第77話 最強の頼み事
俺達は早めにギルドに行くと、溜まっていた魔石を受付カウンターに置いた
かなりてんこ盛りであり、受付嬢は苦笑いしながら『少々お待ちください』と告げて奥に走っていく
1人じゃ査定しきれないのだろう、近くの丸テーブルを囲んで椅子に座って待つことにした
ほら、奥から職員連れてきて2人で査定してるよ
その様子を眺めていると、席を外していたリリディが戻ってくる
リリディ
『5人分の飲み物注文してきました』
リュウグウ
『センスが問われるぞメガネ、何を頼んだ』
リリディ
『バナナジュース5つ』
リュウグウ
『不合格』
リリディ
『人に頼むんですから予想通りの結果は来ませんよ?私の気分でバナナにしたんですから』
リュウグウ
『ぐぬぬぬぬ』
まぁなんでもいいと言ったリュウグウが悪いだろう
飲みたいものがあれば彼の伝えておけば良かったのになぁ
ティアマトがジッと依頼版を見ているけどもこっから見えるのか?
ティアマト
『リザードマン2体の討伐があるな』
アカツキ
『目が良いな』
ティアマト
『鍛えてるからな』
う~む…そうなのか
数分後、受付嬢に呼ばれて俺はティアと共に受付に向かった
かなりの額になって俺は驚いた、無縁墓地カタコンペルで逃げ回っていたとはいえ、それなりに回収はしていたんだ
安くても量が多い
金貨15枚に銀貨3枚そして銅貨9枚だ
冒険運用資金にしよう
今日はやたらと人が多い
普通は森に出かけているんだけども可笑しいな
それを口にすると、リリディが答えたんだ
もうすぐ台風が来るからだろうってね
確かに天気が荒れるって話は以前していたが、そろそろくるのか
また宿に引きこもる日がくるかもな
アカツキ
『マグナ国に戻るまで半月越えたが、なんだか辛いな』
リリディ
『当たり前ですよ、普通にドロップしないんですからね』
アカツキ
『一応聖騎士連中に応戦出来るくらいにはなりたいな、スピードとか動体視力は大事だろうと俺は思う』
リュウグウ
『技のレベル上げよりも基本的な身体能力は大事ね、それをメインに行くべきよ』
ティアマト
『だな、3ありゃ聖騎士と五分にいけるか』
アカツキ
『だろうけどさ、基準がわからない…他の冒険者はどの程度なのか、聖騎士もだ』
まったく自分たちの位置が掴めない
それは皆も同じだ、唸り声を上げて悩んでいると、近くの冒険者の会話を耳にする
『マジでスキル落ちないな』
『斬擊強化も3ありゃCランクも安定するらしいがな』
『まぁその上となるとヤバいよな、技スキルが3以上ないとBにろくなダメージを与えれん』
『3の壁か、大きいぜ』
ティア
『案外、私達のステータス高いんじゃ…』
リュウグウ
『どう思う?アカツキ』
アカツキ
『かもしれない、もっと自身を持つべきかもな』
戦い方の問題だろうと思う
俺達は急速にステータスだけ上がってるから経験が追い付いてないって事か
納得がいくな…
すると、ロビー内の冒険者がざわついた
何事かと思い、入口に目を向けると鬼刀のザントマさんが刀を担いで歩いてきたのだ
受付嬢の表情も固い、ビビッてるな…
ザントマさんは遠くから俺達を見つけると、来いと手招いてからギルドを出ようとする
アカツキ
『行こう』
全員が立ち上がり、ギルドを後にする
するとザントマさんは赤騎馬ブルドンの頭を撫でてじゃれていたんだ。
彼女もブルドンに気に入られたのかな?
『ヒヒン!』
ブルドン、ご機嫌である
ザントマ
『南の森は植物が多い、ラフレコドラを倒しに行くわよ』
アカツキ
『わかりました。』
ザントマ
『目当てのスキルを手に入れたら私はその場で退散するから安心しなさい、貴方達の時間もあるでしょうし』
気を使ってくれるらしい
もし安眠スキルが手に入ったら、彼女はまた会うことになるかもねと意味ありげに告げる
今はそれに関して深く詮索しないでおこう
森まで1時間かけて辿り着くと
ザントマさんは真っ直ぐ森の中に入る
俺達も彼女を追いかけていく、空は少し怪しい雲行きであり、夕方には降りそうだ
リュウグウ
『風が少し強いな』
ティア
『台風シーズンきちゃうからね、急ごっ』
獣道をザントマは刀で枝木を切り裂き、歩きやすくしてくれるからありがたい
魔物の気配があると、彼女は興味がないらしいので俺達に譲るのも助かる
『ドルル!』
ザントマ
『トロールよ、いらないわ』
彼女は近くの木にもたれ掛かり、休み始めた
鉄鞭を振り回して襲いかかるトロールに走り出そうとすると、ティアとリュウグウが我先にと飛び出した
明らかに俺は出遅れたようだな…
《まぁ任せときな》
トロールは迫るティアに鉄鞭を振り下ろす
だがしかし、彼女は軽く避けると黄色い魔方陣を伸ばした手の先に発生させ、ショックを、放つ
雷弾を胴体で受けたトロールは1発で麻痺してしまい、硬直してしまう
リュウグウ
『終わりだ』
彼女は技を使わず、胸部に槍をひと突きしてトロールを倒す
『トロロ…』
前のめりに倒れるトロールを眺めながら槍を回してから肩に担いだリュウグウは『どうだ?』と言わんばかりの顔をザントマに向ける
でもザントマさん、木の枝に止まる鳥を見てる
リュウグウ
『……』
ティア
『リュウグウちゃん、良かったよ?』
リュウグウ
『助かる』
少し進み、ザントマは急に俺達に体を向けると、奥に指を指して口を開いたのだ
あっちだ、頼むぞ!と
いる魔物がわかるのかと半信半疑で向かった先には花畑
そしてその中心にはラフレコドラがいたのだ
魔物Dランクの寄生植物種
寄生された大きな亀は白目を向いており、甲羅には大きな花びらが咲いている。
その花の根は甲羅のヒビから伸びているようだ
花びらからは蛇の頭部のような触手が4本こちらを睨んでいる
リリディ
『少し大きいですね?全長1メートル半ってとこでしょうか』
ザントマ
『大きくても小さくても雑魚は雑魚だ、頼むわよ』
アカツキ
『わかりました』
《しゃあねぇ、布石作るか》
テラ・トーヴァが何やら企んでる
俺はラフレコドラが動きが遅いこと、そして火に弱いのをいいことに開幕から開闢を使った
強く刀を鞘に納め、金属音を響かせる
そうすることで鞘から黒い煙が吹き出し、その中から仮面騎士が熱を帯びた刀を手に現れる
ザントマ
『!?』
彼女は驚いていた
面頬で顔が見えなくても、わかる
ラフレコドラは避けることなく、仮面騎士に両断されると激しく燃えていく
一撃だ、炎の中でラフレコドラは絶命し、発光する魔石が出てきた
ザントマは急いで魔石を回収しようと向かうと、仮面騎士は横に手を伸ばして彼女を止める
『女、戦争止めたければこいつを守れ』
ザントマ
『貴様っ!口を…』
『わかるはずだ、見た以上は知らぬ顔は出来ん…お前も今日からこちら側…逃げることは許さん』
それを言い残し、テラ・トーヴァは消えていった
ザントマは刀で発光する魔石を炎の中から転がして足元まで持ってくると、しゃがみこんでから魔石を掴んで光を体に吸収し始める
熱くないのだろうか
スキル回収を終えたザントマは刀を鞘に戻し、腕を組んでから口を開く
ザントマ
『このスキル、なんなのか知っているの?』
アカツキ
『それは…』
俺は彼女に手に入れた所から聖騎士に追われている所まで全て話した
その間、ティアマトやリリディが近づく魔物を片っ端から倒してくれている
花畑で腰をおろし、一通り話すと、ザントマは溜め息を漏らしてから口を開く
ザントマ
『私はマグナ国の王族よりもそのスキルを知っている』
アカツキ
『何故です?これは一体…』
ザントマ
『まぁそれを手に入れた時点で君の選択肢は決まってるわ、死ぬか生きるか』
大雑把過ぎる
だがこの人はスキルに詳しいならば色々聞けるかもしれない
俺はこれは何なのか聞こうと質問をした、しかし彼女は答えなかった
ザントマ
『明日には私はここを出る、知りたくば王都シンラバンショウに来れば教えて上げるわ』
アカツキ
『かなり遠いですね』
ザントマ
『1度マグナに戻るんでしょう?その後でいいわ』
彼女はそう告げると、茂みから急に飛び込んできたゴブリンをビンタして吹き飛ばし、その場を去ろうとする
ザントマ
『マグナ国はそのスキルを戦争の道具にするわ、ガンテアとの戦争の続きをする筈…あれはどんな内容だったかわからないでしょ?』
アカツキ
『領土問題点と聞いてます』
彼女は振り返り、話し出した
ザントマ
『違うわ、マグナ国がガンテアを吸収するために仕掛けた戦争よ、。マグナ国はどの国よりも戦争貴族が多い…別の方面で国の財を賄うために他国を落としてガンテアの特産品である多種な果物の産業を始めたかったの。まぁ同時にガンテアとマグナの国境沿いにある巨大な山脈に住んでいる龍が持つスキル、貴方が持つ開闢もついでにって感じね…でも今は違う』
アカツキ
『違う?』
ザントマ
『状況が変わったの、新しい産業を産み出すための戦争よりも…殺されないために貴方のスキルが欲しいのよ』
彼女はそこまで話すと、背を向けて姿を消した
リリディ
『ロイヤルフラッシュ聖騎士長は独断で使いたい意思があるのはわかります。しかしマグナ国の王族は別の意味、殺されたくないから開闢スキルが欲しいと?』
ティア
『ザントマさんの言い方だと、当初は新産業目的であり、山の龍が持つ貴重なスキルは二の次で考えてたようだけど』
リュウグウ
『逆転したな』
アカツキ
『奪宝龍ゼペットが持っていたこのスキルか、それが今じゃ最優先…か、誰に殺されないためだ?国で王族を守れば大丈夫じゃないか?』
ティアマト
『俺もそう思うぜ?王族殺しに王都コスタリカに単機で行く馬鹿なんでいねぇだろ?』
腑に落ちない
何かを俺達は見落としている
数秒考えたのち、ティアが予想を口にした
ティア
『王族に恨み?…初代五傑で一番強いのは確か…』
アカツキ
『世界騎士イグニスだ』
ジェスタードさんから聞いた話にそれがあった
五傑の四人で飛びかかっても勝てなかったと言われる程の人間離れした強さだったとな…
アカツキ
『単機で王都を落とすとなると、なるほど…世界騎士イグニスが出来そうって訳か』
ティア
『予想だよ?今なにが起きてるかは帰ればわかるはず』
彼女の言う通りだ
帰るまではステータス強化に専念しよう
花畑を出ようとして俺は歩き出した
すると予想外な出来事が起きる
茂みの中から大きな魔物が飛びかかってきたのだ
気配感知が反応しなかった、それは隠密スキル持ちの魔物だと言うことの証明でもあり
アカツキ
『なっ!?』
初めて遭遇する魔物、それはCランク
ニャン太九郎という1メートルもある白い猫だ
爪は長く、耳も普通の猫より伸びている
武器は両前足の爪を使った攻撃だ。
あだ名はニャン太クロー、腕にはめる爪の武器に由来してだって聞いたことがある
誰だ考えた奴
こいつは隠密スキルを保有しているため、俺達は接近に気づかなかった
意表をつかれたんだよ
だけど奴が狙ってきたのは俺、それは運が悪い
飛び込みながら突きだすニャン太九郎の攻撃を避けた
避けたはずなのに俺の頬には切り傷が付く、それには驚いたよ
『ニャッ!』
奴は地面に着地すると、間髪入れずに俺に突っ込んでくる
横からティアマトの片手斧が奴の攻撃を阻止すると、金属音を響かせてからニャン太九郎は飛び退いた
ティア
『ショック!』
彼女の雷弾はニャン太九郎には当たらなかった、リュウグウの槍もリリディのスタッフもだ
動きが速すぎるからだろう
ティアマト
『ぐはっ!』
ティアマトは攻撃したとき、懐に飛び込んできたニャン太九郎に腹部を切り裂かれる
耐久力強化があったおかげでそこまで深くはない
奴は花畑の外側の木々を蹴って移動し、俺達を翻弄してきた
凄いスピードだ
俺達は円を組み、背中合わせで待ち構える
猫だからって侮れない、俺たちの攻撃は当たらなければ意味はない
ティアマト
『くっそ・・・』
リリディ
『分厚い筋肉で良かったですね』
ティアマト
『次譲ろうか?あぁん!』
ティア
『この状況で喧嘩なの?』
アカツキ
『集中しろ!Cランクだぞ』
ティアマト
『わぁったよ』
ふと地震が起こる、俺達はそれに意識を奪われるとニャン太九郎がその隙に一気に突っ込んできた
狙われているのはリリディ、彼は動体視力強化スキルは無いが、スタッフを盾代わりに前に出すのは間に合った
ニャン太九郎の爪がリリディのスタッフに触れる
リリディ
『ドレインタッチ』
彼はそう呟き、ニャン太九郎の体が発光するとリリディにその光が流れる
驚愕を浮かべるニャン太九郎は直ぐに彼から飛び退いて距離をとる
リリディ
『僕は反応が遅いので攻撃は出来ませんが…』
彼はそう告げると、スタッフを担ぎ、眼鏡を触る
何故か彼の眼鏡が光るのがイラッとする
『シャァァァァ!』
リリディ
『来るなら存分に奪いますよ?いつまで動き回れるんですかね?』
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