第24話 妹みたいな幼馴染が女らしくなっていく件
「急ごう!」
俺は前を向いて歩きだした。
「待ってよ! ちょっと疲れた。体がフラフラなの。休ませてよ」
カラムがしんどそうに言った。
へたりこんでいる。
「……そうだね。とりあえず休める場所を探そう」
俺はカラムを背負って、休める手ごろな場所を探しながら旅を進めた。
カラムの胸が俺の背中に当たる。
女らしくなったカラムの体に、俺はドキドキした。
先程、城の庭で抱き付かれたときもドキドキしたが、その時から、カラムを意識してしまっている自分がいる。
「こいつ、随分と女らしくなったな……」
妹みたいだった幼馴染が、女として成長していることに俺は、なんとも言えない気分になった。
「はあ、はあ……」
「大丈夫か?」
「うん。けど、ちょっと、しんどい」
夕日が沈むころ、俺はカラムを休ませることが出来る涼しい洞窟を見つけた。
そこに草を敷き詰め、カラムを横たえさせた。
倒れたカラムを休ませるために、俺は、洞窟で一夜を明かすことにした。
「大丈夫か? カラム」
「色々ありすぎて。それで、精神的に弱ったんだと思う」
俺はカラムの額に手を当てた。
「熱い」
思わず手を引っ込める。
「はあ、はあ……」
カラムは呼吸が苦しいのか、息を激しく吸ったり吐いたりしている。
「暗くなる前に、薬草を取って来るよ。あと、それと食料。何か食べなきともっと弱る」
武器を持ち立ち上がった俺の、ズボンのすそをカラムは掴んだ。
「一人に……しないで……」
「大丈夫。何かあったら、この笛を鳴らしてくれ。すぐ戻って来る」
ユキイチロウは、象牙で作った笛を、カラムに渡した。
「うん……」
俺は、洞窟を出ると山の方に進んでいった。
山の中腹には木が茂っている。
その中に、食料となる獣や、薬草があると考えたのだ。
「これじゃ、一週間で魔王のところにたどり着かないな……」
俺は溜息をついた。
カラムの身体が治らないと、旅を再開することが出来ない。
薬草の知識はそれほど豊富ではないが、子供の頃、シュキイ姫に教わったことを思いだした。
◇◇
「この赤い草が、体力が少し回復する薬草。この青い草が、体力が半分回復する薬草。そして、この緑の草が全回復する薬草」
「シュキイ姫は詳しいですね」
「もともとは医者になりたかったんだ。王国の皆のお医者さんに」
「へえ」
「でも、姫だから国の政治をやらなきゃいけないし、だから医者にはなれない……」
「姫……」
「ユキイチロウは、やりたいことやれて羨ましいな」
「俺が……ですか?」
「剣の修業をしてる時、楽しそうですもの」
「そ……そりゃあ、姫を、いや王国を守るためだから、楽しいですよ」
「ユキイチロウ」
「はい?」
「ありがとう」
◇◇
「姫……」
つづく
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