第90話 決着!ミノタウロス戦 3
アカツキ・ライオット
☆アビリティースキル
スピード強化【Le4】
気配感知 【Le2】
動体視力強化【Le3】
斬撃強化 【Le3】
☆技スキル
龍・開闢 【Le2】
刀界 【Le1】
居合突 【Le2】
光速斬 【Le2】
地斬鉄 【Le1】
☆魔法スキル
称号
・・・・・・・・・
リリディ・ルーゼット
☆アビリティースキル
打撃強化【Le4】
気配感知【Le3】
麻痺耐性【Le3】
スピード強化【Le2】
攻撃魔法耐久力強化【Le1】New
☆技スキル
ドレインタッチ【Le3】
爆打 【Le2】
骨砕き 【Le1】
☆魔法スキル
風・突風 【Le2】
風・カッター 【Le2】
黒・ペイン 【Le1】
黒・シュツルム【Le3】
黒・チェーンデストラクション【Le2】
称号
リトル・クルーガー【黒】
☆称号スキル
毒耐性【Le1】
動体視力強化【Le1】
・・・・・・・・・・
ティアマト・ウロボリス
☆アビリティースキル
斬撃強化 【Le3】
気配感知 【Le2】
毒耐性 【Le4】
耐久力強化【Le2】
動体視力強化【Le2】
スピード強化【Le2】
☆技スキル
連続斬り 【Le3】
真空斬 【Le2】
大地噴出断【Le1】
鬼無双 【Le2】
☆魔法スキル
☆称号
バトラー
称号スキル
体術強化【Le1】
耐久力強化【Le1】
特殊技『ギロチン』
・・・・・・・・
ティア・ヴァレンタイン
☆アビリティースキル
安眠 【Le1】
気配感知【Le4】
麻痺耐性【Le1】
動体視力強化【Le1】
スピード強化【Le2】
☆技スキル
☆魔法スキル
火・ラビットファイアー【Le3】
雷・ショック【Le4】
木・スリープ【Le2】
風・ケア 【Le2】
風・シールド【Le2】up↑
称号
パナ・プレイヤー
☆称号スキル
デバフ強化 【Le1】
自然治癒 【Le1】
スピード強化【Le1】
・・・・・・
魔物表
A闘獣 金欲のアヴァロン(妖魔羊)、睡欲のモグラント(土駆龍)
A
B デュラハン、将軍猪、閻魔蠍、鬼ヒヨケ、女帝蜂、ミノタウロス
C ブラック・クズリ、トロール、ファングマン、侍ゾンビ
パペット・ハンマー、リザードマン、鉄鳥、マグマント
剣蜂、キラービー(単体D/集団のみC)、般若蠍、ベロヌェルカ
ロゴーレム、ニャン太九郎
D キングゴブリン、グランドパンサー、ゴーレム、ラフレコドラ、ケサラン
ソード・マンティス、黒猪、グレイバット、鎧蛇、棘巻トカゲ
リッパー、ゲロックロ、ハンドリーパー
E コロール、エアウルフ、ハイゴブリン、エレメンタル各種
パペットナイト。ボロゴーレム、棘蜂、グール、グリーンマンティス
ゲコ(ヤモリ)、闇蠍、格闘猿(エド国)
F ゴブリン、ディノスライム、格闘猿、ゾンビナイト、風鳥
ゴースト、ウッドマン、ビリビリフラワー、眠花蜘蛛
角鼠、カナブーン ゾンビナイト、赤猪、棘鴉、オオダンゴ
ギョロギョロ、ゾンビランサー
・・・・・・・・
俺たちは羅生門のチームと共にギルドに戻った
ギルド前の馬置き場にブルドンをいったん繋げ、そこを警備する警備侍にチップを渡してからギルドの中に入る
ドアを開けると、それまで賑わっていた冒険者たちが一気にこちらに顔を向けて静かになる
嫌そうな顔というわけじゃない、驚いている感じだ
そんな冒険者の中、俺は仲間たちと共に赤い絨毯の上を歩き、真っすぐ受付に向かう
途中でキリサキが丸テーブルに座ってこちらを見ているのを目にする
何故か彼らだけ直ぐにわかったよ
しかめっ面だが、俺はあまりみないようにして受付に向かうと、ミノタウロスの魔石を受付嬢に見せたんだ
『わお、流石ですね』
『呑気ですね』
『なんの事でしょう?』
この女性も新人のわけじゃない
ギルドの冒険者なんて全員知っていても可笑しくないからな
当然キリサキの事もわかっている
だけども彼女だけ呑気なのが肝が据わっているのは凄い
『ミャー』
『ギルハルド、お座り』
『ミャ』
後ろでリリディがしつけている声を聞きながら受付を済ませようとした
仲間たちも受付にだけ視線を向けてくれている、下手に誰かを見たら面倒だし変に刺激しないほうが良い
1組だけだけどな
『報酬金貨18枚になります!またのお越しを!』
軽すぎる、手慣れたもんだな…
受付嬢は報酬の入った小さな布袋を用意していたらしく、受付カウンターの下から直ぐに出してきたのだ
『それと、途中で倒した敵の魔石ですが』
『そうでしたね!忘れてました!』
これは本当に忘れていたようだ
その分も回収し、ガーランド達も森で討伐した魔物の魔石を受付嬢に渡して魔石報酬を貰う
俺は布袋を懐にしまい、ここから出ようとするとテラ・トーヴァが話しかけてきた
《後ろ気をつけろ》
『え?』
振り返りながら返事をすると、その意味を知る
仲間たちが驚いた顔をしているけども、理由は背後でキリサキの4人が腕を組んでそこにいたからだろう
『無事そうだな』
コヴァだ、デカい…
ティアマトですら見上げるくらいだからな
リュウグウは目を細めてコヴァを見ているけども、そんな目で見ないほうが良いと思う
ティアは普通だ、首を傾げているのを見るとこの状況をあまり重く受け止めていないと思える
『無事です』
俺は覇気の無い声でそう告げ、軽く会釈をする
何かを言われる前にこっちから手を打つしかないようだ
ロビー内の冒険者が固唾を飲んで見守っているのが見える
争いごとには、ならない気がする
『1組で倒したのかお前ら』
『はい、その場に貴方がたがいれば譲っていましたが、いない状態での急を要すると思ったので俺たちが向かいました、でしゃばった真似をしたならば謝ります』
『…』
コヴァは目を細め、俺たちを見ている
怖い顔をしているけども敵意を向けられている感じはしない
しかし、俺たちを余所者として避けているのは事実だ
だけどこの出来事で俺達は彼ら『キリサキ』の事を知ることは多少できたよ
コヴァが溜息を漏らすと、近くの椅子に座り、誰のかわからない酒を飲んでから話し始めたんだ
『あ?謝るだ?こちとらプライドはある…冒険者としてのだ』
『それはどういう意味ですか』
『運悪く敵を取られた、それだけだ…確かにお前らは余所者だが、それは俺たちがその場にいなかっただけ、その事実がある以上…俺達は理由のない理由でお前らをどうこうするならばそれまでの人間だ』
『…』
『次に俺たちがいるときは、譲れ…今回はよくやったと言ってやる。』
俺達全員、ホッとする
するとコヴァは何かを閃いたかのような面持ちを見せ、手に持っている酒がスッカラカンであることに気づくと、鼻で笑い、口を開く
『1杯奢れば今回はお前らの功績にしてやる』
『コヴァちゃん、飲みたいだけでしょ』
彼の仲間である剣士の女性がそう告げると、コヴァは少しだけ狼狽えながら答える
『ちげぇよ』
よかった
変につっかかる人ではないようだ
彼には彼なりの考え方があるようで助かるよ
『みんないつもより力んでますねぇ!どうしたんです?』
受付嬢がニヤニヤしながら話しているのを見ると、彼女もコヴァがどんな人間かわかっていたんだな
『なんのお酒にするの?』
ティアがおもむろにコヴェに話しかける
こっちにも肝っ玉が据わっている女性はいた
それにはティアマトも驚く
コヴァは怖いもの知らずなティアにキョトンとした顔を見せると、小さく笑ってから囁くようにして返事をしたのだ
『ビールでいいよお嬢ちゃん』
『ビール?だってアカツキ君!』
『…あぁ』
そこでこの場にいた冒険者たち全員が安堵を浮かべた
まぁコヴァたちのチーム、いや…コヴェはここのボスとしてちゃんと君臨しているということだな
俺はギルドロビー内の軽食屋のカウンターにいたマスターにコヴァ宛にビール1杯を頼み、金を渡してから仲間と共にギルドを出ようと入り口まで歩いていくと、背後から再びコヴァが話しかけてきたんだ
『強ぇんだな…若い癖によ』
『あんたより強くなる』
おい!ティアマト!
彼は振り返り、我が物顔でそう告げたんだ
その場の誰もが驚愕を浮かべ、お前何言ってんだ馬鹿熊と言わんばかりに視線をティアマトに向ける
リリディは凄い驚きながらティアマトの脇を肘で小突いてはいるが、もう遅い
『でかい口叩く野郎がいるな…』
『あんた強ぇんだろ?いい感じの男だな』
『俺は強ぇ、できるもんならやってみろや子熊野郎…だが今日はもう帰れ』
俺はリリディと共にティアマトを引っ張ってギルドを退散した
外に出てからはリュウグウがこっぴどくティアマトを叱っていたのは面白かったぞ
ブルドンを連れ、俺たちは街を歩きながら日が暮れるのを感じて空を眺めた
『強かったね、ミノタウロス』
ティアの言葉にリュウグウとリリディが口を開く
『逃げたくなるほどの魔物だったわね』
『でも逃げなかったのは上に上がる素質があるからでは?』
『上がらないと駄目なんだろう?』
『そうでしょうねぇ、それにしても…アカツキさん?』
『どうしたリリディ』
『僕たち、本当に強くなりましたね』
『あぁそうだな、Bランクか…』
『はい、初めてCという魔物の壁を越えた時はそりゃ体が震える程嬉しかったですが…こんかいはそれ以上です。先が見えてきませんか?』
『俺たちのこれからだろ?』
『いえいえ、僕の大賢者の道』
そこでリュウグウが溜息を漏らしながらリリディを背後から頭部をチョップした
『メガネ、そこ言うセリフが違うだろう』
『ははは、すいませんでした』
『それに貴様…私を抱いたな?』
『なんだかエッチに聞こえますがその言葉に間違えはないですか』
リリディは眼鏡を光らせ、リュウグウを茶化す
すると彼女はあたふたとしながら顔を赤くし、彼の顔面を殴る
『物理的な耐久力スキルが欲しいですね』
そういいながら彼は倒れていった
『ミャ?』
倒れたリリディの顔をなめるギルハルドを見ていると変な哀愁が漂う
ティアが笑っているし、まぁいいか
日が暮れ、すっかり夜だ
商店街の通りはかなり賑わい、歩くのも容易ではない
俺たちは人込みをかき分け、宿に戻ろうとすると、十手という特殊な武器を持った警備侍がその付近を巡回して回っているのがよく見てわかる
ここは案外治安が良い、犯罪はそうそう起きない
窃盗なども殆どがないんだ、罪が重いからだ
禁固刑なんて3年以上は当り前さ、軽犯罪といえどもここの国王は犯罪にはかなり厳しい規制をかけているのである
『アカツキ君、怪我とかない?』
ティアが心配してくる、俺の顔を覗き込んで口を開くと、俺の体を見回してきた
そんなに見ても大きなけがはない、一応打撲などはあるというと、彼女は『治すよ!』とちょっと元気になる
ティアマトがそれを見て横目でヘッと笑っているが、恥ずかしい
人込みを通過し、広場に辿り着くと開いているベンチに座り、彼女のケアで腕や背中などのちょっとした怪我を治してもらったんだ
俺だけじゃなく、ティアマトもだ
彼はかなり吹き飛ばされたからな
『本当に凄い魔法ね、ティア』
『リュウグウちゃんも治すけど大丈夫?』
『私は大丈夫だ』
『そっか、あんま役にたてなかったし…これくらいしかできないけど』
そんなこと言ってもかなり役に立っているのだが?
とはいっても火属性の魔法の他に彼女には必要だろうなという話をすると、そこで今後のスキル候補にティアのスキルも入れることになったのだ
『アカツキ君、聞いてみて!』
『あいつか』
『だって詳しいでしょ?きっと』
テラ・トーヴァか
俺はベンチで座りながら彼に話しかけようとすると、俺よりも先にテラ・トーヴァが答えたんだ
《火の対する魔法がいい、水だ》
『水か、エレメンタルアクアはアクアショットだっけ?あれはちょっとな』
《あんなのいらん、ハイドポンプでいい》
『ハイドポンプ?』
《ベロヌェルカがたまに使う魔法なんだがな、レベルが上がれば案外使い勝手良いぞ》
『そんな魔法持っていたのか』
《明日はそれで決まりだな、丁度Cランクだし俺も食いてぇ》
それを皆に告げると、ティアが万歳して喜んだ
《リュウグウのお嬢ちゃんはまずは突強化スキルの会得だな》
そのことも口にすると、リュウグウは気難しそうな顔を浮かべたんだ
『どうした?』
『意外に突強化スキルは困難だ、ゾンビランサーなんて容易く現れないからね』
らしいよ
テラ・トーヴァが言うには、ここらの森ならば夜になればそれなりにゾンビランサーが出てくるって言ったんだ
その事実にリュウグウはちょっと嬉しそうな顔を浮かべる
明日の予定は夕方からになりそうだ
俺たちは宿に戻り、夜食でカルビ丼をみんなで注文して幸せな気分を味わった
味噌汁はムール貝と珍しいものも食べれたし、なんだかここにきて俺達全員が調子が良い
美味しく食べていると、やはり若い店員が俺たちに話しかけてくる
店員
『やっぱり稼ぎ良いんですね…1人前銀貨3枚のカルビ丼ですよ?サイドメニューのムール貝の味噌汁なんて銅貨4枚の贅沢味噌汁ですし』
リリディ
『今日は死ぬ思いで稼ぎましたからね、贅沢したくなりますよ』
リュウグウ
『ミノタウロスと戦ったのよ、美味しいものを食べないとやってられないわ』
店員
『ミノタウロス…、やっぱ強いと稼げるんですね』
アカツキ
『初めてBを倒せたんだ、その祝いもかねての今日の夜食さ』
店員
『なるほど』
すると彼は厨房の人から料理を運べと言われ、俺たちに会釈をしてから奥に走っていく
いやぁ、にしてもだ…
この味噌汁美味しい、病みつきになりそうだよ
『ミャー』
ギルハルドはリリディの後ろで牛肉を美味しそうに食べてる
明日は沢山働いてもらおうかな
こうして何気ない会話をしながら夜食を終え、俺たちは一時解散となる
明日はここで昼食後にギルドに行き、日暮れまで森で稼ぎながらスキルを獲得する狙いだ
部屋で窓から宿の前を歩く人達を見ながら、俺はグラスに入った水を飲む
小雨だから外の人は番傘をさして歩いている
とはいってもこれ以上は強くはならない筈さ
明日は曇り、太陽が雲に隠れていればアンデットの魔物も森には姿を表す
曇っててほしいな
《兄弟、客だ》
『客?』
俺は疑問を浮かべたまま、ドアに顔を向けるとコンコンとノックが聞こえた
誰かなと思い、ドアに近づくと『私だよ~』とティアの声だ
開けてみると風呂から上がったばかりの白い浴衣姿のティア
キュンとした、これは俺が誠実な証拠だと信じたい
『何してたの?』
彼女らはそう言いながら畳の上の座布団に座る
『特に何も、かな』
俺は座り、壁にもたれ掛かる
どうやら暇で遊びにきたらしい
それなら嬉しい、のだが
『もう半分切ったね、帰るまで』
『グリンピアか』
『うん、私達って強くなってるよね?』
『なってるさ、心配するな』
『そんな心配してないよ。でも何が起きてるんだろうね』
『まぁ色々おき過ぎているな…。マグナ国では黒い騎士の対応だし、俺たちはゼペットの手下に狙われている、何かこの出来事に共通することでもあるのだろうか』
『なんだろうね、帰れば少しはわかるかも』
『だろうな』
俺たちを狙う聖騎士協会もいまや謎の黒騎士の対応をしてこっちなんて後回し
それはある意味都合がよいと考えたほうが良いだろう
黒騎士か、何者だろうか…
ふとティアが『お散歩に行こう!』と俺を誘ってくるのでそうすることにしようかと悩んでいると、テラ・トーヴァが俺の背中を押すような言葉を吐く
《行くしかねぇぜ兄弟》
らしい
時間は20時、宿は23時には入り口が閉まるのでそれまでには帰らないといけない
しかしだ、そんな長い散歩はしない
浴衣のまま外に出るのもあれなので冒険者の格好に着替えてから宿を出る
小雨も止んでいて助かる、宿の前を歩く人々を眺めると、俺はティアと共に適当に目的のない散歩をし始めることにした
冒険者も歩いている、顔が赤くていい笑顔だが、酔っているのだろう
家族連れの人々も夜食の帰りだろうか、その笑顔がとても似合う
そんな彼らの波の中に紛れて十手を手に巡回する警備侍が見えた
『そういえばこの国って俺たちの国とは仲良くないんだよな?』
『そうだね、敵対というよりは無干渉って感じに近いって聞いたことある』
歩きながらティアに話しかけると、彼女は答えてくれたんだ
『無干渉?』
『そそっ!戦争貴族はエド国はあまりいないから戦争しても特はあまりない筈よ。その代わりにマグナ国との戦争が起きた時の為にミヤミとかの街の防壁は高かったの覚えてる?』
『そうだったな、裏から見ると凄い厚い壁だったな…高いし』
『攻められにくい壁を作ってるからだろうね、マグナ国なエド国を標的に今までしなかったのは』
『だからエド国は防壁があって攻めてこないってわかっているからマグナ国に良い印象を持つことが出来ないって考えていいのか?』
『だと思うよ、貿易の関係はあるけどもそれは商業的な意味だし、それ以上の国交はエド国の国王は動いたことは歴史上はあまりないわね』
『確かマグナ国がガンテア共和国を攻める際に協力を仰いだって聞いたことがあるけど…』
『それはエド国の国王が首を縦に振ってる筈よ、確かにエド国の戦力も使えばマグナ国とガンテアの領土に挟まれる大きな山を越えてガンテアの街を制圧するくらいまでは出来たはずなんだけど、当時のマグナ国をエド国王はあまり信用していなかったみたい。マグナ国はエド国に輸送部隊の派遣を目的に対談したとは聞いたことある、でも侵攻戦に興味がないエド国は直ぐに断った。エド国は魔国連合と繋がりがあるのは知ってる?』
『直ぐ北の国だな。あそこは人間を嫌っている筈だが…』
『唯一エド国だけは別ね、戦争否定派なのはエド国だけじゃなく、魔族の国である魔国連合』
『似た者同士仲が良いってことか』
『だから意外に仲が良い国同士なの。マグナ国と結託すれば魔国連合との関係も悪くなる可能性は高い、どんな理由であれ・・・ね』
『まったく・・・戦争大好きな国に俺たちは生まれたもんだな』
『そうだね、前のマグナ国の国王は戦争のし過ぎで戦死したって言うのに方向性を変えないのは変わってるね、規模は小さくなっているけど』
『前の国王って戦士したのか?』
驚いた、知らなかったぞ…
『噂よ?老衰って国は言ってるけども…一部は戦死したって言ってる、どこから来た話なのかは知らないけど戦うこともできる国王だったみたい』
王族なのに自らも戦うのか
凄いな…
俺はその国王の名前を知らないので、ティアに聞こうとすると背後から声をかけられる
『おい、ちび大将』
振り返ると、俺はティアと共に驚く
リゲルとクワイエットだ
まだここにいたのか?鍛冶屋で聞いた話だと一度マグナ国に帰るって話してくれたのに
ティアは彼らが嫌いなので俺の背中に隠れて2人に敵意を向ける
そんな様子をクワイエットは苦笑いしながら頭を掻いて誤魔化す
リゲル
『夜道に歩くなんざ何考えてやがる』
アカツキ
『散歩ぐらいいいだろ』
リゲル
『お前らを狙っているのは俺たちだけじゃないって忘れたのか?まぁ聖騎士協会本部から指示があれば直ぐにでも捕らえるんだがな』
アカツキ
『何故まだこの国にいる?』
リゲル
『違う指示が来た、お前らの監視さ…遠くからな』
面倒だ
帰るという指示から監視に変わったらしい
それを言いに来たのかと疑問を浮かべていると、クワイエットはリゲルの脇腹を肘で小突く
『ほら…リゲル、それを言いに来たわけじゃないだろ?』
『五月蠅い!わかってる!』
なにやらリゲルは別の用事があったらしい
リゲルはティアの視線に気づくが、目を逸らす
彼は溜息を漏らすと、懐から金貨3枚を出して俺に放り投げてきた
驚きながら俺はそれをキャッチ、何故お金をくれたのかとティアと共に驚きながら掌の金貨を見つめていると
背中を向けて歩き去るリゲルとクワイエットが口を開いたんだ
クワイエット
『リゲルって不器用だね』
リゲル
『フン!返したからな!ちび大将…これで満足だろう、次は敵だぞ。』
敵だとしても恩は返しておく、か
わからないわけではない、それが俺たちと戦った時の雑念となるとか考えていそうだ
いい言葉での去り方なのはわかるけども
俺は空気を読まずに彼らを引き留めた
『マグナ国の黒騎士ってなんだ、教えてくれ』
リゲルは不貞腐れな顔のまま振り返る
なんで呼び止めた?みたいな雰囲気が刺さるよ
リゲル
『飯』
アカツキ
『は?』
リゲル
『今日はお前らのミノタウロス討伐のせいで森で稼げなかったんだ、俺たちは森で魔物相手に金を稼ぎたかったのに警備侍が入れてくれなかったんだ』
ティア
『またお金ないの?』
リゲル
『ぐ・・・!』
図星
それにはテラ・トーヴァがクスクスと笑っている
アカツキ
『今日の飯は出す、だから教えろ』
クワイエット、超大喜び
この人は本当に俺たちと敵対する気があるのかが疑問過ぎる
リゲルはそんな相方の様子のせいなのか、溜息を漏らすと近くの飯屋に視線を向けたんだ
丁度よく近場にあったな…
俺たちは敵である2人の聖騎士を連れて飯屋に入る
客はあまりいない、冒険者が2組いれくらいだし、中も広いとは言えない
適当な丸テーブル席に座り、クワイエットはニコニコしながらメニュー表を眺め始めた
ティア
『指示が変わったの?』
ティアは彼らに視線を向けず、言葉だけを向けた
リゲル
『…そうだ。どうやらマグナ国では聖騎士協会だけじゃなく、様々な協会の者を狙う黒騎士が問題になっている』
アカツキ
『聖騎士協会だけじゃないのか』
リゲル
『お前らの話も聞いてる、以前だが…回復魔法師会の馬鹿騎士に絡まれている時に黒騎士が奴らを皆殺しにしたんだってな?』
ティア
『知ってるんだ』
リゲル
『情報は力だ、知ってる…。各協会の幹部たちはビビッて外に出るときは護衛をガッチリ固めて出歩く始末だ、王族もその問題を解決しようと頑張っている』
アカツキ
『一大事だな』
リゲル
『ロットスターさん、覚えてるだろ?』
ティア
『ジェスタードさんに格の違い見せられた人』
リゲル
『まぁあの人も魔法騎士会じゃ相当強いんだが、初代五傑が強すぎるんだよ…。話が逸れたな、ロットスターさんが帰った時には魔法騎士会の副団長や隊長格がやられていたんだ、死亡だ』
アカツキ
『な…』
リゲルはクワイエットに注文を頼むとそのまま俺に視線を戻して話し続けた
リゲル
『マグナ国の各協会の上層部はマグナ国王族の幹部的な存在に近い、こっちの聖騎士協会の隊長さんも数人やられている、これじゃ国は内部から崩壊しかねない』
アカツキ
『何故だ』
リゲル
『誰かが黒騎士と繋がっていて、国を内部から消そうとしてるんじゃないかって話があるらしい、今マグナ国の上の人間は仲間同士疑心暗鬼みたいな感じさ、他国の事を考えている暇はないって事さ』
それほどまでに黒い騎士は強い
1国を脅かすとはどこまで強いのか逆に知りたいなと思うが、今は関わらないほうが良いだろう
クワイエット
『グリンピアに戻っても多分大丈夫だよ、聖騎士はコスタリカに撤退してるしさ…まぁ僕らは何故か君たちの監視をロイヤルフラッシュ聖騎士から聞かされてるんだけど…』
リゲル
『そういや蛸頭の言葉を思い出したぜ、お前…スキルがどうたらと』
俺は口を固く閉ざすことにした
数秒の静かな時間でリゲルはそれを悟り、それ以上は追及をやめた
《兄弟、こいつらは聖騎士だ…話すには危険すぎるからな》
俺はその言葉に頷き、運ばれてくる2人分の夜食がテーブルに並ぶのを眺めた
こっちは既に食べているからいらない、でも注文しないというわけにもいかず、俺はティアと共に杏仁豆腐を注文したよ
ちなみに聖騎士2人は唐揚げ定食のご飯大盛だ
クワイエットは嬉しそうに箸を手にして我先にと食べ始めた
リゲル
『お前、いろんな奴に狙われるな』
アカツキ
『そうらしい』
クワイエット
『リゲル!美味しいよ、早く食べよう』
リゲルはクワイエットに急かされ、箸に手を付けて食べ始めた
夜食の時間にしては遅いから客が少ないってのは丁度良かったかもしれない
ティアは敵である聖騎士がいるにもかかわらず、杏仁豆腐の誘惑に負けて幸せそうに食べ始めた
俺も食べたけども、美味しい
『アカツキ君、美味しいね』
『そうだな…高いけど』
『高いから美味しいんだよきっと』
そうなのだろうか
唐揚げ定食は銅貨5枚なのに美味い、杏仁豆腐は銀貨1枚だぞ!?
お金の価値がわからなくなるぞこれ
そこでちょっとした出来事が起きた
慌ただしく入ってきた女性、店内で遅い夜食を食べていた客はその女性の異様な様子に疑問を浮かべていると、女性は口を開いたんだ
『どなたか!森に言ってはくれませんか!』
どういうことだ、と思いながら彼女を見ていると、目が合った
すると女性は標的を俺たちに決めたようにそそくさとこちらに近寄ってきた
俺の両肩を掴み、気が気じゃないような様子を見せ、女性が焦ってる理由を話してきたんだ
『夫が森から帰ってこないんです!3人チームの冒険者なんですがこんな遅くまで帰ってこないなんて今までなかったんです』
リゲル
『寄り道でもしてるんだろ?』
『夫はそんなことしたことありません!』
リゲル、軽く口にしたが…
直ぐに否定されて苦い顔をする
時間的にどんな冒険者でも普通は森から帰ってきている筈だ
女性の話では18時には帰る、と言って出ていったらしい
ならば何があったと考えても可笑しくはない
これからギルドにも言って遭難届を出すつもりだと言っているけども、急を要するか
戻る時間は無さそうだ…ここから宿まで30分もかかる
ここから森まで30分、もし女性の夫が危ない状況であるならば、俺たちに戻る時間はない
『ティア、悪いが今日の夜は長い』
『はいっ!行きます!』
物分かりが速い
俺は懐から金貨銀貨5枚を出し、『これで会計してくれ』とリゲルたちに言って店内を出ようと立ち上がる
『ミノタウロス討伐したというのに、忙しい奴だな』
リゲルが話しかけてくる、俺は振り返り、彼に答えた
『人である以上、困っている声に動くのは当たり前だろ?お前らにはできないことだ』
そう告げると、リゲルは苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべた
店内を出ると、俺は女性にギルドで待機していてくれと告げてティアと共に走って森に向かった
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