第19話 怒りの王様
不意を突かれたツヨシは、俺の一撃で息絶えた。
そのまま俺は、王様の方へ切り掛かった。
バレてしまっては、即、実行に移すしかない。
「愚かな奴め!」
王様は向かってくる俺を睨んだ。
キイイイイン!
俺の一撃を、王様は持っていた杖で防いだ。
そのまま俺を、壁に向かって弾き飛ばした。
ゴン!
「ゲホ、ゲホ……」
壁に体を打ち付けた俺は、喉が詰まって息が出来なくなった。
「ユキイチロウ!」
心配そうにカラムが、俺に駆け寄る。
「レベル50のわしに、レベル40のお主が勝てるわけがなかろう!」
それまで優しい表情だった王様の顔が鬼のようになった。
昔、戦士として活躍してた王様は俺を全力で潰すつもりだ。
「ユキイチロウは、シュキイ姫が好きだから、仕方なく魔王に従っているだけなんです。許してあげてください!」
カラムが俺をかばった。
「魔王などを好きになったシュキイも、裏切り者じゃ! もういい、人質がいない今となっては、我が国の全戦力で、魔王の城に攻め込むまでじゃ!」
王様は、姫を人質に取られていた。
王国の戦力を集めて一挙に攻めれば、魔王オークルを刺激し姫を殺してしまいかねない。
そこで、単騎で俺をオークルのところに送り込むことで、シュキイ姫を助けようとしていた。
だが、シュキイ姫もオークル側に付いたとなれば、国をあげて堂々とオークルの城に攻め込むことが出来る。
「まずは、この恩知らずを殺さねばならんな!」
戦士だったころの血が騒ぎだした王様は、血走った目で俺を睨みつけた。
「どけ! カラム」
「嫌です!」
カラムは首を横に振った。
「どけ!」
バシイ!
王様はカラムの頬を殴り、横に跳ね飛ばした。
倒れた俺に王様がこう言う。
「立て、ユキイチロウ! お前の力はそんなものか?」
王様は俺と、堂々と戦うつもりなのだろうか。
裏切られても、我が子同然の俺に情があるのだろうか。
俺の頭の中に、子供の頃の記憶が蘇る。
王様に剣術の修業を受けていた頃が。
◇◇
「ユキイチロウ、剣はこうして両手でしっかり握るのだ。だが、肩に力が入ってはいかん」
「なぜですか?」
「肩に力が入ると、こうやって体が硬くなって剣のコントロールが効かなくなるじゃろう。切れるものも切れなくなる」
「分かりました」
「ユキイチロウ、首だ、敵の首を狙え、そうすれば、相手を一瞬で倒すこともできる」
◇◇
「王様、手合わせ願います」
自分を立派な剣の使い手として育ててくれた王様への恩返しのつもりで、俺は王様と堂々と戦うことに決めた。
「いくぜ!」
つづく
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