚き、足を止めるがそれは駄目だ

驚いている隙にテラは突っ込み、トロールの首を撥ね飛ばして消えていった


『よし!』


リュウグウが声を出すと仲間は一斉に駆け出す

俺はティアマトと共に倒れたトロールに近づき、発光する魔石が出たのを確認すると手を伸ばす


筋力強化だと知ったティアマトは小さくガッツポーズをしてから魔石を掴み、光を吸収していく


ティア

『ショック!』


リュウグウ

『鬼突!』


こっちの二人は良いコンビだ

トロールの振り回す鉄鞭を避けると同時にティアが麻痺魔法で一瞬動きを封じ、リュウグウが技を繰り出す


ある程度硬い体のトロールの胸部を貫くが、急所が外れたか


『ドロロ!』


リュウグウに鉄鞭を振る

彼女は頭を下げ、それを避けると飛び退いた

入れ違いにティアのラビットファイアーがトロールに命中して体が燃える


『ドロロロォ!』


ティア

『まだ動くの!?』


火だるまでもお構い無しか

逆にリュウグウは近付けない

俺はランタンを持っているから行動は制限されているが技は出せる


『断罪!』


鞘から刀を抜き、その場で振る

するとその斬擊がトロールの正面に現れ、体を切り裂いた


『ドッ!?』


たじろぐトロールにリュウグウは槍を回転させ、その勢いを使って前に槍を突いた


『槍花閃!』


突いたと同時に白い光線が飛ぶ

その周りからは桜の花弁が舞っていた


光線は見事にトロールの顔面を捉え、貫きはしなかったが奴は地面を転がるようにして吹き飛んだ


チラリとリリディにティアマトそしてギルハルドの様子を見る

あっちは全然大丈夫そうだ

リリディが爆打でトロールの顔面を叩いて小規模な爆発を起こして仰け反らせ、ギルハルドが首元を切り裂いて通過し、最後にティアマトがトロールの体を深々と切り裂いている


あそこから負ける方が可笑しい


『ドロロ!』


こっちのトロールはまだ動く

だが終わりだ


ティア

『せい!』


リュウグウ

『倒れろ!』


上体を起こすトロールに向かって、ティアが背後から首付近を斬り、リュウグウが飛び込み、真上から槍を突き刺した


『ド…』


バタリと倒れたトロールからは直ぐに魔石が出てくる

こっちは終わった

あっちもティアマトが頭部を片手斧でかち割って倒した


リリディ

『殴りやすくて良いですね』


ティアマト

『今の俺達に丁度いいぜ』


リュウグウ

『良い運動だ。援護助かったぞティア』


ティア

『よかったよかった!』


アカツキ

『魔石回収したら直ぐに戻ろう』


ティアマト

『飯だ飯、早く帰ろうぜぇ?』


残りのトロールの魔石を2つ回収し、仲間と共に来た道を引き返すか

何事もなく街まで帰りたいもんだな


《トロールは今のお前らには程よいだろうな》


ティアマト

『良い相手だ。直ぐに倒れねぇ』


ティア

『魔物の気配、5体!』


ティアマト

『お?珍しく多いな』


アカツキ

『アンデットだろうがな』


ティア

『1体は強いから気をつけて』


リリディ

『やる気がみなぎって来ました』


リュウグウ

『さっきみなぎれ馬鹿』


リリディは彼女に叩かれた

5体か、1体は強いとなると予想がしやすい

アンデット系、うん……


前に歩くとそれは当たっていた


『グルルル!』


『アアアア』


『カカカ!』


魔物Cランクのコンペール

黒い大型犬な見た目をした僅かに腐敗した犬

口は裂けており、両前足の側面付近には人間のような形の腕がついている


あとはグールが1体にゾンビナイトが3体

何故かティアマトが楽しそうな顔を浮かべていた


ティアマト

『あれ寄越せリリディ、ちゃんと順番に斬ってやる』


リリディ

『任せますよ?僕はリュウグウさんとティアさんとで周りを排除します』  


ティア

『アカツキ君、危なかったらお願い』


アカツキ

『わかった。ティアマトは無理するなよ?』


ティアマト

『上等!』


彼は不気味な笑みを浮かべてコンペールに襲いかかる


『グラァ!』


コンペールはジグザグに走り、ティアマトを惑わせるように向かっていた

だが動体視力スキルのレベルは彼もそれなりに高い


『見えてるぜ?』


ティアマトはそう囁き

飛び込んできたコンペールに向かって片手斧を振ってすれ違った

流石だな、腕を斬り飛ばしたか…


『ガル!?』


『まず1本…』


切断面からどす黒い血を流すコンペールは空を見上げ、咆哮を上げる

こいつの厄介な特徴でもある仲間呼びだ

地面から腕が生えてきたと思ったらゾンビナイトが2体増えた


『ニャー!』


残念だがその仲間は戦闘に参加する前にギルハルドが素早く首を撥ね飛ばした

どんなに仲間を呼んだとしても、無駄だ

こっちはお前と初めて出会った時とは比べ物にならないくらい強くなった


ティア

『終わり!』


残るゾンビナイトに彼女はサバイバルナイトで首を切断し、倒した

残るはコンペールだけ


『こいよ犬、しつけてやる』


『ガァァァ!』


コンペールは真っ直ぐ突っ込み、残る腕を使って彼を殴り飛ばそうとする

しかし、ティアマトはその拳を左手で掴み、口を開けて噛みつこうとするコンペールの口に片手斧を押し込めてから頭部の側面を蹴って転がす


起き上がると同時にティアマトは素早く腕を斬り飛ばし

振り返って片手斧を投げた

その攻撃はコンペールが振り返ったと同時に奴の顔面に食い込み、悲鳴を上げる


『わり!トドメ頼むわ!』


武器を投げてしまったティアマト

あれで倒れると思ったのか、コンペールは倒れないから苦笑いしながらそう告げた


リリディが口元に笑みを浮かべながら、ギルハルドとコンペールに突っ込んだ


『やれやれ…武器無しでも熊なんだから戦えると思うんですがねぇ』


『ニャー』


ギルハルドがコンペールの側面を切り裂き、リリディはコンペールの顎をアッパーするかのように叩いて宙に舞い上がらせた


『リュウグウさん!』


リリディが叫ぶと、リュウグウはシャベリンという技を使った

槍に魔力を流し、投げる技だ

貫通特化の技だが自分の武器を投げる点で使うタイミングが難しい


『ギャン』


コンペールの体を槍が貫いた

奴は着地できずに地面に叩きつけられると、リリディとギルハルドは身構えたまま様子を伺う

起き上がってはこないがピクピクしてる


リュウグウは貫通した槍をティアと回収しに歩いている


ティアマト

『まだ少し動いてやがるぜ』


アカツキ

『アンデットは凄いな、ティアマト』


ティアマト

『おう』


彼はコンペールの頭に食い込んだ片手斧を抜くと、トドメを刺した

魔石は発光し、リリディはニコニコしながらその光を吸収していく


リュウグウ

『今日は良い収穫にはなったな』


アカツキ

『だと思う、それに結構戦えたろ?』


リュウグウ

『うむ』


ティア

『気配なし、森から出ないと』


《お疲れさんだ兄弟、聖騎士はいないから安心しな、森の入口で止められてて笑えたぜ?》


アカツキ

『やっぱ尾行されてたか』 


ティア

『緊急依頼中は参加者以外は森入れないもんね』


リュウグウ

『森まで来ようとして入口を警備する者に止められたんだろうな』


あらまぁ


《だから大丈夫だ。明日はお前らの街、今日はいいもの食って明日に控えな?》


アカツキ

『みんなはどうしたい?俺は贅沢したいが』  


全員が即座に頷いた

ならば美味しい物でも食べるかな

明日には帰れルとなると、ウキウキする

それはティアも同じらしい、いつもより機嫌が良い


森から出ると、入口では警備兵と冒険者が3人いた

何やら細い目でこちらを見る冒険者がやけにわざとらしい

彼らとすれ違う時、ティアマトが口を開いた


『冒険者の格好だと森には入れないぜ?じゃあな』


冒険者三人の目が細くなる

挑発はあまりしないでほしいな


ティアに『余計な事言わないのっ』て熊が注意されとる


ギルドに戻ると、ロビー内の丸テーブル席は殆んど冒険者で埋め尽くされている、多いな!

ギルハルドに驚く冒険者も結構いるが首輪を見てさらに驚いてる


受付に向かい、受付嬢に魔石を見せると彼女は笑顔で対応してくれたよ


『あら!トロールの他にコンペールですか!お強い』


『ありがとうございます。』


『少しお待ちを』


俺達は少し待つと、受付嬢は報酬を直ぐに用意してくれた

それを受け取り、みんなで少し贅沢をすることとなる

隣接された飯屋にあったステーキ定食、銀貨3枚するお高い夜食だが今日は許される


ギルハルドは生肉になるが…、しかも3枚

こいつはよく食べるからなぁ

飯屋のテーブルに座り、俺は飯が来るまでグラスに入ったオレンジジュースを飲む


ティア

『賑やかなロビーだね』


アカツキ

『ここの冒険者は入り浸り組が多いんだな』


リュウグウ

『ここで飯を食べて寝るために帰る、そんな生活に近いのかもな』


ティア

『冒険者っぽいね』


《確かにな》


隣街だからグリンピアから遠征で来る冒険者くらいいるかなと思ったが、誰もいないな

それにしても賑やかなだな本当に


丸テーブルが酒の席になったり飯を食ったりしてる

見てて飽きない

グリンピアじゃこんな光景はあまりないしな

みんな家でご飯食べるし


『ミャー』


『ギルハルド、もう少しですよ』


ギルハルドはリリディの足元で頭を何度も軽くぶつけて鳴いた

お腹が空いたんだろう


『ステーキ定食運びますね』


女性店員がどんどん人数分を運んでくる

生肉の乗った皿を床におき、ギルハルドはよだれ垂らしとる

皆でいただきますするとギルハルドはがつがつ食べ始めた


肉美味い、柔らかい


アカツキ

『リリディはスキル上がったか』


リリディ

『チェーンデストラクションは3になりました』


アカツキ

『順調だけど鬼ヒヨケを探すのが苦労だな』


リリディ

『あれは探すのが大変ですね』


ティア

『しかも虫種だから冬だと冬眠するよ』


リリディの顔が固まる

まぁ半ば今年は諦めるしかないかもしれない


ティアマト

『うめぇ』


熊がおかわりしてしまう、まぁ仕方ない

全員が食べ終わると、その顔に言葉が詰まっていた

幸せ、動きたくない、このまま寝たい、ミャー


わかるよその気持ち

てか一番贅沢なのギルハルドだろ?

魔物がこんな衛生面と品質の保証された肉を食べれるんだぞ?

そんなギルハルドは床に寝そべって口元を何度もなめてる


《少し至福に浸ったら宿だぞ?》


テラが告げると、俺はオレンジジュースを飲み干した

それを合図にみんながそろそろ帰る時間だと立ち上がる


アカツキ

『美味かったな』


ティア

『びっくりしちゃった、米も美味しかった』


リュウグウ

『米が良かった』


女性は米か!

そういえば飯屋カウンター席の奥の壁に『良質な米、使用』て書いてるから高い米だったんだな


リリディ

『さて、明日のための腹ごしらえは済みましたね』


ティア

『それ明日の朝食に言わないのリリディ君?出発前の腹ごしらえのほうが似合うけど…』


リリディ

『…』


リュウグウ

『馬鹿メガネが』


ティアマト大爆笑

リリディは苦笑いしながら頭を掻いた


リリディ

『なら明日にも言いますかね』


ティア

『うん!てかギルハルド君の体が日に日にたくましくなってるね』


リリディ

『最初の頃より筋肉質ですね』


ティア

『凄いよね、強く見える』


リリディ

『勿論強いですよティアさん』


アカツキ

『今でも十分強いけどな』


リリディ

『大賢者になる男のパートナーですからもっと強くなりますよ』


『ミャー』


おう!ってか?

その後、宿に戻って俺はベッドでのんびりした

外は静かだ、巡回する警備兵が宿の周りを歩いてるから冒険者の格好した聖騎士も下手な事はできない


《今日は動いたな兄弟》


『俺はランタンだがな』


《はっはっは!まぁ夜は自然とランタン係になるよな》


『まぁ俺のオイルランタンだし。外はどうだ?』


《居場所はバレてるな。二人動かない気配だが冒険者の格好だ、宿を見てる》


『でも動けない』


《そらそうさ、斜め向かいは警備兵の詰所》


何かあれば直ぐに駆けつける

この一帯は一番警備が硬いから尚更だ


家族は元気かな

なんだか帰れるだけで嬉しいなぁ


『帰ったら色々あるな』


《ロイヤルフラッシュと会うかい?本当に》


『賭けだがありではある』


《まぁそれはそうかもな》


『それは帰ってからクローディアさんと話し合う』


《そうしな、グリンピアは一番安全だし助けになる仲間は沢山いるからな》


『だがグリンピアにゼペットの仲間がいるんだろう?』


《お前がスキル持ちだとバレたがあいつは当分様子見るだろうから安心して接しとけ》


『ん?』

 

俺は何か可笑しいと思い首を傾げた

テラは慌てて《寝る!》と言って反応しなくなる


接しとけ?

誰だ…

だが疑いながらグリンピアにいるのは不味い

今はテラを信じて忘れとこう

完全に意識をそうするのは難しいがな


みんなはちゃんと寝れてるのだろうか

俺は色々考えてしまうから寝つきは遅い

狙われてるというストレスは感じてる


『よっと』


寝ないと駄目なのに起き上がり、カーテンの隙間から窓の向こうを見てみた

人はあまりいない、斜め向かいの警備兵の詰所の窓から警備兵がチラチラと見えた

そして入口には警備兵が1人、周りを見渡してる


『ノックはしたよ?』


『わっ!』


ティアだ

しかも直ぐ横にいた

どうやら俺は鍵をかけずにいたらしい

うっかりだな


『気になるよね』


『まぁな、どうなるか自分ではわからない』


『大丈夫だよ、テラちゃんもいるし私達もいる』


それで安心が出来るかと言われると、意味は違う

楽にはなる

捉え方が正しいかは判断できん


困惑した顔をしていると、彼女はニコニコしながら俺の手を握ってくれた


『助けてくれる人は沢山いるよ、大丈夫』


『そう思いたい、聖騎士だけでも諦めてくれたらかなり良いんだが』


『クローディアさんと考えよっか。私達はアカツキ君のそばにいるから』


1人じゃない、それを言われると楽になるのはきっとあれに似てる

1人で怒られるよりみんなで怒られた方が気が楽

あれになんとなく似た感じだ

怒られるわけじゃないが、仲間が俺の状況を軽くしてくれてる


『なら頑張ろう』


俺はそう言いながら彼女の握る手を少し握り返した

特にその後の進展はない


『鍵はかけないと』と注意され、彼女は部屋を去る

俺は直ぐにベッドに横になると、久しぶりに早く寝つく事が出来た


《お前は死なせないさ兄弟》


寝る間際、そんな声が聞こえたが反応は出来なかった






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