第86話 ゼペットの手の者

かなり立派な服を着た蛸頭の謎の魔物が俺達に立ちはだかった



ゼペットの命により…貴様の開闢スキルを奪いに来た

それだけでこいつが何者かは一目瞭然、ゼペットの手下だということだ

奪って来いと言われたならば、ゼペットは復活しているということになる

とうとうこの時が来たか


聖騎士に追われながらもゼペットの企みから逃げる日々が訪れたってことになるな


???

『真空斬!』


奴はソードブレイカーを振り、斬撃を飛ばしてくる

ティアは皆の前に出ると、シールドを展開して蛸頭の真空斬を盾と共に相殺させる

その時には奴は既に俺達の目の前まで迫る


ティアマトとリュウグウが我先にと奴に飛び掛かったんだ


ティアマト

『連続斬り!!』


彼の持つ片手斧の素早い2連撃、それは蛸頭によってソードブレイカーで弾かれ、両肩部の触手で腕を掴まれたティアマトはそのまま襲来者に腹部を強く蹴られて吹き飛んでいく


???

『おっと』


リュウグウ

『くそ!』


彼女の槍の三連突が蛸頭を襲う、その全てを巧みに避け、武器を突きだすとリュウグウは飛び退いて避けた

入れ違いでティアのラビットファイアーが蛸頭に放たれたが、5発の熱光線は全て奴のソードブレイカーによって斬られて弾け飛んだんだ


???

『ゼペットの話ではさほど強くないと聞いてイタガ、予想以上に強くなられたようで?』


アカツキ

『死にたくないからな、どうせ奪うってことは殺すってことだろう?』


???

『物分かりが速くてこちらも助かル』


《こいつ生き物としての気配をまったく感じねぇぞ!!》


アカツキ

『何!?』


???

『開闢と会話しているのですね?』


奴は俺に突っ込んでくる、俺の前にリリディとティアマトが現れ、蛸頭は彼らの攻撃を避けながら武器を弾き返し、リリディを両肩部から伸びる触手で拘束したままティアマトに回し蹴りで膝をつかせ

最後に拘束していたリリディを一度持ち上げてから宙に叩きつけた


???

『おしい』


背後からリュウグウが槍をつくが、それは首を逸らしてかわされた

途端に奴の体から衝撃波が放たれると、俺達全員が軽く吹き飛ばされる


ティア

『ケア』


リリディ

『助かります、ティアさん』


リュウグウ

『こんな魔物、知らんぞ!』


ティア

『私も知らない!聞いたこともないわ!』


アカツキ

『お前は生き物じゃないのか!?気配がしないぞ!!』


???

『俺は魔物でも人間でもナイ、元人間が半分魔物になった存在とだけ冥途の土産に教えてヤロウ』


リュウグウ

『冥途の土産と口にする奴はだいたい負けるフラグだぞ』


???

『異国民が偉そうに…フラグとはなんですか?』


リュウグウ

『確定って意味だ踏み台野郎め』


???

『ワタシが?踏み台?』


すると奴はその場でソードブレイカーを振った

俺達の頭上を通った風は後方の木々を斬って倒したんだ

見えなかった、動きは見えても何が飛んだか何も見えなかった


自慢げにクスクスと笑う蛸頭の者はソードブレイカーを手首で回しながら一歩前に出て、話したんだ


???

『まぁワタシに勝ててもワタシのような存在はあと3人います、それを退かせる力が今のあなた方にあるのでしょうか?』


リリディ

『あるあるな四天王で面白いですね?』


???

『不敬、崇高な存在だったワタシをそのような遊びの言葉で表現するか』


蛸頭の者はリュウグウに一気に詰め寄ると、手に持つソードブレイカーを彼女に突きだした

顔面を狙われていると知ったリュウグウは上半身を反らし、避ける


『!?』


リュウグウは避けながら敵のソードブレイカーが振り下ろされると気づき、槍を無理やり急所に向けて突くと、奴は『おお?』と緊張感のない声を出して飛び退く

その着地を狙うリリディがチェーンデストラクションを発動し、両肩部から出現した2つの黒い魔方陣の中から鎖を飛ばす


しかしそれらは全て蛸頭の武器によって壊された

風が吹き出すと、奴の黒いマントが不気味になびく

僅かな静寂の中で俺は額から汗を流した


《結構強いじゃねぇか…兄弟が万全ならば行けたかもしれねぇが…》


『悪いが魔力がもうない…何も出せない』


技スキルを出せないのは痛すぎる

連戦でこいつと戦うのは骨が折れる、いや…そんなレベルではないだろう


???

『そのスキル、アカツキよ…騙されてますよ?』


アカツキ

『なんだと?』


???

『そのスキルは人を悪に染めるスキル、そして何度も人の世を壊した元凶であり、あなた方人間が持つべき力ではない』


《半分正解だ、まぁ今までこれを手に入れた人間が勝手に悪に染まっただけよ》


アカツキ

『そうなのか?教えろテラ』


俺は小声で言うと、テラ・トーヴァが話した


《確かにあいつの言ってることに間違いはねぇ、だがな?このスキルで人間が勝手に溺れただけさ兄弟…力を間違える奴なんざ腐るほど見てきたが・・・お前はそうなるのか兄弟?》


アカツキ

『俺は…』


《兄弟は兄弟らしく生きれるのならば力を貸す、無事に俺がスキルレベル5になればだが・・・その時のお前が悪に染まってないことを俺は願うぜ》


アカツキ

『悪か…想像もつかないよ』


《だろうな!これを手にした野郎は馬鹿野郎ばかりだった!凡人の兄弟にゃ悪に染まるなんてあまりないだろうから心配はしてねぇよ》


アカツキ

『…どうすればいい』


《勝て、逃げれる隙は無い》


単純な言葉だ

俺はその言葉を信じ、仲間たちと共に謎の蛸頭に突っ込んだ

それにしても強い、俺達の攻撃を避けながらも攻撃を仕掛けてくる

リリディは奴のソードブレイカーを木製スタッフで受け止めると、吹き飛ばされながらもシュツルムを放つ


???

『チッ!』


それを奴は両断し、後方で割れた黒弾が黒い爆発を起こす

飛び込んでいた俺は刀を振り下ろすが、奴はソードブレイカーの峰の凹凸にかませてからバランスを崩してきた


『くっ!』


凄い力だ、本当に元人間かと思いたくなる

ソードブレイカーを引き、奴は俺に振り下ろそうとしている


仲間の誰もが俺の名前を叫んでいるのが聞こえる、そして救援は間に合いそうもない

立ち上がる時間はない、これは不味いと思いながらも刀でガードしようとした時


何者かが俺の前に現れた


???

『!?』


リゲル

『見世物野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


リゲルが俺の前に出てくると、片手剣で奴のソードブレイカーを受け止めた

金属音が響き渡り、鍔迫り合いをしたままジリジリと押される謎の蛸頭は驚愕を浮かべる


???

『ほう!?今まで追い払った聖騎士よりうんと強いですね!』


リゲル

『俺は精鋭の中の精鋭リゲルだ!俺の獲物を勝手にくすねるなんざ許さねぇぞ!この作戦が成功すりゃ俺だって昇格の話も出るからなぁぁぁぁぁ!』


クワイエット

『神速突き!!』


???

『面倒な!』


クワイエットは真横から光速斬に似た技で加速をした

あれは俺の光速斬の斬撃に対し、彼のは突きの技だ

謎の蛸頭はリゲルとの鍔迫り合いを解除し、飛び退いてクワイエットの技を避けた


リゲル

『見世物野郎め、お前俺達の仲間をやってただで逃がすと思ってんのか?』


クワイエット

『僕らはこう見えても強いんだっ!』


???

『可笑しいですね?貴方たちもアカツキを狙っている筈なのに・・・何故です?』


リゲル

『いう義理はない?だよな見世物野郎?』


???

『ヤレヤレ…。真似されるとは』


アカツキ

『リゲル?』


リゲル

『お前は俺達の踏み台の道具だ、勝手にわけのわからん奴に取られて昇格の話を駄目にされたくねぇんだよ糞』


クワイエット

『今は指示無いんだけどね』


リゲル

『馬鹿野郎!指示が来るまで様子をみるのは普通だろうクワイエット!勝手に死なれたら今後俺達がのし上がる話なんて来るかわからないぞ』


クワイエット

『そだね、指示があるまで標的には死んでほしくはないしね』


リゲル

『これは勝手じゃない!当たり前の行動だ』


ティアマト

『勝手な考えじゃねぇのか…』


リゲル

『うるさい熊!死にたくなかったら戦え!どちみちここでこいつを退かせないとみんな死ぬぞ!アカツキは立て!お前リーダーだろうが!魔力切れたからって何休んでんだ屑が!』


蹴られた、痛い

俺は蹴られた頭を押さえながら立ち上がると、刀を構えた

全員が一か所に固まる、その中には聖騎士2人がいるのが少し驚く

その場限りの協力に近い


彼らは俺達に勝手に死んでもらうと嫌なようだ

ならばそれを利用させてもらう、彼らも彼らで俺を利用したいならばな


???

『釈然とシナイ、勝てると思っているのですか?』


アカツキ

『思ってる』


ティアマト

『ここで死ぬのはてめぇだ蛸野郎』


リリディ

『死ぬわけにはいきませんね!』


『シャァァァ!』


『ヒヒン!』


リュウグウ

『死んでたまるか!帰ったら良い物食って私は寝るんだ!』


ティア

『リュウグウちゃん!夢小さい!』


クワイエット

『まぁ一先ずこうするしか生きる手段ないよね』


クワイエットは懐から何かの木の実を取り出し、それを渡しながら口にした

始めてみる実ではない、これは魔力をそれなりに回復させる貴重な実だ

助かる!ありがとうクワイエット!!食べたら体が結構楽になったぞ!これならば


リゲル

『協力なんて胸糞悪いが仕方がないだろう!俺達2人じゃどう見ても無理だ』


アカツキ

『お前ら行くぞ!俺達馬鹿は!』


『『『剣より強い!!』』』


今回はリュウグウも反応してくれた、嬉しい

リゲルとクワイエットは首を傾げて俺達を見ていた、恥ずかしいけどもこれが俺たちのやる気の声掛けだ


謎の蛸頭は目を極限まで細め、怒りを顔に浮かべる


???

『いいでしょう、ここで全員死ぬが良い!!!』



奴は走る俺たちに向かって突っ込んできた

ティアマトの振られた片手斧をソードブレイカーで弾き、横から突いてくるリュウグウの槍をしゃがんで避けるとリリディとリゲルの振り下ろされる武器を見て宙に跳んで避けた


ティアが頭上に手を上げ、赤い魔方陣を発生させるとラビットファイアーを撃ちだす

5つの熱光線が飛び上がった蛸頭に向かって襲い掛かる


???

『無駄です』


それらを全て武器で弾き飛ばす

凄い動体視力を持っているな…


ティアマト

『落ちろ!ギロチン!』


???

『!?』


ティアマトはその場で片手斧を振り下ろした

すると蛸頭の者の頭上から斬撃が落ちてきたのだ

たまらずそれをソードブレイカーで防ぐと、奴は地面に叩きつけられる前に体を回転させて着地した


リゲル

『多段斬り!』


懐に潜り込んだリゲルは剣を振る

それによって多くの斬撃が発生し、謎の蛸頭はその全てをガードすることに意識を向けてしまう

クワイエットはその隙に背後から斬ろうと近づくと、蛸頭の者の両肩部から剥き出しの触手に捕まってしまった


クワイエット

『もう手はないよね?』


???

『?』


リリディ

『シュツルム!』


???

『!?』


その声と共にリゲルは飛び退き、黒弾が蛸頭の胴体に直撃した

クワイエットは触手から解放されると爆風で吹き飛び、転がる


リュウグウは煙の中に消えた敵に向かって槍花閃を発動させた

高速回転させた槍の勢いを利用し、標的に槍を突くと桜の花びらが舞い、光線が黒煙の中に飛んでいく


???

『小賢しい!!!』


光線が黒煙の中に消えると、甲高い高音と共にそれは空に弾かれた

黒煙は空に舞い上がると、その中から蛸頭の者が怒りを顔に浮かべたままこちらを睨む

直撃したはずなのに、まるでノーダメージ


しかし僅かに眉間にしわが寄っている

流石にあれの直撃でダメージ無しとはいかないだろう

ティアがラビットファイアーを放つと同時に、リゲルとティアマトそしてリリディが飛び込んだ


???

『贋作めが!!!』


ティアマト

『贋作でいっちまえや!』


ラビットファイアー弾くと直ぐにティアマトの片手斧をソードブレイカーで防ぎ

直ぐに彼の腕を掴んで投げ飛ばし、リゲルにぶつけようとするが彼はそれを避けた


リゲル

『馬鹿にぶつかるわけないだろうが!馬鹿め!』


???

『貴様!』


2人の武器が触れ合うとリゲルが弾かれる

蛸頭の者は触手で彼の武器を持つ右腕に巻き付くと、放物線を描きながら地面に強く叩きつけた


リゲル

『がっ!?!?』


???

『ふはは!聖騎士めが!』


アカツキ

『よう』


俺は投げている間に奴の懐に迫った

しかも光速斬でだ

奴の反応よりも先に、俺は奴の右肩から剥き出しの触手を斬り飛ばす

左右で3本ずつ垂れているからな、3本切れたのは嬉しい


しかし、斬れたのは仲間たちが意識を逸らしてくれていたからだ

いかに強者でも、多勢に慣れていないと思える謎の者だ

そこに活路がある


???

『疲労していた筈じゃ?』


アカツキ

『少し動ける!』


バランスを崩した蛸頭の背後で俺は鞘に剣を強く納めた

刀界、衝撃波と共に無数の斬撃を飛ばす

全方位にも可能だが、その分斬撃の数もバラバラになり、威力も極端に落ちる

しかし、正面だけとなると話は変わる


アカツキ

『刀界!』


金属音を響かせ、納刀すると衝撃波が前方にいる蛸頭に飛ぶ

奴は唸り声をあげてソードブレイカーで防ごうとするが、体中を斬り刻まれて苦痛を浮かべると宙に跳んで逃げた


???

『まさか貴様がこの技を持っているとは』


ティア

『ラビットファイアー!』


???

『小娘!無駄なあが…』


それを言い終わる前に、奴の背後からティアマトのギロチンが襲い掛かる

斬撃が落ちてくると、奴は背中にそれを受けてしまい地面に叩きつけられた

斬撃だけども奴の肉体が意外と頑丈であったことから両断はできなかったのだろう


落ちた先に飛び込む、リュウグウとクワイエット

しかし荒げた声で起き上がる蛸頭の者はクワイエットの剣を弾いてから蹴って吹き飛ばし

リュウグウの槍を飛び退いて避けると木製スタッフをフルスイングするリリディに武器でガードした


リリディ

『ドレインタッチ!』


相手に触れればそれで技になる

リリディは奴の体の光を僅かに吸収し、体力を奪うと直ぐに触手が来るのを見計らって飛び退いた

ティアマトの真空斬を避け、リゲルの剣撃を数回受け止めた後に右手を触手で掴む


リゲル

『シッ!』


???

『小癪な!』


掴まれた瞬間にリゲルは腕を引いてバランスを崩そうとするが、奴は持ちこたえた

そこでクワイエットが背後から飛び込んでくると、蛸頭はリゲルを触手で掴んだまま振り向いた


ティアマト

『おらぁぁぁぁぁ!』


???

『なっ!?』


奴がガクンと後ろに体が引かれた

リゲルの腕を拘束している触手をティアマトが引っ張ったんだ

それによってバランスを崩した蛸頭はクワイエットの振り下ろす剣を受け止めようとソードブレイカーを動かす、しかし


『シャァァァァァ!』


???

『猫めが!』


ギルハルドが蛸頭の目の前を通過し、剣を弾いた

しかもそれはキュウソネコカミを発動しても全力、ギルハルドは勢いを止めれずに吹き飛ぶがクワイエットは奴の胴体を斬り裂くことが出来た


???

『ぐのぉぉぉぉぉぉ!』


そのまま後方に倒れてしまう

しかも追い打ちありだ


リリディ

『シュツルム!!』


リリディは飛び上がり、真上から真下で倒れている蛸頭の男に向かって黒弾を撃ち放った


『こんな奴らにっ!』


避ける隙は無い、誰もがその場から離れると、奴は腕を前に出してガードする姿勢を見せながらリリディの魔法を受けて爆発に巻き込まれた

全員が距離を取り、武器を構えながら見守る


ティア

『やったかな?』


リュウグウ

『その言葉は不吉よティア』


リリディ

『なんとなくその気持ちわかります』


アカツキ

『ダメージはある筈だ、しかし…』


リゲル

『まぁ倒せないだろうな』


クワイエット

『だよね~』


クワイエットが言い終わると、唸り声と共に煙がその場から吹き飛ぶ

中からは青い血を流す、蛸頭の者だが・・・青い血か、見たことはない

生き物は全て赤い血が流れるんだよ


青い血なんて見たことがない


???

『貴様ら…少々調子にノッタようだな』


アカツキ

『どうする?やるか!?』


俺は刀に力を入れ、いつでも飛び込めるようにした

しかし、奴は森を見渡しながらため息を漏らし、不貞腐れた顔を浮かべて言い放った


???

『盤面ガ悪くなりそうだ、ここは退こうか』


リゲル

『帰り道を教えようか?』


???

『黙れ、俺の時代にお前がいたら即刻首を刎ねていただろうな…。唾を吐く言葉、決して忘れぬぞ若造が!!!力は時代を作る、権力は人を鈍らせる!』


奴は苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべ、その場から素早く撤退した

俺はホッとし、その場に腰をおろす

それは誰もが同じ、疲労困憊だったためにみんな地面が濡れててもお構いなしに座ったんだ


リゲル

『最後の言葉、聞き覚えあるぞ』


クワイエット

『聞いたことあるよね』


彼らはそういった会話をしていた

俺は2人に近づくが、同時に彼らは直ぐに立ち上がると俺に背を向けて離れた


リゲル

『生き残るために利用した、まぁそれくらい動けてもらわんと困る』


クワイエット

『ねぇリゲル…』


リゲル

『黙ってろクワイエット。まぁ今回は逃がす…恩に着ろ』


彼らは逃げるようにしてその場から去っていった

しかしだ、助かったのは言うまでもない


《…いや他人の空似かもしれん》


『どうした?昔の知り合いか』


《…違ってほいいが、今は言えねぇ》


それなら仕方がない

だけどもリゲルとクワイエットは聞いたことがある言葉を聞いたと口にしていた

奴の正体とはいったい何者なのか…さっぱりだ


ティア

『先ずは帰ろっか…、ティアマト君の新しい技?さっきの』


ティアマト

『へっへっへ!見せてやんよティアちゃん』


彼はステータスを表示すると、全員がそれを見に起き上がって近づいた

称号ゲットにそれはもうみんな驚いたよ、俺はまだか…いいなぁ…


リリディ

『熊らしい名前の称号ですね、バトラー』


ティアマト

『あぁん?食ってやろうか?』


ティア

『まぁた始まった』


リュウグウ

『止めなくていいだろうな』


『ミャー』


ティアも、リリディもティアマトも称号を獲得できた

リュウグウは持っているのかはわからない、多分ない筈だ…仲間だ!

俺もそのうち手に入れないと不味い


一同は魔物と極力戦闘を避け、雨の中、森を出ることにした

雨の日にリザードマンは現れやすいから来たものの、とんでもないことになったな


俺はクワイエットから貰った特殊な実で魔力が回復したのだが、それは先ほどの戦いで使い果たした

数回程度しか回復しないんだ

俺は立ち上がり、少しふらつくとティアが手を差し伸べる


ティア

『大丈夫?』


アカツキ

『ああ、大丈夫だ』


リュウグウ

『大変だったのはわかるが早くここを出よう』


ティアマト

『なら出るか』


俺達は直ぐに歩き出し、森の中を歩いた

当然魔物も現れた、しかしそれは一番動けるリリディがゴブリンやハイゴブリン、そして棘巻トカゲなどを木製スタッフで叩き飛ばしていく


彼の動きを見ると、納得いくことがある

技や魔法を駆使して魔物を倒しているのに、リリディは魔力が尽きることを知らない

毎日の日課は黙想、それが活かされているというのか?


魔力の最大値を底上げするには黙想しかない、そんな迷信があった

それを誰もが試したが体感で感じることはあまりなかったとも聞いている

しかし、彼は黙想を毎日欠かさずやり遂げたからこそなのだろうか


元々はハイムヴェルトさんの血を色濃く受け継いでいる可能性もある

というか誰が黙想すれば魔力の最大値があがると誰が言い出したのか、わからない


リリディ

『賢者バスター!』


キングゴブリンですら、彼のフルスイングした攻撃になす術がなく顔面を殴られて吹き飛び、後方の木にぶつかる

首の骨が折れる音が聞こえたし、一撃だろうな


リリディは魔石を回収し、後方から飛び込んでくるゴブリンに顔を向けるが

それはギルハルドが彼の前に立ちはだかり、斬り裂いて倒した


リリディ

『偉いぞギルハルド』


『ミャー』


主従関係は良好らしい


ティア

『リリディ君の魔力、凄いよね』


彼女は俺の耳元でそう囁いた


アカツキ

『だよな、シュツルムとか見た感じかなりの魔力量を使ってるはずなんだがな』


ティア

『凄い魔法使いになるかもね』


アカツキ

『なってもらわないと困るけどな、俺も強くならないと』


ティア

『アカツキ君ならなれるなれる』


彼女はニコニコしながら俺の頬をプニプニ掴む

心地よい、良い時間だと思っていると、リュウグウは目を細めてこちらを見ていた



怖い顔だ

変態と次に言われる顔をしている

そろそろ慣れてきた


『変態が』


ほら、言った



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