第15話 君と一緒に戦いたい

「姫を助けになんか、行かせない!」


 カラムが俺に切り掛かって来る。


ガキイイ!


 俺は腰に差したオリハルコンの剣を抜き取り、カラムの銅の剣の攻撃を防いだ。

 その瞬間、銅の剣は真っ二つに折れた。


「くっ……」

「やめとけ、レベル15の君が、レベル40の俺に勝てるわけがない」


 カラムは距離を取り、詠唱し始めた。


「自然の摂理を曲げよ……炎玉ホムラ!」


 カラムの手のひらから、火の玉が飛び出した。


氷玉ヒョウ!」


 だが、俺も手のひらから氷の玉を発生させた。


 炎と氷の玉が俺とカラムの間でぶつかり合う。

 氷の力が強く、炎を凍らし掛けた。

 だが、


炎玉ホムラ!」


 カラムが次々と炎の玉を大量発生させて来る。

 俺も負けじと氷の玉で応戦するが、大量の炎に押されている。


「うわ!」


 炎の玉が一斉に俺に襲い掛かる。

 俺はそれを剣で振り払った。

 それに気を取られてたせいで、頭上からカラムが飛び掛かって来たことに気付かなかった。


雷光イカヅチ!」


 カラムの突き立てた人差し指からノコギリ型の稲妻が飛び出した。

 不意を突かれた俺は、避けることが出来ずに稲妻をまともに喰らった。

 感電して動けない。


 カラムが倒れた俺の上に覆いかぶさって来た。

 空中で魔法を使うという慣れないことをしたせいで、バランスを崩したのだろう。


「ユキイチロウ……」


 カラムが俺の胸に顔をうずめる形になった。

 長い髪が俺の顔に掛かる。

 いいにおいがする。


「カラム……」


 俺は感電していて動けない。

 動けるようになるにはもう少し時間が必要だ。


「ずっと、こうしていたかった……」


 カラムは泣いていた。


「カラム、どいてくれ」

「すっと、好きだったんだよ」


 カラムは甘えた声で言う。


 俺はカラムと10歳の頃、この庭で魔法の練習をしていたことを思いだしていた。


◇◇ 

「ほら、こうやってやるんだよ」


 俺はカラムに炎の魔法「炎玉ホムラ」の使い方を教えていた。

 だが、頑張ってもカラムの手のひらからはマッチほどの炎しか出ない。


「仕方ないなあ」

「ユキイチロウの教え方が悪いんだよ!」


 カラムは文句を言った。


「何だと!?」

「そんなことより、剣術を教えてほしいな」

「だめ」

「何で?」

「王様が、カラムは魔法使い系になってほしいんだって」

「何で?」

「剣の使い手ばかりいても、色んなことがあった時に対応できないからじゃないの?」

「そんなの、上の人たちの勝手じゃない! 私はユキイチロウと同じ剣の使い手になって、一緒に戦いたいんだよ!」

「アハハ、カラムの腕前じゃ無理だよ。魔法のほうが向いてるって」

◇◇


 カラムのやりたいことは、俺とともに戦い、生きることだった。

 だが、カラムは気付いていただろう。

 剣の才能は無く、魔法の方が得意だということを。


 魔法で俺を動けないようにしたカラムは、俺の服のボタンに手を掛けた。


つづく

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