第102話 侍王と魔導王編 3 ティア視点 ムゲンとの戦い
私はカマクラの治療施設の建物にリュウグウちゃんとギルハルト君と一緒に来てる
奇跡的に生きていた侍騎士が瓦礫の中から出てきたからケアで治そうとしたけども、やっぱりレベル2だと限界があるみたい…
ある程度マシにはなっても大きい怪我は悪化を防ぐことしか出来なかったの
でもその成果あって生存者は救護班が来てから即座に応急処置され、そのまま今私たちがいる治療施設に運ばれてきたの
2階建ての建物、待合室のような部屋にはリュウグウちゃんとギルバルト君、あとは侍騎士が5名がいるくらいかな
長椅子に座ってると、リュウグウちゃんがギルハルド君を撫でながら話しかけてきたの
『助かると思うか?』
『どうだろう…できることはしたけども』
リュウグウちゃんは奥の扉に視線を向ける、扉の先は廊下
その先の一番奥が治療室、そこで生存者の怪我を直そうとお医者さんが頑張ってる感じだね
『ミャー』
『お前は主人がいなくていいのかギルハルド』
『ミャーン』
リュウグウちゃんが苦笑いしてる
私はギルハルド君の頭を撫でると、近くの侍騎士がこっちに視線を向けて口を開いたの
『感謝します、回復魔法使いだったとは…』
『いえいえ、ですが治すことは出来なかったので』
『それでも時間を稼ぐには十分な力です』
ちょっと照れるな
レベル3になればそれなりに凄くなりそうだけどね
隊長みたいな人だけど、小隊長らしい
話によると最近へんな通り魔事件があってから各街にはたくさんの警備侍や侍騎士が巡回を多くしているらしい
騎士さんも警備さんも同胞を沢山やられて相当ピリピリしていたって言ってる
『姿を見たことはあるのか?』
リュウグウちゃんが険しい顔で質問をすると、侍騎士の小隊長さんが答えたの
『可笑しな姿をした者としか…となるとこのエドの国で変わった風貌はジェスタードが一番に疑われた、しかしエドの国王は言ったんだ。奴は無実だ、と』
『ほう』
『聴取もするなと指示があった、怒らせるなとも言われたが奴は何者なんだ』
『それは奴から聞け』
まぁそうだよね、私は苦笑いしていると小隊長さんは困惑した顔を浮かべた
『聴取くらいでもさせてもらえないのはムサシ様の配下である我ら侍騎士は納得が難しい…きっと警備侍もそうでしょうけどね』
私は膝に顔を乗っけてきたギルバルト君の頭を撫でながら聞いてみた
『やっぱりジェスタードさんが犯人だと予想してるんですか?』
『飽く迄それは可能性としてです、ムサシ様はジェスタードをかなり気に入っているのはわかりますが…』
『魔物みたいな者が夜の街を歩いてるって事件は勿論知ってますよね』
『知っている、しかし顔を誰も知らないジェスタードの今の姿は夜見たらそのように間違えることもある可能性もないとは言えぬ。…犯人というわけではない、我らは密かに監視をしていたがいつも逃げられていた…それが逆に怪しさが増す』
『あはは…』
『お嬢さんは彼じゃないと信じますか?』
『私はジェスタードさんがそんなことする人じゃないって思ってます。以前森で助けてもらったので』
『…なるほど』
リュウグウ
『しかしだ小隊長さん。何故この国の王はあいつを気に入っているんだ』
『…きっとあの出来事でしょうなぁ』
すると小隊長さんは昔の事を話してくれた
『昔は時期王がムサシ様が有力候補となった時、少数の反対派が城内に忍び込んで幼いムサシ様の眠る寝室棟に火を放ったのです。まさかそこまでするとは誰も思ってもいなかった…当時の私はまだ30歳でしたのでハッキリと覚えてます。深夜の出来事でした…その棟にいたほとんどの者が焼死、ムサシ様の家族もですよ…。そこで幼きムサシ様はジェスタードに救出され命を救われたのです。あいつはムサシ様を抱きかかえて炎の中から出てきました…だからこそ私も最近の事件でジェスタードが関わっているとはあまり思いたくありませんでしたが、エドの王を守った彼じゃないという思いを確実にしたいという思いがあったんですよ。しかし王は駄目だと一点張りです。じゃじゃ馬な王ですからね』
小隊長さんは静かに笑いながら答えてくれた
それで私とリュウグウちゃんは凄い驚いたんだよね
あれ?どこかで聞いた話だなぁってさ…びっくりだよ!
ティア
『へ…へぇ~』
『まぁ見た目が布袋の姿なんで大半が彼を気味悪がっていますが、昔の話を誰かに聞かせてもあまり信じているような顔はしなかったですね。私はあの事件で死ななかったので生きてますから』
すると小隊長さんはおもむろに手甲を外したの
凄い火傷の跡、彼はムサシ王が幼いころ、寝室棟の警備でいたらしい
真夜中に交代する予定で寝てたらしいだけど、トイレ行きたくて起き上がったら煙に気づいたんだってさ
運が良い人だ。よかった
『あの業火…火を投げる者と油の入った玉を投げる者もいましたね。火の回りが凄かったですよ…どこも通れない、逃げ道なんてどこにも…』
『どうやって逃げれたんです?』
『部下に助けられました…一番優秀な部下でしたが彼が爆発魔法で壁を破壊して脱出口を作ってくれたんです…名前はカウラという魔法が非常に得意な可愛い後輩でした』
リュウグウ
『そいつはどうした?』
『私の後ろにいたはずなのに、振り返ると彼はいませんでした。…ほとんどの焼死者は誰が誰だか識別が困難なほどに酷かったので…きっと』
ティア
『死んじゃった?』
『はい、彼はムサシ様の教育係でした…』
きっと火にやられちゃったんだろうな…
その後、反対派はジェスタードさんがほとんど捕まえて城に連れてきた
今でも反対派は地下の牢屋で死ぬまで生活することになってるんだとさ
当たり前だよね、王を暗殺?しようとしたんだもん
まぁでもジェスタードさんがいなかったら駄目だったろうなぁ
あと小隊長の名前はキングレイ小隊長、彼の下にカウラという優秀な部下がいたんだってさ
でもあれ?これってもしかして?
キングレイ小隊長
『あの火事で生きていたのはムサシ様と、私だけです…』
リュウグウ
『大変だったろうが、そのジェスタードは侍騎士がやられている現場を目撃したから逃げた犯人を追うために捕まるわけにはいかないと思っていると思うぞ』
キングレイ小隊長
『最初の目撃したあなた方からそれを聞くと少しホッとします。しかし落ち着くまで時間がかかるでしょう…早急に部下を使って連絡魔石でその事実を伝えます』
侍騎士
『ですが…返り血は同胞では?』
ティア
『犯人の血ってジェスタードさん言ってたもん』
私は強めにいうと、侍騎士さんは苦笑いした
キングレイ小隊長は1人の部下に連絡を任せると、その人は素早くその場を後にした
今は証人になるであろう重症者の状態がよくなれば…だけどなぁ
そうすればジェスタードさんじゃないってみんなわかってくれる
私はリュウグウちゃんとどうするか話し合った
キングレイ小隊長は『明日に部下を宿に向かわせて重症者の経過状況を連絡させます』っていうから私たちはここを出ることに決めたんだ
することはここにはない
アカツキ君を追いかけることもできるけども、すれ違いを考えるとちょっと億劫かな
リュウグウ
『戻ろう、ティア』
ティア
『そうだね』
キングレイ小隊長
『感謝します、お嬢さん方』
私達は立ち上がる、そこで気になるのを見ちゃったんだよね
キングレイ小隊長の部下が唸り声をあげて何かを考えてる
私達だけじゃなく、他の人もその様子に視線を向けた
キングレイ小隊長
『どうしたレイン』
レイン
『てか怪我人って誰でした?顔見ましたっけ?』
キングレイ小隊長
『私たちはまだ見ておらん、お嬢ちゃん達しか…』
レイン
『そうですか、巡回ルートと時間的に第5小隊の奴らっすよね…ジル隊長のとこ』
キングレイ小隊長
『だな、私たちは詰所から直接ここにきたから現場を見ていないが…』
するとそこでドアが開いたの、キングレイ小隊長に指示されて連絡魔石で連絡を取りに行った部下さん
その人が凄い不思議そうな顔でキングレイ小隊長に一礼すると
言ったんだ
『言われた通りに連絡しました、あとですが・・・』
キングレイ小隊長
『どうした?ガウリー』
ガウリー
『殉職者はジル隊長、ロイ、ヘンリー、トーマス、クラウドの5名…』
レイン
『おいおい何言ってんだガウリー!?1小隊5人だぞ?なんで全滅したのに1多いんだ?』
ガウリー
『わかりません、点呼も確認しました…死亡者以外は勤務中の者はちゃんといるらしく…その…』
キングレイ小隊長
『休暇の者が鎧を着る筈がないだろう?点呼漏れではないのか?いや…待て…』
私は顔を険しくさせた
1小隊5名、でもあの場には5人の死亡者に1人の生存者
リュウグウちゃんが何かを察したらしく、槍を強く握りしめ、患者が運ばれていった扉の向こうに顔を向ける
それを察したのか、キングレイ小隊長は驚愕を顔に浮かべると、直ぐに凍てついた顔に豹変する
キングレイ小隊長
『あり得ん…絶対にあり得ん…』
リュウグウ
『私は人間の知る全てがこの世界のすべてじゃないと思っている。お馬鹿な予想も時には当たる…嫌な事は特にな』
レイン
『でもジェスタードさんが犯人を追ったんでは…』
ティア
『そうなんだけど…あの人は犯人を見失っていたんだよ。』
その瞬間、扉の向こうから何かが倒れる音がした
金属の音、何が倒れたんだろう
しかも女性の悲鳴も聞こえてきたのだ
キングレイ小隊長は険しい顔のまま、奥の扉を素早く開けてから素早く腰の刀を抜いて構えた
50メートルの廊下、左右に部屋が4つ
一番奥からの音の感じがする
レイン
『小隊長…』
キングレイ小隊長
『不気味過ぎる…治療中なのになんの音も聞こえんぞ…』
ガウリー
『ここの医者…いっつも重症患者とか治すときナースに荒げた声で指示しながら治療しますよね?静かですねぇ…』
キングレイ小隊長
『…お嬢ちゃん達、下がってなさい…』
ティア
『あ…』
気づけばギルハルド君の毛がもの凄く逆立っていて、奥を警戒していた
何を感じたの?
レイン
『猫がすっごい警戒してますねぇ』
キングスレイ小隊長
『それが答えかもしれん』
リュウグウちゃんは小隊長さんの指示を無視し、彼と共に静かに奥に歩いていく
私も行かないと…
ここまで静かなのって凄い怖い、夜の館に行ったことを思い出しちゃった
お化けとかそんな恐怖とは違うの
言葉では言い表せれない理解できない謎の恐怖っていえばいいのかな
私はサバイバルナイフを抜き、構えながら先頭のキングレイ小隊長についていく
『ビル、お前は増援を呼べ、できるだけ沢山だ』
『わかりました、ご武運を』
するとビル侍騎士は静かに下がっていく
6人の静かな足音だけが響く、音は出さないようにしているけど…あまりにも静かすぎて足音が聞こえる
『リュウグウちゃんの予想は?』
リュウグウ
『面白いスキルがあるのは変わった本で見たことがある、マネマネだ…一部の魔物は一定時間だけ人間の姿に化けることが出来るとか読んだことがあるわね、魔物としての気配も消してだ』
ティア
『それ魔物ランクBのインビシブルっているカメレオンの特殊スキルだね』
リュウグウ
『持っていても可笑しくはない』
ティア
『まぁ気配を消すとかはなんとでもなるよね、…ねぇリュウグウちゃん』
リュウグウ
『なら扉の先にいるのは何か予想ができるわ』
一番正解したくない答えを私は想像した
きっと彼女も同じだよ…
アカツキ君、早く帰ってきて
カランと何かを蹴ってしまう音が聞こえると、私達全員の体は一瞬強張った
低い呻き声が僅かに聞こえる
しかも咀嚼音、何かを食べてる?
レイン
『あ…』
廊下の天井に張り付いていた魔石、光を出す魔石なんだけども
この廊下はそれで明るい
その魔石がチカチカと点灯し始めたの
キングレイ小隊長は両隣にいる部下に交互に視線を向け、頷く
『私が開ける…レイン、ガウリー、チャボはお嬢ちゃん達の前で待機』
レイン
『小隊長、寂しいなら俺も行きますよ』
キングスレイ小隊長
『流石元不良、良い根性だ…隣から離れるな』
レイン
『御意、ガウリーは可愛い2人を頼むぜ?チャボも』
ガウリー
『ご武運を』
チャボ
『なんなんだよ…何がいったい』
リュウグウ
『落ち着け…』
私はリュウグウちゃんとその場に足を止め、キングレイ小隊長の背中を見守る
彼が扉の前に辿り着くと、何度も深呼吸をする
他のドアとは違って観音開きの扉ね
小隊長が深呼吸を終え、扉の引こうとするとそれは起きたの
彼の正面の扉が強引に開き、治療台が飛んできた
『!?!?』
キングレイ小隊長はそれにぶつかり、台と共にこちらに吹き飛んできた
私達は驚きながらしゃがみこむと、彼は廊下の後ろまで飛んでいってしまった
呻き声を上げて辛そうにしてるけども…今はそっちを見ている暇はなさそう
レインさんは飛んできた治療台にあたることはなかった
しかし彼の顔は正面を見たまま真っ青だったの
レイン
『これは…』
???
『グガガガガガガガ!!!』
ティア
『ひっ…』
リュウグウ
『くそっ!酷い…』
視線の先の光景に吐き気がする
医者もナースも無残に殺されていた
しかも医者は頭がない、頭部は開いた扉の奥で鎧を着てたたずんでいる者の腕に握られているが
その頭部も顔が半分食べられたかのようになってる
人間の顔の者、だけども顔に亀裂が走っているし血がダラダラ流れてる
『ジェス…タタタタド!』
『シャァァァァァ!』
ギルバルト君が凄い威嚇してる
奥の者の頭部がブクブクと沸騰したかのように動き出すと、顔が真っ黒に染まっていく
すると頭部が4つに割れて中から無数の触手が現れた
すると最後に顔から無数の目玉が現れてギョロギョロと動き出す
本当に気味が悪い
30センチほどの触手、イソギンチャクみたいな頭部
それは手に持った医者の頭部を頭頂部の口に運ぶと、バリバリと食べ始めた
私の近くにいたガウリーさんがとうとう耐えれなくなり、吐き出した
ボリボリと食べている者に向かってレインさんは体を強張らせながら荒げた声を上げる
『化け物めぇぇぇぇ!』
ティア
『待って!!』
彼は走り出すと、扉の奥の者は右手付近から光を発生させ、それを棒状に伸ばすとそれを槍に変えた
あれは武器収納スキル、自身の武器を特殊な空間に納め、使う時に出現させる超レアなアビリティースキル
『閃光突』
奥の者は槍を両手に持ち替え、素早く突くとその槍の先から細長い光が飛ぶ
それはレインさんの胸部を貫通し、彼を吹き飛ばした
『ぐはっ!』
ガウリー
『なんだこいつぅ!?』
チャボ
『化け物…化け物だぁぁぁ!』
倒れて苦痛を浮かべるレインを見てから2人は叫んだ
私とリュウグウちゃんは直ぐに危機的状況だと悟ったわ
敵は弱弱しいけども勝てそうにない
せめてアカツキ君達がいれば…あの状態ならばいけるのに
???
『知ってる匂いいいい、スキルを殺す殺す殺す殺す嘘ついた俺最強じゃない殺す殺す!教えろ教えろ!』
ティア
『あなたは誰!?』
私は身構えながら聞くと、彼は簡単に答えた
ムゲン
『俺はムゲン・イカヅチ!消えた力取り戻す!俺が最強ナンダ!俺の力なんだ!邪魔するものは殺す、食べる!食べると力戻る!食べる!食べ物欲しい!』
『ぐ…絶対こいつだ…最近の通り魔はこいつだ、しかしどうやって姿を』
倒れていたレインさんが顔を上げて言うと、ムゲンは答えた
『隠密スキル、あの忌まわしい男の魔法に扮して気配を消し、マネマネのスキルで食ったことがある人間の姿にシタがまんまとあいつ騙された!邪魔ものはいない!女!お前からあの匂いを濃く感じる!食べる前にオシエロ!!!』
ティア
『貴方がこの国の侍騎士や警備侍を殺したりしたの?』
ムゲン
『何が悪い?強い者は自由がある…俺は最強だった!それを取り戻すのだ!他なぞ知ったことか!』
リュウグウ
『最悪な故人だな!その弱った体で何が出来る!』
ムゲン
『どうとでもなる!』
リュウグウちゃんは即座に槍を回しながらムゲンに走り出した
逃げてもダメ、逃げ癖があるだろうと思った私は彼女と共にムゲンに向かって走り、撃退することにした
レイン
『お前ら…行け!』
ガウリー
『くっそがぁぁぁぁぁ!』
チャボ
『小隊長の仇!化け物がぁぁぁぁぁ!』
ムゲン
『笑止!時代が流れても歴史の強者は強いことを知るがイイ!』
彼は一直線に私に向かって走ってくると、槍を前に出してきた
わかっていても体の反応が遅れる
動体視力スキルが3だったら避けれたかも
でも槍が私の体を貫く前にギルハルド君が特殊スキルのキュウソネコカミを発動し、目にも止まらぬ速度で飛び込んで槍を弾きかえした
『ニャ!』
奥の部屋の壁に体を打ち付けたギルハルド君
あのスキルで得たスピードを止めることは出来ない
そのくらい凄いスピードを出してる
『猫めが!』
『槍花閃!』
リュウグウちゃんが回転させた槍をムゲンに向かって突き出すと、槍の先から光線が撃ち放たれた
廊下に桜の花弁が舞う
とても綺麗な技よ
『ほう?!』
顔に向かって飛んだ光線を頭部を横に動かして避け、飛びかかる二人の侍騎士の刀を槍で素早くついて弾くと、ガウリーさんに向かって体当たりして吹き飛ばし、私に襲いかかる
『教えろ!おんな!』
『ラビットファイアー!』
手を伸ばし、赤い魔法陣から細長い熱光線を5つ発射
それらはムゲンの槍の突きで全て消し飛んだ
『鬼突き!』
リュウグウちゃんの槍のスキル
私の前に躍り出た彼女は力強くムゲンに槍を突き出す
彼は危なげ無くそれを避け、私に飛び込んできた
『っ!?』
反射的に私は腕を伸ばし、魔力でシールドを展開した
ムゲンは舌打ちをし、シールドを破壊しようと槍を突き刺す
私は直ぐに破壊されるとわかっていたので後方に飛び退きながらショックを放った
雷魔法のショックは紫色の魔方陣から小石サイズの雷弾を飛ばす魔法、それはムゲンは雷系にもしかしたら弱いと思ってその魔法を使ったの
だってイソギンチャクだし…そういうのは今必要ないか
彼はシールドを槍の一突きで破壊すると、ギョッとした顔を浮かべる
『なっ!』
想定内の予想外な事ね、これって
まさかねって考えで撃った魔法、彼はかなり嫌がっていた
大げさに体を振って回避したのには驚き
『おらぁぁぁぁぁ!』
『しねぇぇぇえ!』
侍騎士の2人がその隙に刀で攻撃するが、ムゲンはいとも容易く避けると宙返りしながら後ろに跳んで距離を取った
『槍花閃!』
リュウグウちゃんが着地のタイミングでその場で槍を前に突き、槍先から鋭い光線を飛ばす
ムゲンはそれを間一髪、体を横にずらして難を凌ぐが、後方からの攻撃までは防げない
『シャァァァァァァ!』
『がっ!?』
ギルハルド君だって戦える
彼の目にも止まらぬ攻撃はムゲンの脇腹を斬り裂き、バランスを崩させる
『フニャ!』
私の横を勢いよく吹き飛んでいくけども、ギルハルド君もあと1回が限界そうね
リュウグウちゃん、起き上がったレインさんにガウリーさんそしてチャボさんが私の前を固めると、後方の扉の前で倒れていたキングレイ小隊長が目を覚まし、弱弱しく起き上がる
キングレイ小隊長
『ぐ…いったい何が…』
レイン
『小隊長…こいつが犯人です』
リュウグウ
『人手が足りん!手伝え!』
キングレイ小隊長
『こいつが…うっ!?』
キングレイ小隊長も、ムゲンの後ろで息絶えた医者や看護婦を見て口をおさえる
しかし、その顔は直ぐに仕事の、いや違う…自身の職務を全うするための使命を胸に秘めた顔つきとなった
ムゲン
『雑魚が起き上がっても意味がないないないないあいあいあいあいあ!』
ティア
『貴方の他に誰がスキルを狙ってるの?』
聞いてみた、この魔物は知能はそこまでないと思う
私の予想が当たって欲しいんだけども、きっとムゲンは知能もそこまで戻っていない
まだゾンネの方が癖は強いけどもこいつはそこまで回復してないってわかるの
でも話すかなぁ…
『私の他に暴君ゾンネ、獣王ヴィンメイがいるが知ったところでお前らは残らず俺様が食うんだ!知っても意味がないない!』
キングレイ小隊長
『待て…獣王ヴィンメイといったか!?』
『ソレガガガ!どうした!』
キングレイ小隊長
『獣の国で一番強かった獣王ではないか…死んだ者が蘇っているのはムサシ王から小耳に聞いたことがあるが本当だったのか…』
『知っているカ!?何故こうなった!ワカラナイ!オシエロ!お前の王も食う予定だったからな!!』
ティア
『みんな!死ぬ気でいかないと死ぬよ!相手はドルトランドの歴史上最強の冒険者!全盛期の力が戻ってなくても強いのに変わりない!』
『だからシネ!情報を教えてから!』
ムゲンは荒げた声を上げながら槍を強く握りしめ、襲い掛かってくる
リュウグウちゃんが一気に飛び込むと、ムゲンは奇怪な声を上げながら槍を突きだしてくる
『ぐっ!!!!』
彼女は頬をかする程度で回避した
しかし、ムゲンはそのままの勢いで彼女に体当たりをし、直ぐ後ろから走っていた2人の侍騎士にぶつける
『うおおおおおおお!』
キングレイ小隊長が部下の頭上を飛び越え、刀を素早く何度も振る
だけどムゲンはそれを避け、槍を突く
その攻撃はキングレイ小隊長の腹部を貫く
私や侍騎士は彼の名を叫ぶと、キングレイ小隊長は刀を手放して腹に食い込んだ槍を両手でガッチリつかんだ
ムゲン
『なっ!?』
『頭を狙われていれば終わってたが助かったぞ!お礼だ!』
『ブッ!?!?!』
彼はムゲンの胸部を蹴って吹き飛ばす
その拍子にキングレイの腹部から槍が抜け、彼はその場に膝をついた
流石槍の冒険者、蹴られても武器は決して離さない
『ラビットファイアー!』
転倒した隙に赤い魔法陣を出現させ、細長い熱光線を5つ発射した
それらは真っすぐムゲンに飛んでいくと、上体を起こしたムゲンの上半身に全て命中して彼が激しく燃え盛る
『女ぁぁぁぁぁぁぁ!』
裂けた口を大きく開き、上体が燃えたまま彼が飛び込んでくる
執拗過ぎる…私を何度も狙ってるってわかるよ
今も彼は私を見てるからね
『三連突き!』
『三連突き!』
リュウグウちゃんとムゲンの技が重なった
でも今の彼女じゃ彼の技量には敵わなかった
1発目で槍を弾かれたリュウグウちゃんは、2、3発を肩と腕で貫かれ、苦痛を浮かべながら後方に倒れる
『リュウグウちゃん!』
『逃げろティア!』
『オソいオソイ!』
ムゲンは大声を上げて私に襲いかかる
レインさん、チャボさん、ガウリーさんが飛び込むとムゲンは素早く三連突で素早く3人の体にに槍を突き刺して倒す
キングレイ小隊長は部下の倒れる姿に大声をあげながら刀を拾うと、なぎ払うように振り、ムゲンに肩を貫かれながら彼を斬った
ムゲン
『ガッ!クソッが!』
『がはっ…』
ムゲンは僅かにふらつくが、キングレイ小隊長を蹴って吹き飛ばした
『クソッ!ジェスタードめががが!体が完全に癒えぬ』
『ショック!』
『だがお前ら程度!』
私の雷弾を槍を回して弾き、飛びかかってくる
速すぎる、私では避けれない
正面まで迫るムゲンを見ながら、私は後方に飛び退こうとしたけども少し遅かった
飛んだ瞬間にムゲンの槍が私の右太腿を貫いたの
私は声を出して床に倒れた
凄く痛い、でも痛がってられない…
心臓がバクバクしていて痛みがある程度緩和されてるのが救いかも
足を引きずって後ろのドアまで移動しようと頑張ると、ムゲンは、槍を肩に担いで歩いてくる
『万全ならば、瞬殺デキタガ…くそ』
どうやらキングレイ小隊長に斬られた時のダメージが大きいらしく、ムゲンは傷口をおさえながら嗚咽した
『教えロ!その匂いはドコにいる!』
『教えない』
『ならば死ね!役立たずが!』
ムゲンが飛び込んでこようと軽くしゃがんだ瞬間、彼の胸部をリュウグウちゃんの槍が貫いたの
これは槍の投擲技のシャベリンね
リュウグウちゃんはムゲンの後ろから槍を投げ込んでいた
ムゲンの体を貫通した槍は私の後ろのドアに深く突き刺さる
『グワァァァァァァ!……このシニゾコナイめが!』
『シャァァァ!』
喋りながら振り向くと同時にギルハルド君が突っ込み、顔面を斬り裂く
『ナァァァァァ!!猫め!』
奴は苦痛な声をだしながら顔を腕で覆い隠して前屈みになってる
ギルハルド君が勢いを止めれずに転がり、ヨロヨロしながら立ち上がり、私を守ろうとしてくれてる
『ギルハルド君…』
『ミャー!』
『くそっ!くそが!ダメージさえなければお前らなんか!』
必死に立ち上がろうとしているリュウグウちゃんや侍騎士の3人
まだ生きている、槍で突かれても、彼ら侍騎士は何故立てるのだろう
『う…キングレイ小隊長をよくも』
『相手も瀕死だ…一矢報いてでも』
『くそ、こんな化け物が…』
リュウグウ
『これ以上の被害を止めないと不味い、死んででも…倒すぞ』
ムゲン
『無駄…だ!』
彼は手を伸ばすと、手の平から衝撃波を放った
この廊下じゃ避けることは不可能、リュウグウちゃん達は奥の治療室の中まで吹き飛ばされた
これで邪魔ものはいない、ムゲンはそう言いたげな様子でこちらに振り向く
『シャァァァァ!』
『たかがCランクの猫めガ!キュウソネコカミスキルは流石に今の俺様でも御免被るが…もう次は出来まい?体が痙攣しておる』
『ギルハルド君…』
現にギルハルド君は前傾姿勢で威嚇をしている
その体は小刻みに震えてるの
無理にスキルを使って筋肉が悲鳴を上げているってことだと思う
『女、その匂いの主が何処にいるかオシエロ!そうすれば楽に頭からかみ砕いて殺してやる』
『いや、貴方はきっと死ぬ』
『お前ができるのかっ!』
彼は素早く突っ込んできた
疲弊しきったギルハルド君は出遅れてしまい、踏み込んだ瞬間んムゲンの槍に叩き落とされた
彼はそのまま私に襲い掛かる
右太腿の怪我があって回避なんて無理そう
それにあの速度を回避なんてできっこない、やるしかない
『シールド!!』
『無駄だ!!』
私は腕を伸ばし、盾を出現させる
しかし遅すぎた
彼は盾が出現する前に私の前に辿り着いたの
私は驚愕を顔に浮かべ、手に持っていたサバイバルナイフで応戦しようとムゲンの頭部の突きだす
だけど彼はしゃがみながら回転して避け、そのまま回し蹴りで私の顔面を蹴って横の壁に叩きつける
激痛が走り、床に倒れると鼻から血が凄い出てきたけど
直ぐに痛みは緩和され、体が以上に熱くなる
顔が凄い熱い…火で炙られているみたいに
『う…』
『立て女!』
『うわっ…』
無理やり髪を掴まれ、私はサバイバルナイフを落としてしまった
彼の腕を両腕で掴んで抵抗を見せるけど、これも無意味だろう
足がギリギリつかない、力はあるんだね…どうしよう
『シャァァァ!』
『キュウソを使えん猫は消えろ!』
『ブギャン!』
背後から跳んできたギルハルド君は普通の速度で襲い掛かっていた
キュウソネコカミの効果が切れていた、使えないくらいに疲れてたからだと思う
ムゲンは蹴ってギルハルド君を吹き飛ばすと、イソギンチャクの頭部から浮き出る無数の目玉で私を睨みつけてきた
『やはり奴の匂いだ、お前ジャナイ』
『う…』
『やはり女か、弱すぎる…美味しそうな匂いもしている・・・生前は夜通し色んな女と寝た。しかしその欲が消え、食欲のみが俺様に残った!食べれば俺はあの時の力を取り戻せる!侍騎士の雑魚でも数をこなせば俺様の力も取り戻せるだろう!そうすれば俺はあの2人より強くなり、スキルを手に入れることが出来る』
『最初からゼペットのいう事を聞く気はないのね…』
『当たり前だ!あの力を知った者などソウデアル!俺は食えば力を取り戻せる、ゾンネは記憶を取り戻すたびに強くなる、ヴィンメイは敵を倒せば…それぞれ色々な力の取り戻し方があるのはなぜかはわからんがな』
『何で…それを私に言うの…』
『食べる前に教えてやろうと思ってな』
『変な面殿土産ね』
私は口を開きながら右手を前に出し、ショックを放った
彼は油断していたけども、反応速度は早くて打つ前に私を地面に叩きつけて魔法を阻止した
そして彼の足が私の頭を押さえつける
凄い痛い、体も熱い
抵抗を止めれば砕けそう
『うぅ…!』
『痛いか?まぁ砕いてから脳を少しづつ舐め取るのもイイダロウな』
『貴方は…強くなれない』
私はそう告げると、彼は少し低い口調で答えた
『あっそ』
頭を押さえつける足が上がった
私が顔を上げると、目の前に彼の足が迫ってきた
単純な蹴り
『あっ!』
顔面を蹴られ、私は後ろのドアまで吹き飛ぶと、そのままドアを壊しておくの待合室に私は倒れた
意識が朦朧としている、どうすればいいかわからない
私は戦闘型じゃない、補助魔法ばっかだし…ある程度接近戦が出来てもムゲン相手には意味なんてない
仰向けのまま、天井を見上げる事しかできない
鼻血が凄い、片目も開けずらい…失明はしてない
体中が熱くなり、全身が心臓であるかのようにドクンドクント脈打つ
かなり興奮してるってわかる
死ぬってこんな感じなんだろうな…
『助けて…アカ…ツキ君』
無意識に私はそう言った
怖い時はそういえば何とかなると思っていたからだ
森で置き去りになった時も、私は横穴の中でそう囁いたことがある
彼は来てくれた。
私はそれが嬉しかった
強くなりたい、心配かけたくないから
それもできないのだろうか…
でも…なんでだろうか
顔が痛くて抑えてる私だけど…
ムゲンが動く気配がない、足音さえも聞こえない
聞こえるのは彼の言葉のみ
『貴様…何者だ!!!!』
アカツキ
『お前はぁぁぁぁ!絶対に殺してやるっ!!!!!!』
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