第4話ココロノクスリ

今日も昨日のように春の陽気が感じられるいい天気だった。

今歩いている道は、夢追高校(ゆめおいこうこう)に向かっている通学路であり、沢山の生徒が歩いている。

そんな中、中村は普段なら浴びる筈のない視線を感じていた。

沢山の生徒達は、自分を見るたびにエラーが発生した機械のように動くをやめてしまう。


「いや、今日もいい天気ですね! 」


「そうだな」


今日も罪罪と俺は腕を絡めて歩いていた。

確かに腕を絡めるって登校など中々にバカップルだが問題なのはそこではなかった。


「ほら~。みんな私たちのラブラブな感じに嫉妬してるよ~」


「確かに見られてはいるがカップルとしてではなく、お前単体で見られている事に気づいてな。あと、いい加減腕離せ! 」


「あれ~。もしかして、私がかわいいからみんなに見られている事に嫉妬してるのかな?大丈夫!私はなーくん一筋だからね! 」


と離れるどころがもっと腕に力を入れてきた。

生暖かい感触が腕に広がる。

昨日は気がつかなかった小さな膨らみが自分の腕にあたっていた。

気がつかなければどうってことないが一度意識してしまうどうしても鼓動が恐ろしいくらいに早くなってしまう。

この感触から意識を反らす為に


「なあ? どうして俺なんだ? 」


と最初の方から疑問に思っていた事を聞いた。確かにかわいいと言ってくれたからと言っていたが本当にそれだけなのか?

罪罪は、しばらく考えた様子を見せて

「それは私が色んな人のストーカーを何故しているか?って事ですか?」


罪罪は、大分言葉を選んでいたらしくゆっくりと今の質問の答えを考えている。

考えているせいか歩くのがゆっくりになってので自分も歩くスピードを合わせる。


「なんと言うか恋をしている時の自分の心が満たされる気がするからですね。」


といつになく真剣な声で言ってきた。

いつものふざけた感じではなくしっかりと心を込めている感じがした。


「満たされる? 」


「はい。心の穴が恋によって塞がっていく感じがして」


と罪罪は静かに答える。


「それがエスカレートしていって今ストーカーって訳です。仲良くなる手順とか全部ぶっとばして最初からゴールに行こうとするから怖がれてしまうんです。中村さんの友だちの時もそのパターンでしたね」


罪罪は昨日とはまったく別人に見えた。もしかしたらこっちが素なのかも知れない。

話に聞きいているおかげかもうすっかり腕を組んで歩く事に抵抗を感じていなかった。

どんどん学校に近づいて行く為に中村と罪罪のカップリングを見る人達は増えていくが、もう気にしていなかった。


「だから、昨日なんだかんだ家に泊めてくれてびっくりしました。強引に部屋から追い出すことも出来たのに。この人私がストーカーだと知っているのに正直バカなのかなと思っていました」


と言って罪罪は、自分から腕を離した。

罪罪は、くるりと回って昨日と同じように目の前に立った。


「でもちょっと満たされました! 」


と言って笑顔を向けた。

その顔は強く掴んでしまえば簡単に崩れてしまいそうなくらい儚い印象を受けた。

そして、学校の方に罪罪は、中村を置いて走っていってしまった。

いつもの状態に戻っただけなのに、中村の腕はいつもより軽く感じた。

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