第27話 元カノを殺せ

「ところで、シュキイ姫」

「何?」

「どうやってここに? そして、どうしてここに来たのですか?」


 俺は率直な疑問を姫にぶつけてみた。

 姫はこう答えた。


「この大陸には、魔王様が設置した転移扉が7か所存在するの。私は魔王様の城にある転移扉を使って、ビリジアンの森に設置された転移扉から出て来たの」

「転移扉……ですか」


 俺は初めて聞く言葉を反芻した。


「冒険してて、こんなところにいるわけないだろって場所から、突然モンスターに襲われることがあるけど……魔王がその扉を使ってモンスターを瞬間移動させてたのね」

「そういうこと」


 カラムの反応に、姫が頷く。

 しかし、都合良く僕らの旅の行程が分かったなあ。

 その疑問に、姫はこう答えた。


「ユキイチロウは私にすぐ会いたいからきっと、危険でも近道を選ぶと思ったの。暗くて鬱蒼としたビリジアンの森、巨大なアリジゴクが点在する地護ノ巣の砂漠、断崖絶壁の……」


 姫が指を折りながら、この大陸にある難所を述べ立てる。

 そう、俺は姫に会いたいがために、カラムを危険な旅に巻き込んだ。


「ユキイチロウ、ひどい……」


 俺はカラムの視線が痛い。


「じゃ、次。どうしてここに来たか。つまり、あなた達に会いに来た理由は……」


 俺は姫の言葉をじっと待った。

 大好きな魔王の側を離れ、わざわざ俺達の前に姿を現した理由が何なのか。

 きっと、俺にとって嬉しいことでは無いはずだ。


「魔王様からの命令を伝るために来たの」


 なるほど。

 俺は王様を殺した。

 そのミッションはここで終わり。

 次のミッションが告げられるという訳か。


「シュキイ姫……俺は操り人形じゃない」

「ユキイチロウ……」


 姫は瞳を潤ませ、俺の手を取った。

 彼女の柔らかい手の平の感触が、俺の手の甲から全身に伝わる。

 だめだ。

 俺はこの人の言うことなら何でも聞いてしまいそうだ。


「……命令の内容によります」


 俺は苦しみながら、譲歩の言葉を吐いた。

 姫はにこりと笑った。


「魔王様の元カノを倒して欲しいの」


つづく

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