第42話 虫虫虫編 1 度胸無し

…………………


アカツキ・ライオット




☆アビリティースキル


スピード強化【Le3】


気配感知  【Le2】


動体視力強化【Le2】




☆技スキル


龍・開闢  【Le2】


居合突   【Le2】


光速斬   【Le1】




☆魔法スキル




称号


・・・・・・・・・


リリディ・ルーゼット




☆アビリティースキル


打撃強化【Le3】


気配感知【Le3】


麻痺耐性【Le3】


スピード強化【Le2】




☆技スキル


ドレインタッチ【Le2】


骨砕き 【Le1】




☆魔法スキル


風・突風   【Le2】


風・カッター 【Le2】


黒・シュツルム【Le1】New


黒・チェーンデストラクション【Le1】




称号


リトル・クルーガー【黒】




☆称号スキル


毒耐性【Le1】


動体視力強化【Le1】




・・・・・・・・・・・


ティアマト・ウロボリス




☆アビリティースキル


斬撃強化 【Le2】 


気配感知 【Le2】


耐久力強化【Le1】


毒耐性  【Le4】


スピード強化【Le1】




☆技スキル


連続斬り【Le3】


鬼無双 【Le2】




☆魔法スキル




称号




・・・・・


ティア・ヴァレンタイン




☆アビリティースキル


安眠  【Le1】


気配感知【Le2】


麻痺耐性【Le1】


スピード強化【Le1】




☆技スキル




☆魔法スキル


火・ラビットファイアー【Le2】


雷・ショック【Le2】


木・スリープ【Le2】


風・ケア  【Le1】




称号


パナ・プレイヤー




☆称号スキル


デバフ強化 【Le1】


自然治癒  【Le1】


スピード強化【Le1】




・・・・・・・・




休みの日、特に用事もなかった俺は、冒険者の格好のまま近所を歩いていた




何処に行くかとか決めてない。


とりあえず散歩だ。




バーグさんが以前言っていたように『人と人が合えば何かが起きる』を実行してみることにしたんだよ




だが、最初に出会うのは人じゃなかった




『あ、アカツキ氏』




『あれ?ババトさん』




鳥人族のババトさんだ。


鳥人と付くが姿はほとんど鳥である




『今日は休みなんだ、だから木材を買いに行こうと思ってさ』




『クローディアさんのフィギュアですね?』




『そそそ!ちょっと高いの買って木彫りしようかなって!』




ちょっとテンションを上げるババトさん。




彼は以前にクローディアさんのフィギュアを作ると言っていた。それを俺が覚えていたことが嬉しかったらしい


尻尾をフリフリして可愛いが、男だ




『出来上がったら見せるね、アカツキ氏』




『わかりました』




『お出かけは遅く帰ったら駄目だよアカツキ氏』




『大丈夫ですよ』




良い人、いや良い鳥である






ババトさんと別れ、そのまま住宅街を歩いていると、偶然にも正面から歩いてくるティアに出会った。私服だ…至福なんつって




手に何かを持っているな・・・バスケットに・・・カツサンドが5つも入っているじゃないか!




『あ!アカツキ君』




俺を見つけた彼女は元気よく、急ぎ足で近寄ってくる。すると、いきなり起きたテラ・トーヴァが口を開く




《想われているな兄弟》




『いきなり起きて変な事言うなテラ』




《ケヘヘ》




なんて笑い方だよ…




こうしてティアがこちらまで来た。


ニコニコと笑みを浮かべている




何か用事なのかと首を傾げていると、彼女は昼食のおすそ分けを持ってきたのだという




しかも俺の家にだ




《なんだぁ兄弟、とうとう連れ込み開始か?》




『変な事を言うなテラ』




『何話してるの?』




『いや…なんでもないよ、テラはティアマトがタイプだってさ』




『凄いねテラちゃん』




《兄弟…恨むぜ》




お返しだよ






ティアを連れて自宅に戻るとソファーで母さんが暢気に小説を呼んでいる


父さんは仕事でいなかった




シャルロットはいない・・・多分2階で寝てるな


妹は昼食前に少し寝るからな




『あらま!アカツキがティアちゃん連れ込んで!』




その言い方はちょっとおかしい


引き攣った笑みを浮かべてしまうよ。


俺だけじゃなくティアも反応に困っている




『これ…おすそ分けです』




『まぁ!ティアちゃんは料理が上手いって聞いてるから嬉しいわ!うちの息子あげる』




母さん!!!!




『あはは…』




ティアは俺に気をつかったのか、否定はせずに苦笑いでやりすごしていた




リビングで彼女特製のカツサンドを母さんと共に食べる・・・美味い!キャベツが程よく入っていて食感も良い。




シャルロットが2階から降りてくる音が聞こえる・・・匂いに釣られたな




妹は飯の匂いに敏感だ。


妹がリビングにやってくるなり、ティアにすり寄るっていく。対するティアはニコニコしながらシャルロットの頭を撫でる




俺の妹をペットの様に…やりよる




『アカ兄、とうとうティアちゃんを釣った』




『お前まで母さんの影響受けてんのかよ』




誇らしげに胸を張る妹


ティアの顔が真っ赤だ。耳まで赤い・・・このままここにいては駄目だな




『じゃあ出ようかティア』




『えっ?あぁ!うん!』




『あら残念、またねティアちゃん』




『アカ兄、外で?』




妹の発言を無視し、俺はティアを連れて外に出た




逃げるように出てきたせいか、俺はティアの手を掴んでいることにようやく気付き、慌てて手を離す




彼女はあまり気にしてないようだ。いや、気にしていない振りをしているだけなのかな




『家まで送るよ』




『アカツキ君はどこかに行く用事とかあったの?外にいたけど』




『いや特にないよ。ギルド行って2階のテラスでのんびりしようかと』




『それなら行こっか』




と、一緒に行くことになる




彼女が着替えたいというので家に送り、外で待つっていると直ぐに出てきた。




俺達二人は冒険者ギルドにやってきた。


今日はちょっと暑かったな。


もうすぐ夏になるからなぁ




暑いのは苦手だよ…




2階テラスには二組の冒険者チームがトンプソン爺さんの屋台のオニギリを美味しそうに食べながら談話している


肝心のトンプソン爺さんは屋台の中で椅子に座って寝てるよ




空いている椅子に座り、寛ごうとすると近くで会話していた冒険者達の声が耳に入る




『虫多いなぁ!魔石が虫だらけって…』




『今年は多いらしいぞ。森に入ってすぐにソード・マンティスがいたのは驚きだが』




『火属性の魔法使いがいりゃ、今年の夏はボーナスなんだろうなぁ』




『エレメンタルレットもさほど出ないし、明日も虫だなこりゃ』




今は虫のシーズンか


夏場は多く発生するのは知ってるけど、今年は例年以上ってことだな




ティア


『虫かぁ、魔物はいいけど…』




アカツキ


『寝る前に聞こえる蚊の羽音は嫌だな』




ティア


『それわかる!私寝れなくなる!』




アカツキ


『1匹殺すまで寝れない』




ティア


『わかる!せめて寝静まってから安心して刺してほしい』




わかるわぁ




『虫の魔物か、グリーン・マンティスがEでソード・マンティスがD、Cに何かいたっけ?』




『Cは2種類いるよ?キラービーと般若蠍』




出会いたくない魔物だな。


Cはスキルの成長がある程度いったらやってみるか




『ティアはそこまで虫が苦手じゃないもんな』




『でもゴキさんは無理!Bに確かいるみたいな話は聞いたことあるけども。魔物の本には載ってないから半信半疑かな』




いるのかよ




それにしても彼女は機嫌が良いな


少しだけ彼女とのんびりした時間を過ごす。


まぁあれだ、こういうのも悪くない!




そうしているとテラスにクローディアさんがやってきた




どうやら俺達がいることを知って来たみたいだ。



何か用事なのかな?と思っていると、依頼のようだ。




『今年は虫魔物が多くてね、森の入り口付近にまで来る始末なのよ』




『結構凄いことですね、それ』




『一応入口には警備兵を配置しているし、まぁそこまでくる虫さんも強くは無いからいいんだけどもね。君達、入口周辺の虫魔物退治してくれるかしら?2人でも普通に倒せる虫さん達よ?』




人手が足りてないのかな?




夏手前、虫系の魔物が増えるのはわかるけれど、今年は異常繁殖しているようだ




ティアに顔を向けるとニコニコしながら頭を縦に振る。




それを了承と捉えたクローディアさんもニコニコしながら立ち上がり、テラスを出口に向かいながら、俺達に背中を向け、手を振りながらこう言った




『適度に倒すだけでいいわ。報酬は金貨1枚と銀貨8枚』




1人分が銀貨9枚か、まぁ人件費削減で俺達を使ったのだろうな




『アカツキ君、いこっか!』




『そうしよう』




入口付近の魔物ならばランクもFとEばかりだろう




森の入り口に辿り着くと、警備兵2人が何かを燃やしていた




更に近づくと直ぐにわかった。虫系の魔物だったよ


そこらへんに転がるのはランクの低い虫系の魔物、Fの虫系魔物のカナブーンや同じランクのオオダンゴという大きめのダンゴムシの魔物だ


カナブーンは30㎝、オオダンゴもそれくらいあり、どちらも攻撃方法は体当たりだ




それがここまで来たって言う事だね


なんとも面倒な話である


大きな焚火、みたいな感じではあるが…警備兵は熱そうにしている




『やぁアカツキ君、暑いのに火を見るのは地獄だよ』




警備兵が苦笑いで口を開く


3人共汗だくだし相当辛い筈だ




『お疲れ様です、クローディアさんの頼みで付近の魔物掃討をしにきました』




『ああ頼む、森の中で倒してくれると燃やさなくて済むよ、時たまグリーン・マンティスもいるから気をつけなさい…まぁティアちゃんのラビットファイアーあるなら大丈夫だね』




『頑張ります』




ティアが返事をすると、警備兵達はニコニコと頷く


森の中に二人で入っていくが、辺りの散策をする感じが良いだろう


森の中が涼しく、心地良い風が森の中を吹き抜けていくから快適に感じるよ




『あーカブトムシ』




ティアが木に近づいていく


木の蜜をなめるカブトムシをジーッと下から眺めているんだが、カブトムシは好きなのか…




『意外だな』




『そお?格好良いと思うよ』


 


『カブトムシがゴキさんみたいにカサカサ動いたらどうだ?好きか?』




『それは無理だなぁ、カブトムシさんはのんびりしててほしぃな、格好良いし』




カブトムシが格好良い…か


難しいストライクゾーンだなと感じながらも、俺はティアと共に背後に振り向いた




茂みからオオダンゴ2匹が体を丸くして転がってきた


いきなりですかと驚きながらも素早く刀を抜き、ティアと共にオオダンゴの体当たりを避ける




ティア


『丸いと固くなるのかな?』




アカツキ


『試してみるか?』




軽い会話をしている隙にオオダンゴはUターンして再び転がってきたんだ


ティアはサバイバルナイフを取り出して構える




彼女と同時にオオダンゴの体当たりを飛び越えながら斬り裂く


甲殻は固くはなかったよ


オオダンゴは緑色の血を流すと、そのまま転がるのをやめてゴロゴロ転がって倒れた




『魔石か、価値安いんだっけ?』




『銅貨くらいだよ』




『やっす…』




オオダンゴの体から出てきた魔石を2つ回収し、あたりを見回す




『ここら辺で歩きまわった方がいいな、怪我はないか』




『ないよ、後ろ気付いてる?』




『ああ』




俺は振り向きながら刀を横殴りに振った


魔物の気配を感じながら戦っていたからな


丁度良く俺の背後から飛び込んで来たのはカナブーン、羽を大きく広げて突っ込んできているたんだ


振った刀で斬り裂かれたカナブーンは地面に落下すると、魔石を体から顔を出す




『簡単には光らないよね』




『残念だがな、虫系は耐性スキル持ち多いと聞く』




『そうだね…、毒、麻痺、睡眠の耐性持ちは多いかも』




『難しいな、持つべきか持たぬべきか』




俺は魔石2つを拾い、空を見上げた


直ぐに別の魔物が近づいてくるのを感じると、俺は刀を構える


しかしある程度の距離まで来たら立ち止まったのだ、まだ茂みの向こうであり、姿は見えない




『あれ?』




ティアも気づいている


俺は彼女と顔を見合わせ、首を傾げてから気配の感じる茂みに体を向け、構えたまま待ち構える


だが一向にこちらに来る様子はない




『もしかしてだけどさ』




『私も何となく思うかなぁ』




『…マンティス系だな』




ティアが頷く


マンティス系は来るまで待つ魔物だ。


あっちが俺達に気付いているならば待っているんだ


獲物が近くを通るまである程度近付き、待つ




『居合突』




俺はそうとわかると、刀を鋭く突いて真空を飛ばす


それが茂みの中に消えていくと甲高い鳴き声が聞こえ、姿を現したのはやはりマンティス系


Eランクのグリーンマンティスだが、左鎌が欠損している。




一応当たったんだな




『キキキー!!』




『凄い怒ってるね』




腕を上げて足をバタバタさせているグリーン・マンティス


かなりご立腹と見てわかる




『!』




グリーン・マンティスは正面から真っすぐ走ってくると右鎌を振りかぶってくる


俺は攻撃される前に光速斬で奴の横を通過しながら首を刎ね飛ばしてから振り向いた


こいつも堅くはないからレベル1の技スキルでの容易く斬れる




だけども斬撃強化スキルは欲しいな




もう1匹、近くに魔物の気配を感じる


それは直ぐに森の向こうから飛んで来るが、カナブーンだ




『ラビットファイアー!』




ティアがすぐさま5つの火弾を飛ばし、カナブーンに命中するとそいつは激しく燃え上がって地面に落下していく


そんな俊敏に動けない虫の様だな


火が消えるとカナブーンの魔石も出てくるので俺はグリーン・マンティスの魔石と共に回収し、辺りの虫種魔物を手当たり次第に倒して回った




そうしているうちに俺とティアは4体目のグリーン・マンティスから光る魔石が出て来たのを見て驚きながら近寄る




残念ながら気配感知スキルの魔石だ、しかしスキル付きの魔石となると貴重である




『ティア、いいぞ』




『ほんと?』




『俺は斬撃強化が欲しい、まぁそいつが丁度よく来た様だし』




俺は空を見上げる


するとそこから魔物が飛んできて、高い木の中腹に止まったのを俺とティアは目で捉える


Dランクのソード・マンティスである、こんな森の入り口付近にくるというのは驚きだがな




『俺が倒しとく』




『わかった』




ティアが魔石のスキルを吸収している間、俺は木に止まってこちらを見ているソード・マンティスに歩み寄る




『キキキキ!』




『こいよ、お前のスキルが欲しいんだ』




通じたのか、奴は木から飛び立ち俺に急降下してくる


グリーン・マンティスよりも大きめ、両手は鎌ではなくて刃と特殊な魔物だ


奴が誘われたとわかると、俺は刀を構えて突っ込んだ




低空飛行から両手の刃を前に出して串刺しにせんと突っ込むソード・マンティスに対し、俺は寸前で跳躍し、奴の右肩を斬り裂いてから体を回転させて着地した




『キキキ!』




まだ動けるのか…、流石カマキリだ




飛行を止めたソード・マンティスは走ってくると、両手の刃を駆使して振り回す


刀で受け止めながら下がり、突き出してきた右刃を刀で弾いてから攻撃をしようとすると反対手の刃が直ぐに迫ってくる




『おっと!』




俺は飛び退く


ソード・マンティスは両手の刃を上に掲げて威嚇のポーズを取る、俺はアドバイスをそこで思い出して避ける事に専念したのだ




『ティア!麻痺頼む!』




『はい!』




『キーーー!』




彼女に指示を出した瞬間、ソード・マンティスは一瞬で間合いを詰め、×の字に刃を振ったのだ


完全なる前のめり姿勢によるその攻撃はテラ・トーヴァから言われていたよ、バツの字に斬ってきたらそれが隙になるってね




見てわかる通り、ソード・マンティスは全重心を前に出してしまったので前に転倒してしまったのだ


全体重を乗せた一撃、しかし体重を乗せる代わりにバランスを崩すとはな




『ショック!』




ティアの雷弾が綺麗にソード・マンティスの胴体に命中し、麻痺が起きる


俺は直ぐに刀を鞘に力強くしまい、開闢と叫ぶ


鞘から瘴気が噴き出すと同時にそこからそいつは現れた




仮面は口元が刺繍でギザギザとなっており、目の部分からは鋭い目がある


骸骨から多少マシな姿となっているし鎧も一際立派になっており、左手には刃が火で僅かに燃えていた


腰から垂れているマントは紫色となっていて、刺繍が入っている


そいつは燃え盛る刀でソード・マンティスを斬り裂き、燃やした






『殺傷力凄いよね』




『そうだな、これCランクもいちころじゃないのか』




俺はそう話してみると仮面騎士はこちらに振り向き、なんと初めて口を開いたのだ




『兄弟、当たればの話だぜ?』




『『!?』』




俺達2人は驚く、明らかにテラ・トーヴァの声だったな


奴は直ぐに消えていくと鎮火したソード・マンティスの体から光る魔石が出て来た


ティアと共に近付いてから魔石を確認すると、それは斬撃強化だ


直ぐに俺は魔石の光りを体に入れる為、掴んで吸収する




『あれテラちゃんの声?』




『そうだよティア、いつも俺の頭の中で話しかける声だ』




『渋かったね声』




『だな』




スキルを取り入れ、魔石回収完了


さてさてステータスは…と




…………………


アカツキ・ライオット




☆アビリティースキル


スピード強化【Le3】


気配感知  【Le2】


動体視力強化【Le2】


斬撃強化 【Le1】New 




☆技スキル


龍・開闢  【Le2】


居合突   【Le2】


光速斬   【Le1】




☆魔法スキル




称号


・・・・・・・・・




『やったね!』




ティアが手を握ってくる、嬉しいがそれは別の意味になる


しかし直ぐに手は離れる、少し寂しいと感じながらも夕方に近付いている為、俺達は森を出る事にした


まぁ入口の近くだし、直ぐに警備兵の元迄行けたよ




『いやぁ助かすよアカツキ君、君達が入ってから魔物が一切出てこなかったしね』




『そうそう、俺達もそのおかげでここで倒した虫魔物の処理が終わった、虫だし夕方だと大人しくなるからもう大丈夫だ』




『そうですか、では僕らはギルドに戻りますね』




『ありがとう』




ティアと共にギルドに戻る事にした


デートではないが、悪くはない


彼女のいつにも増して機嫌が良い感じがする




大通りを歩く人々を見ながら俺達は歩いていると、ふとティアが口を開いた




『パナプレイヤーってだけでそう言えば回復魔法師会ってとこから手紙が届いたんだ』




『ん!?それってまさか…』




『国で数人しかいない回復魔法持ちだけが入れる会なんだけども、多分バイトした時に私の話が凄い速さでコスタリカに言っちゃったらしいの』




コスタリカとはこのマグナ国の中心都市であり、国の心臓部分でもある


そこにはCランクの冒険者がゾロゾロいるらしいのだが


彼女の言う回復魔法師会とは希少な回復魔法を持つ冒険者のみしか入れない会員であり、国の財産としての人間の証明となるのだ




殆どがその会員になるとコスタリカに行くのだが…


ティアが俺の顔を覗き込んでいる、ちょっと顔色が良くないのを見られているな




《兄弟、ここは男を見せる時だぜ?ヒトんなよ?》




テラ・トーヴァが話しかけてくる


ティアは何を考えているのか、俺にはわからない


彼女の為に考えると入るべきだと思うのだが、俺の気持ちとしては別だ




『アカツキ君はどうすればいいと思う?』




『俺は…その、良い話だとは思うけども』




『けども?』




やけにかかってくる、ちょっと困惑してしまうよ




《はぁ…兄弟、お前情けないなぁ…》




『俺はヒヨってないぞ』




『テラちゃんに何か言われてるんだね』




ティアにバレ、彼女は笑う


普通に考えてどうすればいいのだろうか、俺の答えは彼女の邪魔になるのではないか?


しかし俺に話してくるという事は意見を聞きたいのだとわかっている




それを口にするのは緊張する


間違った答えを言ってしまえばまた前みたいに疎遠になるのは確定


父さんの格言はこうだ『やらないで後悔するよりやって後悔、やらない奴に歩みは無い』




言うしかないか




『俺は…その、嫌かな、コスタリカに言っちゃうのは』




『なら行かな~い!』




『え?』




彼女はニコニコしながら俺を越して前に歩くと振り返り、腕を組んで口を開いた




『ここに居た方が私は楽しいよ。早く帰ろっ』




彼女はそのまま俺から背を向けると機嫌よく歩きていく


俺は呆気にとられた顔をしながら立ち止まっていると、テラ・トーヴァは呆れた声で話しかけた




《度胸も鍛えないとなぁ兄弟》




『…そうだな』




俺は苦笑いしながら、前を歩いていくティアを追いかけた


ギルドにてクローディアさんに報告しようと受付嬢アンナさんに声をかけると、彼女は何故か応接室に俺達2人を呼んだのである

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