第6話絡まりあう手で

そんなわけで購買でパンを買った俺らは学校の中庭で食べる事にした。

中庭には座れる場所がいくつかあり、その中で一番日当たりが言い場所を選んでいた。


「やっぱり~。春は外に食べるに限りますね。先輩! 」


と言ってメロンパンを頬張り始める。


「どこで食べても味は一緒だと思うけどな」


とざっくりとした事を言って見ると


「味は代わらなくても味わう方が変わりますよ。どこで食べたかや」


と途中で言葉を区切る。

どうかしたのか?と隣を見ると罪罪もこちらを見ており目があってしまう。

瞬間的に目をそらしたくなったが罪罪のまっすぐな目が中村を逃がさなかった。


「私達にとって一番味が変わるのは誰と食べているかです」


罪罪は笑いながら中村を見て言った。

それがどうゆう意味なのか。目答えを言っている気がした。

中村はそんな目を見ていられなくなり


「そ、そう言えば呼び方変わったよね?」


と話題を変えてみる。

その言葉を聞いて罪罪はキョトンとした顔になる。

春の風が中村達の間を通り過ぎていく。

そんな風が吹いた後


「あれ~。もしかしてなーくんってみんなの前で言ってほしかったですか! 」


と中村をからかうような口調で言ってくる。

「そんなわけあるか! 」


「じゃあどんなわけなんですか?」


くそ。こいつに餌を与えると永遠に食らいつくてくるな。

なんて言い返すか考えていると


「まぁお遊び無しで、答えるならちゃんとやってみようかなって」


と罪罪は答えた。

さっきまで持っていたメロンパンがもうなくなっている。

中村が返答に困っている間に食べたのだろうか。


「一気に恋人まで行くんじゃなくてちょっとずつ行こうかなって。まずは仲のいい後輩って感じでどうですか? 」


罪罪は、眩しそうに空を見上げる。

何かあるのか?と思いつられて見るが何もない。


「それは前に進んだのか?それとも後ろに下がったのか? 」


朝は自分の彼女だと言っていて昼になったら後輩になっている。

自分で考えても意味が分からない状況だ。


「進んだです」


と罪罪は空から視線を落とす。

結局何を見ていたんだ?それが分からないまま俺は


「まぁそれなら構わないけどな。心の穴とやらは大丈夫なのか?」

と罪罪の言葉を思い出す。

罪罪が言うにはストーカーしていた理由は心の穴を埋めたいからだと。

なら、心の穴はもう大丈夫になったのだろうか。

そんな事を考えていると


「もちろん穴を空いているままです」


罪罪は中村の手をとった。

中村はそれを拒む事が出来たが、拒む事が出来なかった。


「だから、ちょっとずつ満たして貰えるととても嬉しいです!」

罪罪はとった手を複雑に絡ませていく。

蜘蛛が蝶を捕まえたように。

中村と蝶の違うところは中村は自分の意志で蜘蛛の巣にかかってしまった事しかなかった。

あいつが言っていた通り俺は流されやすいのかもしれない。

まだ1日しか会ったいないのにここまで複雑に絡んでしまっている。


「だから、逃げないでくださいね。先輩」

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