第88話 決着!ミノタウロス戦 1 

アカツキ・ライオット


☆アビリティースキル

スピード強化【Le4】up↑

気配感知  【Le2】

動体視力強化【Le3】

斬撃強化  【Le3】


☆技スキル

龍・開闢  【Le2】

刀界    【Le1】

居合突   【Le2】

光速斬   【Le2】

地斬鉄   【Le1】


☆魔法スキル


称号

・・・・・・・・・

リリディ・ルーゼット


☆アビリティースキル

打撃強化【Le4】

気配感知【Le3】

麻痺耐性【Le3】

スピード強化【Le2】


☆技スキル

ドレインタッチ【Le3】

爆打  【Le2】

骨砕き 【Le1】


☆魔法スキル

風・突風   【Le2】

風・カッター 【Le2】

黒・ペイン  【Le1】

黒・シュツルム【Le3】

黒・チェーンデストラクション【Le2】up↑


称号

リトル・クルーガー【黒】


☆称号スキル

毒耐性【Le1】

動体視力強化【Le1】


・・・・・・・・・・

ティアマト・ウロボリス


☆アビリティースキル

斬撃強化 【Le3】 

気配感知 【Le2】

毒耐性  【Le4】

耐久力強化【Le2】

動体視力強化【Le2】

スピード強化【Le2】


☆技スキル

連続斬り 【Le3】

真空斬  【Le2】

大地噴出断【Le1】

鬼無双  【Le2】


☆魔法スキル


☆称号

バトラー


称号スキル

体術強化【Le1】

耐久力強化【Le1】

特殊技『ギロチン』



・・・・・・・・

ティア・ヴァレンタイン


☆アビリティースキル

安眠  【Le1】

気配感知【Le4】

麻痺耐性【Le1】

動体視力強化【Le1】

スピード強化【Le2】


☆技スキル


☆魔法スキル

火・ラビットファイアー【Le3】

雷・ショック【Le4】

木・スリープ【Le2】

風・ケア  【Le2】

風・シールド【Le2】up↑


称号

パナ・プレイヤー


☆称号スキル

デバフ強化 【Le1】

自然治癒  【Le1】

スピード強化【Le1】

・・・・・・


魔物表


A闘獣 金欲のアヴァロン(妖魔羊)、睡欲のモグラント(土駆龍)



B デュラハン、将軍猪、閻魔蠍、鬼ヒヨケ、女帝蜂、ミノタウロス

  


C ブラック・クズリ、トロール、ファングマン、侍ゾンビ

  パペット・ハンマー、リザードマン、鉄鳥、マグマント

  剣蜂、キラービー(単体D/集団のみC)、般若蠍、ベロヌェルカ

  ロゴーレム、ニャン太九郎


D キングゴブリン、グランドパンサー、ゴーレム、ラフレコドラ、ケサラン

  ソード・マンティス、黒猪、グレイバット、鎧蛇、棘巻トカゲ

  リッパー、ゲロックロ、ハンドリーパー


E コロール、エアウルフ、ハイゴブリン、エレメンタル各種

  パペットナイト。ボロゴーレム、棘蜂、グール、グリーンマンティス

  ゲコ(ヤモリ)、闇蠍、格闘猿(エド国)


F ゴブリン、ディノスライム、格闘猿、ゾンビナイト、風鳥

  ゴースト、ウッドマン、ビリビリフラワー、眠花蜘蛛

角鼠、カナブーン ゾンビナイト、赤猪、棘鴉、オオダンゴ

ギョロギョロ、ゾンビランサー


・・・・・・・・



俺達は真っすぐ森に向かう最中、入り口付近にて侍騎士がいつもより数も倍になっている事に気づく、20人以上いるな…

どうやら今から入る冒険者はミノタウロスの討伐のみの冒険者だけらしい


『ミノタウロスの討伐者だけしか入れないが…』


侍騎士の1人が俺達の前に立ちはだかると、口を開く

俺は直ぐに懐から依頼書を見せると、侍騎士は驚きながら俺達に視線を向ける


『1チームのみでか…』


『はい』


俺は単純に答えると、彼は気難しそうな顔を浮かべたまま、道を開けてくれた


『幸運を祈る』


別の侍騎士が囁くようにこちらに顔を向けて声援を送ってくれる

ありがとう、決着をつけてくるよ


俺達は森に入ると、さっそく遠くから大きな咆哮が聞こえてきた

まだ遠い、その声で鳥が一気に飛び立っている

まだ日が暮れるまで時間はあるし、早めに倒したいな


『ギャギャギャ!』


『ギャギャギャー!』


ゴブリン8体にハイゴブリン2体か

全員で立ち向かい、俺はゴブリンが飛び込んできたと同時に刀を振って一気に斬り裂いた

隣ではティアが巧みにゴブリンの錆びた短剣の攻撃を避けながらサバイバルナイフで斬って倒し、横から襲い掛かるハイゴブリンに手を伸ばすと、黄色い魔法陣を出現させてショックを放った


小石サイズの雷弾は魔法陣から放たれると、それはハイゴブリンに命中してビリビリと体を感電させながら麻痺させ、動きを封じる


彼女はハイゴブリンを狙わず、近くのゴブリンを斬り裂く

麻痺しているハイゴブリンはリュウグウが胸部に槍を突き刺して倒していた

仲間に任せ、近くで自分を狙うゴブリンに意識を向けたか…流石だよ



ティアマト

『おらぁ!』


『ギャフ!』


ティアマトはただ片手斧を振り回すだけでゴブリンは武器もろとも斬られる

もうFランクの魔物に対してはごり押し可能だな


『ニャー!』


『ヒヒーン!』


この2体もなかなかだ

ニャン太九郎ことギルハルドはハイゴブリンの顔面を両前足で突き刺す悪魔の様な攻撃を見せる

ブルドンは半回転し、後ろ足でゴブリンの顔面を蹴って首を吹き飛ばすがこれもエグイ

人間相手にそれをしても首が飛びそうだ


リリディ

『片付きましたねぇ』


彼は魔石を回収しながらそう告げると、1つだけ魔石が光っていた

それはギルハルドが倒したゴブリンの魔石、スキルは気配感知

だがそれはギルハルドに渡そう


ギルハルドは機嫌よくしながら発光した魔石にお手をするかのように触れ、光を吸収すると『ミャーン』と可愛い鳴き声を出す


ティア

『偉い!ギルちゃん!』


『ミャー!』


女には心を許しているか

ギルハルドを撫でるティアを見てブルドンも撫でろと言わんばかりにティアに近寄ると、彼女は笑いながらブルドンの首をリラックスさせるようにして撫でた


リュウグウ

『また咆哮だ』


ウモオオオオオオオオ!だってよ

どうみてもミノタウロスの声だ。相当おこだぞ

遠いのにここまで声が届くのはそれほどまでにストレスが溜まっているのだろうな

比較的歩きやすい道を真っすぐ進み、声のする方向に進んでいると、テラ・トーヴァが俺に話しかけてくる


《怒る魔物程、質の悪い相手はいねぇから気をつけな兄弟》


『わかった』


《得体の知れねぇゼペットの手下もいたら厄介だ、十分に警戒しろ》


言われずともするさ

仲間たちは何も気配を感じていないというのに周りを見渡し、武器を構えている

ゼペットの手下は気配を感じないからな、まだあの蛸頭がいれば厄介だ

名前くらい聞いとけばよかったが、教える気はさらさらなかったなあいつ


次は聞いてみるか


ティア

『魔物の気配!右に2体!』


リリディ

『ほう、現れたら僕がやりましょう』


そのまま進むと茂みの奥から駆け抜けてくる魔物を2頭捉えた

パペットナイトだ


『ニー!』


『ニー!』


玩具種の魔物、ぬいぐるみの様な剣士

目はボタンで出来ており、口は波縫いの刺繍になっている

意外とすばしっこい奴で剣の扱いもそこそこ上手い

立ちはだかるリリディに2体が飛び込み、剣を振り下ろすと、リリディは手を伸ばし、緑色の魔法陣を発生させてから突風を発生させた


『ニッ!?』


『ニニニ!?』


空中でバランスを崩したパペットナイトはリリディのフルスイングのスタッフ攻撃により吹き飛んでいった

後方の木に背中をぶつけ、地面に倒れてもなお直ぐに立ち上がるパペットナイトにリリディは溜息を漏らす


『やれやれ、打撃だとてんで駄目ですね』


そうこう言っているうちに再び2体が彼に襲い掛かる

『やれ』と彼が言い放つと、ギルハルドが元気よく彼の後ろから前に飛び込み、パペットナイト2体を同時に斬り裂いて倒した



『ミャー!』


『流石ですよギルハルド、ほら』


リリディは懐から干し肉を出すと、それをギルハルドに投げ渡す

口でキャッチしたギルハルドは美味しそうに食べ、飲み込むと倒したパペットナイトの魔石を口で加え、残りを尻尾で器用に掴んで持ってくる


リュウグウ

『いいコンビだな、苦手な敵はギルハルドに任せれるな』


リリディ

『そうですね、僕もですがギルハルドももっと強くなりますよ』


『ミャー』


そうだそうだ!と言っているのだろうか

俺達は先に進む、ちょっとした小休憩にすることにした

まぁ5分の休憩だ。ミノタウロスに遭遇した時にそれなりに疲れている状態で戦いたくないからな

水筒で水分補給してから再び奥に向かうことにしているが


ギルドでミネラルウォーターを買っておいて正解だったな、1人銅貨3枚と高いが飲みやすくて美味しい

リュウグウは『ポカリに似た味だ』とわからない言葉を口にするが、わからん

どうやら彼女の故郷にある飲み物のようだ


アカツキ

『行こう、奴が待ってる』


ティアマト

『おう』


俺は仲間と共に森の奥に向かう

暗くなる前に、倒さないとな

一応ランタンは2つほど持ってきている、オイル式のだがな


《もう少しで姿が見えるぜ》


歩いていると、テラ・トーヴァが話しかけてくる

俺達は川辺に向かっているが、ここからでもティアは気配を感じるようだ

彼女は俺を見て無言のまま頷いているのが証拠だろう


『俺達は倒せるか?』


《兄弟次第だぜ?》


『倒す』


《なら答えは出てるな、幸運を祈るぜ》


見えてきた、大きな川だな

向こう岸まではざっと20メートル程ある

川の中心でミノタウロスは拳を水面に叩きつけて怒りを顔に浮かべていたんだ

凄い怒ってる、何故だろう…


まぁ原因は奴の反応で誰もがわかった


『!?』


ミノタウロスはこちらに気づくと、とても驚いていた


魔物Bランクの猛牛種で身長は3m

頭の側頭部からは湾曲した大きな角、黄色いモヒカン

体は全体的に灰色であり、両腕と両足は黄色い毛で覆われている

筋骨隆々とした細マッチョ、武器は持っていない


丸腰なのが唯一の救いだ


奴は俺達を酷く睨みつけてきながら拳を力強く握っている

ギリギリと歯を食いしばっているけども…


どうみても俺たちに怒っているんだろうなぁ


『ウモァァァァァァァァァァ!』


ほら、超絶おこだ

その咆哮で川全体がバシャバシャと振動し、俺達の肉体にまで響き渡る

どうやらあっちは怒りというスパイスでペストコンディションだ

前以上に筋肉を盛り上がらせ、俺たちに川の中心から走り出してきた


アカツキ

『行くぞ!!!敵は魔物ランクB!一筋縄ではいかないぞ!』


リリディ

『望むところです!』


ティアマト

『ケッ!パーティーの始まりだ!』


リュウグウ

『めった刺しにしてやる!』


ティア

『みんながんばろ!』


『シャァァァァァァァ!!!』


『ヒヒーーーン!』



アカツキ

『勝って帰るぞ!俺達馬鹿は!』


『『『『剣より強い!』』』』


『ウモオオオオオ!!!』


ミノタウロスが目の前まで迫ると、奴は腕を掲げて振り下ろす

押しつぶす気だ


俺達は直ぐにその場から飛び退き、それを避けた

地面を叩きつけたミノタウロスの拳が深く地面に食い込み、軽い地割れを起こす

圧巻な光景に度肝を冷やすよ、一撃くらえば即死だと誰でもわかる


リリディ

『シュツルム!』


彼は飛び退きながら黒い魔法陣を発生させ、黒弾を放つ

ミノタウロスはそれを両腕でガードし、爆発の中に消えると直ぐに姿を現す


ティアマト

『悪ぃな!』


ミノタウロス

『!?』


ティアマトは着地後、直ぐに飛び掛かる顔面にドロップキックして隙を作る

誰もが彼の援護をしようと技の出し惜しみなど考えずに最高のスキルを繰り出していく


リュウグウは槍を素早く回転させ、その勢いを利用して突くと『槍花閃』と叫んで桜の花びらを纏う光線を飛ばす


ミノタウロス

『モオオオ!!』


それをミノタウロスは腕を伸ばし、右手で受け止めた

しかし、奴は右腕が弾かれて驚愕を浮かべると直ぐにティアのラビットファイアーが顔面に全て命中し、大きな叫び声をあげる


『ギロチン!!!』


着地したティアマトは片手斧を振り下ろすと、ミノタウロスの頭上から斬撃が落ちたのだ

それに気づいたミノタウロスは避けようと後ろに飛び退くが、避けきることが出来ずに胸部を斬られて血を流す


俺は奴に足を止める時間を与えないために光速斬で一直線に加速し、奴の太腿の側面を切り裂いて通過してから半回転した。

光速を止める事に慣れていない俺は半回転した際に少しふらついてしまい、ミノタウロスはそれを見て俺に標的を切り替える



不気味に笑みを浮かべて右手を伸ばしてくる

掴んで握りつぶす気だろうな


俺は刀を強く納刀し、金属音を響かせながら叫んだ


『刀界!』


ミノタウロスの伸ばす右腕に衝撃波が飛ぶと、無数の斬撃が右腕を襲って斬り刻んだのだ

深いとは言えない、だがダメージとしては十分だ


『ウモオオオオオオ!!』


奴は苦痛を浮かべて右手を引き、俺から数歩距離を取る

背後から飛んでくるティアのラビットファイアーを手を振って全て消し飛ばすと地面にあった手ごろな石を掴んでティアとリュウグウに投げつける

ただの投げる動作、しかしどうみても凶悪な技となる


ティア

『シールド!!』


リュウグウ

『くっ!』


リュウグウは素早くティアが発生させた魔力のシールドに隠れ、ミノタウロスの投げた石を防いだ

その勢いは凄まじく、シールドが砕けると同時に2人は衝撃で吹き飛んでいった


リリディ

『シュツルム!』


その間、リリディは懐に潜り込んでいた

腕を胸部に伸ばし、黒い魔法陣から黒弾を撃ち放つとミノタウロスは体でそれを受けてしまい、爆発に飲み込まれた

近くにいたリリディも勿論吹き飛ぶが、避けれない距離で撃つためには仕方がなかったんだろうな


よくやった


『ウモァァァァァァ!』


悲鳴を上げている

だがこれで倒れる奴じゃない

ティアとリュウグウが立ち上がると同時に黒煙の中から目を血走らせたミノタウロスが姿を見せる

ミノタウロスは俺を狙い、叩き潰そうと何度も拳を振り下ろしてきた


アカツキ

『ちっ…』


俺は跳んでは避け、機会を伺う

途中、リリディとティアマトがミノタウロスの背後から加勢に来るが、ミノタウロスは振り向きながら腕を振ってなぎ払った


リリディ

『あぶなっ!』


ティアマト

『やべ!』


彼らは間一髪、跳躍して避ける

ミノタウロスは跳んだ彼らに狙いを定めて俺に背を向けた

ならば今、攻撃するしかない


『刀界!』


再び納刀し、金属音と共に衝撃波がミノタウロスの背中に飛んでいくと、奴の背中は衝撃波の中の斬撃によって至る所が斬られていく


ブシュッと血を流してもミノタウロスは堪えた

大声を上げ、着地をする前のリリディとティアマトに腕を振る


やばい、あれは当たる

直撃したら不味すぎる


ティアマトは耐久力強化があるがリリディはない

だが耐久力強化があってもミノタウロスの攻撃全ては致命傷となるに違いない


ティア

『シールド!』




ティアマトとリリディの近くにシールドを展開し、それがミノタウロスの腕とぶつかった

よくやった!と俺は心の中で叫んだよ

この盾魔法は自身じゃなくても味方にも付与することが可能だということを俺は忘れていた


『ウモォォォォォォ!』


なんのそのと言わんばかりにミノタウロスは叫びながらシールドに腕をぶつけ、破壊した

一度きりの盾。そのシールドは勢いを減少させることしかできないが、十分だ

あいつらなら耐えれる筈だ


ティアマト

『ぐぁっ!』


リリディ

『がっ!!』


アカツキ

『ティアマト!リリディ!』


二人同時に叩かれると、そのまま勢いよく吹き飛び、地面を転がった

ティアのシールドのレベルが3あれば防げただろうか

いや、それでも無理そうだ


《味な事をしやがる!熊五郎め!》


テラ・トーヴァが嬉しそうに言った

なんのことだと思いながらミノタウロスを見てみると、その意味を知る


『グモォ……』


右腕、二の腕部分にティアマトの片手斧が深く食い込み、血を流していたのだ


『へ…へへ…、どうだ?』


ティアマトはよろよろと立ち上がりながら囁く

叩かれる寸前で片手斧を体の前に出していたのか…


奴の腕の振りを利用した嫌がらせに近い戦法だな

ミノタウロスは右腕に深く食い込んだ片手斧を抜くと、それを振りかぶってティアマトに投げつけた


『うおっ!?』


回転した片手斧をティアマトは避ける

それは木に深くめり込んだが、取りに行く余裕はまだない


リュウグウが果敢にもミノタウロスの足元に近づこうとしたが、ミノタウロスは地面を蹴って砂利を飛ばし、リュウグウに当てる


リュウグウ

『ぐっ!』


『モォォォォオ!』


リュウグウ

『やばい!』


彼女は飛んできた砂利を腕でガードしている隙に捕まれると危惧し、左手が伸びてきたのを驚きながら飛び退いて避ける


アカツキ

『ティアマト!大丈夫か!』


ティアマト

『ああ…やべぇパワーだぜ。リリディ、生きてるか?』


リリディ

『一応』


彼も大丈夫そうだ

しかし顔は苦痛に歪んでいる

その間、ギルハルドが俊敏にミノタウロスの周りを移動してかき乱す



流石だ、これがBなのか…

そもそもシュツルムの直撃でまだ普通に動けるのが凄いよ

本当にBランクでは弱い方なのか疑いたくなる


リリディも立ち上がると、ギルハルドは一度退いて彼の元に戻る


『ミャー』


リリディ

『よくやりました。もう少しお互い頑張らないと駄目ですね』


『ミャ』


彼も先ほどの一撃でかなりのダメージの筈だ

苦痛を浮かべているからな


ミノタウロスは興奮した様子であり

何度も何度も足で地面を踏みつけたんだ

この度に多少揺れるけども凄いな…


『ウモオオオオオオオ!』


ミノタウロスは俺たちに向かって襲い掛かると腕を乱暴に振り回し始める

不規則過ぎる攻撃に距離を取るしかない

しかも時々、地面をえぐるように殴って石などを飛ばしてくる

とんでもない攻撃に誰もが驚愕を浮かべた


ティア

『シールド!』


彼女は正面に魔力のシールドを展開し、凌ぐ

近くにいたティアマトがその盾に隠れて飛んでくる石から身を守る


リリディは飛び上がり、避けながら右手に掴んでいる木製スタッフを肩に担ぎ、開いていた左手を強く握ると


彼がその魔法を初めて使った


『ペイン』


その声にミノタウロスは動きを止めた

何かに気づいたのだ


俺もそれには気づいている。

ミノタウロスの約50メートル頭上にどす黒い雲が現れたのだ


『ウモ・・・?』


なんだこあれは?と言わんばかりの声だ

その瞬間、その雲から黒い雨が降り始めた

範囲はミノタウロスを中心に広い範囲だが、俺や仲間はその雲に違和感を覚えて退く

触れたらダメだ、その魔法は確か…


雨に触れたミノタウロスは急に叫び、その場で暴れながら倒れたのだ

倒れてもなお駄々をこねる子供のようにジタバタしている


ペイン、それはリリディが持つ黒魔法

対象の空高くに黒い雲を出現させ、痛覚神経を刺激する雨を降らせるんだ

雨が降れた肉体の箇所にある痛覚が激痛を生むのんだよ

聞いておいて正解だったな…触れてればああなっていたか


ティア

『ラビットファイアー!』


その間にティアは暴れるミノタウロスに手を伸ばし、赤い魔法陣の中から5つの細長い熱光線を飛ばした

のたうち回るミノタウロスはそれを避けるなど出来ず、触れた場所が軽く燃え始める

それが気つけとなったか、奴は目をギラギラさせて立ち上がると無理やり立ち上がって雨の中から出てきたのだ


その瞬間を狙っていたギルハルドはキュウソネコカミという身体能力を爆発的に向上させる特殊スキルを発動させ、目にもとまらぬスピードでミノタウロスの顔面を切り裂いた


ミノタウロス

『ウガァァァァァァァァ!』


断末魔に近い、よくやったギルハルド!

しかしギルハルドは勢いを止まれずにそのまま吹き飛んでいったしまう

ミノタウロスの右目から血が流れ、手で抑えていた


リュウグウは今が好機を思い、突っ込むと同時に俺も走り出した

それは他の仲間も同じさ


《油断すんなよ兄弟!》


『わかってる!』


俺は返事をする

リュウグウは槍を力強く握り、飛び込む

狙いは胸部、彼女の目はそこを見ていた


『モッ!』


リュウグウ

『なっ!?』


ティア

『リュウグウちゃん!!』


リリディ

『リュウグウさん!』


ミノタウロスが背中を見せると、武器とは言えない尻尾で彼女を地面に叩きつけたのだ


リュウグウ

『がっ・・・』


背中から地面に叩きつけられたリュウグウは槍を離してしまう

ミノタウロスは不気味な笑みを浮かべながら右目を抑えていた手を離し、目の前の地面に叩きつけられたリュウグウに向かって拳を振り落とそうとした

助けに行かなければと俺は考え、光速斬を使おうと身構える


しかしだ



リリディ

『王子様じゃなくてすいませんね!シュツルム!!』


リリディがリュウグウに向かって飛び込むと同時に左手をミノタウロスに向け、黒弾を放った

ガードが遅れたミノタウロスは彼の攻撃をモロに直撃し、叫び声と共に黒煙の中に消えていった


リリディ

『あとでブってもいいですから今は我慢してください!』


彼はそう言いながら彼女を起こし、なんと抱きかかえた

流石にリュウグウもそれにはこの状況を忘れて顔を赤くしている

そんな彼女の恥ずかしそうな顔も直ぐに現実に引き戻された


煙の中から咆哮を上げながらミノタウロスは姿を現し、2人の飛び込んできた


リュウグウ

『メメメメメガネェ!』


リリディ

『くっ!掴まってください!』


彼はリュウグウを抱えたまま、その場から後ろに跳ぶ


全身血だらけで目を血走らせたミノタウロスがダイブしながら2人がいた場所を強く拳で叩きつけると、地面が大きく凹んだ

あと少し遅れていれば危なかっただろう



『ウモォ…ウゴゴゴゴゴ!』


ギリギリと歯を食いしばり、距離を取ったリリディとリュウグウを睨むミノタウロス

逃げられて悔しいのだろうが、この魔物にもそのような事を考えれるのかもしれない


ティアマト

『相当ダメージいってんな…』


ティア

『だよね!でもだからって突っ込んだら危ないよ』


アカツキ

『ティアのいう通りだ、焦るなよみんな!』


リリディ

『集中を切らずに行きましょう』


リュウグウ

『いつまで抱きかかえてるんだ!は・・・離せっ!』


リリディ、リュウグウをおろす

意外と絵になってる気がしたのは気のせいか?

まぁ今はそんなこと考えている暇はない


『ウモアァァァァァァァァァ!』


今までで一番大きな雄たけびに俺達は耳を抑えた

凄い声量だ、ブルドンさえも驚いて転倒している


『シャァァァァァァァ!』


ギルハルドは後方からミノタウロスの脇腹を引き裂いてこちら側に吹き飛んできたよ

こいつも無茶するなぁ…、まぁそうしないと駄目な相手だってわかってるんだな


ミノタウロスは脇腹をおさえながら息を切らし、腕をだらりとしている

ポタポタと血も地面に落ちている様子を見ると、最初の様な暴れ方はもうできまい


《兄弟、覚悟決めていけ!こいつを倒せばお前も先が見える!》


俺はその言葉に鼓舞された

強くならないと聖騎士協会に抵抗が出来ない

強くならないとゼペットの手下に勝てない

単純な話だ


生きるために、俺は強くなるんだ


ミノタウロスが大声を上げて走ってきた瞬間に、俺は刀を構えて叫んだ


『光速斬!』


そろそろ幕引きとしようミノタウロス



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