第23話 そして、魔王の元へ……

 王国を追われた俺とカラムは草原に二人、佇んでいた。


「どうしてくれるのよ!?」

「え?」

 

 不意を突かれた俺は肩をビクつかせた。


「な……何が!?」


 俺はしどろもどろになった。

 カラムの声は怒気をはらんでいた。


「私まで裏切り者になって、居場所がなくなったじゃない」


 口を尖らせて俺をを攻める。


「ごめん……」


 沈黙が流れる。

 どうすればいい?


「いいよ……」

「え?」

「君のためなら裏切り者にでも、何にでもなるって、さっき言ったし、それに……」

「それに……」

「私の手を取って、一緒にここまで連れて行ってくれたから」

「ああ……」


 俺は思い出した。

 王様との戦いの騒ぎを聞きつけた兵士たちから逃げる時、無意識にカラムの手を取って一緒に逃げたことを。

 自分でも不思議なのは、


 なんでカラムと一緒に逃げようとしたのか? 


 ということだった。

 王様を倒した時、兵士達から裏切り者と疑われていたのは俺だけだった。

 だから、カラムは逃げる必要が無かった。

 

 なのに、何で僕はカラムを一緒に、連れ出してしまったのだろう……


 俺がカラムを連れ出さなければ、彼女は裏切り者にならなくて済んだかもしれない……


 そう思うと俺は、カラムにすまない気持ちでいっぱいだった。


「ね、これからどうする? 実際問題」


 横で悩んでいる俺に、カラムは元気な声を掛けて来た。

 彼女は落ち込んでいない様子だ。


「魔王の元に一度戻ろうか?」

「大丈夫なの? それ?」

「早く魔王に、王様を殺したことを伝えないと、シュキイ姫が危ない」


 俺は魔王オークルとの契約のことを、カラムに話した。

 今のところ、俺がオークルの命令で王様を殺したということは、国中にバレていない。

 あくまで、俺の下克上のような形で、個人的に王様を殺したことになっている。


「魔王からは、一カ月以内に戻って来いと言われてるんだ」

「なんで?」

「一カ月経って帰って来なかったら、魔王は俺を裏切り者とみなして、シュキイ姫を殺すと言ったんだ」


 約束の一カ月まで、あと一週間しかない。


つづく

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