第120話 マキナ

フロント奥のドアの先のリビングでマキナさんお手製のハンバーグを食べている最中、ドアの向こうから宿の入口を開ける音が聞こえてきた


マキナさんは険しい顔を浮かべて立ち上がると、1人でドアの先に行ってしまう

俺は気になってしまい、席を立つ

聞き耳でもたてようかと思うとふと気づいたことがある

フロントが見える30センチ四方のガラス窓があるんだよ、俺は驚いたが直ぐにそれがなんのかなかった


フロントに後ろの壁に同じサイズの鏡があっただろ?これマジックミラーだ

少し年期の入った建物だから奥の声も聞こえるだろう

宿の入口に立っていたのは冒険者2人、辺りを見回している


そこにマキナさんが煙たそうにした表情でフロント内の椅子に座る


マキナ

『宿泊か?』


『そうなのだが…』


冒険者の男はそう告げるが…

もう1人の男は真剣な顔で未だに辺りを見回し、床などを見ている


『冒険者にしては細かいね』


ティアが直ぐ横から小声を出す

顔が近い、彼女の匂いが…いや今はそっちよりも別に集中しないと

良い匂いだ、いや駄目だ…!それは忘れよう


マキナさんは腕を組んで彼らの顔をマジマジと眺めると、どんどん話しかける


『お前ら余所者だな?』


『何故そう思うんです?』


『俺の宿は気に入った客しか泊まらせない。そしてこの店に入ってくる野郎は突き返されるから入ってこない、それを知らないで入ってきたとなるとお前らは知らないってことだ』


『冒険者でも知らない者はいたってことですよ』


『それはない、全員知っている…地方的な街であるここじゃ新米が現れたら当たり前のギルドで教わる。ここに近づくなってな』


それで冒険者は口を閉ざした、困惑している

マキナさんは目を細め、椅子からゆっくり立ち上がるとフロントに両手をつけ、言い放つ


『元魔法副騎士長の補佐だった私を誤魔化せると思っているのか?お前の後ろでやたらと周りを気にしているようだが仕草がまんま聖騎士のあれにそっくりだぞ?小奇麗な回れ右だったか』


『っ!?』


『どうせろくでもない指示で隠密で動いているんだろう?興味はないが初めて会う相手には敬意を現せ…挨拶できん奴は嫌いだ。聖騎士連中は特にそうだったが今もそうなのだろう?入って来て早々に質問とは驚きだ。おいぼれは挨拶に厳しいぞ?ロイヤルフラッシュの若造から何を学んだ?』


『グッ…』


冒険者2人は慌てた顔を浮かべると

マキナさんは自身の口元を人差し指でトントンと叩いた

意味が分からず俺とティアは同時に首を傾げるが、それは冒険者2人はわかったらしい

服の中からタグのついたネックレスが出てきた。それをマキナさんは見て椅子に座る


『ブロンズのタグという事は新米か…なら仕方がないな。もしゴールド色のベテランならこの場でボコボコにしてやるところだった。』


『とんでもねぇジジィだな…』


『馬鹿ッ!?』


マキナさんと話をしていた冒険者の後ろの男がとんでもない事を言うと、仲間が凄い焦って止めようとする

そこで起きた事に俺は唖然とした

ジジイといった冒険者の男の顔の横を何かが飛んでいったんだ

あれはレーザーという魔法スキル、白い光線が飛んでいった先の壁は容易く貫通している


男は驚きながら顔をマキナさんに向けた

言葉が出ないようだが…魔法の発動スピードが異常に早過ぎる

魔法陣を出現させると同時に放った感じだ、初めて見たぞ…そのスピード


マキナさんは白い魔方陣を出現させたまま、彼らに言い放つ


『次は堂々と口の悪い坊やの口を狙う…。これでどんなご老体かわかったか坊や』


『わかりました。帰ります…ただ1つだけ聞かせてください』


攻撃されそうになった奥の冒険者は固まっている

マキナさんと話している男は彼に質問をしたんだ


イディオットという冒険者チームのリーダーとその仲間を知っているか、と

当然マキナさんの答えは決まっていた


『知らん』


冒険者風の格好をした男たちは何も言わず、会釈をしてから宿を出ていった

壁の補習はこれだったのか、先ほどみたいにレーザーを撃って壁に穴をあけたんだろう…


きっと建物の外まで貫通してそうな威力だった、見に行かなくてもわかる

マキナさんは怠そうにしながら入り口に向かい、休業の看板を立ててこちらに戻ってきた


『腰抜け聖騎士だったな、昔はみんな度胸あったが今はそうでもないらしい』


ティアマト

『てかあんた…凄いな』


リュウグウ

『手を伸ばしたと同時に魔法を放ったぞ…』


マキナ

『スキル発動速度強化スキルだ。私はハイムヴェルトよりもその点は勝ってたぞ?』


彼はリリディに顔を向けると、口元に笑みを浮かべて親指を立てる

リリディは苦笑いを浮かべながらハンバーグを口に入れた


《このご老体も昔の時代の人間、なかなかにやるじゃねぇか》


テラ・トーヴァも少し興味あるらしいな

マキナさんは『そういえば忘れていたな、飲み物は?』と告げるとティアが答えた


『水で私たちは大丈夫です。親切にしてくださるだけでとても感謝してます』


『なかなかに可愛い女性が律儀でいいじゃないか、オレンジジュースがあるから持ってこよう』


どうやら気に入ったみたいだな

マキナさんは機嫌よく奥に歩いていく

とんでもない爺さんだったな、魔法は朽ちることはない・・動かなくてもいいからな

当時のスキルレベルを十分に生かせれるとなると、強いはずだよ


『ミャー』


ギルハルドは皿のひき肉を完食して口元を嘗めている

美味しかったのかな?幸せそうな顔をしていた

それをリリディは撫でながら口を開く


『お爺さんが魔法騎士長になっていれば何か変わっていたのかもしれませんね』


《変わっていただろうな…なんで黒魔法が駄目なんだか俺には理解できないな…属性的な意味合いで魔法は色々な種類があるのに。黒が嫌いか?》


ティアマト

『馬鹿らしい理由とかだろうな、悪魔の魔法だとかよ』


リュウグウ

『どの時代でも古い考えはオカルト的な思想の理由が殆どよ。熊の言う事はあながち間違ってはいないと思うわね』


アカツキ

『確かに悪魔の魔物はいるのはわかるけどさ、黒魔法使うか?見たことはないけどさ』


ティア

『普通の魔法使うって聞いたことある、黒ってイメージが悪魔っぽいのかな』







マキナ

『予想としては近いぞ?昔に黒魔法を持った人間が国の反発派にいてな、テロを起こしたりしたからイメージが悪いんだ。黒い服着てだ』


マキナさんがトレーに人数分のオレンジジュースを乗せてやってくると、答えたんだ


黒魔法持ちが昔いたんかい!!!

偶然にも何かの黒魔法を会得してそれをテロ的行為に使ったから黒魔法は印象が悪く、国の政策の反対派のイメージが強いからなのか…なるほどな

それは100年も前だとか


マキナ

『記録ではシュツルムって技さ』


天鮫の持つ黒魔法だ

嵐に森にでも向かって偶然条件通りに倒して手に入れたんだろうな


ティア

『ご馳走様でした。マキナさん私よりお料理上手なんですね』


マキナ

『嬉しいねぇ。覚えたんじゃよ…魔法騎士で遠征する時にいつも携帯食で飽き飽きしててな。それなら作ればいいと思って勝手に修行したんだ』


ティアマト

『はは…』


マキナ

『戦う料理人ってハイムヴェルトに茶化されてたな。でも私がいる遠征の部下たちは飯の時間を楽しみにしてくれていたのが今でも覚えているぞ?無駄じゃなかったからな・・いい顔してみんな食うから嬉しくてなぁ…』


ティアマト

『携帯食って不味いんですか?』


ティアマトが、敬語…似合わん


マキナ

『味がないゲロをスプーンで食う感覚を味わいたいか?お前たち』


全員が即座に首を横に振る

栄養はあっても見た目が駄目過ぎたってさ

吐いちゃう部下もいたんだとよ。そこまで駄目なんだ…


マキナさんは『発動速度強化スキルはCランクの魔妖精を状態異常させてから倒せば魔法強化すきるじゃなく、それをドロップする確率に変わる』と教えてくれた

普通にあれを倒せば魔法強化スキル、しかし麻痺や毒、そして眠りといった状態異常を与えて倒せばドロップするスキルが変わるとは初めて知った

だがその苦労はかなりであり、状態異常耐性がもの凄く高いらいいから効率が悪いってさ


そのスキルを手に入れるだけで3年かかったとか…


確実にドロップするわけじゃなく、ドロップするスキルが変わりだけ

それでもいい情報だからリリディはニコニコしている

でもお前…アビリティースキルがパンパンだぞ?


『麻痺耐性を消します、それで僕はアビリティーが揃いますが』


マキナ

『リリディ君のステータスは見たが。今はその考えでいいと思う…状態異常耐性は指輪や腕と言った装備品で補えるからな、値は張るが』


『それと、お爺さんはやはり接近戦も得意でしたか?』


マキナ

『そのスタッフでロイヤルフラッシュの小僧の顔面をぶん殴っていたぞ?撲殺のハイムヴェルトって私は逆に茶化していた』


リリディはそれを聞いて笑った

至近距離だとスタッフでの打撃、距離を取れば強力な黒魔法

それがハイムヴェルトさんの強さでもあったという

黒魔法はバレないためにもレーザーって白魔法1本で副団長に昇り詰めるのは凄いよマジ


こうして俺達は部屋に戻り、カーテンの隙間から外を眺めると商人の馬車が行きかっている

それに紛れて冒険者が歩いている

向かい側にある建物、バーの前に俺は知った顔を見た


先ほど宿屋に入ってきた冒険者の格好の聖騎士と共にいる男

ルドラ小隊長だ。

冒険者の格好をしても顔は変わらないからわかりやすい


聖騎士の中の精鋭といわれる1番隊、その隊長

こいつがここにいるのか…

何やら2人にしかめっ面で何かを話しているようだが、何を話しているのだろう

あ、2人の頭を今…叩いたぞ



『テラ、面倒な奴がいるな』


《だなぁ。あいつは面倒だ…だけども気づいてるだろ?》


『何がだ?』


《ルドラも相当強いがリゲルとクワイエットの出方次第さ、あいつらが本気になったほうが絶対不味いぜ?》


『だよな』


《ルドラ、クワイエット、リゲルが壁だろう》


『リゲルとクワイエットさんは変に動くことはないと信じたいが』


《そうだな、あの2人の行動次第だぞ兄弟》


『あの2人がそこまで強いのか…』


《そうさ、あとは功績作って昇格狙い…だからお前にゾッコンなんだ》


ルドラ小隊長よりもあいつらが強いのだろうか

本気で挑む機会なんてないようにしたいな


『ルドラか…』


《まぁそれでもお前らにとって厄介なのは変わりはない、今はまだここにいるのはバレてないから安心してもいいだろうよ》


『そのままこの街を通過したって思ってくれればいいんだがな』


《それはないな。検問場にいたんだから他の入口にもいる、となると出ていった形跡ないからこの街に潜んでるって思われてる》


駄目か


俺は灯りもつけず、ベットに横になる

今日ぐらいはゆっくり寝たいなと思っても簡単には寝れない

きっと仲間も同じはずだ


意識があるまま時間は22時を過ぎた、外は次第に静かになってきた

歩く人が少なくなってきたからだ

眠くはない


『テラ…起きてるか』


返事はない、神も寝るんだもんな

凄い発見だけども嬉しくはない

ベットから起き上がり、窓の外を眺めると向かい側のバーはまだやっている

この時間なのにやけに姿勢のいい冒険者が辺りを歩いてるのは驚きだ


辺りを入念に見渡している、怪しすぎるだろ…

冒険者らしく自然体でいるべきなのに、聖騎士であるがためにそれが出来ない

眠くなるまで外でも見ていようとすると、ドアの向こうからリリディとティアの声が聞こえてきたのでカギを開けて2人を中に入れる


『興奮して眠れません』


『私も落ち着かないかな。だって敵が周りにウヨウヨなんだもん』


2人も俺と同じか


『それでも寝ないと明日に響くぞ?というかあいつらどこ行ったんだろうな、リゲルとクワイエットさん』


ティア

『多分帰ってきてると思うけど』


そう言いながら彼女はカーテンの隙間から窓を眺めた


『あ、いた』


マジかい!?

俺とリリディは窓に近づき、共に外を見ると確かに先ほどまでいなかったリゲルとクワイエットさんがルドラと共に何かを話している

俺達の近くで監視をしていたんだから何か情報を与えているのかもしれない


それは困る

俺達は頭を悩ませた

情報共有でもしているのだろうな、そう思うと荷が重い

あいつらも相手にすることになると、無理だ



ティア

『でももしかしたら…』


彼女はそう告げると、とある事を口にした


『少し彼らを信じてもいいかもしれない、私はちょっと嫌だけど』


アカツキ

『それはどういうことだ』


ティア

『功績を奪われたくないって意思は強いからかな、上手く言えないけど…』


リリディ

『確かに、それと彼らが今日襲ってくると決まったわけじゃありません。指示がないと監視が続くのみです』


監視のままでいてほしいよ



どうやら女性陣は2人集まって寝るらしく、リュウグウがティアを呼びに来た

それでティアはリュウグウの部屋の戻り、俺の部屋にはデカい熊とメガネがいる

いきなり部屋が狭く感じた


しかもティアマト、床で横になっている

『平気だ』とかいうけどもそう見えないなぁ

リリディは我が物顔で俺のベットでスタッフを抱いて横になってる

そこ、俺のベットなんだが?

てかなんでお前らここで寝る事にした?


ティアマトは直ぐに寝た、そしてリリディもベットの中央で寝た

んで俺の寝る場所どこ?


『こいつら…』


俺は溜息を漏らし、ドアの近くの床で横になろうとワザとティアマトの頭を踏んで乗り越える


『ふがっ』


これで許してやろう

でも起きないな…


刀を抱えるようにして堅い床で横になる

ブルドンが心配だが…見に行きたくてもそれが出来ない

何もされてないことを祈るか、というかするはずないもんな


その日、本当に何もなかった

起きた時に体中が痛かっただけだった



朝は8時に起き、俺達は眠たいままマキナさんのお手製ハムエッグを食べて出発の準備をした

馬小屋のブルドンは無事らしい

だが表には怪しい冒険者の格好の男がバーの前で辺りを見回しているのをマキナさんが教えてくれた


裏から出ろ、そういわれたから俺達は朝食を食べ終わると言われるがまま裏から外に出た

いるんじゃないかと思ったけどもいないから大丈夫だとマキナさんが太鼓判を押す


『裏通りは通るな?見られないで進むって無理だ…隣の建物の横から顔を出せ。人が多い場所でアクションはあいつらでも起こさない。馬車もやめとけ、一緒に乗り込んでくるぞ?』


リリディ

『徒歩ですか?』


『未来の大賢者が無理と言わないよな』


リリディ

『楽勝です』


美味く口車に乗った

簡単な男か、リリディよ


『頑張りなさい、正しい者に神は味方する』


マキナさんはそう告げて、俺達に別れを告げる

言っていることは正解かもしれない

ブルドンを連れて俺達は隣の建物の横から顔を出した

顔を見られないようにして俺達はそそくさとその場を早歩きで去る


数人のすれ違う冒険者には顔を見られるが、変な反応を見せる様子はない

この通りを真っすぐと進んでいけば3時間ほどで街を出れる、この街は小さいしな


リュウグウ

『歩くのは好きだが、今の私達には運動になるしいいだろう』


アカツキ

『だが凄い億劫な帰り道だな』


ティア

『でも仕方ないよ、裏通りの方が怖いもん』


確かになぁ

堂々と表通りを進むしか道はない


《こんな逃亡者凄いよな、堂々としてるんだしよ》


リリディ

『逃亡者じゃないですよ』


それもそうだ、俺達何もしてない

数人の冒険者が俺の顔を見て驚いているのを見てしまう、こいつらきっと聖騎士だ

顔に出過ぎだろ…これが聖騎士か


3時間、俺達は休まず歩いて街の外に出ると森の中だ

先ほどまで後ろから下手に尾行されていたのは気づいていたけども、今はいない

ドロドロすぎた汚い作戦だけども、これが一番良い


ここからが問題だ

もし指示が来ていたら森の中で俺達は襲われる

だがそうならない


奥に向かうと、馬車がある

御者が俺達を手招いている、朝食中にマキナさんに言われたんだ


『街を出たら昔の部下が待ってくれている、それで次の街に向かえ』だってさ


御者は若かった、それでも歳は30中盤ぐらいだがな


『君らがマキナさんの言ってた冒険者だな、早く乗りな、赤騎馬1頭はつなぐぜ』


馬2頭で引く馬車だ、どうやらここまで1頭で来たらしいけども

馬車は小さいし御者だけならここまでは1頭で十分だったのかもしれん


御者がブルドンを繋いでいる隙に俺達は馬車の中に入る

椅子はない、箱形の馬車で窓は前後にあるだけ

茶色の馬に赤い馬、か…


御者『準備できたから勝手に発進』と言って馬を動かす

俺達は座る前にそうされたからバランスを崩してしまい、俺はティアの覆いかぶさって倒れた


腕に柔らかい感触、至福がここにある


『変態が!』


リュウグウに殴られる

ティアは顔を赤くしてモジモジしているだけなのが有難い


『ごめん、ティア』


『大丈夫』


リリディ

『僕は後ろ見ときますから休んでいてください』


アカツキ

『お前はそうしてくれ、俺のベット占領したろ』


リリディ

『あはは…すぐ起きるつもりでしたが』


だが寝ただろ?


こうして俺達は馬車でも1時間かかる森の中を進む

前の窓から御者が顔を出し、こちらを見て笑顔で口を開く


『俺は元魔法騎士の1番隊!マキナさんの後輩さ!』


アカツキ

『もしかしてハイムヴェルトさんを知ってます?』


『悪いが入れ違いさ、でも居心地悪くて2年でやめちゃった!』


舌をだして誤魔化している

しかしだ、魔法騎士になれるという事はそこらの魔法使いより明らかに強いからだ

俺達が今目指す隣街に住んでおり、マキナさんから魔石連絡で事情を聞いて駆け付けたってさ


朝の7時からのんびり待っていたと欠伸をして話してくる


『名はグラスカだ、よろしくな若者!』


アカツキ

『よろしくお願いします』


俺達全員自己紹介をすると、リュウグウがとあることを彼に聞く

魔物は大丈夫だったのか?と

街の外で何時間も待ってれば魔物は出てくるんだよな


『魔法勿体ないし殴って倒したよ?』


凄い

魔法騎士ですよね?


ティアマト

『事情聴いてるなら隣街の様子はわかりますかい?』


グラスカ

『ああわかるぜ?もう冒険者の格好した聖騎士がいるってマキナさんから聞いてたからね、少しいたけども数は少ないさ』


いるらしいな

話し込んでいると進行方向の向こうからゴブリンが待ち構えている、4体だ

俺達は出番かと思って立ち上がろうとすると、グラスカさんがそれを止めた


『轢け!馬で十分だ!』


加速したぞ…

ゴブリンは予想外な展開にびっくりして左右に散って逃げる


『轢けなかったか』と詳しそうな顔を浮かべるグラスカさんは首を傾げてからこちらに話しかけてくる


『俺が魔法騎士に入団した時はハイムヴェルトさんの話も黒魔法の話も禁句扱い、その理由はマキナさんから聞いてし、ロットスターの性悪は知ってるぜ?出来のいい後輩苛めがお好きなようでね』


リリディ

『なるほど、逸材はそうやって蹴落として地位を保ってたわけですね』


『あの人はそうだってことさ。だから魔法騎士のレベルは低いんだよねぇ。俺は弱いフリしてたから良かったけど結構なお金溜まったしやめて地元で自ら戦う御者として自営業中さ!』


どんなキャッチフレーズだよとツッコみたくなる

彼の話だと冒険者雇わないで隣街まで行けるから稼げるらしい


乗り合わせた綺麗な女性と結婚したとか聞いてもないことを自慢してくる


『まぁ無駄話したけど、グリンピア直通ルートがあるし一本道だ、森の中を通るが問題はない…うまくいけば夕方にはいける』


隣街は小さいからな、それなら真っすぐグリンピアに行ってくれた方が嬉しい

森の中の直線の道を進んでいると、魔物が現れるがゴブリンは轢き殺してしまうし、別の魔物はグラスカさんが魔法で蹴散らして道をこじ開けるから俺達イディオットの出番はない


移動をして数時間が経過し、グリンピアまでもう少しまで迫るとティアが口を開く


ティア

『襲ってくる感じはないですね』


グラスカ

『俺ならここら辺で待機しとくんだが、周りの木々が多いし周りから見られ難い』


するとグラスタさんは正面に顔を向け、険しい顔を浮かべたまま馬車を止める

まさかと思いながら正面の窓から外を見ると、いたんだ



リゲルとクワイエットさん

そしてルドラ一番隊の隊長がな


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