第6話 止まった時間を取り戻す


『ギャギャ!』


森の中に入るとゴブリンが背後から襲い掛かってくる

俺も気配感知取得しとけばよかったなと思いながらも飛び込んでくるゴブリンの短剣を刀で弾き飛ばしてから蹴って吹き飛ばす。


その後、直ぐに納刀して開闢を発動した。

鞘から噴出する瘴気から騎士のアンデットが飛び出すと転倒しているゴブリンに向かって一直線に襲い掛かり、斬り裂きながら通過し、消えていく。


流石にゴブリン程度ならば体力を減らさなくても一撃、体から出て来た光る魔石を握ると俺はそのスキルを吸収した


・・・・・・・・・

アカツキ・ライオット


☆アビリティースキル

スピード強化【Le1】

気配感知【Le1】


☆技スキル

龍・開闢【Le1】

居合突【Le1】


☆魔法スキル


称号


・・・・・・・


よし、先ほどはゴブリンだから不意打ちでも対応は出来たが他の魔物ならば危険だ

森に灯りなど殆どなく、あるのは星空から流れてくる星の光だけだ。

あまりにも暗い森の中を進むと鳥や小動物の鳴き声が不気味に感じる


『ティア!どこだ!』


いるかわからない森の中を奥に進みながらも俺は叫ぶ

自ら魔物を呼ぶ行為とわかっていても、それよりも優先しないといけない事がある。


途中、魔物の気配を感じた俺は横の木に目を向けるとそこに隠れていた魔物の目が光っていた、それは突然飛び掛かってくる。


『グルルァ!』


エアウルフだ、白い毛並みの狼だが尻尾が緑色で少し長い

ランクはEランクの魔物であり、俺のランクよりも一つ上だ


『邪魔だぁ!』


俺は抜刀した刀を力強く突いて居合突をする

すると突きの真空波が飛んでいき、エアウルフに当たるとまるで突き刺されたかのように胴体を貫いてその場に倒れた。


まぁこの技は武器の突きを飛ばす技スキル、有効範囲はあるけども近付いてからじゃないと威力は低くなる。

しかし、レベルが上がれば所定距離も伸びるので大事に育てればきっと役に立つ


エアエルフの魔石を取る事すら忘れ、俺はひたすら森の奥に向かって探し続けた


『ティア!どこだ!返事をしろ!』


魔物の気配も感じない、あらかたさっき沢山弱いのを倒したからか

肩で息をしながら俺はあいつが隠れそうな場所を探すために方向を変えて奥に入る。獣道であるため草木が俺の体に沢山当たるがかまいはしない


そうして抜けた先には生い茂る雑草に隠れた小さい洞穴だがこれは魔物の巣でもない、俺が昔見つけた秘密の穴さ

まさかいる筈無いだろうなと思いながらも俺は洞穴に向かって声を出してみた


『ティア!どこだ!返事をしろ!』


『わっ!…アカツキ君?』


あれ?あれれ・・・?

首を傾げていると小さい洞穴の中からティアがゆっくりと姿を現したがまさか本当にいるとは思わなかった

大丈夫かと口に出そうとしたら彼女はいきなり涙目になって俺に抱き着いて来たが凄い泣いている


少し胸が当たっていてそんな彼女の涙とは違った感情を俺は押し殺していた。

一先ず騒ぐとどんどんここに魔物が集まる危険性もあるし俺は彼女と一度穴の中に入る。


俺ティアの名前を叫びまくってたし今更騒いでももう遅いだろうが身を隠すには間違いではない

穴の奥は僅か10mほどしかない、そこで彼女を落ち着かせて事情を説明してもらったら俺は初めて殺意という者を人間に覚えてしまった



『森を出ようとしたらに強い魔物に出会って、でも戦っているうちに勝てないとわかって逃げることになったんだけども私逃げ遅れて・・・』


どうやら逃げ遅れた、それが理由

ゼルディムは仲間を置き去りにして逃げたのだろうな、本当にリーダーなのか疑う

多分帰ったら俺はあいつを斬りそうだ、リリディやティアマトに散々我慢しろと言っていた俺があいつを斬りたい思っている


涙目で説明している彼女はその場に座り込む、かなり怖かっただろうな

既にそのことが起きてから4時間以上、彼女はここに1人で逃げて隠れたらしい


『ティア、帰ろう・・・もうあいつらとかかわるな』


『え、でも・・・』


『お前は仲間を守ろうとしない男を信じてついていきたいのか?』


『ん・・・それは嫌・・・』


素直じゃないな、昔から恥ずかしがり屋なとこはあったから言い難いんだ

俺はティアの腕を掴むと起き上がらせて口を開いた


『帰るぞ、何年振りの迷子だよお前』


その時ティアはようやく笑ってくれた

俺はそれを見て安心するよ、怪我が無くて本当に良かった

逃げる原因となった魔物はどこにいるかわからないから正直怖い


俺より強いゼルディム達が逃げると判断したほどの魔物だし俺だけじゃ歯が立たない事は明白だ、祈るしかないか…


洞穴を抜けて静かに森を歩いて進む、ティアが怖がってないだろうかと思って彼女と手を繋いだまま久しぶりな会話を試みたが緊張する

ん?…というか手を繋いどる!繋いどる!10年振り!、冷静になろう

変に焦っても判断力が欠ける、話でもして気を紛らわすか



『そういえば親友のオトヒメとはまだ仲が良いのか?』


『オトヒメちゃんは学校終わって直ぐに家を継いだよ』


『そういやあいつ鍛冶屋の娘だもんな、お前はどうして冒険者になってるんだ?怖がりなのに』


『それは、その…』


少しモジモジしているが深く聞いて困らせたくはない

すまんなと謝ると逆に謝られた、本当にティアは変わらないな

ん?待てよ?変わらない・・・


俺は気づいた、昔からティアは何も変わっていない

そう勘違いしたのは俺の方だったのかもしれないと

無駄にこちらから近づくのをやめたのは俺の方からだ、もしかしたら俺のせいなのかと自分を疑う


となると永い間彼女との接点を絶ったのは俺なのだ、これが本当なら俺は気遣いしていただけ

普通に彼女と話していればよかったんだと無くした時間を後悔する


『すまんなティア、学校じゃ話しかけなくて』


『ううん大丈夫、私も話しかけていいかわからなくて戸惑ってたから』


やっぱりか、まぁでも仕方ないか

ティアと進んでいくと冒険者が通る道に出た、ここまで来れば街まで歩いて15分もかからないなと2人で安心していた時、俺の気配感知に物凄い気を感じた。

俺はその気配が後方から物凄い速さでこちらに向かってきているのを感じて振り向いたがその時には既に薄暗い道の先から何かが飛び込んでくる姿が目に焼き付く


俺は驚きつつもその魔物からティアを守るために彼女を突き飛ばしてから刀を直ぐに抜刀し、居合突で突きの斬撃を飛ばすとその魔物は俺の繰り出した技を弾き飛ばしながら飛び退いて唸り始めた


『グルルルルルル!』


『あ・・・』


ティアが酷く怯えている、多分この魔物で間違いない

月の光でその姿が薄っすらと見えたがこんな森の浅い所にいるべき魔物じゃない


猛獣という名が相応しいこの魔物はブラック・クズリである

体毛が無い茶色の筋肉質な体をし、頭部から赤い毛が背中を通り、尻尾の先まで伸びていた。

短い角は両側頭部から2本生えており、目は白くて鋭い

虎の様な体格をした非常に強い魔物だ


魔物ランクはCだがその中でも無類の強さを誇る肉食獣、今の俺には到底勝ち目は無い


『ティア、逃げろ』


『でも・・アカツキ君は』


『時間を稼いだら逃げるから先に道を真っすぐ走って逃げろ、んで誰か助けを呼んでくれ』


『そうしたらアカツキく『いいから行け、2人でここで死ぬぞ!!!』』


するとティアは涙目で道の向こうに走って行ってしまう、素直でよろしい

にしてもどうしようか、時間稼ぎ?無理無理・・・怖すぎて足が震えている

目の前のブラック・クズリは堂々と一歩一歩を踏みしめて俺に近付くがまるで敵と見なしていない


明らかにただの餌だという考えで迫ってきている

前足の爪もでかい、引っかかれればひとたまりもないだろう

全長は2mか


『グルルルル!』


俺は刀を構えて溜息を漏らす、死ぬと悟る恐怖はとても怖い

こういう時は笑いたくなるんだな、初めて知ったよ

泣き叫ぶかと思った


『はぁ・・・先が見えて来たんだ、ここで死にたくはないね』


その瞬間、ブラック・クズリが走り込んでくる

俺の近くまで迫った猛獣は飛び込んでくると両前足の爪を出して掴みかかろうとしてくるが俺はそれを避けるだけで精一杯、倒れるようにして避けるとブラック・クズリは直ぐに方向を変えて噛みつこうとしてくる


『居合突!』


上体を起こした状態で突いた斬撃、しかし奴を獣特有の動体視力を活かして近距離での俺の技をギリギリかわして距離を取った

姿勢を低くしてこちらを警戒している隙に俺は慌ただしく立ち上がると刀を向けてゆっくりと後ろに下がる

今逃げてもダメだ、ティアに向かわれたら俺が困る


技の乱発は出来ない、俺は魔力量が多いとは言えない

生きて帰ったら毎日瞑想でもしようと俺は誓った


『おわっ!?』


唐突に飛び込んでくるブラッククズリだが俺は刀で応戦するとそれはいとも簡単に弾かれて仰け反ってしまう、その隙に俺は体の正面を軽く引き裂かれてしまい転倒する

飛び込んで攻撃してきたクズリは後ろで着地すると下で口元を舐めて餌を食べたいと俺に伝えてくる

その餌は俺だが簡単にやられるわけにはいかない


しかし困ったもんだ、ここまで差があるのか・・・

思いっきり刀を振ったのに弾かれちゃったよ

傷口に心臓があるかのようにドクドクしている


『いってぇ・・・』


右手で刀を握り、左手で傷口を抑えながら立ち上がるとブラッククズリは吠えて来た

少し体をビクンと反応させてしまうがその隙に目の前の猛獣は俺の周りを縦横無尽に走り出して翻弄し始める

速い、流石ランクCだと納得出来るスピードを持つが俺もスピード強化スキンあるから避けるだけならばギリギリいける


四方から何度も襲いかかる攻撃を何度も避けた

攻撃できるなら避けながら刀で斬るが良くて皮膚を斬りつけただけ、ダメージというには心細いくらいだ


『こりゃアビリティースキルが今後必要だな』


『ドルルルゥ!』


『くっそ、勝てないか』


逃げるか?いや逃げ切れる自信はない

確かこいつはスキルを2つ保有しているのは魔物の本で見たよ

アビリティースキルの斬擊強化、技スキルの三連斬

確か技スキルの効果は一振りで三つの斬擊を連続で発生させる技だが欲しいな


しかし俺のとっておきは先程ゴブリンに使ったしあと1回使えてもそこまで考えながら戦える魔物じゃない


『この、くそ!』


何度も飛び掛かるブラッククズリだが名前の由来は夜に1つの村を半壊させた記録があり、それがこの魔物だがそれは人々が寝静まった時に起きた

夜の猛獣と言うことだがどうやら夕方ごろティアが偶然出会った時にこいつはどこかで寝ていて起きたのだろう


夜行性だからなこいつは


ブラッククズリの前足の爪が俺の顔面に襲いかかる

すれ違い様に側面を斬ったが浅すぎるし俺の右肩も軽くではあるが裂かれた、少しかすっただけだぞ!?


『ここまで強いのか…』


力で負けている、スピードでもだ

攻撃が来ても完全に避けきれない、何度も襲い来るブラック・クズリの攻撃を刀で応戦するものの

逆に弾かれて吹き飛ばされてしまう、これを何度もしていたって埒が明かない

やはり今の俺にはCなんて無理なんだ、俺の冒険者ランクはFでありE相手に丁度良くチームで対抗できる限界でもある

Dですら森で偶然出会っても避けているのに目の前には冒険者の壁とも言われる魔物


『グルァ!!』


『逃げる!!』


飛び込んで来たと同時に間一髪避けて俺は敵前逃亡した

勝てるわけない、情けなくてもいい

いつか勝てるその時までに強くなればいいけども今は時間も稼いだし生き延びないと駄目だ

出来ない事を恰好つけたって意味なんてないとティアマトは言ってたな


俺は後方から走ってくる虎の様な猛獣から全力疾走して逃げている

振り向きたくはない、あちらの方が足は速いのでたまに飛び込んで来た時には避けてから再度また俺は走り出す


『!?』


ふと足がもつれた、こんな時に

既に俺は疲労困憊だが当たり前である、前のめりに倒れた俺は体を回転させて仰向けになるとそこには跳躍して襲い掛かるブラック・クズリの姿が見えるがこうしてみるとデカいしスローモーションに見える

これは凄い不味い状況過ぎる


『グルァァァァー!!』


『うおぉぉぉぉ!』


大口を開けて襲い掛かる猛獣の口に刀を横にして咥えさせて難を逃れたがジリジリと押されていく

刀が折れない事だけがせめてもの救い、力は圧倒的にあっちが上だがここから逃げ出せれる気がしない


『おら!』


覆いかぶされている俺は倒れた状態から足を振り上げてブラック・クズリの腹部を蹴る

しかしちっとも痛がる素振りすら見せてはくれない、俺の蹴りなんて無視さ

俺の身長がもう少し高ければお前のタマタマ蹴ってやれたんだけども


ダメだ届かない…


両手で刀を押し付けて必死に耐えていると汗がダラダラ流れてくる、ここまでかと思った時にブラック・クズリは突然、道の奥から飛んできた火の刃に反応して飛び退いて避けた


ようやく解放された俺は溜息を漏らして大の字になる


『グルァァァァー!』


ブラック・クズリが執拗に吠えているが凄い警戒しているのだ、猛獣でも只者じゃないと悟ったのか?


どうやら助けが来てくれたような感じだが

街に向かう道から現れたのは俺の住んでいる街グリンピアにある冒険者ギルドの副ギルド長クローディアさんだった。

しかしいつも見る彼女の顔じゃなく、凍てついた顔をしている

左手はメラメラと燃え盛る拳、右手には立派な鉄鞭を引きずりながら徐々に猛獣に詰め寄る


俺は安心してしまい、動けなかった


『グルルルルル!!!』


『私の可愛い坊やに何をしてるんだ犬っコロ』


猛獣に睨みつけるクローディアさんは火を宿した左手を上げると俺が先ほど見た魔法を撃ち放った

彼女の手から一直線にブラック・クズリに向かう火が刃の形を構成し、飛んでいく


『ガウ!』


距離がある為、それを避けたブラック・クズリは素早く走ると俺を通り過ぎてクローディアさんに襲い掛かる、しかし飛び込んだ時には彼女は既にブラック・クズリの目の前まで素早く移動し、鉄鞭を振りかぶっていたのだ


『流れ星ダイナマイト!』


『ギャプラン!』


変な鳴き声を上げるブラック・クズリはクローディアさんがフルスイングした鉄鞭に直撃すると物凄い回転を見せて森の奥へと吹き飛んできてしまった

一撃であったが凄すぎる、副ギルド長は元冒険者の者が殆どだと聞いてはいるが彼女は実力者だった

戦う姿を俺は見た事なかったが今の一瞬でも手の届かない強さの人だってわかった


『助かった…』


ホッとした瞬間、体が酷く震えている事に気付く

余程切羽詰まっていたのだから仕方がないが…

そんな俺に向かって近寄る彼女はいつも通りの笑顔を見せる



『アカツキ君が相手するにはまだまだ早い魔物ね』


彼女は俺を起こしてくれた、俺は立てるけども傷が痛くてふらつく

至る所に傷があり、急に痛みが襲ってきた。


『ってぇ』


『よかったわね、ティアちゃんがギルドに駆け込んで知らせてくれたのよ』


『応援呼んで来たのがクローディアさんで助かりました』


『そうね、危ないから帰るわよ?次に私が襲っちゃうかも?』


クローディアさんは猫の手の真似をしながら舌を出す

それをしなければ先ほどの印象のまま、これで台無しである


『…はい』


クローディアさんと共に俺は森を歩いて帰る

歩くだけならば平気だが傷が痛む、久しぶりにこんなに怪我をしたな

途中道の前にゴブリンが2体いたがそれはクローディアさんが睨みつけるだけで一目散に走って逃げていく

とんでもない人なのかもしれないと思いながら冒険者ギルドに辿り着くと俺は直ぐに治療室に運ばれ、見慣れた白い部屋のベットに横になる


白い床に白い壁、ギルド内の医者が苦笑いしながら俺の服を脱がして薬草を傷口に塗ってから包帯を巻いていると彼が話しかけてくる


『常連さんにならないようにねアカツキ君』


『すいません』


『まぁ今回は運が悪かったという事・・・いやこの前も将軍猪だったしいつも君は運が悪いね』


『あはは・・はは』


否定できない、応急処置が終わると俺は1人になってしまい天井を見上げた

大事にならなくてホッと胸を撫でおろしたいがそれよりも先に忘れていた葛藤が蘇る


ベットの横には椅子が2つと小さな机、その机の上にあるグラスに入った水を飲んでいるとドアが開く

ティアとその父親ルーファスさんと母親のローズさん、そして警備兵の服装のままであるティアの兄のシグレさんが来てくれたんだ。


『アカツキ君にはいつも助かっている、娘を助けてくれてありがとう』


俺の手を握るルーファスさんは俺の容態を見て心配そうにしながらもそう口を開くとシグレさんも口を開いた


『アカツキ君、いつも君には世話をかける・・・すまない』


『いいんですよシグレさん』


ローズさんも俺に過剰過ぎるお礼を口にするとティアは俺の傷を見て泣きだすが泣きすぎだ

昔から変わらない、変わっていなかったならば俺は昔のまま彼女と接した方がいいのかもしれない


『私のせいでごめんねアカツキ君』


『気にするなティオ、あの屑野郎から身を引け』


『うん、・・・ありがとうね』


『いつものことだ、慣れてる』


少し笑ってくれた、それでいいさ

彼女と話をすると俺よりも感情を表に出したのはルーファスさんだった

彼はティアの娘なのだから


『あの馬鹿が!私の娘を置いて逃げて何がDランク冒険者のリーダーだ!我慢ならん!シグレ!あいつを連れてこい!斬れ!』


『父さん、今は他の警備兵が事情を聴きに行ってるから一先ず今日はこれ以上は無理だよ、でも後で殺す』



『シグレ、一先ず落ち着いて』


母さんも介入し、ルーファスさんとシグレさんを落ち着かせる

するとまたしても誰かが入って来たが俺の父さんと母さんに妹のシャルロットだ

その時の父さんの顔と言ったら凄い悲しそうな顔をしていた、気づけば包帯が赤く染まってたからだろう


妹も心配そうに俺に話しかけるが俺は無事だ、薬草を塗っているから痛みは無い

多分痛み止めとか入っているんだろうとは思う


『アカ兄ぃ痛そう』


『大丈夫さシャルロット』


妹の頭を撫でていると何やら俺の父さんとティアの父さんであるルーファスさんがお互い腰を低くした様子で話し合っている、するとティアの兄のシグレさんも顔を強張らせながら頭を低くし、俺の父さんと話し始めるけども俺の父さんは警備兵長だし上官なのだ、一応俺とティアは今まで距離を置いていたとしてもこの人たちの付き合いは続いている


医者が再び入ってくると傷が多いから今日は入院という形となり、俺の家族とティアの家族はまた明日来ると告げて治療室から出て行ってしまう

再び赤く染まった包帯を変えるために医者が机に紙袋を置き、それに使用済みの包帯を入れてから新しい包帯を巻きなおす


『よくまぁブラック・クズリに挑んだもんだよ君も、君もクズリみたいだねぇ』


『どうしてですか?』


『クズリは君らから見れば猛獣、しかし猛獣の中でクズリは小さい体格なんだよ…それでもあれは自分よりも大きく、そして格上にも牙を向ける、肉食獣で恐れを知らない魔物だからね』


そういうことか、というかあの時にはああしないとティアを逃がせれなかったんだよと医者に説明しても彼はただただ微笑むだけ

こうして包帯を巻き終えると今日は入院し、明日は安静だと告げて部屋を出て行ってしまう


冒険者ギルドは一応は24時間開いているが依頼受注は15時までと決まりがある、それ以降は21時まで冒険者はのんびりテーブルで寛げるがそれを過ぎれば職員の夜勤の人数名しかいない

緊急時の為に職員が待機している状態が21時からと覚えてくれればいい


ちなみに今の時間は23時を過ぎている


『それにしても刀って折れないなぁ』


机に立てかけている刀を見て独り言を口にする

明日は依頼を出来ないとなるとリリディとティアマトには悪いけども休みにしてもらうしかないな


『あれに勝てるようにステータスも増やしたり強化しない・・と・・ん?』


俺は目の前に自分のステータス画面を表示させる


・・・・・・・・・

アカツキ・ライオット


☆アビリティースキル

スピード強化【Le2】up↑

気配感知【Le1】


☆技スキル

龍・開闢【Le1】

居合突【Le1】


☆魔法スキル


称号


・・・・・・・


スピード強化のスキルレベルが2になっている事に気付いて俺はちょっと嬉しくて微笑む

まぁブラック・クズリから逃げるようにして戦ったり最後は超走ったし超格上相手に挑んだことが幸いしたんだ

俺はやり切ったと実感すると、目が重くなり、そのまま眠りについた

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