第63話 沼地の主、ベロヌェルカ編 6 真五傑来来
俺を含め、仲間達が痛みを忘れて凄い驚いている
ティアなんて可愛い筈なのに目玉が飛び出そうなくらいに不細工な顔でだぞ?俺は見ないぞお前のそんな顔!
だがしかし、正直なところ俺は助かったと安心していた
まさかあのジェスタードさんがマグナ国の元英雄五傑の1人、道化傀儡グリモワルド・グレゴールだとはな
ジェスタードさんは背後の巨大な藁人形を前に出し、その左右に糸操り人形であるレフターとリライトを配備すると彼らは口を開いた
レフター
『ねぇジェスタード!殺して良い!いいよね?』
リライト
『駄目よレフター、弱い者苛めは良くないわ…それにこいつを倒すのはジェスタードじゃないもの』
ロットスター
『何を…っ!くっそぉぉぉぉぉぉ!俺は昔と違うぞぉぉぉぉぉ!』
現英雄五傑、桃源魔法ロットスター
元英雄五傑、道化傀儡グリモワルド・グレゴール
2人の戦いがロットスターの怒りから始まった
彼は体中から白い魔力を放出しながら両手を前に出して叫ぶ
ロットスター
『ラファエルブラスタァァァァァ!』
巨大な光がロットスターの伸ばした両手から発生すると、それは大きな白い光線となってジェスタードに撃ち放たれた
尋常じゃない威力の魔法だと俺でもわかる、魔物Bランクでも一撃で倒せそうなその魔法はきっと彼の最大の魔法に違いない
それは相対する敵であるジェスタードさんがそれ以上の存在だと自ら認めているから撃つことを判断したのだろうな
ロットスター
『死ねぇぇぇぇ!』
ジェスタード
『あ、それは無いです』
巨大な藁人形は大口を開け、邪悪な釘の歯を剥き出しにするとジェスタードさんの一声で攻撃に転じることとなる
ジェスタード
『敵を穿て、ジャビラス!怨固破動砲』
ジェビラス
『ジャァァァァァビィィィィィィィィィィ!』
鬼の形相を浮かべた巨大な藁人形は周りに憎悪の気を放出しながら、大口から鋭い紫色の光線を撃ち出した
その光線は苦しみ、怒り、不吉な顔を浮かべた顔が浮き出ており、周りにどす黒い瘴気を放出しつつロットスターの最大魔法に飛んでいく
リゲル
『やべぇ!伏せろ!』
クワイエット
『ひぃぃぃぃぃぃ!』
2つの魔法がぶつかった瞬間、いとも容易くロットスターの放ったラファエルブラスターが掻き消され、怨固波動砲はロットスターの真横を通過していった
その時の彼の顔はまるで死んだと悟った時の無気力だ
後方にそれたジェスタードさんの魔法は森を抉るように遥か遠くまで飛んでいき、この場は静かになる
僅かな砂煙、そして瘴気が漂う中でロットスターは足をブルブル震わせながら両膝をつき、近寄るジェスタードを畏怖の目で見つめる
ジェスタード
『魔法強化スキルは?』
ロットスター
『…4だ』
ジェスタード
『敬語は?』
ロットスター
『4です』
ジェスタード
『魔法のスキルレベルは?』
ロットスター
『3です』
ジェスタード
『話にならぬ、吾輩の魔法強化スキルは5、そして先ほどのジェビラス召喚スキルレベルは5デス。貴方の子供みたいな魔法とは違うのですよ…強力な魔法を覚えて満足してるようではその程度、真の力は最大までレベルを上げるからこそ魔法は見えてくるのデス』
ロットスター
『ば…馬鹿な』
ジェスタードさんは巨大な藁人形の足元をポンッと叩くと『ジャジャッ!』可愛い声で鳴きながらその藁人形は紫色の粒子となって消えていった
しかし糸操り人形は以前として両膝をついているロットスターの両脇でニヤニヤとしながら彼を見つめている
これほどまでに差があるというのか…元英雄五傑とはそこまで
そこで俺は思い出した。
テラ・トーヴァが言っていた言葉がある、英雄五傑を味方に招き入れる手もあるという話を依然していたのだ
まさかだが…テラ・トーヴァはジェスタードさんが五傑だと知っていた?
いや知っていただろう
念術感知されることを知っていたからジェスタードさんがいる時は起きてこなかったからな
ジェスタード
『力ある者がその場を決める、お前にはまだ早い…』
ロットスター
『あ・・・』
ジェスタード
『はぁ…しかし残念デスよ。五傑の魔法特化席が貴方とはねぇ…私の後釜にしては貧弱。ここでハイムヴェルト殿の無念を晴らしたいのですが…それは吾輩がすることじゃありません・・・あの世で彼に怒られますから』
ロットスター
『貴様…ただで済むと思っているのですか…』
ジェスタード
『権力は力の前では意味がない、当時の五傑は国王の指示で動いていたと思ってイルノデスか?』
ロットスター
『何を言いたい…』
ジェスタード
『我々は気まぐれだ、やると感じれば動く…王族の指示など一切受けた事は無い』
ロットスター
『馬鹿な!?』
ジェスタード
『我々は王族の犬ではない、頼まれれば仕方なく動いた…そんな奴らの集まりだった事を青二才の黒豹から聞いてはいなかったのデスか?ゴマすりロットスターよ』
ロットスターは驚愕を浮かべ、地面を見つめる
その様子をジェスタードは周りを歩きながら再び話し始める
『黒豹騎士ロイヤルフラッシュ、人間恐慌アクマ、道化傀儡グリモワルド・グレゴール
鋼鉄鬼女クローディア、そして桁外れた強さを持つ世界騎士イグニス・モーメント。黒豹ロイヤルフラッシュ以外の4人は自由人であった…』
ティア
『クローディアさんっ!?』
リュウグウ
『ふぁっ!?』
リリディ
『ばぶっ!?』
ティアマト
『はっ!?』
アカツキ
『えぇ…』
クローディアさん…確かに聖騎士ロイヤルフラッシュと互角に戦っているからなぁ
まさか元英雄五傑だったとは、というかグリンピアになんでいるんだよ!!!
それも織り込み済みでテラ・トーヴァは元五傑と手を組み話を俺にしてきたのか
ティア…凄い顔だな
あとでいつもの顔、見たいなぁ…
ロットスターは何故ここで自身を殺さないのかジェスタードさんに質問をする
その答えは意外とリリディに関係することだったのだ
ジェスタード
『もし最初からハイムヴェルト殿の道があったならば彼は吾輩を超えた可能性はでかい、しかし彼は誰も知らない称号の道を生涯を使って見つけ、なったのデス・・・』
ロットスター
『あいつは…俺にすら称号を見せてこなかった!しかも手塩にかけた部下に好かれやがって…ムカツク野郎だ』
ジェスタード
『聞け間抜けが…。彼は教団を去る時に吾輩に伝言を残したのだ。道は作った、あとは孫が歩く…とな』
リリディ
『なっ!?』
リリディは痛みを忘れ、弱々しくも立ち上がるとジェスタードさんは彼を見つめて答えたのだ
ジェスタード
『ハイムヴェルトは英雄五傑の資格を有する力を持つ努力家だった…しかし歴史的な称号を見つける事に生涯を費やしすぎた…時間が足りなかったのと上官に恵まれなかった事デスが、リリディ君を見て驚きましたよ…目が似ている。優しい瞳が』
リリディ
『お爺さんを知っているのですね』
ジェスタード
『彼は毎日、孫の自慢話を皆にしていたよ…私より才能があると』
リリディ
『その自信はありません』
ジェスタード
『そうですか、しかしお爺さんの伝言を教えます‥‥道は作った、お前が完成された魔法職最強の称号であるギールクルーガーとなるのだ、と…なる為のスキルを持つ魔物は聞いている筈ですよ…』
リリディ
『僕が…お爺さんは一言も僕になれなんて』
ジェスタード
『孫が歩もうとしているならば伝えてくれと言っていたのです、今の貴方は歩もうとしているのでしょう?強くなったらここで弱腰になっているポンコツ五傑を倒してハイムヴェルト殿の汚名を晴らせばいい』
ロットスター
『はっ?…そんな』
リリディ
『ですがジェスタードさん、僕はまだ…3つです』
ジェスタード
『良い仲間がいるじゃないデスか。彼も同じ仲間がいた…当時密かに最強と囁かれていたグリンピアの冒険者チームであるケンプファー。そこにはハイムヴェルト殿やクローディア、そしてアカツキ殿の父上がおられたのだ』
アカツキ
『ふぁっ!?!?!?!』
鼻水が出た
リリディ
『…』
ジェスタード
『君もハイムヴェルト殿と同じ道をとっくの昔から歩んでいるのデス、お爺さんが正しかったと吾輩は証明できますが…それは貴方が一番したいでしょう』
リリディ
『…わかりました、強くなります』
ジェスタード
『それで結構…ゴマすりロットスターよ、帰れ…帰ったら青二才の黒豹にこう伝えよ。今度絡んでくるならば…アクマを呼ぶぞ?そう言えばあいつは絡まれていた思い出が甦って迂闊に手出しせぬまい』
ロットスター
『ああああアクマさん!?生きてるんでしゅか!?』
ジェスタード
『生きている…居場所は誰にも教えぬがな。さぁいけ…吾輩の国から直ぐに出ぬと本当にここで殺すぞ』
その気迫ある声は布袋の中の表情を安易に予想出来る程だ
ロットスターは歯をガチガチに震わせながら部下を置いて一目散に森に逃げていった
リゲル
『マジかよ!?本当に英雄五傑の道化傀儡グリモワルド・グレゴール様だとは…ここは退くぞ!』
クワイエット
『あっ!』
リゲルはクワイエットを置いて颯爽と森に逃げていく
俺はたいぶ動けるようになり、仲間達を起こしていたのだが…
取り残されたクワイエットは何ならソワソワした様子でジェスタードさんに近寄る
肝心のジェスタードさんは首を傾げると、糸操り人形2体も首を傾げる
クワイエット
『す…すいません。サインください』
懐から出て来たのは色紙!なんで持ってるんだろうなぁ
予想外過ぎるけども一番予想外なのはジェスタードさんの反応だ
ジェスタード
『万年筆はあるか』
クワイエット
『はい…これで』
ジェスタード
『ふむ、名前はどう書けばいいのだ』
クワイエット
『魔法最強!道化傀儡グリモワルド・グレゴール参上!で』
ジェスタードさんは唸り声を上げながら期待通りにそれを書いた
受け取るクワイエットは嬉しそうな顔を浮かべると、お礼に良い事を話してくれた
クワイエット
『この作戦で決める予定だったので今後追手が来るならば1か月は無理そうです、聖騎士長さんはガンテア共和国との対談にて国王の護衛で多忙になるので…まぁあの人が動けないからこそ仲の良いロットスターさんが動いたんですけどね』
ジェスタード
『ガンテア共和国か…10年前の戦争と関係はあるのか?』
クワイエット
『あまり聞いてないのでなんとも言えません…』
ジェスタード
『情報提供感謝デス、早く行かないとお友達に追いつかないデスよ』
クワイエット
『あ!はい…それでは…すいませんでした』
あの人、悪い人じゃないな…
まぁ最初会った印象も悪くはなかったし
ティア
『今ケアするからね…みんなジッとしてて』
彼女は時間をかけ、俺達の傷をある程度回復するためにケアを使用した
完全回復は無理だとしても歩ける程度には傷は治る
まぁそうだとしてもティアは疲労困憊になるのはわかっていたけどな
『ヒヒン』
ティア
『ありがとブルドンちゃん』
彼女はブルドンに乗って体を休める事にした
それにしても
ジェスタードさんの話で色々聞けたよ
リリディのお爺さんは嫉妬されて追い出された
何も悪いことなどしていないのにだぞ…
そして昔の英雄五傑の全ての名前がわかった
黒豹騎士ロイヤルフラッシュ
人間恐慌アクマ
道化傀儡グリモワルド・グレゴール
世界騎士イグニス・モーメント
鋼鉄鬼女クローディア
そしてリリディのお爺さんの称号はギールクルーガーという大賢者だ
緊急事態な状況から一変し、俺達は当分安心して心身を鍛える事が出来る様だ
リリディは真剣な顔のままジェスタードさんを見つめている
何かを話そうとしている様子だが、それを悟ったジェスタードさんは溜息を漏らすと彼に告げたのだ
『これ以上は何もないデスよ…貴方が見つめなさい…』
『ありがとうございました』
『まぁ彼の称号を知るのは吾輩にクローディア、そしてアカツキ殿の御父上であるゲンコツゲイル殿の3人デス』
やっぱ知ってたのかよ父さん!!
懐かしいとかなんとか言ってたしなんだか釈然としなかったんだよ
クローディアさんの反応もそうだ
ジェスタードさんはリリディにステータスを見せて欲しいと言うと、彼は心置きなく俺達にもステータスを見せた
・・・・・・・・・
リリディ・ルーゼット
☆アビリティースキル
打撃強化【Le3】
気配感知【Le3】
麻痺耐性【Le3】
スピード強化【Le2】
☆技スキル
ドレインタッチ【Le2】
爆打 【Le1】
骨砕き 【Le1】
☆魔法スキル
風・突風 【Le2】
風・カッター 【Le2】
黒・ペイン 【Le1】New
黒・シュツルム【Le1】
黒・チェーンデストラクション【Le1】
称号
リトル・クルーガー【黒】
☆称号スキル
毒耐性【Le1】
動体視力強化【Le1】
・・・・・・・・・・・
ジェスタードさんはそれを見ると、初めて大笑いした
それには俺達は驚いてしまったよ
あんた笑うんだな…その容姿では似合わない…
彼はそのまま奥に歩きながら空を眺める、なにやらボソボソと何かを話し始めた
何を口にしているかはわからない、しかし…
昔を思い出してくれているのだろうと俺は思った
ジェスタード
『ハイムヴェルト殿…そなたの孫はそなたが作った道を突っ走っておりますぞ…しかし貴方はあのおぞましい化け物を倒したと言っていましたが、あれは死んではいない…現場検証で向かった騎士が遺体を確認する前に消えたことを貴方は知らない…あれはきっとどこかにいる、あれは絶対に今のマグナ国の者では倒せない…強さのランクが今は低い…彼らがきっと、いや…貴方の孫が強くなればアレは昔の無念を思い出し、彼の前に現れる筈だ…』
沼地の主、ベロヌェルカ編 おわり
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