第76話 見捨てられた仏編 8 帰還した侍
アカツキ・ライオット
☆アビリティースキル
スピード強化【Le3】
気配感知 【Le2】
動体視力強化【Le3】
斬撃強化 【Le3】
☆技スキル
龍・開闢 【Le2】
刀界 【Le1】New
居合突 【Le2】
光速斬 【Le2】
地斬鉄 【Le1】
☆魔法スキル
称号
・・・・・・・・・
リリディ・ルーゼット
☆アビリティースキル
打撃強化【Le3】
気配感知【Le3】
麻痺耐性【Le3】
スピード強化【Le2】
☆技スキル
ドレインタッチ【Le3】
爆打 【Le2】
骨砕き 【Le1】
☆魔法スキル
風・突風 【Le2】
風・カッター 【Le2】
黒・ペイン 【Le1】
黒・シュツルム【Le3】
黒・チェーンデストラクション【Le2】up↑
称号
リトル・クルーガー【黒】
☆称号スキル
毒耐性【Le1】
動体視力強化【Le1】
・・・・・・・・・・・
ティアマト・ウロボリス
☆アビリティースキル
斬撃強化 【Le2】
気配感知 【Le2】
毒耐性 【Le4】
耐久力強化【Le2】
動体視力強化【Le2】
スピード強化【Le2】
☆技スキル
連続斬り【Le3】
真空斬 【Le1】
鬼無双 【Le2】
☆魔法スキル
称号
・・・・・・・・
ティア・ヴァレンタイン
☆アビリティースキル
安眠 【Le1】
気配感知【Le3】
麻痺耐性【Le1】
動体視力強化【Le1】
スピード強化【Le2】
☆技スキル
☆魔法スキル
火・ラビットファイアー【Le3】
雷・ショック【Le4】up↑
木・スリープ【Le2】
風・ケア 【Le2】up↑
称号
パナ・プレイヤー
☆称号スキル
デバフ強化 【Le1】
自然治癒 【Le1】
スピード強化【Le1】
・・・・・・
魔物表
A闘獣 金欲のアヴァロン(妖魔羊)、睡欲のモグラント(土駆龍)
A
B デュラハン、将軍猪、閻魔蠍、鬼ヒヨケ、女帝蜂、ミノタウロス
C ブラック・クズリ、トロール、ファングマン、侍ゾンビ
パペット・ハンマー、リザードマン、鉄鳥、マグマント
剣蜂、キラービー(単体D/集団のみC)、般若蠍、ベロヌェルカ
ロゴーレム
D キングゴブリン、グランドパンサー、ゴーレム、ラフレコドラ、ケサラン
ソード・マンティス、黒猪、グレイバット、鎧蛇、棘巻トカゲ
リッパー、ゲロックロ、ハンドリーパー
E コロール、エアウルフ、ハイゴブリン、エレメンタル各種
パペットナイト。ボロゴーレム、棘蜂、グール、グリーンマンティス
ゲコ(ヤモリ)、闇蠍、格闘猿(エド国)
F ゴブリン、ディノスライム、格闘猿、ゾンビナイト、風鳥
ゴースト、ウッドマン、ビリビリフラワー、眠花蜘蛛
角鼠、カナブーン ゾンビナイト、赤猪、棘鴉、オオダンゴ
ギョロギョロ
・・・・・・・・・・
俺達は入り口までもう少しというところで待ち構えていたゾンビナイトやグール、そしてリッパーやゾンビ犬に囲まれてしまう
魔物ランクD以下のオンパレード、俺は我先にと敵に突っ込んだ
アカツキ
『必要な敵だけを倒していく!』
ティアマト
『おうよ!』
おぞましい呻き声を口から発するゾンビナイトはゾンビ犬と共に襲い掛かってくる
刀で薙ぎ払い、ゾンビナイト2体の首を一気に跳ね飛ばすと、飛び込んできたゾンビ犬を回し蹴りで吹き飛ばす
『キャイン!』
ティアマト
『真空斬!』
彼は片手斧を振り、斬撃を飛ばす
丁度飛び込んできたリッパーは避けることが出来ずに真空斬によって両断され、その勢いは直線状後方にいたゾンビナイトを巻き込む
ティア
『そいっ!』
彼女は姿に似合わず、グールの噛みつきを避けると真横から蹴って転倒させ、ゾンビナイトにラビットファイアーを放って3体同時に燃やす
リュウグウ
『この雑魚共が!』
彼女はリリディの突風でバランスを崩した数体のゾンビナイトやリッパーに向かって突っ込むと、素早く頭部を狙って槍で突き刺していく
ティアマトが片手斧を振り回して正面にいるゾンビナイトを蹴散らし、道を開けるとすぐに俺たちは走った
ティア
『いやぁぁぁぁぁぁ!』
彼女が後ろを見てしまう、見たらダメだ
波のようにアンデット種の魔物が追いかけてきているんだからな…
濃い霧の中にはたくさんの黒い影、姿を現しているだけでもかなりの数である
リリディ
『アカツキさん!どうしますか!?入り口は開いているとは思えません!』
アカツキ
『だよなぁ…』
どうしようかと悩んでいると、誰のでもない声が聞こえたのだ
『伏せなさい!』
頭で考えるより、体がそうさせた
飛び込むように伏せながら正面に顔を向ける
そこにはあの鬼刀ザントマが鞘から刀を僅かに出して仁王立ちしていた
『ヒヒーン!』
赤騎馬ブルドンは伏せることなく、ザントマの頭上を飛び越えた
それを合図にザントマは鞘に力強く刀を押し込み、金属音を響かせると小さく囁いた
『刀界』
伏せている俺たちの頭上を強烈な衝撃波、そして数多くの斬撃が通過していった
その衝撃波に巻き込まれた魔物はその場で切り刻まれ、砕け散り、倒れていく
かなりの数のアンデットの半数をその技だけで倒してのけたんだ…
リリディ
『馬鹿な…』
ありえない、そう誰もが思いたい
威力もそうだが…範囲も凄いよ
遥か後方まで衝撃波が届いていたのだろう
呻き声も先ほどよりもマシにはなるが、まだ無数の魔物がいる
『キュキュー!』
起き上がると同時にハンドリッパーが沢山襲い掛かってきたよ
先ほどの広範囲の技に同種が巻き込まれたからだろうな
俺はハンドリッパーの折りたたまれた腕が伸びてくると、それを斬ってから胴体を斬り裂いた
かなりの数だが強くはない、両腕の鋏も小さいから致命傷にはならない
『アアアア!』
アカツキ
『おっと!』
珍しくゾンビナイトが技スキルを使ってきた、連続斬りだ
素早い剣の連撃を、俺は後ろに下がって避けると直ぐにゾンビナイトの懐に潜り込んでから縦にを両断して倒す
リリディ
『賢者バスター!』
彼は木製スタッフをフルスイングし、ゾンビ犬を吹き飛ばすとグールにぶつけて転倒させた
『キキッ!』
途端の彼の横から別のリッパーだ
リリディ
『遅い!』
リッパーの両爪の突きを避け、スタッフを奴の頭部に振り下ろしながら『ドレインタッチ』と叫ぶ
ゴツン!と鈍い音が鳴り響くとリッパーの体が発光し、その光がリリディに流れていく
体力の吸収だ、あの技は便利だろうな
魔物も徐々に少なくなり、ようやく最後の1体であるグールをティアがショックを当てて一撃で麻痺させる
その隙にリュウグウが素早く胸部と頭部を素早く貫いて倒しきる
ようやく静かになり、俺は先ほど食べたホットドックが口から出そうになる
酷い息切れだ、リュウグウとティアマトがその場に倒れこむように腰を下ろすのをみると、俺だけじゃないんだなと思える
リリディはドレインタッチを使いながら戦っていたので一番涼しそうな顔をしているのが羨ましい
彼は体力あまりないから短所を補える技スキルともいえよう
『ヒヒン!』
ブルドンがティアに近づき、頭を甘噛みして遊んでいる
彼女はニコニコしながら戯れるが、肩で息をしているティアも疲れてるだろうな
ザントマ
『面白い奴と戦ってたわね』
アカツキ
『何してたんですか?』
ザントマ
『ここで待っていた、野暮用があったのよ』
なるほど、だが当初の予定は入場許可だから別に構いはしない
リリディが変わりに魔石を回収しているが、1つ発光しているのが見える
疲れすぎて大した反応が出来ない
リリディ
『気配感知です、どうぞ』
彼はそれをリュウグウに渡すと『報酬』と告げる
リュウグウは口元に笑みを浮かべ、光を体に吸収していく
その間、みんなが水筒の栄養水をがぶ飲みして地面に座り込んだ
それにはザントマが苦言を口にする
ザントマ
『こんな場所で休憩とは悪趣味な奴ね、さっさと出るわよ』
アカツキ
『1つ聞いていいですか?』
俺は立ち上がりながら彼女に話しかける
ザントマ
『何?告白?』
アカツキ
『昔この場所で消息不明の者っていますか?』
ザントマ
『沢山いるわよ?死体を回収できなかった者はいくらでもいるわ』
アカツキ
『その中に奥さんがエレーヌという名前の者は?』
ザントマは雰囲気を変えた
面頬で顔は見えなくても、それはわかる
彼女は俺に背を向けると入り口に歩きながら答えたのだ
明日の午前中に入り口にくればわかる、と
何故なのかはわからない
全員でザントマさんの後ろについて行って入り口まで辿り着くと俺たちは外に出ることが出来た
生還してきたことに侍騎士たちは驚愕を浮かべ、地面に腰を下ろす俺たちを見て口を開いていた
侍騎士A
『あり得ん…戻る者がいたのか、ザントマならまだしも』
侍騎士B
『中は地獄だぞ?何故帰ってくれた』
帰ってこないと完全に思われていたのだ
それには苦笑いしか出ない
時刻は24時を丁度回った…ここからでも墓地から僅かに呻き声が聞こえる
ザントマ
『約束だ、明日ギルドにて待つ…午後にな』
彼女は俺の耳元で囁くように口を開くと、背を向けて去っていった
《気を使ったなあいつ?やるじゃねぇか・・・なぁ兄弟?》
アカツキ
『え?』
《頼むぜ兄弟…午前にここに来れば侍ゾンビの謎が解けるんだろ?》
あぁそういうことか!
俺は疲れ果てた顔のまま、ティアに手を差し伸べると彼女は疲れているのに笑顔で俺の手を取り、立ちあがる
ティア
『来るんだよね、ここに』
アカツキ
『そうだ、皆も真っすぐ帰ろう…』
ティアマト
『疲れすぎて死にそうだ、あんなアンデットの接待なんざ御免だぜ』
リリディ
『ずっと気を張ってて心が疲れる…』
リュウグウ
『まぁ楽しかったわね』
リリディ
『正気ですか?』
そのツッコミに俺はティアと共に笑った
宿屋に真っすぐ向かい、ブルドンを馬小屋に預けてから宿屋の入り口をノックする
すると真っ暗だったロビーに灯りがつくのが曇りガラスでハッキリとわかった
鍵を開けてもらい、顔を出したのはフロントマンの人だ
彼には自前に話していたんだ
入り口は23時には締めるらしいが、今日は俺たちの夜の依頼があるから遅くなるってね
金貨1枚を渡すと嬉しそうな顔をしながら『お任せください!』と自信満々に言い放っていたのを思い出す
フロントマン
『おかえりなさいませ、間食も用意しときましたが休憩所スペースでお願いします』
彼は俺たちを中に入れながらそう話す
残念だが風呂は今まだぬるいらしい…装置をつけるのが遅れてしまったからまだお湯じゃないんだって
それでもいいとリュウグウは即答する、よほど入りたいようだ
全員が一度泊まっている部屋に戻り、浴衣を持って風呂で汗を流してから浴衣に着替え、装備類を全てフロントに置いた
明日の朝までに夜勤の人が洗濯してくれるってさ
助かるので銀貨4枚追加すると『毎度っ!』と目を光らせていた
汗でくっつく感覚もない、浴衣が心地よい
俺達は休憩所スペースに座ると、フロントマンがフロント裏から紙袋一杯のおにぎりとカツサンドをテーブルに置いた
フロントマン
『お疲れ様です、今もう一人に夜勤の者が皆様の装備類を朝までに間に合わせるために洗濯から乾燥まで動いておりますのでご安心を、それでは明日の8時には朝食になりますので1階連絡通路から軽食屋においでください』
アカツキ
『助かったよ、我儘いってすみません』
ティアマト
『悪ぃな、ほらよ…銀貨2枚』
リリディ
『今日はお手数かけました、僕も銀貨2枚』
なんだかそんな流れに勝手になり、ティアとリュウグウもフロントマンにチップを渡す
彼は今までにはない幸せそうな顔を浮かべ、フロントに戻っていく
紙袋からカツサンドを取り出し、静かに頂きますと口にして食べると、美味しい
冷めているのに美味しいのは頑張ってきたからだと思う
《まぁ今日は休みな兄弟…、俺もいいもん食えたがまだまだ足りねぇ》
アカツキ
『お前もお疲れ、休め』
《そうするわ》
数分で食料を平らげ、仲間は直ぐに部屋に戻っていく
ティアは残って水筒の水をチビチビ飲んでいる
俺はふと眠くなり、欠伸をすると彼女にもそれがうつる
彼女は照れくさそうに笑う
ティア
『うつっちゃったね』
アカツキ
『疲れてるだろう?早く休んだほうがいいぞ』
ティア
『そうだね、アカツキ君の怪我は大丈夫?』
アカツキ
『俺は大丈夫さ、みんな頑張ったな…』
ティア
『だね』
彼女は休憩所スペースから窓を眺めた
やけに居心地がいい、このまま椅子で寝ても良さそうだ
一息つき、テーブルを挟んで対面しているティアに視線を向ける
彼女は視線をこちらに戻すと、僅かに微笑んだ
ティア
『アカツキ君はリーダっぽくなってきてる感じするね』
アカツキ
『そうか?』
ティア
『うん!恰好良いと思うよ』
少し照れくさい
頭を掻いて誤魔化し、俺は寝ると告げると彼女も立ち上がった
2人でフロント横の階段を上って2階に向かおうとすると彼女は疲れからなのか、階段に足を取られて前のめりに倒れそうになった
俺は素早く彼女を支えようと手を伸ばした
彼女は倒れずに済んだ、しかし手に幸せを感じる幸せな感触がある
おっぱい
ティア
『ふぁ…』
アカツキ
『これは…』
俺は咳ばらいをしながらも彼女を起こして手を放す
両手で胸を隠して赤くなる彼女は可愛い
ありがとうございました
ティア
『えっち…』
アカツキ
『これは…その…』
ティア
『別に大丈夫だよ』
俺は首を傾げると、彼女は顔を真っ赤にしたまま廊下を走って答えた
俺は深呼吸をしてから去っていく彼女の背中に何故か一礼した
度胸さえあれば…俺は大人になれるのに…くそぅ
肩を落としながらも自分の部屋に戻り、俺はそのまま布団に滑り込むようにして横になる
時間を見ると2時だ
深い溜息を漏らし、先ほどの手の感触を思い出す
『Dは絶対ある』
俺はそう告げると、直ぐに寝てしまった
次の日、朝食を食べてから洗濯が完了した装備をフロントマンに受け取り、部屋で着替えてから俺達は無縁墓地カタコンペルの入り口へと足を運んだ
まだ少し眠い、ティアマトが欠伸をしているから彼もだと思う
1時間かけて無縁墓地カタコンペルの入り口に辿り着くと、昨夜とは違った光景はあった
鉄柵の大きな扉の前に花を置いて祈りを捧げる人々がいる
その場を監視している侍騎士は止めることなく、見守っていた
ティア
『きっと昔に戻らなかった騎士や冒険者の家族かな…』
アカツキ
『そうかもしれない』
数十人もいる、大人から子供までだ
俺は近くの侍騎士に声をかけると、彼らが誰なのか話してくれた
侍騎士C
『30年前の墓地崩壊で死んだり消息を絶った冒険者や侍騎士の遺族だ、撤退指示でもアンデットの波に飲まれたんだ、まだ遺体の回収すらできていない者もいる』
そういうことか
火葬場の床が抜け、アンデットが湧き出した際に討伐部隊が編成された
それでもあまりの数に撤退を余儀なくされ、そこで逃げ遅れた者の遺族がここにいるということだ
遺族は手を合わせ、鉄柵の向こうに黙祷をしている様子を見ながらも俺は背後から彼らに近づく
アカツキ
『エレーヌさんはいますか?』
俺の声に誰も反応しようとしない
違ったかと思い、俺は後ろで待つ仲間たちの元に戻ろうとすると、黙祷していた1人の女性が立ち上がって声をかけてきた
エレーヌ
『私です』
40代半ばか…彼女は悲しそうな顔を浮かべたまま俺に近づくと、会釈をしてくれた
その近くで侍騎士も耳を傾けているが、別にやましいことはない
アカツキ
『確認したいのですが、あなたは何故ここに?』
エレーヌ
『夫がここで消息を絶ったからです、結婚して間もない時でした…』
俺はうつむいて話す彼女の後ろから近づく若い男性に気が付いた
20代後半…かな
アカツキ
『その人の息子ですか?』
エレーヌ
『そうです、妊娠中に夫は緊急事態で招集されてここに来たのです…ですが撤退命令が下されても彼は戻ってきませんでした…間一髪逃れた彼の部下から聞いた話だと、仲間を逃がすためにしんがりを務め、アンデットの波に飲まれたと…』
これ以上話させるのは俺の心が痛い
しかし、俺はそれでも話さないといけない話を彼女にするしかないのだ
アカツキ
『夫の名前はエルトラ・オールソン分隊長ですね』
俺がそれを告げると、彼女は驚いた顔を浮かべる
名前は遺留品の中に彼の名が刻んであった日記帳があったからだ
懐から日記帳とペンダント、そして指輪を取り出し、彼女に渡す
すると興奮した状態でエレーヌは俺の肩を掴んで口を開いたんだ
エレーヌ
『これをどこで!?どこで見つけたんですか!?』
『母さん!落ち着いて…』
エレーヌさんの近くにいた若い男性が口を開いた
彼女はハッとすると落ち着き始める
エレーヌ
『あぁごめんなさいトーリス』
アカツキ
『…俺は昨夜、用事があって無縁墓地カタコンペルの中に入りました』
俺が告げるとエレーヌさんや彼の息子、そして侍騎士たちが驚いたのだ
昨夜の侍騎士と交代したのか、知らない侍騎士だし聞かされてなかったのだろう
アカツキ
『そこで特殊個体の侍ゾンビに出会いました、呻き声が他のアンデットと違いました』
ミレーユ
『・・・話してください』
彼女は静かに言い、顔をうつむかせる
ここまで話せば、きっと彼女は何を言おうとしているかなんとなくわかっている筈だ
それでも俺は言わないといけない
アカツキ
『特殊個体だった侍ゾンビはエレーヌ、カエリタイと口にしてました、その者が身に着けていた品があなたに渡した品です・・・。彼は強かった…何度も死ぬと思いながら戦いました。エレーヌ、愛してる、帰りたい、この思い伝えたい、その言葉をずっと叫びながら襲い掛かってきましたが、きっと生前の一番強い記憶が魔物となっても消えなかったのでしょう』
こういうとき、俺はどうしていいかわからない
彼女はペンダントを開き、中の写真で幸せそうに映る当時を見て泣き崩れたのだ
ミレーユ
『お帰り、エルトラ』
彼女に背を向けた俺は、仲間の元に戻りながら最後の言葉を贈る
アカツキ
『確かに戻しましたよ、エルトラ分隊長さん』
部下を守るために体を張る分隊長か、凄いな…
俺もそんな行動が堂々と出来るようになれるのだろうか
仲間たちの元に戻ると、珍しく赤騎馬のブルドンは俺の頭を甘噛みしてくる
『ヒヒン!』
アカツキ
『終わったよ』
ティア
『よかったね、エルトラさん』
リリディ
『アンデットとなると能力値が低下するらしいですが、生前はもっと強いということですね』
リュウグウ
『恐ろしいな…』
ティアマト
『まぁ隊長さんも家族の元に戻れたって事さ、物に魂が宿るっていうだろ?』
アカツキ
『それは迷信じゃないか?』
リュウグウ
『だが屋敷での一件を考えればあながち間違いじゃないぞアカツキ』
アカツキ
『そうかもな…』
そうかもしれない
俺は仲間たちと共にギルドに向かおうとしてから泣いているエレーヌさんに一礼し、背中を向けた時にそれは起きた
『ありがとう、勇敢な戦士よ』
仲間が驚き、振り返る
しかし声のする方向には声の主は見当たらない、男性の声だった…まて?
声が似てる…まさか、いやそんなはずはない
リリディ
『気のせいでしょうかね、侍ゾンビに声が似てましたよ?』
ティアマト
『俺達疲れてるって言いたいが…お化け見ちゃったしよぉ…』
リュウグウ
『100歩譲って亡霊だとしてもだ、帰れたんだ…問題ないわ』
不可思議な現象なのに、俺はこれでいいのだと感じた
強い侍ゾンビだった
彼の十八番の技は絶対に刀界だったんだなと思うと、それだけでどれほど強かったかが予想できる
アカツキ
『行こう、ギルドに…』
ティア
『うん!』
ティアマト
『なんだかいい事した気分だぜ!』
リリディ
『幸先いいですね、行きましょう』
リュウグウ
『今日も魔物を沢山倒して稼ぐわよ?』
《おいおい!強くなるためだからな兄弟…ったく呑気なチームだぜ》
『ヒヒン!』
《まったくだ、じゃねぇよ!勝手に俺の念術読むな馬っ!》
どうやら赤騎馬のブルドンはテラ・トーヴァの声が聞こえている
なんなんだこの馬…ただの赤騎馬じゃない気がしてきたぞ
俺は仲間を連れてギルドに向かうことにした
見捨てられた仏編 おわり
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