第13話 強敵!ケサランを守れ!

次の日、俺は仲間達と共に冒険者ギルドに向かったのだが

その日の様子は一段と変わっていた。


皆で中に入ると冒険者の他にマグナ国騎士達が大勢いたのである

赤いマントには龍の刺繍がされていて、それはこの国の騎士を表している


聖騎士が見たいなぁ


俺達は適当な丸テーブルの椅子に座って様子を伺う事にしたが、ギルド職員も何やら騎士達と会話をしている、ここからでは全然聞こえない


俺達の様に他の冒険者も騎士達が気になるようで、チラチラとカウンター付近に集まる騎士を見ている


『何かあったのかぁ?』


『ティアマトさん、人を食べましたか?』


『あぁん?殴られてぇかリリディ』


『も~、2人共ここで仲良く喧嘩しないで』


ティアが呆れた顔で口を開くと、椅子から立ち上がったティアマトとリリディは彼女の言葉を素直に聞き入れ、椅子に座り直す。

近くの冒険者に聞いてみるか


『何かあったんですか?』


『いやそれがなぁ、どうやらこのグリンピアの街にある大森林に黒くて巨大な龍のような魔物が向かった報告があったらしくてよ、騎士達はその龍を探しているらしいんだが龍なんているのかねぇ、いたら今頃この街はパニック状態だし俺は見間違いだと思うんだが』


『黒い龍・・・』


『どうやらちょっと前に上空を飛ぶ姿を見たという知らせが至る所の街であったらしくてよ…、方向的にこのグリンピアの街にある大森林なんだ』


ちょっと俺は顔が強張る、『ありがとう』と冒険者に伝えてから情報量として銅貨3枚を渡すと『毎度っ』と笑顔をくれた。


皆に顔を戻すと誰もが俺から視線を外す、はて・・・どうしたもんか

するとティアが小さな声で口を開き始める


『それってアカツキ君のスキルに関係する龍さんでしょ』


『僕もそう思いますが、あの騎士達は討伐隊・・というわけでは無さそうですね』


『だなぁ、討伐にしちゃ数が少ねぇ』


確かに龍となると国家の一大事、なのに騎士達はざっと見た所だと10名程だ

討伐ではなく、捜索なのか?いちいち聞きに行って変に勘繰られるのは怖いから知らない振りをするか


リュグナという黒い龍にこのスキルを知られるなと言われているから何となく今の状況でそれと照らし合わせると隠した方が自分たちの為だと何故か思ってしまう俺がいる


『早々と依頼を決めてこっから出たいな』


『そうだね、何があるか見に行こうか』


ティアと軽く話してからみんなで依頼板に向かう

どうやら今日は運よく冒険稼業を休む者達が多かったため、意外と良い依頼が残っていた

パペットナイト3体の討伐とハイゴブリン2体の討伐、そしてコロール1体が持つ鉄鞭の納品である

全てが魔物ランクEであるため、俺達には丁度良いのだ

それを受付カウンターにいる受付嬢アンナさんに渡すと彼女はいつもの笑顔で依頼書に判子を押してから俺に渡し、話しかけて来た


『調子いいねイディオット、怪我しないようにね』


『わかりました』


俺は依頼書を懐にしまうと仲間達と共に騎士達の間を通ってギルドを出ようとするのだが、すれ違うときに騎士達の話す会話が耳に入る


『黒い龍となると伝説の黒龍である奪宝ゼペットではないのか』


『しかし手負いと聞く、遥か北にあるガンテ山脈から来たというのか?何のために』


『まぁそれは明日にロイヤルフラッシュ様が聖騎士を率いて森の奥まで捜索に行けば分かる事だ、だが何故龍に近付くような指示をするのか、手負いでも化け物レベルの魔物の逆鱗に触れればひとたまりもないぞ』


『SやAの冒険者を集めて行かないと無理だろうが…、俺達は情報収集に勤しむぞ』













森の入り口に着いた俺達は溜息を漏らし、戦う前に疲れを感じた


『奪宝ゼペットですか、アカツキさん・・・貴方が出会った龍の名前はリュグナでよろしかったですか?』


『そうだな、あいつは自身を黒龍リュグナだと言ったんだ』


『しっかしよ、クローディアさんの話しじゃ見間違いで処理されたって講習会で言ってなかったか?なんだかそれを掘り返すっつぅのもなんだか気になるぜ』


『だけど今それがどういう意味から分からないよティアマト、俺達はいつも通り冒険をするぞ』


『へいへい』


『しゅっぱ~つ』


ティアマトが返事をするとティアが腕を上げて歩き出した

森の浅い場所ではゴブリンや格闘猿そしてウッドマンという木で出来た人型の魔物が現れたがそれらは危なげなく俺達が討伐して奥に進み、海抜の低い森に向かうために下り坂を歩いて下に降りてから川を岩場を飛んで渡り、奥の森に向かおうとした時にリリディがふと足を止めて俺達をしゃがませる


丁度いい茂みに姿を隠れるけども俺達はリリディが顔を向ける方向に視線を向けた。

そこには見た事もない魔物?がいたのだ


『何あれ?』


ティアが囁くように言うが俺達もわからない


全身が赤と黒で交わった鎧に包まれており、右手には大きな剣が握られているが人とは思えない気迫を感じる

人型の魔物?顔は鳥の口の様なフルフェイスでわからない、腰からは地面につきそうなくらい長い赤いマントをしている

距離は結構あるがあそこは俺がリュグナと出会った大きな木の根元付近

得体の知れない騎士はジッとそこを静かに見ていたのである


『そういえば得体の知れない騎士が海抜の低い森に現れると言っていましたね』


リリディの言葉で俺も思い出した、冒険者がそういえば言っていたな

魔物の気配は感じられないけども多分距離が遠いからだ、俺達は下手に接触しないようにその騎士を遠巻きにしながら森の中に行こうと視線を別に向けたのだが…


『いない』


ティアが呟くので俺は視線を騎士に移すとそこにいた筈の黒い不気味な騎士がいないのだ

驚いて全員で武器を構えて周りを見渡すけどもいる気配はない

今のは何だったのだろうか


『不気味ですね、しかしどうしましょう・・・このまま進みますか』


リリディのいう言葉に俺は頷いた

他の冒険者も遭遇したという事例は聞いている、しかし無害という事も知っている

ならば変に意識せずに俺達は俺達のしたいことをするだけだ


森を進んで数十分でハイゴブリン1体とゴブリン2体と遭遇するとデカいのはティアマトに任せ、俺とリリディでゴブリンを直ぐに倒してからティアマトに加勢しようとするが既に彼も倒し終えた様であり、ハイゴブリンが彼に斬られて倒れていた


『私、出番無かったけどもティアマト君凄いね』


『力が取り柄よ』


ティアマトは腕を組む、どうやらハイゴブリンが手に持つ錆びた片手剣ごと叩き割ったのだろうな、棍棒じゃないのは珍しいなぁ


倒れるハイゴブリンの傍には砕けた剣が散乱している


俺達はそのまま奥に向かうと雲行きが怪しくなってきたので残るコロールを急いで探すことにした


しかし探しても見当たらない、出てくるのはEランクのハイウルフがしつこいくらいに襲い掛かってくる。

5頭に四方を囲まれた俺達は急に飛び出してきた1頭を斬って倒し、ティアが手に3つの小石程度の火弾を出現させると手を大きく振ってそれを魔物に撃ち出した。


避けられてしまったがその隙にリリディが突風でバランスを崩し、俺とティアマトで2頭を斬り倒す

残る2頭だがそのうちの1頭がティアに飛び込んでくると俺は彼女を守るために走り出すがティアは焦ることなく懐からサバイバルナイフを取り出し、刃先をハイウルフに向け、手ではななくて剣先から雷弾を撃って跳び込んで来たハイウルフに命中させると麻痺状態にした状態で落下させたのだ


『せい』


優しい声で痺れているハイウルフの急所に一刺し

意外と躊躇いが無い事にビックリする

残りの1頭は俺達に吠えると直ぐに背を向けて森の奥に逃げていく


『ちょっとだけビビるな』


『そうですね』


ティアマトとリリディが会話をしている間に俺は魔石を回収し、戻りながらコロールを探すがいざ川辺に辿り着いてもその魔物は俺達の前に現れなかった

たまにある事だ、お目当ての魔物が一向に現れない時はある


『たっくよぉ。失敗時の違約金こりゃいくらだ?』


『Eランクの依頼書だから銀貨3枚だね』


『ケッ、しゃあねぇか』


俺の言葉にティアマトは溜息を漏らす

こうして海抜の低い森を抜けて坂を登ってからいつもの森の中を歩いていると雨が降り出し

皆で近くの大きな木の下で雨宿りする事になった


『雨、強くなってくるね』


ティアは空を見上げながら告げる、時計を出して見てみるとまだ14時だ

それなのに薄暗い、黒い雲だがこれは1日中降る様な感じだがこれは諦めて濡れて帰るしかないのだろうか


リリディは暢気にスタッフで素振りを始めるがそれはその為の武器でしかこいつはきっと思っていないだろう

魔法使いなのに杖を掲げて術を放つ姿勢を見せない、飽く迄あれは鈍器である

ティアマトは欠伸をし、木に背中を預けて休んでいるがそれなら俺も体を休めよう


『なんだか僕達、上手く行き過ぎている様な気がして不気味ですね』


『んだぁリリディ、どうしたんだ?』


『凄い順調なのが逆になれてないのですよ、スキル獲得から安定するまで1年はかかりますから、僕等はアカツキ君の特殊なスキルを使って1か月もかからぬうちにいっぱしに近付いているんです、驚異的ですよ』


確かにペースはどの冒険者よりも早い

ティアもリリディの言葉に口を開いた


『凄いスキルだよね、絶対獲得するってスキルは私も聞いた事ないな』


『勤勉のティアさんでも知らないとなると相当貴重なスキルです、アカツキさん』


『なんだ?』


『きっとそれを欲しがる輩は現れますのでこれはこのチーム内だけの秘密ですね』


『わかってる、リュグナも人に教えれば殺してでも奪い取ろうとする者は現れるって言ってた』


《俺が死ねばスキルが籠った魔石が出てくる、魔石は誰にも見せるな?龍の魔石となると人間の世界では莫大な金となる、夜に歩けなくなるぞ?殺してでも大金を欲しがる輩など人間には多いだろうしな》


俺はあいつが言ったことを思い出す

魔石の件はチームには言っているがそれは俺の部屋の天井裏に隠してある


『敵さんの登場だな』


ティアマトは立ち上がる

俺達も立とうとすると彼は『俺だけでいい』と告げ、手首を使って器用に片手斧を回し始める


『ガ・・ゴゴ・・・』


ゾンビナイトだ

騎士風の装備をした魔物だが顔が骸骨であり、錆びた片手剣を地面に引きずりながら俺達へと歩いてくると奴はいきなり歩みを止め、剣を振りかぶって一気に襲い掛かってくる


『アァァァ!』


『しゃらくせぇ!!!!』


ふと双方の武器がぶつかる瞬間にゾンビナイトの持つ剣が僅かに発光するがあれは技が出る直前に見る事が出来る現象だ、こいつの持つ技は連続斬りであり、それは素早い連続の斬撃を放つのだがティアマトの攻撃によって1発目で弾かれて仰け反ってしまっては技が意味もなくなる

ティアマトの筋力が勝り、2撃目を放てなかったんだ


『ガガ!?』


『寝てろ!』


左手でゾンビナイトの頭部を掴むと引き寄せ、膝蹴りをぶちかまして頭部を破壊する

あんな攻撃受けたくないなぁと思いながらも首のないゾンビナイトが地面に倒れる様子をただジッと俺は見つめている

あれ?体から出て来た魔石が発光していることに気付いたがマジ?


『おっ!!!!』


ティアマトが驚き、ニヤニヤしながら魔石に近付くと背後からティアが口を開く


『相手がスキル使う直前に倒すと獲得率が跳ね上がるって聞いたことあるよ、さっき敵が出そうとしたの連続斬りだもんね』


『だなぁ、悪ぃが貰うぜ?』


俺達に顔を向けるティアマトは嬉しそうだ

連続斬りはお前が使った方が良いだろう


皆で静かに頷くと彼は魔石を掴み、光を体に吸収していく

発光を終えた魔石を俺はティアマトから貰い、彼のステータスをみんなで眺める事にした


・・・・・・・・・・・

ティアマト・ウロボリス


☆アビリティースキル

気配感知【Le1】

毒耐性【Le1】


☆技スキル

連続斬り【Le3】New

鬼無双【Le1】


☆魔法スキル


称号


・・・・・



レベル3か、素晴らしいな

リリディやティアもそれには驚きを隠せない


『そろそろ最強だろ?俺』


『身も蓋もない事を言わないでくださいよティアマトさん』


ティアマトの言葉にリリディは苦笑いで答える

なんだかコロール依頼失敗も仕方ないと思えてくるしまぁいっか!


全員で雨に濡れないように木の近くを歩いて街に戻ろうとすると開けた場所に辿り着くが雨の中でも元気に咲く花を見ながら横を素通りしようとするとあの魔物が俺達の前に現れた


『フワッ!フワッ!』


ケサランだ、小さな綿であり、それは花の精霊だ

ティアの手元に飛んで来るが少し様子が可笑しいのである、彼女の手の中でブルブル震えるケラサンを見てティアは心配そうにしている


『雨が嫌いなんですかね?』


『リリディ君でもわからないんだ』


『私は魔物博士じゃないですよティアさん、人より詳しいだけですがケサランの情報は少ないのです』


『そうなんだ・・・ねぇどうしたのケサランちゃん?』


『フワーッ!フワッ!フワワ!』


何かを表現しようとしているがわからない

俺達は言葉が通じなく、頭を抱えているとその意味が向こうからやって来た


『!?』


誰もが気配感知で察しただろう

直ぐに俺とティアマトそしてリリディは武器を構えて気配を感じる森の奥に体を向けた

魔物、きっとケサランはそれに怯えていたのだろうとわかるが低ランクの魔物ではない

明らかに強い気を飛ばしている


『ケッ!今日も楽しいなぁ!』


『油断は絶対駄目だぞみんな!』


『わかってますが・・・これは珍しいですね』


ティアマト、俺、リリディが口を開くとティアはケサランを抱えたまま後ろに下がる


すると森の中から現れたのは今まで遭遇したこともない魔物だったのだ

あれは見た事がある、魔物の本でケサランの次のページに描かれていた魔物だ


見た目は蜥蜴だがその蜥蜴は既に死んでおり、蜥蜴の背中に生える大きな花が蜥蜴の内部を侵食し、寄生しているのでゾンビ状態で動いているんだ。


大きな花びらが咲いており、それは魔物の、ラフレコドラという花

開いた花からは3つの蛇みたいな頭部が顔を出すが気色悪い魔物だなこいつ

長い触手は2本ヒラヒラとさせ、全長1m半ほどの大きな花の化け物は俺達の前に現れた


こいつのランクはDだ、今の俺達では苦戦を強いられる敵だ


『皆、油断するな!』


俺は叫んだ、動きは鈍い魔物だと書いているのを忘れてはいない

しかしそれを補う特徴をこいつは持つ


『キュイィィィィィ!』


俺達を獲物だと認識すると2本の触手を伸ばしてくる

俺達はそれを飛び退いて避けるが直ぐにその触手は俺とティアマトに伸びていく


『おらぁ!』


俺は1本を斬ると横ではティアマトが掴んで無理やり引きちぎったが豪快過ぎる

するとラフレコドラは蜥蜴の足をバタつかせて怒りを見せてくるが意外とそういう芸当も出来るという事は器用に寄生先も操れるのか


『来ますよ!』


リリディの言葉と同時に花の中に隠していた別の触手が伸びてくる、何本あるのだろうか。

俺とティアマトはそれをかわしながら魔物に近寄るけどもいざ斬ろうとした瞬間に3つの口から緑色の唾液を吐いて来たので飛び退いて避けると地面に触れた唾液はブクブク音を立てている


『毒液か』


『面倒だぜ!』


ティアマトが舌打ちをする

リリディも前に出てきて3人となるがティアは背後でケサランを守っている

それでいい、雨じゃなければティアのラビットファイアーで優位に戦えただろうが今雨が降っている、火術は使えないんだよ、タイミングが悪過ぎる


伸ばしてくる触手の数が多く、俺達3人は武器で弾き返すが量が多くて徐々に押されてしまう

手数じゃあっちが上ならば少なくするしかないようだ


『リリディ、触手斬って!』


『わかりましたよ、カッター!』


振り下ろされる数本の触手に向けて撃ち出した風の刃は見事にラフレコドラの触手を切断し、魔物は甲高い叫びで苦痛をあげている


2本逝ったか、見える触手はあと4本だが俺とティアマトは走り出すとティアマトは連続斬りで触手を2本切断し、俺は1本斬り飛ばして本体に近付いた

すると花から出ている頭部3つが大口を開けて噛みつこうとしてくるがティアマトはなんと1つをぶん殴ってダメージを与える


痛そうな鳴き声をラフレコドラが上げる


『っ!?』


俺は迫る口を間一髪上半身を反らして噛みつきを避け、ごり押しで首を刎ね飛ばしながら転倒するともう一つが俺を狙って口を開いたまま伸びてくる。

尻もちをついたまま刀を振ろうとすると俺の目の前にリリディが現れた


『賢者バスター!!!』


真剣な面持ちでその手に握るスタッフをフルスイングするとパコーンッといい音を出し、ラフレコドラの頭は破壊された

その瞬間、魔物が激しく暴れ出してしまい、残る触手に俺達は当たって吹き飛び、地面を転がってティアの前で止まる


『大丈夫みんな!?』


『大丈夫だ』


『ぐ・・・痛いですねぇ』


『いってぇなぁ・・』


口々にしながらも立ち上がってラフレコドラに武器を構えるがかなり弱っている

残る頭部は1つ、触手なんて暴れているが既に近付いて攻撃する意味は無い


『1人じゃまだ倒せねぇ野郎だったが・・・』


『もっと強くならないといけませんね、ではアカツキさん?トドメを』


俺は静かに頷き、刀を鞘に強く納めながら叫んだ


『開闢(カイビャク)!』


刀から噴出する黒い煙から黒いアンデット騎士が飛び出し、それは目の前で暴れる花の魔物をいとも簡単に斬り裂いたのだ


『ピィィ・・ィ・・』


寄生された蜥蜴ドスンと力なく地に腹をつけ、背中の上の切断された大きな花は徐々に枯れ始める

倒したのだ、喜ぶというよりもホッとした気分だ

魔物Dランクなのだから今の俺達では少し荷が重いだろう、本当に雨が降ってなければ良かったなぁ


『光る魔石!』


ティアが強く言い放つ

魔物の体からは光る魔石が出てきているが何の魔石なのだろうかと俺達4人は近付いて手を伸ばしてみた

しかしそれは俺達が喜べるスキルではなかったんだ。

リリディが落胆した様子を見せ、口を開く


『安眠スキルですか、寝付き悪い人いますか?』


誰もが苦笑い、なんだよ安眠って・・・

仕方なくそれはティアが頂くことになったが彼女が体に取り込む。アビリティースキルであり、どんな時も寝ると決めたら直ぐに寝る事が出来る便利なスキルなのだ


『フワッ!』


『やった~、今日から安眠できる』


不思議とティアが嬉しそうだ


『多分だけどよぉ、ケサランを食べようとしたのかもな』


『それは嫌』


ティアマトの言葉にティアがケサランを手で隠すがそうしなくてももう大丈夫だ

ケサランは危機が脱したことにより、俺達の頭を飛んで嬉しさを表現しているが食われなくて良かったな


『僕達は今ずぶ濡れですね』


『そうだな、帰ろう』


ラフレコドラの魔石を回収し、俺達はケサランと別れを告げて街のギルドに戻った

やはりコロール依頼の失敗でペナルティーはあったが他の報酬で補えたので問題は無い

あるとすればやっぱりDランクの魔物の魔石は高いという事だ

合計だが金貨5枚に銀貨1枚だがラフレコドラの魔石だけで金貨2枚するから嬉しい限りだ

皆で分配してから残りは冒険者資金としてためておくことにして俺達はずぶ濡れのまま何故か2階のテラスに行こうとしたがそう言えば雨だったな、とテラスの前で皆で笑ってしまう


『トンプソンさんいないねアカツキ君』


『雨だぞ?やると思ってるのかティア』


『あのお爺さんなら!』


そうか、お前は無敵のお爺さんだと思っているのか

まぁしかし超健康そうな人だし間違いないだろうけどさ

濡れている俺達は受付から傘を借りて家に帰る事にした、家に帰ると直ぐに風呂に入り、着替えるが自室から窓を見てまだ雨が降っていることに気付く


『アカ兄ぃ、明日の朝まで雨だよ』


『いつの間にか背後を取らないでもらえるかなシャーロット』


『ニンニン』


背後を取れて満足したのか、妹はニコニコしながら俺の部屋を出ていく

夜食迄まだ時間はあるが仮眠でもするか、少し気疲れしたよ

今日は月曜日だ、休み迄スキル上げでもしよう、基本日曜日は休みにしているけども今回は土曜日も休みにしている


『黒い龍か』


騎士達が手掛かりを探している、それと同時に黒い騎士が海抜の低い森にある川辺にいたのが気になる

あれは何なんだろうと思いながらも俺はシャーロットにのしかかって起こされるまで寝る事となる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る