第64話 カマクラでの休息

俺達はずぶ濡れのまま森を抜け、街に戻るとギルドにて換金してから宿に速攻で戻って装備を宿員に預け、風呂に入ってから死んだようにそれぞれが部屋に戻った

怪我はというと森を出る道中でジェスタードさんの糸操り人形であるリライトが回復魔法を施すという予想外な事をしてくれたのである


しかも俺達は完全に傷が癒えた

流石にティアはブルドンの乗りながらも凄い顔で驚いてたよ


んで今は自分の泊まる和室

そこにはジェスタードさんがちゃぶ台で冷たい麦茶を片手に寛いでいる

俺は布団に横になってウトウトだよ


だってかなり疲れたんだ…今日ぐらい許してくれ

誰もが食欲すら感じないくらいに疲弊していたけども何かを口に含まないと駄目だとティアが頬を歩くらまして俺に言って来たのもあり、俺達は宿に戻る際に途中で購入したカツサンドがある


それはちゃぶ台の上に乗っているが…食欲がない、それよりもだ…


《まぁジェスタードって名で呼んでくよ》


『その方が得策かなと思いますデスはい』


《話は全部話した…まぁロイヤルフラッシュの個人的な行動さ、国王はまだ知らない》


テラ・トーヴァは念術でジェスタードさんと話している

念術感知スキルで彼の意志が聞こえるとはとんでもないスキルだなと思いながらも俺は彼らの会話を横に置いた氷の入った冷たい水を飲みながら聞いている


しかし暑い、猛暑日か

ずぶ濡れだったし多少寒いなと感じたけども、普通にしてると凄い暑いよ

氷も半分溶けているから冷たいうちの飲んでおきたい


『まぁフリンガルド国王がまだご健在なのは重々承知デス…。彼は言葉通り国王ですから貴方のスキルの存在が身近にあるとすれば必ずつけ狙うでしょうね』


《だろ?今は聖騎士会と魔法騎士会と敵対したっつぅわけだぜ》


『こちらは回復魔法師会に警備兵会そして冒険者運営委員会の3協会ですか…まずまずですね』


《これ以上は無理さ、まぁ逆に国外だからロイヤルフラッシュ聖騎士長は指示出しやすいんだろうよ》


『それはそうですが彼らの自由が効かないエドの方がやりづらいとは思います。私がいるとすればあの青二才の黒豹は一先ず様子見するでしょう‥‥』


『大丈夫なんですかジェスタードさん』


『大丈夫です、マグナ国の権力が届かないエド国の方が安全ですよ?開闢スキルの存在を国王に知られないままの方が良いですがいつかはバレるでしょう』


その時が来ればどうなるか俺にはわからない

しかし上っ面だけの覚悟だけは少しづつしているつもりだ


『アカツキ殿、開闢で国王がしたいとこは単純です…最強の人間兵器を作る事です』


『人間兵器?』


『当時の五傑4人が束になっても敵わなかった五傑の最強である世界騎士イグニス、彼の様な人間離れした力を持つ騎士を手元に自由自在に置きたいのデスよ…。開闢さえあれば1年足らずで表面上の強さは作れる‥あとは訓練で心を兵器に変えるだけデス』


『本当にそれを実行すると確証があるんですか?』


『そう言っていたのですから本当です。先に見えてくる自分の未来のために1家族を潰すことぐらい王という人間は平気でします。そのような本心そしてロイヤルフラッシュ聖騎士長の間違った正義感に我々五傑の4人はマグナ国の中心から撤退したのです・・・あっ!内情は言いませんよ?それは強くなってからロイヤルフラッシュ聖騎士長を倒してから直接聞いてください』


めんど!!!

だがしかし、10年前のガンテア共和国との戦争にて黒豹ロイヤルフラッシュは何かしたのか

それはいずれ俺達の耳に入る筈だ…今聞きたいが、今がその時じゃないと言わんばかりの良い方だったし聞くのは諦めよう


雨音が強くなり、俺とジェスタードさんは天井を見上げた

屋根が押しつぶされるのではないかと思う程の豪雨、明日は荒れるため、迂闊に外は出れないな


『道化傀儡グリモワルド・グレゴールですか』


『過去の名には興味はありません、しかし自身が培った席を汚したロットスターは少し気に食わなかったデスかねぇ』


その言葉には彼なりのプライドが見える

強い者だけが座る五傑の魔法特化である席に中途半端な者が座った事に多少なりとも嫌悪しているのだろう


桁外れにこの人は強かった…誇りたくなるくらいにだ


ジェスタードさんは静かに立ち上がると、明日は休むべきだと告げてからドアに歩き出した


『わかりました。助けていただきありがとうございます』


『恩を返しただけデス』


彼はそのまま糸操り人形でドアを開けて部屋を出ていった

入れ違いで部屋に入ってきたのは浴衣姿のティアだ

かなりの目の保養になるから安心する


彼女は欠伸をしながら布団で横になる俺の近くに腰をおろす

どうやら眠いのは俺だけじゃないらしいな


ティア

『凄い雨だね』


アカツキ

『雨の音聞くと眠くならない?』


ティア

『それアカツキ君だけだよ』


彼女は笑いながら答えた

するとちゃぶ台の乗っているカツサンドを手に取り、俺に渡してくる

口で言わなくてもわかる、食べておけという事だ

暑いから食欲がわかないわけじゃないが、食べるしかない


俺は仕方なく食べるしかないなと思い、カツサンドを頬張る

食欲が無くとも口に含めば美味しいと感じる、胃に入らないわけじゃない


ティア

『凄い強かったね、ジェスタードさん』


アカツキ

『とんでもない人が近くにいたもんだな…』


ティア

『凄い驚いちゃった』


彼女は苦笑いを顔に浮かべ、頭を掻いている

確かに凄い顔していた、目が飛び出そうだったしな

俺はカツサンドを食べ終わり、上体を起こしてから窓を眺める


それにつられてティアも窓を見ている

豪雨過ぎて笑いたくなる、外がまるで見えないしなぁ


《明日は休め、まぁ1人そうも出来ねぇ野郎はいるけどよ》


『へっ?』


《まぁ気にすんな、あいつもやる気が満ち溢れているんだっつぅことだ》


よくわからない

俺は立ち上がって仲間の様子を見に行こうとしたんだけど…

畳みというこの和室は慣れないと滑ってしまう


『おわっ!?』


ツルンと足を滑らせて転倒してしまうが、ティアに覆いかぶさる形になったのがわざとじゃない

それよりも不味いのは手のついた場所だ

ティアのおっぱいを揉んでいた


不味いと思うよりも何故か光の速さで感謝が頭に浮かんでくる

彼女は顔を真っ赤にしてアワアワし始めると、自然に強く目を閉じるんだが何故そうなった

これは事故だ


一番質が悪いのはきっと俺だ、右手は依然としてティアのおっぱい、柔らかい!

これはCランクか…と思っていると更なる不幸が起きる


リュウグウ

『おいアカツキ、話があ…る…』


ノック無しで入ってくるなよ

ティアは仰向けで、俺は彼女に覆いかぶさったままドアの前に立ちリュウグウに顔を向けていると

いつもの言葉が軽蔑した顔を浮かべて解き放たれた


リュウグウ

『この変態が!!!』


俺はなんでかしらないが、リュウグウに追いかけまわされた

槍を手に持ってるんだから逃げるしかないだろ


《あぁ~あ・・・兄弟が男になると思ったのによぉ…》


少ししてからティアが無実を証明してくれて静まると、俺達3人は一先ずフロントの休憩スペースにて椅子に座って冷たい麦茶を飲みながら話した


リュウグウ

『それにしても雨が凄いな』


彼女は近くの窓を見ながらそう告げる


ティア

『明日の夕方には止むらしいけどね』


リュウグウ

『夏は台風シーズンだからな、まぁ明日を休みだとしても買い物すらいけぬな』


アカツキ

『そこは仕方ないだろう』


リュウグウ

『そうね…そういえばメガネを見たか?』


アカツキ

『え?部屋じゃないのか?』


どうやら話を聞くと部屋にもいなかったらしい

宿の外に出るなんてする筈ないし、どこにいったのだろうか


ティア

『ジェスタードさんの技、あれ凄かったけど召喚スキルだよね多分』


アカツキ

『召喚?』


ティア

『本当に持ってる人が少ないの、しかもあんな禍々しい将官獣なんて聞いた事無いよ?普通は存在する生物を召喚するんだけどもね』


リュウグウ

『呪殺しそうな勢いの魔物だな、というか魔物なのかあれ』


アカツキ

『藁人形か…どんな魔物があんなスキル持ってるんだろうな…』


すると俺達の背後から現れた者がそれに答えた


リリディ

『魔物ランクAの呪王ジャビラス、相当な強さが無いと倒せないでしょうね…それは魔物の本でしか誰も知らなく、実際に見た者はいないという不思議な情報が面白いですよね?』


アカツキ

『なんでずぶ濡れなんだ?』


凄い濡れてる

まるで外に出たかのような状態だ

しかも後ろから現れたのは同じくずぶ濡れのティアマトだ


ティア

『どうしたの2人して・・・』


リリディ

『台風シーズンじゃないと現れない魔物がいるので…』


天鮫だ

彼はシュツルムのスキル上げにティアマトを連れて近くの森にいったらしいのだ

沼地はここから距離はあるが、普通の森は意外と近場にある


アカツキ

『お前ら…』


リリディ

『迷惑はかけません、まぁそれでも連絡なしで向かった事は謝りますが』


アカツキ

『いや大丈夫だ、次はちゃんと話してから行動してくれ…成果はどうだ』


彼はニコっと笑みを顔に浮かべステータスを見せてくれた


・・・・・・・・

リリディ・ルーゼット


☆アビリティースキル

打撃強化【Le3】

気配感知【Le3】

麻痺耐性【Le3】

スピード強化【Le2】


☆技スキル

ドレインタッチ【Le2】

爆打  【Le1】

骨砕き 【Le1】


☆魔法スキル

風・突風   【Le2】

風・カッター 【Le2】

黒・ペイン  【Le1】

黒・シュツルム【Le3】up↑

黒・チェーンデストラクション【Le1】


称号

リトル・クルーガー【黒】


☆称号スキル

毒耐性【Le1】

動体視力強化【Le1】


・・・・・・・


上がり過ぎだ

彼じゃないとわからないスキル会得方法だから確定でスキル魔石をドロップするのだろう


ティアマト

『風呂に入り直しだ』


時間は22時、ギリギリだが急いで入れば大丈夫だろうな

こうして何事も?なく俺達は各部屋に戻って寝る事になった


寝る前にテラ・トーヴァには何故ジェスタードと知った様な話しぶりをしたのか聞いても秘密だとかしか言わないから本当にこいつ意地悪


次の日、雷の音で俺は飛び起きる

窓を見てみると僅かに室内まで水が入ってきているので小さなタンスの中からタオルを取り出してから窓の下の部分に置いてみるけどもあまり意味は無いようだ


《暇つぶしか兄弟?》


『わかってる、意味が無かっただろうって言いたいんだろ』


《わかってるじゃないか…今日はどうすんだ》


『この天候でその質問は答えるのは難しいぞ』


《だろうなぁ》


雨の日はのんびりしていたい

雷の音が凄い心地よい、眠くなるけどもちゃぶ台の時計を見てみると時刻は7時半と8時の朝食の時間に近付いているから2度寝も出来ない


部屋をノックしてくるのはティアだ

俺は鍵を開けると彼女は静かにドアを開けるが寝癖がついている

少し照れ笑いする彼女も見ていて心が休まるなぁ


リュウグウ

『‥‥』


なんで後ろにお前がいる


アカツキ

『な…なんだよ』


彼女は答えなかった

朝食ではジェスタードさんも同行して会話したんだけども、彼は俺から感じる不穏な気配が気になってついてきただけであり、仕事でここに来たという話は嘘だったのは既に周知の事実だ


となると今いる理由は彼なりの興味だろうと思われる

俺達がどう動くかという感じかな

飯を終えた後はティアとリュウグウはジェスタードさんを連れて宿屋の奥の売店に向かったのだが何を買うかを聞くとティアはモジモジしたので凄い気になったよ



でもリュウグウの顔が軽蔑している感じを醸し出しているのでそれ以上はやめておいた

女子の事情なのだろうな


俺はティアマトとリリディと共に何もできずに休憩所から窓を眺めていた

先ほどよりも雨の量は少なくなっているのだが、番傘を差しても意味は無さそうだ

だって風があるから横から攻撃される…


リリディ

『今日は流石に休みましょう、筋肉痛です』


ティアマト

『俺もだ、アカツキもだろ』


俺もだよ、動くと太腿が痛い


アカツキ

『俺もだ…。今日の夕方には止むとは言っているけどさ…』


3人で窓を眺め、同じことを考えた筈さ

本当に止むのかと


すると宿の入り口が開く

こんな雨の中に外を歩いていたのかと思いながら皆で入口に顔を向けると、それはエド国で最強と言われている武士の甲冑を着た者、鬼刀ザントマ・ヘラクというエド国Sランク冒険者だ

ずぶ濡れなのは言わずもがな‥‥


フロントにいた宿員2名がギョッとした様子を見せると直ぐに彼のもとに足を運ぶ

休憩所からその様子を眺めてはいるけど…見た目だけで息を飲みこむほどに何かを感じるよ


宿員A

『これはこれは…ザントマ殿が我が宿にお越しいただくとは』


宿員B

『今日はどうしたのですか』


ザントマ

『‥‥』


彼は人差し指を伸ばした

それだけで宿員は何かを悟ったようだ


宿員A

『この天候が静まるまでの部屋ですね、シングルでよろしいでしょうか』


するとザントマは静かに頷いたのだ

よくわかったなぁと思いながらも手続きをする彼らの姿を見ながらリリディは口を開く


リリディ

『あれが国最強の…』


ティアマト

『すげぇ得体の知れないもんがビンビン感じるぜ…』


アカツキ

『見ただけで鳥肌がするよ』


リリディ

『わかります…。どうやら誰も声を聞いた事が無いようですね』


アカツキ

『口を開かないという事か?』


リリディ

『どうでしょうね…』


ティアマト

『ジェスタードさんとどっちが強いんだろうなぁ』


気になる言葉を彼が口にする

確かにそれは興味があるのだが


その言葉を口にした瞬間、フロントで受付を丁度済まして宿員に部屋を案内してもらおうとしていたザントマが俺達に体を向けたのだ

流石に俺達は体が固まってしまうが、まるで蛇に睨まれた蛙のような状態に近い


敵意?いや違う…だが警戒されているのは確かだ

変に身構えているとザントマは徐々に俺達に近寄り、目の前で止まる

宿員は後ろで心配そうに見ているけども、ここで喧嘩をする気はない


息を飲みこみ、俺は面頬から覗かせる瞳をジッと見つめた

俺達を1人1人じっくり彼は見ている


ザントマは右手の親指を自身の胸にトントンと小突き、その後に俺達から背を向けて宿員と共に去っていった


言いたい事はわかっている


ティアマト

『盗み聞きしてやがったか…』


アカツキ

『さっきの会話か…』


リリディ

『ジェスタードさんよりも俺が強い…だって言ってますねあれ』


ティアマト

『つぅことはよ…あいつ知ってるって事だ…ジェスタードさんが滅法強い野郎ってことをな』


リリディ

『でしょうね…』


ジェスタードさんは戦えることを公言するな、俺達はそれを言われている

守れる限り手を貸すと言ってくれたよ

まぁ変な事にならなくて済んだが…


明日から色々と強くなるために動かなければならない

それと同時に心も強くしないと意味がない、宝の持ち腐れって事になりかねないからな


俺は今日は無理をせずに体を休める事に専念した

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