第103話 侍王と魔導王編 4 絶対に許さない

俺の眼下に広がるこれはなんだ?

ティアマトとリリディと共に急いで戻り、ティア達の行き先を事件現場の調査をしていた者たちに聞いてここまできた

待合室に辿り着いた瞬間に奥のドアから勢いよくティア吹き飛んできたのだ

酷い怪我であり、女性がすべき怪我じゃない


ドアは破壊されたから奥の廊下の様子がよく見える

侍騎士が1人とギルハルド、共に血を流して倒れており、更に奥ではリュウグウや侍騎士が倒れて気絶している


酷い怪我だ


それよりも…


『うぅ…』


『貴様!ナニモノダ!』


槍を持った侍騎士の鎧をしたイソギンチャク頭の魔物

そいつの体は血だらけだが返り血だけじゃないな?ダメージがある

ジェスタードさんとの戦闘でのダメージが癒えてない


お前は瓦礫の中で気配を隠して人間に化けていたんだろう?

今ならそうだとわかる


ティアマトとリリディがあり得ない光景に驚きを隠せない

俺はそんな感情よりも、熱い何かがこみあげていた

絶対にこいつは俺の手で殺す、それだけが心に大きく浮かんできた


《兄弟!!!ムゲンだ!!!!気を…》


俺はテラ・トーヴァの言葉を最後まで聞くことが出来ずに叫んだ


『お前はぁぁぁぁ!絶対に殺してやるっ!!!!!!』


俺はティアマトとリリディの静止など無視して突っ込んだ


『この匂い!いるな!!!テラァァァァァァ!』


ムゲンは槍を回しながら走ってくる

何が来る?知ったことか!!


『光速斬!!!』


俺は興奮していた、ただただ真っすぐ正直に突っ込んだ

ムゲンは大声を出し、タイミングを合わせて槍を前に突きだしてくる

そこで俺は確信したんだ




こいつはまだ弱い、ゾンネよりもだ

槍が見える


俺は顔に迫る槍を顔をずらして避け、奴の右腕を斬り飛ばした


『ナッ!!速いだと!』


『お前は許さない!』


『小癪な!!爆突!』


ムゲンは振り向きながら左手に持つ槍で俺の足元の床を貫く

その技はどんな技か、以前リュウグウに聞いたことがあるぞ?

突いた場所が小規模の爆発を起こすレアスキルだ、爆発系の技や魔法は希少なんだよ

俺は飛び退くよりも、光速斬で懐に飛び込んだ


『!?!?』


奴の脇腹を斬り裂き、素早く振り向くと驚愕を顔に浮かべているのが見える

俺は直ぐにまた突っ込もうと歯を食いしばる


『突風!』


奴の背後からリリディの強風が発生し、バランスを崩したのだ

ありがとうリリディ


『こんな子供だましの魔法ッデェェェェ!!!』


『やれや!アカツキ!』


ティアマトがティアを救出し、リリディと共に壁際に避けた

技を放ってもいいんだな…


《兄弟!今倒せ!一気に決めろ!!!》


俺はその声に心の中で返事をしながら頷き、ムゲンの懐に飛び込むと同時に刀を鞘に強く押し込んで叫んだ


『刀界!』


俺の正面に衝撃波と共に無数の斬撃が飛ぶ

ムゲンはそれを避けることが出来ず体中を斬り刻まれて悲鳴を上げながら吹き飛んでいった

頭部の触手もいくらか切断され、無残な姿の彼は床に叩きつけられると大声を上げて上体を上げる


『テラァァァァァァァァ!お前を!俺はっ!恨んで!裏切り者ぉぉぉぉぉ!』


《男にモテるのは好かねぇ!》


『地斬鉄!』


鞘から抜刀、そのまま床を斬ると、縦の斬撃が地面を這うようにして奴に向かう

ムゲンは立ち上がる体力すらない、口惜しさを唸り声にして大きく出し、叫んだ


『お前も!俺達のようにナッテシマエ!!!人は魔物ダ!!』


『五月蠅い!死ね!!!』


地斬鉄はそのままムゲンの体を両断し、奴はそのまま地面に倒れた

ピクピクと動くその体に俺は近づくと、急所を突き刺して終わりにした

イソギンチャク頭か…気色悪い


すると、待合室の入り口から侍騎士がぞろぞろと現れたのだ

彼らもこの状況を見て顔を真っ青にしている


『ティアマトリリディ!リュウグウを頼む!』


『お…おうよ!』


『無茶しすぎですよ!あとで反省会ですよ!?』


2人はそう言いながら奥に走り出す

俺は直ぐに待合室の長椅子に横になっているティアに近づいて声をかけた


『ティア!大丈夫か!あいつは死んだぞ!』


『ありが・・とう、やっぱり来てくれたね』


『当たり前だ、不吉な感じがしたんだよ…可笑しすぎるからな、1人多い事に気づいたんだ』


『アカツキ君にしては、凄い』


それだけ言えるならば大丈夫か

しかし…相当やられたようだ

槍で右太腿をやられ、顔を酷く狙われたか…彼女は顔をおさえている

懐からハンカチを出して鼻に当てるように指示すると、彼女は顔にケアをかけ始める

うん、大丈夫だな…よかった


『鼻血…あはは』


『仕方がないよ、すまん・・・遅れた』


『大丈夫、ごめんね…止めれなかった』


『いや…良く持ちこたえたよ、今は休んで』


ギルハルドはダメージよりも疲弊って感じだ

奥で侍騎士たちの声が聞こえてくる


『キングレイ小隊長!!』


『うわ…食われてるぞ医者』


『なんなんだよあの化け物』


レイン

『全部…あの化け物が夜な夜な同胞を襲って食ってたんだ』


ティアと共に戦っていたであろう侍騎士が倒れたまま説明している

リリディはリュウグウを起こし、お姫様抱っこでこちらまで運んできていたけど


『ぐ…今は、許す』


『助かります…遅れてすいませんリュウグウさん』


『メガネめ…遅いぞ』


『期待してくれてたのでしたら少し嬉しいです』


『ばっ…かめが』


リュウグウも酷い怪我だ

肩や腕からかなり血が出ているし動かせない感じか

俺はティアの肩を掴むけども、それで安心すればいいなぁと思ってそうしたんだ

彼女は少し笑ってくれた


《兄弟、無茶し過ぎだぜ》


『悪いがそんなの考えている暇なんてない』


《かっはっは!!だがおめでとうだ!ゼペットの反抗的な手下の1人を討伐だぜ!?》


俺はその事実に少し冷静になって気が付いた

そうだ!こいつゼペットの手下だった!!!!

息絶えたであろうムゲンに顔を向ける、まだ口元がピクピクと動いている

まだ…生きてるの…か?


俺は素早く構えると、ムゲンは最後の力を振り絞って話してきたのだ


『俺の…ヤボウは潰えたか…、貴様に力を…奪われる…とは』


やつは顔を僅かに持ち上げて話し終えると、そのままゴトンと頭から力が抜けて溶け始めた

その臭さは異常だ、俺は鼻をおさえると、周りの侍騎士も鼻をおさえた


『こいつ…なんなんだ…』


『ひでぇ匂い、しかしこいつが犯人か』


『怪我人を移動させろ!早急にだ!』


侍騎士達がそう言って動き出そうとすると、ムゲンの溶けた体から発光した魔石が出てきたのだ

俺はそれに驚いた、しかもこちらにゴロゴロと転がってくるんだよ


《は?》


『なんだこれは…』


俺は驚愕を浮かべながら、目の前で止まった魔石に手を伸ばした

すると突然、魔石が手の平に引っ付いてきた


『ぎゃっ!!』


変な声が出る、あまりにも驚き過ぎて振りほどこうとしたが離れない

発光した魔石から勝手に光が俺の体に流れ込んでくる

あたふたしていると、その光は消えて魔石が地面に落ちて砕け散る

瘴気が僅かに噴き出ると、それは天井まで昇って消えていったんだ


あれはきっと欲、なのだろうなと勝手に思う


《俺は知らねぇぞ!?マジだからな!》


『わかってる、しかし…なんだこれは』


俺はステータスを覗こうとした

何かのスキルだろうとわかっていたからな

だけども…だけどもだ


俺の体が発光し始めて凄い驚いた

リュウグウをお姫様抱っこするリリディも、ティアマトも、顔の治療を終えたティアですら俺を見て凄い顔をしている


『ア…アカツキ君!?』


『アカツキィ!?』


『ななななななななな!!?』


慌てていると、体に力が漲ってきた

同時に今のステータスが俺の脳内に浮かび上がってきたんだ



・・・・・


アカツキ・ライオット


☆アビリティースキル

スピード強化【Le4】

気配感知  【Le2】

動体視力強化【Le4】

斬撃強化  【Le3】


☆技スキル

龍・開闢  【Le3】up↑

刀界    【Le2】up↑

居合突   【Le3】

光速斬   【Le2】

地斬鉄   【Le2】up↑


☆魔法スキル


称号

無色斬鉄


☆称号スキル

技・魔法発動速度【Le1】

斬撃強化【Le1】

特殊技『断罪』

・・・・・・・・・


その後、慌ただしくリュウグウとティアを別の治療室に運ぶために俺はティアをおぶった

この建物は意外と大きく、別の待合室で俺は仲間と共に彼女らを待った

侍騎士も多数いるが、治療室の前で腕を組んで待っているようだ

中には彼らの仲間も運ばれたからな、心配なんだろうと思う


長椅子に座って待っている最中、俺はティアマトとリリディにステータスを見せると、彼らは凄い顔で驚いていた


『マジ?かよ…』


『斬鉄って…まさか称号あるんですね』


『リリディでも聞いたことないか』


『…おとぎ話にあるのですが、遥か昔にこの星が生まれた最初の神々の中に斬鉄という異名の神がいたとお爺さんから聞いたことがあります』


『斬鉄?』


『ええそうです、戦いの神ですが…テラ・トーヴァなら知ってそうじゃないですか?』


『リリディはそう言ってるぞテラ・トーヴァ』


《しーらねっ!》


お前…意地悪なスキルめ

願い事が叶えるようになったら意地悪な願いにしてやる

テラを犬として転生とか…いや駄目か、俺が魔物化しちゃうかもしれん


『なぁテラ、これがお前の言う次の称号だったのかだけ聞かせてくれ』


《ああそうさ、刀用のスキルが俺様よ!お前は俺とマッチしてるしな!》


『どう称号を得ると思ってた?』


《悪い、開闢スキル3、4、5の3段階で上がると思ってたが…まさか魔物化した奴の力を吸収して称号を得るとは思わなかった…俺は魔物化するなんざ知らなかったし発光した魔石が出ることも知らねぇ…そこは本当さ。もしかしたら他の手下2人もそうかもな》


ゾンネも…か

倒すことにはなるだろうな、俺の命を狙っているし


『だがよぉアカツキ』


『どうしたティアマト』


『運ばれる前にティアちゃんが獣王ヴィンメイって言ってたが、これでゼペットの手下3人がわかったな』


『そうだな、ムゲンは食べて力を取り戻し、ヴィンメイは敵を倒して取り戻す、そしてゾンネは記憶を徐々に取り戻していくと強くなっていく…か』


『アカツキさん、グリンピアに帰っても忙しくなりますね』


リリディは立ち上がりながら答えると、治療室に顔を向けた

すると治療室のドアが開き、医者がニコニコしながら現れたのだ

その顔は安心できる


『キングレイ小隊長は!?』


『部下は?!』


侍騎士達が医者に積めよっている


『慌てないで、みんな大丈夫だが1週間は絶対に安静だ』


それには俺達もホッとしたよ

治療室の中に向かうと沢山のベッドが診察台の奥にある

そこにティアとリュウグウが装備を外されて包帯をグルグル巻きにされてた

ギルハルドも…


『大丈夫か、リュウグウ、ティア』


『この程度で死なん』


『大丈夫だよ、ただケアを使いすぎて疲れちゃった』


二人が口を開くと、医者が後ろから近づいてきて話してくれた


『彼女は凄いよ、いなければキングレイ小隊長は間に合わなかった…彼女は怪我をしていたのにケアをかけ続けてくれたから楽に治療できたが、無理をさせてすまなかった』


医者が深々と俺達に頭をさげると、ティアの隣のベッドで横になるキングレイ小隊長が弱々しい様子を見せながら感謝を口にする


『すまない、冒険者よ…このご恩いつか必ず』


『今は休んでください』


俺はそう告げ、仲間に近づいた


『アカツキ君、無茶し過ぎだよ』


『まぁそうしないといけない時もある』


彼女の手を握りながら答えると、小さく笑ってくれた


《兄弟、そこでトドメの言葉だ…お前がいないと駄目だっていったれ!》


黙れ意地悪スキルめ


『リュウグウさんは大丈夫ですか?』


『メガネめ、遅いぞ』


『仕方ないでしょう…走って来たんですから』


『どうせ体力ないお前に合わせて二人がペースを落としてくれたんだろう?』


ご名答、リリディは口をへの字にして俺を見てくる


『しっかしよ、まずは1匹だぜ?』


『ティアマト君、1匹なんだ…』


『まぁ人間じゃねぇからいいだろぉ?ティアちゃん』


『そだね、あ…』


どうしたのかな?と思い

皆の視線がティアに向けられる

凄い、寝た!!!!


安眠スキルが強制的に寝かせたのか?

母体の体を守るために、と考えた方が納得できるな


『ティアが一番頑張っていた、仕方ない…私は何も出来なかったがな』


リュウグウが苦虫を噛み潰したような苦い顔を浮かべると、リリディは答えた


『しかし抗った、結果よりも内容が大事です…生きていたのですから』


『不器用なフォローだが、まぁいいだろう』


素直じゃないなぁリュウグウ


時計は夜の23時半だ

医者はこのまま女性は横のドアの先にある部屋に移動させるためにベットごと移動すると話す

ベッドの足はローラー付き、俺は仲間と共にベッドを奥の部屋に移動させた


そこは女性用らしい

短い廊下、横にドアがあり、近くに窓がある

看護婦の詰所のようだな…3人の看護婦がデスクの上でこちらに手を振る


俺達は会釈してからベッドを押して奥の部屋に二人を移動させた

10畳ほどの部屋だが窓はない、真っ暗と思いきや、天井に設置された僅かに光を灯す魔石がいい正面になっている


ティアはベッドを動かしても起きないが、相当疲れてるようだ

遅れてリリディがギルハルドが横になるベッドを押してくる

2人と1匹の今日の寝る場所だ


『侍騎士が待合室で警備するから大丈夫だ』


俺は起きてるリュウグウに告げると、彼女は気難しそうに珍しい事を言ったんだ


『すまんな』


『気にするな、休め』


なるほどな、俺は小さく微笑んだ


《兄弟、休め》


『あぁ』


小さく答え、俺はその場をあとにしようとしたがちょっと心配だ

部屋を出る時に再度ティアに視線を向けたんだ


ティアマトは『大丈夫だから気にするな』と言って俺の背中をトンと叩く


『心配性かもな』


『かなりな、箱入り娘のつもりか?』


『そんな…』


リリディが俺の横から顔をだし、悪どい表情で言い放った


『キレましたもんねアカツキさん、ゼルディムさんの時みたいに』


『…まぁ、うむ』


『いじめんなリリディ』


ティアマトに言われたリリディはメガネを触りながらニヤニヤすると、ぐっすり寝ているギルハルドに視線を向けて口を開いた


『よくやりましたギルハルド、あなたは騎士だ』


『ミャー』


起きてたんかい

しかし、ギルハルドも満足そうに寝始めた

宿はここから歩いて数分と近いのが嬉しい

明日はまた起きたら様子を見にこよう


だけど、よかった

ティアが無事だった




俺は宿に戻ると、直ぐに寝た

布団にタイブして早く休もうとしたら直ぐに意識が飛んだのだ

疲れてたしね


んでだ、次の日に驚く出来事か起きたんだ

治療施設に向かうとき、テラ・トーヴァが話し出した時にそれは起きた


《暫く二人は休む事になるだろうな》


リリディ

『あれ!?』


ティアマト

『なっ!?誰の声だ?!』


《あ、そういやレベル上がると聞こえるっけ?》


昨夜は聞こえなかったじゃん!

いや、暫くしてからスキルレベルの効果が反映されたのか?そう考えとくか


『これがテラだ、二人供』


《熊五郎にメガネ、よろしくな》


『く…熊五郎?』


『スキルにもメガネ呼ばわりとは、異議ありですよ』


《カッカッカ!まぁ仲良くしようや》


『だってよ、二人とも』


『しゃあねぇ!』


『よろしくお願いいたしますね』


《あぁ任せとけ》



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