第5話 変わっていく僕らのライフスタイル

次の日から俺達は魔物の本を冒険者ギルドの中で広げ、何の魔物が何のスキルを持っているかを調べまくった

こうして頭に何度も魔物の詳細を調べていると自然と俺達はまだ出会っていない魔物の特徴や習性迄も頭に叩き込む事が出来たんだよ


『1週間はスキル狙いで行こうみんな』


『おうよ』


『わかりました、賢者用の魔法も本当に欲しいですね』


リリディから本音が出ているが魔法使いらしさがある魔法スキルが欲しいのはごく当たり前な考えだ

最新版の魔物の本ならばギルドに来れば見れる、勿論買うけどもまだ新刊は出ていない

こうして1週間俺達はお目当ての魔物を探すための森の川を上流に向けて奥に入ったりした

森の奥に行けば行く程魔物の強さも変わる、そして珍しい魔物とも出会う事が出来る

川の近くの森で見つけた単独の魔物、それは生き物というには難しい物体だった


エレメンタルエアロ、魔物ランクE

体の中央にある緑色の小さな水晶を起点に銀色の棘が噴出している物体だが正面から見るとその水晶は露出している為、そこを狙えば一撃で倒せるがこいつは風魔法を使う、カッターという刃の様なものを飛ばしてくる、空気を固めたかまいたちだな

俺とリリディが正面から戦っている時にティアマトが後方に回り込んで周りの金属物質を片手斧の一振りで粉々にするとエレメンタル・エアロは地面に叩きつけられ、隙を見せる

直ぐに俺が刀を納刀して叫んだ


『開闢!』


黒い瘴気の様な煙が俺の刀の鞘から噴出するとそれは直ぐに亡霊騎士が飛び出る、エレメンタルエアロに向けて刀を振り下ろして両断すると水晶は粉々に砕けてしまい、小石程度の魔石がエレメンタルエアロの体から出て来た、勿論光っている魔石であり、スキル確定だ


『リリディ』


『助かりますよアカツキさん、僕が大賢者の夢が達成した時はこの世の女性を全て貴方に差し上げましょう、アンナさん以外ですがね』


やっぱり受付嬢のアンナさんがお気に入りみたいだ

眼鏡を触る彼は魔石に手を伸ばすとそれを体に吸収した


『どうだリリディ』


ティアマトが話しかけると肝心のリリディは不敵な笑みを浮かべて腕を組んだ


『大魔法使いで今は我慢しときましょう!』


どうやらお目当てドロップした様だし安心だ


・・・・・・・・・

リリディ・ルーゼット


☆アビリティースキル

打撃強化【Le1】

気配感知【Le1】

☆技スキル


☆魔法スキル

風・突風【Le1】

風・カッター【Le1】


称号


・・・・・・・・・


スキルを手に入れたら森を帰るように歩いて魔物を倒す

たまに手強い魔物も出て来たけども3人で一斉に挑めばなんてことなかった

帰りの道中でティアマトはリリディの肩を叩くと口を開く


『いっぱしに見えるぜリリディ』


『それは嬉しいお言葉ですね、私もそれなりに戦力として胸を張れます』


『頼むぜ?』


『わかってますよティアマトさん、アカツキさんは何狙いか決めましたか?』


『ん~、まだ決まんないから明日はティアマトを優先してくれ』


『いいのかよアカツキ』


『ああ、悩んで決めるよりも決まってるティアマトの方が確実だ』


『悪ぃなアカツキ』


『大丈夫さ』


こういう日々を俺達は1週間費やした、時には目的の魔物と出会えずにただ魔石報酬だけをギルドに渡して小遣い稼ぎをしている日もある

こうして俺達は全員でEランクに昇格するための準備を整えたんだ

まずは俺達のステータスはこうなった


・・・・・・・・・


アカツキ・ライオット


☆アビリティースキル

スピード強化【Le1】


☆技スキル

龍・開闢【Le1】

居合突【Le1】


☆魔法スキル


称号


・・・・・・・・・・

リリディ・ルーゼット


☆アビリティースキル

打撃強化【Le1】

気配感知【Le1】

麻痺耐性【Le1】

☆技スキル


☆魔法スキル

風・突風【Le1】

風・カッター【Le1】


称号


・・・・・・・・・・・

ティアマト・ウロボリス


☆アビリティースキル

気配感知【Le1】

毒耐性【Le1】


☆技スキル

鬼無双【Le1】

連続斬り【Le1】


☆魔法スキル


称号


・・・・・・・・・・・


1週間が経過し、昼過ぎに俺達3人は冒険者ギルドの2階テラスにてトンプソンさんの屋台で鮭お握りを3個買って近くの白い丸テーブルに座って食べながら互いのステータスを見合っていた

いっぱしを名乗る兆しが少し見えて来た、上の冒険者なんてもっと良いスキルを保持している

強い魔物じゃないとそういったスキルは入手できないし当然だろう


しかし魔物100回倒してスキル1つドロップという悲しき確率

俺はその確率を無視したスキルを持っているが1日に1回しかこの開闢(カイビャク)というスキルは使用できない

普通は人の体に自然にある魔力の応じて回数が増えたりするがそれとは関係ないのだ

瞑想という特訓をすれば魔力量も増えるらしいので小さいころからただただ必死に瞑想ばかりしていたリリディはバンバン使えるけども使い過ぎると体に倦怠感を覚えて動き難くなるから無暗に撃ちまくる事は自殺行為でもある


一番リリディが魔力量は多いのは確実だがそれを数値化で見ることは不可能だ


『イディオット諸君も順調らしいじゃんじゃん!』


屋台から顔を出すトンプソンさんが笑顔で話しかけてくる


『はい!そろそろ昇格目指して頑張ろうかと』


『おぉ!偉いぞぉい!若者は先を進むからこそ輝くのじゃ!強くなって捕らわれの姫を助け出すのじゃ!』


『そんな姫いるわけねぇだろトンプソンの爺さん・・・』


ティアマトが苦笑いで告げるとトンプソンさんは頭を掻いて笑顔で答えた


『あはは、そうじゃな・・・まぁもしいたらの話じゃよ』


なるほどね、今そんな事を出来る程俺達は強くは無いけどさ

するとそこに偶然休憩に来たクローディアさんがテラスに入ってくる、トンプソンさんは鼻を伸ばして彼女を見ているとどうやらクローディアさんはその視線に直ぐに気づいて笑顔で彼に口を開く


『いつもお疲れ様ですねトンプソンさん』


『なぁに・・・クローディアちゃんの太ももさえ見れればワシは元気じゃよ』


『そ・・そうですか』


反応に困っているクローディアさんだがそれなりに仲が良いようにも思える

彼女は屋台で昆布と梅のおにぎりを1つずつ買うと近くの白い丸テーブルに座って食べ始めていたので俺達はあと2回のEランク依頼をこなせばランク昇格したいと話した、その時のクローディアさんは俺達よりも嬉しそうにニコニコしながら話してきたのだ


『ようやくボコボココンビも一人前になるのね!』


デコボコと言いたかったのだろうがそれじゃ痛々しい感じにしか聞こえない

3人で苦笑いを浮かべると彼女は話し続ける


『それだけ昇格に意欲があるならばスキルも充実してきたのねぇ、お姉さんに見せて頂戴』


『『『秘密です』』』


『あらぁ残念』


本当に残念そうだがそのうち見せますよと告げると再び笑顔に戻る


『ワシもその時には見たいぞい』


トンプソンさんも便乗してきた

俺達は今日は討伐はしない、要するに休暇だ

クローディアとトンプソンさんに別れを告げて住宅街にある家に向かう

どうやらFランクもそれなりに遅れてギルドに行けば残っている様なので明日は9時集合で集まろうと歩きながら話した


『はぁ・・面倒な事になりそうですね』


リリディが眼鏡を触って顔を少し下に向けた

俺とティアマトは正面を見るとそこから歩いてくるのは同じ冒険者、そして知り合いでもある

冒険者ランクD『ソード・ガーデン』のご一行だが俺達とかなり相性が悪い

それは直ぐにわかるだろう、チーム構成は片手剣2人、魔法使い1人、大剣が1人の4人だ

魔法使いは女性だが俺はその子を誰よりも知っている、近所に住む昔からの友達のティア・ヴァレンタインという同い年だ、魔法使いというよりかは補助魔法を使う子だね、幼馴染だし小さい頃よく遊んでいた

しかし歳をとるにつれてだんだん合わなくなっていたが別に仲が悪くなったわけじゃないんだよね

近所で会うとそりゃ話すさ、少なくなったのは残念だけども彼女の周りにも友達が出来始め、俺は気を使って自然と離れていってしまったんだ

今はそんな話はよそう



そしてこのチーム全てが同い年、リーダーのゼルディムがかなり厄介なのだ


『誰かと思えばボコボココンビじゃないか』


遠くからわざとらしく声を少し大きめに言い放っているが面倒だ

ティアマトが『あいつをボコボコにしていいか?』と告げるがリリディが止めた

互いに近付くと立ち止まってしまう。


ゼルディムは腕を組んで俺達を見回している

蔑んだ言葉が得意な男だが俺達は彼を避けている

いちいち一言が余計な男、と言えばわかるかな


『まだランクFだと聞いたが大丈夫かい?俺達はもうDランクまで駆け上がったのに君達はまだ最低ランクなのか』


『ケッ』


ティアマトが不機嫌そうになるとゼルディムの仲間達が少し驚く

なんだかんだ学校生活では番長的な位置にいたのがティアマトだったし怖いのだろう

ティアはなんだか困惑した顔でこちらをチラチラ見ているがそんな彼女と俺は目が合うと同時にリリディが口を開いて話し始める


『まだそこにおりましたよ、流石未来のS級冒険者様は成長が早いですね』


『君はわかるのかいメガディ君』


眼鏡とリリディを合わせたあだ名だがそれはリリディは好んでいない

その言葉を聞いたリリディは笑顔で俺に顔を向けて小さい声で言ってきた


『この者を撲殺しても良いでしょうか?』


『俺も手伝うぜリリディ』


『ではやりますかティアマトさん』


『いやいや我慢してくれよ2人とも』


冷静キャラを貫くリリディでもこの始末

そんな俺達の様子を見てゼルディム達は馬鹿にするような笑みを浮かべていたが依然としてティアは困惑した顔を浮かべている

ようやく彼らは俺達の元から去ろうとすれ違うとティアは俺に頭を下げてきて謝ったんだ


『ごめんねアカツキ君』


『君のせいじゃないよ、頑張ってねティア』


笑顔が素敵だな

黒い髪の可愛い子だ、昔からお姫様みたいな子だったけどもどうやら補助スキルの性能にゼルディムに魅入られて入る事になったとは近所で話を聞いている

悪い子じゃない


『おい行くぞティア!何してる!』


『はい!今行きます』


彼女は走って行ってしまうと俺達はそんな彼女の背中を見た

なんでティアがあのチームにいるんだろうかなってさ


『花があるのが唯一の救いのチームですが最近は伸び悩んでいるとも聞いてますね』


『どういうこったぁリリディ?』


『壁ですよ、Cとなると魔物の強さも本当の一人前じゃないと駄目な高みなんですから当然です、一年ちょっとのセンスだけでは乗り越えれない絶対的な壁がCなんです』


そうさ、Cになるのは難儀なのだ

厄介な魔物が多すぎて昇格するために幾多のチームが挫折し、命を落としたりもするとはクローディアさんから耳にたんこぶが出来る程聞いている

あいつらもその壁の前なんだろ


『にしても気にいらねぇ奴だな、いちいち口に出す言葉が気にくわねぇ』


『だが冒険者同士の問題は最悪冒険者資格剥奪だ、我慢してくれ』


『ったく、しゃあねーな!』


俺達は煮え切らないまま、家に辿り着いた

ソファーに座る父の隣に座ってオレンジジュースを飲んでいるが父さんはビール、母さんは台所でシャルロットと一緒に食器を洗っている

今月中には冒険者ランクEになるために上のランクを2つ依頼すると告げると父は凄い喜んでいたよ


『ようやくか息子!お前は慎重すぎだぞ?』


『でも俺はあんなチームでもリーダーなんだよ父さん、仲間を無駄に危険には出来ない』


『立派な事を言うようになって、まぁしかしあれだ・・・確かに魔物との戦いは危険が沢山だしお前の考えに間違いなんてない、上がれる時には上がっておけ・・・チャンスは簡単には来ないんだ』


『わかってるさ』


『ならいいな、そういえばお前のチームも3人だけだと心もとないだろう?誰か入れないのか?基本的に冒険者は5人だと危険が少なくバランスがいいと聞くが』


検討は無い、5人か…そんだけ仲間がいればきっと


『アカ兄ぃはティアちゃんがいいんだよね!』


台所から顔を出すシャルロットが余計な事を言うと父さんはニヤニヤしながら首に腕を回して肩を掴んだ


『あれれぇ!?昔一緒によく遊んでいたティアちゃんだろぉ?最近遊びに来ないけども父さん寂しいぞ?』


『誰だって歳を取れば事情があるだろ』


『まーたまたぁ!』


飲んだ時の父さんは先ほどのゼルディムより面倒である

母さんに助けられて僕は部屋に戻るとベットにダイブし、顔を窓の外に向けた

星空が綺麗で雲一つない、父が言っていたように昔はティアとよく遊んでいたっけ

たまにあいつ迷子になるから探しにいったりしたけども意外と泣き虫なんだよな

酷い時には森迄探しにいったよ、んでいたんだよなぁ…花積みに行って帰れなくなるとかよくあったよ

『懐かしいなぁ』


本当はまた遊びたい、というか話したいけども少し今更と思うと緊張しちゃうよ

ふと散歩したくなった俺は外に出る


弱小冒険者でも腰にはちゃんと父さんから貰った刀を持っている

名前はさっき父さんから聞いたけども『天狗』だ

これを腰につけていると不思議と落ち着く、夜の住宅街は静かだから静かに眠りにつきやすい

中心街に近いと夜もそれなりに人が歩くからここまで静かではないのである


『お、アカツキ君散歩かい?』


『そうです』


『若いねぇ』


『あはは、どうもです』


近所の人とすれ違うとそんな軽い会話をする

暫く歩いていると何やら奥の方で警備兵3人が誰かと話している姿が見えるがあれはティアの父親であるルーファスさんと母親のローズさんだがなんだか焦った顔をしているのだ

気になって僕は警備兵とティアの親の元に歩いていくとルーファスさんが俺に気付いて顔を真っ青にして走って来たんだ


なんだか良い雰囲気が全くしない、チラっと2階の窓を見るとティアの部屋の明かりがついていない

まさかなと思いながら軽く挨拶をするとそれを無視してルーファスさんが俺の両肩を掴んで話してきた


『私の娘が戻ってないんだ!今日は森に出かけると聞いたがチームメイトに聞いても解散してからは知らないというだけなんだ!』


『帰ってないんですか?』


『何か知らないかいアカツキ君!』


とはいっても俺にはわからない、あいつは寄り道なんてしない

依頼さえ終われば直ぐに家に戻る筈なのに帰っていないのか、警備兵に話を聞いても連れ去られたとかそういう様な事が起きない街だし街の中を巡回してはいるけども手掛かりはないとの事

時刻は21時、遅くても19時には家に帰る子だよ


『探してきます!』


『ありがとう!アカツキ君』


『お願いねアカツキ君!』


何故か警備兵よりも無駄な信頼を得ているが昔俺がよく探しに行っていたんだ

あのままの印象を俺に向けているんだよな、それを考えると俺はとても嬉しかった

ティアには兄がいる、20歳のシグレさんというこの街の警備兵だがあの人も必死で街を走り回って探しているんだとルーファスさんに聞いた


しかし探す場所は森だと俺は直感で思った、理由は無い

だけどもティアが戻れない場所はそこしかないのだ、今のあいつならば街のどこにいても帰れる

でも森に置き去りにされればあいつは帰れない、怖がりだからだ


俺はただひたすら森に向かって走った

住宅街からならば走れば30分で森の入り口にいけるだろう

リリディとティアマトを呼ぶ時間は無い、呼ぶべきだったのだろうが戻る時間は無いのだ

ただの直感だがこれは消去法だ、俺にとってティアが一番いて欲しくない場所から探す


この手に限る




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