第20話 王様頑張る

 王様は炎の剣を手に取った。


 王様と俺は向かい合った。

 距離にして、二メートル離れている。


 俺はじりじりと近づき、王様との距離を縮めた。

 王様は下を向いたままだった。


「はっ!」


 俺は先手必勝とばかりに、振りかぶった。

 そしてオリハルコンで、王様の頭上に切り掛かった。


 ……と、見せかけて、しゃがみ込んで、王様の足を薙ぎ払いに行った。

 頭上への攻撃はフェイントだった。


 王様は剣で薙ぎ払われて、倒れた。

 倒れた無防備の王様の、首に向かって俺は剣を突き立てた。


 かつて、王様に教えてもらった通りの戦い方だった。


◇◇

 「ユキイチロウ、首だ、敵の首を狙え、そうすれば、相手を一瞬で倒すこともできる」

◇◇


「分かっていたぞ」


 王様は俺の行動を見透かしていたかのようだった。

 俺の攻撃を、自らの剣で防いだ。


「くっ……」


 俺はバランスを崩し、よろめいた。

 王国はそれを見逃さない。

 俺を斜めに切りつけた。


「うおっ」


 右肩を切られてしまった。

 血しぶきがほとばしる。

 痛みが全身を通り過ぎる。

 だが、間一髪で、致命傷を避けることが出来た。


「ユキイチロウ!」


 カラムが心配そうに駆け寄る。


「来るな!」


 俺はカラムまで巻き込みたくない。


「おりゃ!」


 王様は容赦なく、炎の剣で切りかかる。

 俺は避けるしかなかった。


素早い……これがレベル50か……


 レベル40のユキイチロウにとって、レベル50の王様は、たったレベル10の違いとは言え、強敵だった。


 炎の剣から噴き出す灼熱の炎に囲まれた。

 俺は逃げ場を失った。


「とどめじゃ!」


 王様が切り掛かってくる。


 もう、だめか。


 そう思った時、王様の身体が震えだした。

 

つづく

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