第58話 沼地の主、ベロヌェルカ編 1

ムロマチの冒険者ギルド、説明しなくても内装はどこも同じだ

俺達は冒険者で賑わうロビー内を横目に、赤い絨毯の上を歩いて受付まで向かう


受付嬢はカウンターで欠伸をしているが、やはり受付に選ばれる女性は可愛い

リリディはちょっとした独り言を口にしている、『僕にはアンナさんがいる』と


リュウグウ

『男はこれだから…』


彼女は溜息を漏らしながら囁く

俺は真っすぐ受付に向かう事無く、横の依頼板に顔を向けた

ここの魔物事情はさほど俺達の街と変わらない様で安心できる


魔物のランクはDとEがメインだとわかったからだ

だがその中に凄い依頼書が張られていた


ティア

『パペットハンマー1体の討伐って…』


ティアは驚きながら依頼書をマジマジと眺める

これはランクCの玩具種の魔物であり、パペット系では上位種なのだ

まぁそれ以上のパペットはいるが俺達が今拝めるわけはない


人形の玩具の様な魔物、武器は姿に似合わない大きなピコピコハンマー

振り下ろすと可愛い音が鳴り響き、地面を強く揺らすと聞いたことがある

力は無いがスピードはある


トロールが力を失くして速度を得たような魔物と考えても良いだろう

Cランクとは言っても、弱点は火だから戦おうと思えば戦える


リュウグウ

『こいつのスキルはなんだメガネ』


リリディ

『…爆打です、地面を鈍器で叩きつけると軽い衝撃波が発生します。レベルが上がれば衝撃波と一緒に爆発が付与されるらしいですよ』


ティアマト

『なんだ?リリディに似合うじゃねぇか』


リリディ

『今はこの魔物に興味はありません、あるのは沼地にいる魔物です』


意外と魔物に詳しいリリディが口にした魔物の名はランクCのベロヌェルカ

両生類のウーパールーパーのが巨大化した姿をしており、舌は3mの伸びるのだとか

主な攻撃方法は舌を伸ばしての鞭打、尻尾の薙ぎ払い、突進、両前足の叩き等である

魔法は雷以外は無効だ


このムロマチという街の南側の森は沼地が多く、その魔物がいるかもしれないとリリディは考えたのだ

その予想は的中したのだ


受付嬢が依頼板を眺める俺達に興味を示し、受付の中からこちらに寄ってくると口を開いた


受付嬢

『皆い顔ですねぇ、遠征者ですかね』


アカツキ

『そうです、ベロヌェルカという魔物はいますか?』


受付嬢

『いますよ?でも天気が良いと現れないので明後日迄待つしかないですね』


アカツキ

『明後日?』


受付嬢

『雨の日です、台風シーズンですから』


そういえばそうだ、7月を超えると台風が多くなる

となると雨の日も多くなるのだが…


雨の日の討伐か…初めてだが面白そうだ

受付嬢は俺達が見ていた依頼書を指差すと、再び口を開いた


『やらないんですか?場所は霊園跡地ですから夜用の魔物です』


森じゃない、霊園跡地はここから北に30分の場所にある場所らしい

今は18時前、時間を考えるとちょっと厳しいのが仲間達は移動日で固まる体をほぐしたいと意見が合致したため、俺はその依頼書に手を伸ばす事にした


受付嬢の人に判子を押してもらう前に冒険者カードを見せると、少し驚いた顔を見せた

多分見た目とランクが一致しなかったのだろうな

今俺達はCランクのチームなのだから


受付嬢

『霊園跡地にはアンデット系が多数います、ランタンは無料貸し出しできますがどうします?』


俺は自分の持つオイルランタンを節約したいため、借りたよ

当然長持ちするオイルランタンを受付嬢は支給してくれた。


2時間は持つからなんとかいけそうだ

まぁしかしだ、霊園跡地にパペット種とは面白いな

受付嬢に場所の説明を少し受けてから、仲間と共にギルドを出て目的地に向かう

通りを冒険者達とすれ違うが、多分依頼達成の帰りだな


ティアマト

『宿屋の飯は今日な無しだな』


リュウグウ

『帰りに適当に買えばいいわ』


アカツキ

『そうしよう…陣形だが正面をティアマトとリリディが対応し、後方はリュウグウとティアで頼む、俺はランタン係するけとも必要に応じて前後に協力する』


ティア

『アンデットならラビットファイアー有効だし頑張る』


アカツキ

『5つも各魔物に撃てるからな』


ティア

『そうそう!ってか霊園跡地って…またお化け出るのかな…』


彼女の顔が少し引き攣っている

それは無いと思うから安心してほしい、多分な


霊園墓地、そこは防壁で広く囲まれた広大な墓地なのだが…

更にそこは川で囲まれており、橋を渡って中に入るしかない

入口は正面門と裏門の2つ


橋の手前には小さな詰め所の様な建物があり、橋の前には警備兵が2人警備していた


警備兵

『む?冒険者か…依頼書がないと入れないが』


アカツキ

『そうなんですね』


俺は懐からパペットハンマーの依頼書、そして自身の冒険者カードを提示すると直ぐに警備兵は許可を出した

中は暗くて視界が悪いからランタンを持っていないと駄目だと言われるが、俺は持っているから大丈夫だ


ランタンを見せてから灯りをつけると、警備兵は頷いてから橋の先の鉄柵の鍵を開けて扉を開いた


警備兵

『アンデット系の他に奇虫もいるから気をつけろ』


リリディ

『奇虫?』


警備兵

『ハンドリーパーという大きなウデムシだ』


クモガタ綱のウデムシ目に所属する節足動物だ。

偏平な体に細長い脚と腕のように張り出した触肢を持ち、クモガタ類の中でも特に独特な姿をもった虫種の魔物だ


折りたたんだ腕の先は小さな鋏、そして長い事で有名だ

魔物ランクはD、全長は1mあり、腕を伸ばせば2メートルは超える程だ


霊園の中に入った俺はランタンで辺りを照らす

手入れされていない場所だからだろうか、雑草が生え散らかしており、墓石が黒ずんでいる

木々は枯れ果て、緑を含む木は少ない


割れた石のタイルを進みながら歩いていると、ティアが口を開く


ティア

『ハンドリーパーって苦手』


アカツキ

『俺は出会った事無いな…』


ティア

『折りたたんだ腕を伸ばして攻撃してくるよ、あとは突進くらいかなぁ』


アカツキ

『動きはどうだ?』


ティア

『今の私達なら問題ない…あ、なんかの気配』


《ゾンビナイトがわんさかだぜ?》


テラ・トーヴァの声を皆に伝えると、一斉に周りに意識を向けて警戒し始める

満月が明るくてこの霊園一帯を程よく照らしていつ為、さほど真っ暗とはいえない

それでもランタンが無ければ前は歩けないだろう


『アアアアア』


ティアマト

『お客さんだ』


ティアマトはニヤニヤしながら片手斧を構え、正面を見ている

気配は左右からも感じるが、俺達の侵入が早々とバレた様だな


アカツキ

『結構な気配の数だ、1体ずつ時間をかけずに倒し切れ』


リリディ

『言われなくとも…』


リュウグウ

『ゾンビナイト如きめ』


するとランタンの灯りの範囲内に魔物が姿を現す

ゾンビナイトが剣を地面に引きずりながらヨロヨロと歩いてきたのだ

だがその弱々しい歩きは一定の距離まで近づいてくると、一気に声を大きくして走ってくる


『他は任せましたよ!』


リリディはそう告げながら前から襲い掛かる数体のゾンビナイトをティアマトと共に各個撃破していく

その間、左右からゾンビナイトとゾンビ犬が堂々と姿を現す


リュウグウとティアが連携し、敵の攻撃を避けながらドンドン倒していく

俺は左手でランタンを持ったまま、余ってしまったゾンビナイトの剣の突きを避けると、懐に潜り込んでから右手で抜刀しながら首を刎ね飛ばし、背後から迫る別のゾンビナイトに向けて刀を前に突き出して居合突で真空の突きを飛ばし、頭部を破壊した


アカツキ

『結構な数だな』


『アアアア!』


アカツキ

『五月蠅い魔物だ』


そう言いながら振り下ろされる剣を刀で弾き飛ばし、胴体を蹴って転倒させると、俺は起き上がる前にゾンビナイトの頭部に刀を突き刺してトドメを刺す


ティア

『ラビットファイアー!』


彼女の魔法で数体のゾンビナイトが燃え出し、それらはジタバタと暴れ始めた

ザっと見て数はまだ7体か…


『カカカカ!』


リュウグウ

『グールも混ざってるとはな!』


飛び込んでくるグールを避け、再び襲い掛かってくると同時に彼女は槍を首に突き刺して動きを止めた。

その隙にティアは背後からサバイバルナイフで後頭部を深々と突き刺して倒す

この2人のコンビも良い感じだ


徐々にアンデット系が少なくなっていくと、リリディは最後の1体をスタッフのフルスイングで木っ端みじんに吹き飛ばし、スタッフを肩で担ぐと、心地良さそうにしながら一息ついた


リリディ

『一先ず静かになりましたねぇ』


アカツキ

『なら進むぞ』


リュウグウ

『急がないと灯りが心配だ』


ティア

『パペット種が依頼だもんね、早く行こ』


とはいっても石タイルは割れており、歩き難い

歩いているとティアが躓いて転びそうになったのだが、俺は腕を掴んで支える


少し照れたような顔をして笑顔を見せる彼女に俺も釣られて顔が赤くなってしまう


ティア

『ありがと』


アカツキ

『お…うん』


横でリリディがクスクス笑う、ちょっと恥ずかしい

すると彼は直ぐに目を細め、左右に意識を向けた

魔物の気配だろう、ティアも構えながら前に進んでいる


少し歩くと俺の気配感知にも魔物が近づいてくるのが感じた

ランタンの灯りに映るのは先ほど話し合った時に言っていたハンドローパーだ


折りたたんだ腕の先は小さな鋏を上に掲げて威嚇をしている様だが…


ティア

『こっちから行かない限り襲ってこないから大丈夫だよ』


リュウグウ

『わかるのか?じゃあなんで近付いて来た』


ティア

『虫だから灯りに釣られただけだよリュウグウちゃん』


リュウグウ

『なるほど』


言われたままに無視して進む、やはりティアの言った通り、ハンドローパーはついてくるだけで襲ってはこない

それでも一応気にするんだけどね


『ニー』


声が聞こえた、これはパペット種特有の声だ

その鳴き声が皆の耳に届いた瞬間、誰もが足を止めて身構えた


『カカカカカ』


『アアアアア!』


リリディ

『グールとゾンビナイトも…』


アカツキ

『後ろからか、正面のパペットハンマーはリリディとティアマトで頼みたいが…』


俺は言ったくせに悩んだ、だって魔物Cランクだからである

今の俺達なら強敵だ


だがしかし、俺達だって強くなっている

ティアマトは悩む俺など気にもせず、堂々と前に歩き出した

それに続いてリリディもだ


任せても良さそうだ


ティア

『後ろは任せて』


リュウグウ

『素早く倒し切る』


アカツキ

『俺も状況を見て動くよ』


話している暇はなかった

それはいきなり訪れる


ランタンの灯りの外、正面から物凄いスピードで姿を現し、俺達と身長の差は無いパペットハンマーがピコピコハンマーを振りかざしたまま現れたのだ


速い、流石Cランクだと納得できる


リリディ

『くっ!?』


ティアマト

『おわっ!?』


正面にいた2人が左右に避けた

ニー!と可愛い鳴き声を上げながら大きめのピコピコハンマーを地面に叩きつけたパペットハンマーは叩きつけた場所を中心に衝撃波を発生させ、俺達は吹き飛ばされまいと耐える


そのいい加減な玩具の様なハンマーからそれほどの力があるとはな


ティア

『くるよ!』


『アアアアアー!!』


『カカカカ!』


後方からゾンビナイト3体にグール2体、俺は後方に回るか

俺はランタンを左手に、刀を右手で抜くと、飛び込んでくるグールの爪を避けてから首を刎ね飛ばし、直ぐに後方から錆びた剣を振ってくるゾンビナイトの攻撃を刀で受け止めてから弾き飛ばした


リュウグウ

『三連突!!』


彼女の素早い3回の槍の突きが相対しているグールの胴体を貫く


ティア

『ラビットファイアー!』


腕を前に出して口を開いたティア、正面から赤い色の魔法陣が現れると、そこから小さな熱光線が5つ同時に発射され、残る後方の魔物に全て命中して燃やす


リュウグウ

『こっちはいい!お前は前に行け!』


倒し切ったと思えばさらなるゾンビナイトが走ってくる

リュウグウとティアにここは任せ、俺は正面に体を向けた


パペットハンマーはティアマトと武器で鍔迫り合いをしているらしく、ティアマトが僅かに押している


ティアマト

『ぐぬぬ!リリディ!』


彼が叫ぶと、パペットハンマーの横からリリディが飛び込んでくる


リリディ

『賢者バスター!』


振り下ろされた彼の木製スタッフは、鍔迫り合いを解いたパペットハンマーに当たる事は無かった

しかし直ぐに飛びにいた敵に左手を伸ばすリリディは直ぐに黒い魔法陣を出現させると、口を開く


リリディ

『シュツルム!』


その魔法陣から小石サイズの黒弾が素早く飛び、パペットハンマーに向かっていく


パペットハンマー

『ニ!?』


奴はピコピコハンマーを盾にするようにガードする

リリディの黒弾が敵の武器に激突すると、小規模な爆発を発生させて煙が舞い上がる

俺はすさかず彼らの近くに寄り、仲間達と共に身構えながら煙の中のパペットハンマーに警戒をしていた


まだ気配はある、死んでいない


ティアマト

『面白ぇ敵だぜ!暇しねぇ!』


リリディ

『Cですから油断したら死にますからね?』


アカツキ

『大丈夫だ!』


パペットハンマー

『ニニニー!!!』


煙の中からパペットハンマーは飛び出してくる、ピコピコハンマーはボロボロだがまだ武器として使える様だ

俺は深呼吸をし、一気に畳みかけようと仲間の士気を高める合言葉を口にした


アカツキ

『行くぞ!俺達馬鹿は!』


『『『剣より強い』』』


後方にいるティアの声も聞こえた、リュウグウは首を傾げているけども気にしないでほしい


アカツキ

『光速斬!』


向かってくるパペットハンマーに向かって素早く加速し、掲げたハンマーを持つ右腕を斬り裂いた

斬撃強化レベル2、それは奴の腕を斬り裂くには十分だ

パペット種は耐久性が無く、その分素早さがある


奴の腕が宙を舞うと、ティアマトとリリディはその隙を狙った

パペットハンマーは今、自分の吹き飛んだ腕を暢気に見上げているのだ

これが隙と言わずに何という?


ティアマト

『おおおおおお!!!』


リリディ

『一発頼みますよ!』


ティアマト

『おおよ!!』


パペットハンマーは前に顔を向けた時には、俺の仲間2人が目の前まで迫っている

あの間合いから避けれるか?いやもしかしたら奴なら出来るかもしれない

パペットハンマーの背後から俺も走り出す


リリディ

『ドレインタッチ!』


敵の体力を奪う技、スタッフを横殴りに払うその攻撃を、パペットハンマーは大きく海老反りして避けたのだ

だが次は無理だ、俺がいる


アカツキ

『光速斬!』


俺は一気に駆け抜け、パペットハンマーの右足を切断して通過すると、奴は大きく後方に転倒したのだ

ティアマトは今が好機を言わんばかりに不気味な笑みを浮かべ、起き上がろうとするパペットハンマーに向かって片手斧を振り下ろしながら叫んだ


ティアマト

『連続斬り!』


彼の素早い二連撃が転倒するパペットハンマーに向かって振り下ろされる

しかし飽く迄、敵は魔物ランクCであり、驚きの行動を見せつけて来た


『ニー!!』


ティアマト

『なっ!?』


パペットハンマーは横に横転するようにゴロゴロと転がって避けたのだ

直ぐに立ち上がると、奴は近くに落下したピコピコハンマーを左手で掴んでから怒っている仕草を見せている


両足を使って地面を何度も踏むそれは可愛らしい怒ったぞというアクションだとわかる


ティアマト

『流石だな』


リリディ

『まさかあそこから…』


アカツキ

『でも片腕が無い、ティアマト…弾き頼むぞ』


ティアマト

『仕方ねぇ!斬るのはアカツキに任せる、リリディが止めろ!』


リリディ

『命令されなくてもわかってますよ!』


ティア

『こっちは片付いたよ!』


リュウグウ

『加勢してやる』


これで5人、彼女らは後方の魔物を倒し切った

ふと後ろに目を向けてみると、至る所にゾンビナイトやグールが倒れている


《ランタン持ったままよく戦うなぁ》


『正直辛い』


《なら次で仕留めろ、両手がないこいつは怖くはない》


俺はその声を聞いている最中、パペットハンマーは蛇行しながら俺達に向かって来た

速いなぁ…

しかし反応は出来る


俺は開闢を使うためにティアマトに一撃目を任せた

彼は意気揚々とパペットハンマーの横殴りのハンマーを片手斧で受け止めた

力は無いといっても魔物だからそれなりに力はある


ティアマト

『ぐっ!!!』


ティアマトの足場がエグれていた

彼がそうなるとあれば、俺達では無理だろう


リュウグウ

『シャベリン!』


リュウグウは俺達の知らない技を見せた

なんと槍の刃先に魔力を込めて槍投げの様にして投げたのだ。

その軌道はティアマトの頭部スレスレを通り、パペットハンマーに向かって飛んでいくと、逃げようとしたパペットハンマーは鍔迫り合いを弾いて飛び退こうとする


だがティアマトは逃がしはしない

彼は素早く奴の左腕を掴んで踏ん張った

それによって、パペットハンマーの頭部側面に槍が通過し、玩具の様な頭部が深く抉れた


『ニッ…』


リリディ

『チェーンデストラクション!』


一瞬ふらついた隙に、リリディがチェーンデストラクションを発動させると、彼の両肩部の上に黒い魔法陣が2つ発生し、そこから鎖が同時に飛び出す


パペットハンマーの腰に巻き付いたのを確認したティアマトは不気味な笑みを浮かべたまま、掴んだ腕を話してその場から距離を取った


ティア

『ショック!』


ティオの伸ばした手から雷弾が飛び出し、身動きできないパペットハンマーに命中すると、奴はビリッと感電したように体が強張った

だが麻痺まではいかない


俺は今しかないと思い、リリディが拘束している間に仕留めようと刀を強く鞘に納めながら叫んだ


『開闢!』


キンッと金属音が響き渡ると同時に、鞘から瘴気がドッと噴き出し、そこから仮面騎士が飛び出す

それが持つ刀は燃えており、逃げようと抵抗を見せるパペットハンマーを鎖ごと斬り裂いたのである


『ニーーー!!』


火の魔法には弱いのは知っている

パペットハンマーは後方に転倒しながら激しく燃え、動きを止めた

誰もが身構えながら奴と距離を取って様子を伺うが、玩具種だし凄い燃えている


ティア

『ランタンの灯りより便利』


リュウグウ

『槍どこに飛んでいった…』


あとで拾いに行け、リュウグウ


すると燃えているパペットハンマーの体から光る魔石がポンッと飛び出し、俺達に前に落下した

ようやく倒した様だ…。だがしかし、侮れない魔物だったな


まだパペットハンマーは激しく燃えている為、その間に魔石に手を伸ばして確認を始めた

爆打という面白い技スキル、どう見てもリリディにしか扱えない技だと誰もがわかる


リュウグウ

『開闢もそうだが、メガネの魔法スキルも凄いわね』


リリディ

『評価は変わりましたか?』


リュウグウ

『メガネはメガネだ』


リリディ

『…』


ヤレヤレ…みたいな顔を俺に向けるなリリディ

彼はスキルを体に吸収している間、ティアがリュウグウと共に奥に落ちているリュウグウの槍を拾いに行く

それにティアマトがついていくと、リリディは魔石を俺に渡しながら話しかけて来たのだ


リリディ

『助かります』


アカツキ

『何かあれば頼むぞ』


リリディ

『わかってます、不思議とこの先が楽しみで仕方ありません…間違った感情だとわかってるのですがね』


アカツキ

『大賢者…か』


リリディ

『この前は話を盛りました、僕のお爺さんは自身を大賢者とは口にしてません』


アカツキ

『でもマスターウィザードに勝った実績は大賢者というに相応しいと信じているんだろう?』


リリディ

『そうですね、お爺さんが僕にいったんです。マスターウィザードを超える魔法使いの称号、大賢者が存在するって』


アカツキ

『お前がハイムヴェルトさんのその先を歩け』


リリディ

『何をいまさら』


彼はメガネを触り、言い放つ


『魔法使いの称号の歴史を僕が変えるんです、今のうちにサインを貰っておいて損はしないですよ』


俺は拒否した

こうしてリュウグウたちが戻ってくると、リリディのスキルをみんなで確認さ


・・・・・・・・・

リリディ・ルーゼット


☆アビリティースキル

打撃強化【Le3】

気配感知【Le3】

麻痺耐性【Le3】

スピード強化【Le2】


☆技スキル

ドレインタッチ【Le2】

骨砕き 【Le1】

爆打  【Le1】


☆魔法スキル

風・突風   【Le2】

風・カッター 【Le2】

黒・シュツルム【Le1】

黒・チェーンデストラクション【Le1】


称号

リトル・クルーガー【黒】


☆称号スキル

毒耐性【Le1】

動体視力強化【Le1】


・・・・・・・・・・・


俺はティアマトを先頭にし、歩いて霊園を出ようと歩いて進みだす

どうやらティアマトはまだ動き足りない様なので、前にしたが…


ティアマト

『連続斬り!』


グール

『カカッ!』


襲い掛かるグールを技スキルで返り討ち、ゾンビナイトは錆びた剣を片手斧で弾き飛ばしてから拳を握って顔面を殴って粉砕だ


出るまでは彼に任せよう


リュウグウ

『しかし、メガネのステータスも凄まじいな…相当仕上がっていると思えるけど』


ティア

『でも私たちは上位冒険者のステータスを見た事無いから何とも言えないね、きっとかなり凄いステータスの水準だと思う』


リュウグウ

『そのようね、攻撃強化スキルと身体能力強化スキルは必須なのは聞いているけども一度見てみたいな』


アカツキ

『グリンピアじゃ近い人は3人しかい無さそうだよね』


俺の父さん、ティアのお兄さんのシグレさん、そしてクローディアさんだ

この中で見せてくれそうなのはシグレさんだと誰もが悟る

ティアが頼み込めばいいんだからな


『キュー!』


リリディ

『このハンドリーパーやかましいですねぇ』


アカツキ

『手を出すなよ?』


至る所にハンドリーパー、数は多い


ティア

『攻撃すると一斉に襲ってくるから駄目だよ?』


それは嫌だ

ティアマトもハンドリーパーには敵意を向けぬよう、ゾンビナイトとグールばかりを倒して進んでいく

魔石を回収しながらなので移動速度は遅い、だがその成果は出て来た


ティアマトが凄い顔を浮かべ、光る魔石を指差している

ゾンビナイトから出て来たのだろう、俺達は興奮した様子を見せて近づいた

普通にドロップした!!凄い!


リュウグウ

『スキルはなんだ・・・』


ティア

『あ、気配感知だ』


それはリュウグウに明け渡した

ギルドに辿り着く迄、彼女は凄い機嫌が良かったのを覚えている


依頼報酬は金貨3枚に銀貨2枚、魔石報酬は銀貨9枚と少ないのは疑問だが…まぁいいか


時刻は21時と凄い時間だ

街中を歩きながらギリギリ開いている店に入り、売れ残りで売っている半額のカツサンドやオニギリ類を購入して宿に戻ったよ


宿も22時には入口を閉める事をうっかり忘れていたが、間に合ったし問題ない

問題なのは風呂の時間だ、宿内の奥の廊下にある風呂が22時には閉まる


俺達は夜食を食べる前に急いで風呂に入り、浴衣に着替えてからロビーにある休憩所の和室ルームで全員でちゃぶ台を囲んで勝ったご飯を食べ始めた


22時を超えたので宿の中の灯りも少ない

人はフロントの宿員しか見受けられない、しかも彼は椅子に座って軽く寝ている


リュウグウ

『急に眠くなってきたわ』


ティアマト

『色々動いたから仕方ねぇだろ、なぁ?』


アカツキ

『だな…。明日は9時出発だから8時には朝食を食べるからここに一度集合で頼む』


誰もが俺の案に頷いてくれた


それと同時に、誰もがずっと疑問に思っていた事をリュウグウが口にした


リュウグウ

『新英雄五傑だけど…』


黒豹騎士ロイヤルフラッシュ

鬼のワルド

桃源魔法ロットスター

閻魔騎士ブリーナク

風花水月ミランダ


これがマグナ国の新しい強者の5人だ

その中に、俺達でも知っている者がロイヤルフラッシュ聖騎士長以外にもいる


リリディ

『桃源魔法ロットスターは魔法騎士会の魔法騎士長ですね。僕のお爺さんの上官でした』


そうなんだ

魔法騎士長が五傑に選ばれているのである

他は誰もが知らぬ名だ


アカツキ

『ジェスタードさんが去る時に言っていた言葉が思い出されるな』


ティア

『五傑も堕ちた…だよね。なんだか昔を知っている様な口ぶりだったけど』


ティアマト

『リリディの爺さんにボコられた魔法騎士長が五傑か、となると話は分かりやすいだろぉ?』


リュウグウ

『国は初期の五傑を超える存在と謳っているが、実際はそれ以下だということを言いたいのだろう熊』


ティアマト

『熊…まいあそりゃいいか、まぁ俺が言いてぇのはそういうこった』



初期の英雄五傑はこれだ



黒豹騎士ロイヤルフラッシュ

人間恐慌アクマ

道化傀儡グリモワルド・グレゴール

?????

?????


アカツキ

『残り2人は…』


ティア

『誰も知らないみたいだよね』


リリディ

『当時の5傑に聞かないとわからないねこれ』


アカツキ

『そうだよね、だが今は2か月を使って強くならないと駄目だ、抵抗できる力が無いと俺達にも選択肢はない、力が全てな国だしな』


ティアマト

『じゃあ必死に強くなるか』





俺達にはわからないことだらけだ

暫く談話したのち、ティアがウトウトし出したのを合図に俺達は寝る事にした

シングルの和室部屋は何故か落ち着く、窓から差し込む夜の灯りでも十分なくらい部屋の中を動ける


浴衣のまま、ごろりと布団に転がって天井を見上げていると、テラ・トーヴァが話しかけてくる


《五傑はマジで強ぇぞ?》


『何で知っている?』


《さぁてな、兄弟は今とても運が良い…いい情報を教えてやる》


『なんだ?』


《英雄五傑のロイヤルフラッシュ聖騎士長、どうだった?》


『強いよ、勝てるなんて思えないよあんなの』


《あいつは五傑で一番弱いぜ?》


俺は飛び起きた

あれが一番弱い?あり得ないだろ…


『馬鹿な…当時の五傑だぞ?一番弱いってのは当時だろ』


《いや…今でもそうさ兄弟、んでお前は英雄五傑だった2人に既に出会っている》


開いた口が塞がらなかった

こいつは俺にこういった


強くなるのも手だが、真の英雄五傑の手を借りるのも手だと言い放った

3人を味方にすれば、ロイヤルフラッシュ聖騎士長は絶対に手を出せない


しかし、彼は誰が五傑かを教えない、矛盾過ぎる

良い案を出したのに、教えてくれないのである


《自然に任せろ兄弟、いずれお前らの前に現れ、力になる…》


お前は何者なんだ?テラ・トーヴァが

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