第72話 見捨てられた仏編 4 目的地へ

アカツキ・ライオット


☆アビリティースキル

スピード強化【Le3】

気配感知  【Le2】

動体視力強化【Le3】

斬撃強化  【Le3】up↑


☆技スキル

龍・開闢  【Le2】

居合突   【Le2】

光速斬   【Le2】up↑

地斬鉄   【Le1】


☆魔法スキル


称号

・・・・・・・・・

リリディ・ルーゼット


☆アビリティースキル

打撃強化【Le3】

気配感知【Le3】

麻痺耐性【Le3】

スピード強化【Le2】


☆技スキル

ドレインタッチ【Le3】up↑

爆打  【Le2】

骨砕き 【Le1】


☆魔法スキル

風・突風   【Le2】

風・カッター 【Le2】

黒・ペイン  【Le1】

黒・シュツルム【Le3】

黒・チェーンデストラクション【Le1】


称号

リトル・クルーガー【黒】


☆称号スキル

毒耐性【Le1】

動体視力強化【Le1】


・・・・・・・・・・・

ティアマト・ウロボリス


☆アビリティースキル

斬撃強化 【Le2】 

気配感知 【Le2】

毒耐性  【Le4】

耐久力強化【Le2】

動体視力強化【Le2】

スピード強化【Le2】up↑



☆技スキル

連続斬り【Le3】

真空斬 【Le1】

鬼無双 【Le2】


☆魔法スキル


称号

・・・・・・・・

ティア・ヴァレンタイン


☆アビリティースキル

安眠  【Le1】

気配感知【Le3】

麻痺耐性【Le1】

動体視力強化【Le1】

スピード強化【Le2】


☆技スキル


☆魔法スキル

火・ラビットファイアー【Le3】

雷・ショック【Le4】up↑

木・スリープ【Le2】

風・ケア  【Le1】


称号

パナ・プレイヤー


☆称号スキル

デバフ強化 【Le1】

自然治癒  【Le1】

スピード強化【Le1】

・・・・・・


魔物表


A闘獣 金欲のアヴァロン(妖魔羊)、睡欲のモグラント(土駆龍)



B 将軍猪、閻魔蠍、鬼ヒヨケ、女帝蜂、ミノタウロス


C ブラック・クズリ、トロール、ファングマン、侍ゾンビ

  パペット・ハンマー、リザードマン、鉄鳥、マグマント

  剣蜂、キラービー(単体D/集団のみC)、般若蠍、ベロヌェルカ

  ロゴーレム


D キングゴブリン、グランドパンサー、ゴーレム、ラフレコドラ、ケサラン

  ソード・マンティス、黒猪、グレイバット、鎧蛇、棘巻トカゲ

  リッパー、ゲロックロ、ハンドリーパー


E コロール、エアウルフ、ハイゴブリン、エレメンタル各種

  パペットナイト。ボロゴーレム、棘蜂、グール、グリーンマンティス

  ゲコ(ヤモリ)、闇蠍、格闘猿(エド国)


F ゴブリン、ディノスライム、格闘猿、ゾンビナイト、風鳥

  ゴースト、ウッドマン、ビリビリフラワー、眠花蜘蛛

角鼠、カナブーン ゾンビナイト、赤猪、棘鴉、オオダンゴ



リリディはお爺さんの話を見逃すことが出来ず、リゲルとクワイエットに近づくと声をかけてしまう


流石の聖騎士2人もあまりの出来事に表情が固まっていた

数秒間の硬直ののち、リゲルが椅子から転げ落ちながら荒げた声を上げる


リゲル

『ばばばばば馬鹿なんでお前がここ・・・に?』


クワイエット

『リゲル、みんないる…これ不味い?』


店員

『水のお代わりはいかがですか?』


クワイエット

『あっ!2人分お願いします』


店員

『かしこまりました』


店員はニコニコしながらも2人の開いたグラスに水を入れている

ようやく落ち着いたリゲルは俺たちを見ながらもの凄い警戒をし、敵意を向けていた

ティアマトは額を抑えて深い溜息を漏らす


誰もが緊張した面持ちの中、リリディだけは真剣だった


リリディ

『教えてください、僕のお爺さんの名はハイムヴェルト・リスタルト。元魔法騎士会の副団長でした』


クワイエット

『あっ!そういえば森の中で!』


リゲル

『んだよお前、今日は俺たちは店じまいだ!あっちけ!見逃してやるから!』


リリディ

『お願いです、何があったか詳しく教えてください…』


どうやら彼はもっと詳しく聞きたいらしい

しかしリゲルは『知らん!』と突っぱねた、飽く迄だが聞いただけだからだろう

当時、リゲルとクワイエットはいなかったのだから


リリディのお爺さんの話でジェスタードさんの話で分かるのは簡潔だったな

当時の魔法騎士長はロットスターだったのだが、彼よりも新しく入団したハイムヴェルトさんが周りから慕われて人気があった、そしてロットスターよりも強かった

うなぎ上りで功績を伸ばし、副団長となったのをロットスターは危機感を感じ、とある事をしたのだ


嘘の調査に向かわせ、魔物に襲わせるというあり得ない行為だ

闇ギルドを使い、凶悪な魔物を使って部下ともども殺す気だったのだ

だけどもハイムヴェルトさんの強さはそれ以上であり、隠していた黒魔法を使って魔物を撃退したのだ


予想外な展開だったが、ロットスターはハイムヴェルトさんが黒魔法持ちと知ると、それを理由に彼を除隊させる手続きを勝手に進め、追い出したのだ

魔法騎士長の座を奪われないためにな


クワイエット

『ハイムヴェルトさんの話は当時彼を慕っていた部下に聞いたほうがいいよ、確かマグナ国の一番東にある街に1人だけ知ってる』


リリディ

『それは誰ですか?』


クワイエット

『名前は知らないけども、魔法騎士会でハイムヴェルトさんが除隊後にやめていった魔法騎士の1人なのは知ってる』


リリディ

『そうですか…ありがとうございます』


リゲル

『おい、話だけで済むと思ってるのか?』


その言葉を言い放った瞬間、俺たちは武器に手を伸ばす

リゲルはそれに気づくと、意外と落ち着いた状態を見せながらも面倒くさそうに椅子に寄りかかり、口を開く


リゲル

『わかったよ、今は俺たちは非番だ…わけもわからない極秘任務なのに休んでいる時まで仕事に追われたくないからな…今日は見逃す』


その言葉に言い返すことは出来ない

こいつは強いからだ、多分まだ勝てない…

ティアは誰よりもリゲルを嫌ってる、彼女の顔は敵として誰よりもリゲルを見ていた


アカツキ

『ティア、我慢しろ』


ティア

『わかってる』


少し機嫌の悪い声だ、居心地が悪いのはわかる…だがここは騒ぎにしたくはない

テラ・トーヴァの溜息が聞こえる、相当こいつも今の状況が嫌いなようだ

まぁ敵だからな、今は非番で助かる


クワイエット

『リゲル、どうする?』


リゲル

『どうするっつっても…一度入った店を何も食わないで出るのは…あれだろ』


リュウグウ

『ならば私たちが出ればいい』


彼女は真剣な顔を浮かべたまま、立ちあがると俺とリリディ以外が同じく立ち上がったティアマトが俺に視線を向け、ニヤリと笑みを浮かべながら懐から金貨を取り出している

支払いはやってくれるらしい、後で返そう


何故か俺とリリディだけが残ってしまった、というか乗り遅れた感が凄い

双方合わせて4人が口を閉じ、気まずい雰囲気だけども、どうすべきか

リリディは立ったまま彼らを見ているし、俺は腕を組んで悩んでいる


リゲル

『一応言っておくが…』


アカツキ

『…?』


リゲル

『お前ら冒険者と俺達聖騎士の思想は違う、魔物と戯れたりなんて出来ない…お前らの思想を俺たちにぶつけるな、魔物を倒し、稼げるなら倒すに越したことはない』


アカツキ

『…』


リゲル

『お前は仲間を守れればいいだろう?俺たちは国を守る聖騎士だ、強くない者の主張など意味などない…。お前らの考えが正しいと思うならば結果がなきゃただの遠吠え、価値はない言葉に向ける耳なんて俺はないね。だからあの時、誰も守れなかったんだろ?』


アカツキ

『お前っ!!』


リゲル

『どうした?こいよ?勝てない癖に感情に揺さぶられるからお前は甘ちゃんなんだよ、だから俺1人に全員ボコボコにされただろ?たとえお前が凄い武器を持っていてもそんなブレブレな心なら怖くないんだよ。やる気がないなら早くどっかいけ!』


俺は刀を抜くのを堪えた

認めたくなくても、認めないといけない点はある、しかし認めれない


《兄弟、こりゃ罠だ…誘ってるだけだ!試されてるのに気づけ!お前がまだ半人前かどうか確認するために挑発したんだぞ!誘われてんじゃねぇ!》


アカツキ

『…リリディ、帰るぞ』


リリディ

『わかりました』


俺はここまでいいようにされたのはもしかしたら初めてかもしれない

今は誰とも会話したくない、そう感じていた

店を出るときの店員の『またのお越しを』がやけに小さい、気を遣わせたらしい


まんまとリゲルにしてやられたか

今あいつに俺は馬鹿にされているだろう、あの時と変わらない…と

悔しいのか?怒ってるのか?この感情は初めてで自分でもどうしていいかわからない


店を出ると、奥の方で3人が心配そうに待っていた

いつの間にか空は真っ暗だ、もう夜か…


リリディ

『アカツキさん、僕らはステータスがいっちょ前になっても…今のままじゃ宝の持ち腐れのようですね』


アカツキ

『そうだが、今は話すな…整理したい』


リリディ

『でしょうね、初めての階段ですからこれだけは認めないといけない言葉がありました』


アカツキ

『なんだ』


リリディ

『僕たちはまだ弱い、だから説得力は無い』


結果を出せ…か

ゼルディムよりも質の悪い奴だな、リゲルは…

だがリリディのいう通り、リゲルの放った言葉はあながち間違いではないからこそムカムカしてしまうよ


壁が出来た、どう強くなる?だ

今の俺には高すぎて見上げることが精いっぱいだ、何も見えないからな


ティアが俺の顔を見て心配そうにしている

ふと近づいてくると、俺の手を握り締めるのだが

それだけでかなり楽になった


ティア

『大丈夫?』


アカツキ

『すまないな、大丈夫だ』


リュウグウ

『反抗期の子供のような顔をしていたぞ?』


なんて顔だ…

俺は苦笑いを浮かべ、誤魔化す


ティアマト

『だが不味い出会いだったな、マジで明日から大丈夫か?』


リリディ

『彼らは居残り組です、後続が来るのはきっともっと先です…リゲルさんとクワイエットさんは監視しか出来ない筈です』


アカツキ

『そうだな、気負いせずに思い切って行動しよう』


ティア

『それが一番だね』


《兄弟、その調子だ…気にしていたら小物だぜ?》


テラ・トーヴァもそういうんだから大丈夫だろうな


その後、俺たちは泊っている宿に戻り、風呂に入ってから各自が部屋に帰る

俺は眠気が来ないから和室の部屋で布団の上で魔物の本を見てゴロゴロしているんだけど…


『リゲル…』


《兄弟、まだあっちが上手だぜ?どんな言葉を言われても平常心でいなけりゃ魔物と戦う冒険者は誰も守れねぇ、怒った魔物ほど単純だろ?》


『そうだな…』


《感情論なんざ混乱状態と同じだ、それは一時の無謀な士気でしかない、冷静にならなきゃ正しさは見えてこないさ》


『やっぱリゲルは強いか』


《それは俺から言うことじゃねぇ、お前はいつか感じることだ…》









少し風に当たるか

俺は宿を出た


時間はまだ21時だし、宿に鍵を掛けられまで時間がある

ドアの隣にあるベンチに座り、呆けた

風があってあまり暑さを感じない、今日は心地良く寝れそうだな


自然と欠伸が出る


《侍ゾンビは結構強いぞ》


『気を付けるよ、単体で現れてくれればいいけど』


《期待はすんな?墓地となりゃ廻りはアンデットだらけ…、だから閉鎖されてるんだろうよ》


『わかった』


良い盤面では戦えない、か

ふと宿のドアが開くので顔を向けてみる

ティアだ、浴衣姿で少しドキッとするが、彼女は俺を見つけるとニコニコしながら隣に座ってきた


近い、少し近付けば体が触れそうだ


ティア

『大丈夫?』


アカツキ

『大丈夫だ、ティアはどうだ?』


ティア

『どうかな…でも我慢したのは良いことだよ』


アカツキ

『そっか…、明日は墓地だな』


ティア

『そだね、無理はしないでね』


アカツキ

『しないと駄目な時はするさ』


ティア

『変わらないね』


微笑む彼女に俺な首を傾げた

なにやら機嫌が良さそうだが理由はわからん

色々考えていると、僅かに雨が降ってくる


宿に戻るまでは雲など無かったのに、今は月すら見えていない

今思えば夜でも蒸し暑い筈が、そうでもない

普通ならとっくの昔に気付いていたのに、降ってから気付いた事に俺は今日の出来事に邪魔されていたらしいな


冷静じゃなかったということだ


《兄弟、風邪ひくぞ》


アカツキ

『テラが風邪ひくぞだってよ、入ろっか』


ティア

『うん』


俺は立ち上がり、自然と彼女に手を差し伸べる

それを彼女は手を取って答えた

慣れている筈なのに手を握った瞬間に少しドキドキするのはなんともいえない


中に入るとロビーには誰もおらず、フロントで宿員がウトウトしてる様子だけ

彼はアッとした表情を見せると、苦笑いしながら口を開いた


『お疲れ様です、朝には止みますので』


アカツキ

『通り雨ですか』


『はい、あと台風シーズンですから今週が終われば大変ですよ?』


来週から台風が来ますよと言わんばかりの言葉だ

その前にリザードマンを討伐して技スキルゲットしないとな


ティア

『休憩所いこっか』


まだ彼女は寝ないらしい

俺は頷き、休憩スペースでテーブルを挟んで彼女と座る

直ぐ近く窓を見ると弱い雨が降っているのがわかる


ティアは背伸びをし、のんびりと窓を眺め始めた


《ティアちゃんはラビットファイアー連発する事になるかもな、墓地にアンデットとなると数は多いが、初めてじゃないだろ?》


アカツキ

『そうだな』


ティア

『テラちゃん?』


アカツキ

『テラがティアはラビットファイアー連発する事になりそうだなってさ』


ティア

『墓地はアンデットの数が凄いもんね、ランタンは私が持つよ』


アカツキ

『助かる』


ランタンもう1つ買っとくか

オイルランタンだけどきっと足りない

彼女が明日の日中にランタンを買いに行こうと告げると、心置き無く頷いてくれた


《追っ手がマイペースなのが不気味だぜ、ロイヤルフラッシュの独断だからこそって証明でもあるからだが…》


アカツキ

『出来るだけ早く動くよ』


《そうしてくれ兄弟、まぁ今日は聖騎士に気づくのが遅れたぜ》


こいつは気づく筈なのに、別の事でも考えてたのかな

まぁいいか

それよりも、だ…


ティアが少し落ち着きがない、俺をチラチラ見ている

しかもモジモジしているのはなんでだろうか?聞いてみるか


アカツキ

『どうした?』


ティア

『明日の買い物ってみんなでいくの?』


アカツキ

『そうだが?』


ティア

『あはは、そうだよね』












《兄弟、お前はチキンだ…しかも食えないチキン》



なんなんだよ!!!!


次の日、俺達は日中を必要な買い出しに時間を使い

18時頃に無縁墓地カタコンペルに辿り着いた


墓地なのに防壁で囲まれ、2つある入口の1つの北口は鉄製の頑丈そうな太い柵の扉となっていた

そしてエド国の侍騎士が8人見える


入口の前に3人、近くの小さな詰所の窓から1人

そして残りの4人は入口横の階段を登った先の防壁の上で墓地内を黙視していた


ティア

『厳重だね』


アカツキ

『なんでこんな厳重なんだ?』


夏の後半、それでもまだ明るい

そのうち日が沈むだろうが、ここで何があったのだろうか

よく見てみると防壁には引っ掻き跡がやたらと目立つ


リリディ

『火葬場の地下がアンデットの巣窟だったらしいです。宿の休憩所の本棚に記録がありました』


リュウグウ

『ほう、話せ』


リリディ

『真夜中に火葬場の一室が崩れ、そこから大量のアンデットが現れたようです。駆け付けた侍騎士や冒険者達が倒しても倒しても数は減らなかった為、閉鎖して立ち入り禁止区域となったんです』


アカツキ

『本当に無縁では無いんだな』


リリディ

『墓参りしたくても行けませんので完全な無縁墓地ではないにしろ、時間が進むと無縁墓地と呼ばれるようになったらしいです。』


ティアマト

『ケッ、可哀想だな』


リリディ

『親族が来れませんからね』


不運な墓地だ

今もアンデットの数は多く、とくに一番奥の火葬場付近はヤバいとの事

侍ゾンビがどこにいるかはわからない


だが早急に見つけ次第、倒すのがいい


侍騎士A

『君たちはなんだ?』


近くで入口を眺めていると、侍騎士が歩みよりながら声をかけてくる

立派な刀を腰に装着しており、スリムな甲冑が格好良い


アカツキ

『入場許可の件で話が来てると思うのですが?』


侍騎士A

『冒険者名は』


アカツキ

『イディオットです』


すると侍騎士は詰所の窓から此方を眺める仲間に顔を向け、拳を数回開いて閉じたりした

何かのサインだとわかる


詰所の窓から見える侍騎士は無表情のまま頷くと、俺達の前にいる侍騎士が溜め息を漏らしてから話し始めた


侍騎士A

『自殺行為にしか思えないが、なぜ上から許可が降りたのかさっぱりだ』


アカツキ

『え?鬼刀ザントマさんではないのですか』


侍騎士A

『それは初耳だ。俺達は上官から来た指示しか聞いてない…。イディオット5名と鬼刀ザントマは今日限り入場許可とな』


よくわからないな、ザントマさん自らではないような感じだ

やはりSランクの冒険者ともあって顔が広く、聡明な貴族に頼み込んだのか、はたまた国の重役に頼んだか


だが入れないという事態はなくなり、一同はホッと胸を撫で下ろす。

俺とティアマトは扉である鉄柵に近寄って中を覗いた

雑草は自由に生えており、道である石のタイル床の隙間からも草が延びている

道も汚く、割れているタイルも目立つ


侍騎士B

『救援は一切出しません、自己責任でお願いいたします』


横の詰所の窓から侍騎士が顔色1つ変えずに口を開く

どうやら騒ぎがあればアンデットを外に出さないために扉は開けれないとの事だ


アカツキ

『アンデットは何が多いですか?』


侍騎士B

『わかりません、中に入る物好きはいませんからね…。まぁ防壁の上からだとたまにグールやゾンビナイトは松明の灯りに誘われて姿を現す時はあります』


アカツキ

『ありがとうございます』


そこまでして入りたくないか

なんだか緊張してきた俺は体がキンキンと響く感覚に陥る

気づけばティアが俺の腕を掴んで、鉄柵扉の隙間から墓地を見ている


『ブルルル!』


アカツキ

『ブルドン、落ち着け』


リリディ

『ブルドンは中の不穏な空気を感じたのかもしれませんね』


ティア

『またお化け……』


リュウグウ

『鉈持った大男とかいないだろうな』


ティアマト

『何来ても倒すだけだが、まぁ多勢に無勢になるのは目に見えてわかる…出来るだけ静かに行こうぜ』


アカツキ

『そうしよう、てかザントマさんは本当にくるのかな』


待っていても一向に来る気配はない

急用でもあって消化してるのだろうかと思いながらも仲間と共に待つ

日が暮れ、夜になると扉の先の墓地の雰囲気が一変したことに気づき、誰もが息を飲む


ティアマト

『まんま呪われてるじゃねぇか』


リュウグウ

『お化け屋敷の依頼とは雰囲気が違うわね』


何故霧のようなものが墓地に漂っている?奥まで見えないぞ?

しかもうめき声の様なのも微かに聞こえるが、そう聞こえるだけなのかもしれない

生え散らかしている雑草ですら日中と違って生気を感じられない


ティアはまた俺にしがみつきながら背中に隠れる、怖いの苦手なんだよな

でもくっつかれると不思議と怖さよりも緊張が勝る


リュウグウ

『変態が…』


アカツキ

『そんな顔に出てなかったろ…』


リュウグウ

『挙動不審過ぎる』


仕方がないだろ…っくそぅ


侍騎士達の顔色も変わり、真剣だ

全員が俺たちに興味を示すことなく墓地に体を向けて警戒をしている


《ザントマが来る気配はねぇ、時間も待っていてもあれだし行くしかねぇと思うぜ?》


アカツキ

『いいのか?』


《約束としては許可だけだ、あいつは協力して戦うなんていってねぇ》


確かにそうだ

俺は仲間たちと話し合うと、答えは直ぐに出たのだ

扉の近くにいる侍騎士に皆で近づくと、俺は開けてもらうように声をかける

その時の侍騎士の顔は気難しそうにも見えた


侍騎士A

『開けろ、彼らが入ったら直ぐに閉めろ』


扉の前の侍騎士が詰所の窓から見える仲間に指示を出すと、鉄柵扉が開き始めたのだ

どういう仕組みなのかはわからないけど、ギギギギと錆びつきを感じさせる不気味な音を響かせる

完全には開かない、人が通れる程度だ


俺は仲間に顔を向けて頷くと我先にと中に入った

1歩踏みしめた時、ただならぬ気配を感じて悪寒と同時に鳥肌が立つ

魔物の気配じゃない、この墓地全体から感じる不気味な何かだ


最後尾のリュウグウが中に入ると、扉は直ぐに閉まり始めた

大きな音なのに見る余裕はない、誰もが墓地の奥に視線を向ける

霧が深く、俺とティアが持つランタンの明かりも霧が邪魔で思うように視界を確保できない


『ヒヒン』


ティア

『ブルドンちゃん、どーどー!』


赤騎馬ブルドンはやたらと落ち着きがない

ティアが首を撫でて落ち着かせていると、リリディは眼鏡を触りながら俺の隣に来る


リリディ

『屋敷以上ですね…』


アカツキ

『そうだな、この呻き声は風の音かな』


リリディ

『そう思うことにしましょう…。行きますか?』


アカツキ

『だな…。みんな、静かに進もう』


俺は自然と声が小さくなっていた、それは口を開く誰もがそうだった


リュウグウ

『スリリングだな、行くわよ』


ティア

『みんな油断しないでね』


ティアマト

『面白ぇ、行こうぜ…』


俺達は、エド国で誰もが足を踏み入れたくないといわれる1つの無縁墓地カタコンペルをゆっくりと進みだした

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