第12話 嘘に嘘を重ねて、超気まずい!
国王は、俺を歓迎した。
「よくぞ、帰って来た。我が息子ユキイチロウよ」
捨て子だった俺を息子同然のように可愛がり、時には厳しく育てた王様は、ねぎらいの言葉を俺に掛けた。
王と食事をしながら、俺は気まずい思いをしていた。
自分が魔王の側に付いてしまったこと。
シュキイ姫が魔王を愛してしまっていること。
これらを隠して、俺は王様と旅の思い出を話していた。
「して、我が娘、シュキイ姫は?」
ギクっ!
「はい……それが、今回戻って来たのは、一度、態勢を立て直すためです」
「なんじゃと!?」
「長旅で大事な剣や防具がボロボロになってしまいました。王様も知っての通り、魔王の城の周辺は荒野で町一つありません。したがって、武器や防具が手に入りません」
俺は城に戻る途中で考えた嘘の言い訳をした。
「魔王との戦いを前にして、この装備では勝てないと思い、装備の充実を図るため、一度引き返してきたのです」
「なるほど……」
王様はがっかりした様子だったが、納得したようだった。
「そういえば、戻る途中でツヨシと出会わなかったか? お主の援軍として送ったのだが」
「いえ、見かけませんでした」
また、俺は嘘を付いた。
戦士ツヨシは、俺によって殺されたのだ。
俺が王様を裏切ったことを知ったばっかりに。
「では、ツヨシには、一旦ここに戻って来てもらおう。誰かに使いを頼むか……」
ギクっ!!
俺は喉から心臓が出そうなほど驚いた。
「私が行きます」
魔法文鳥のバードが王様の方にとまった。
「おお、バードか。お前なら空を飛んでいけるからモンスターの邪魔も関係ないな。行って来てくれ」
バードは俺にウインクすると城の窓から外へ飛び出していった。
俺はほっとした。
複雑な事情を知っているのは、ここではバードだけだからだ。
「ユキイチロウよ……少しゆっくりするがいい。そうだ、レベルは幾つになった?」
「40です」
「そうか、大したもんだな。この国にレベル40は、わしかお前だけだ。姫を頼むぞ」
「……はい」
「そう言えば、カラムが毎日お前のことを心配しているぞ。庭で剣の練習をしているから稽古付けてやってくれ」
カラムは俺そして、シュキイ姫と同い年の16歳の少女だ。
俺と同じように城門の前に捨てられた赤子だったカラムは、王様に我が子のように大事に育てられた。
同じ世代のカラム、俺、シュキイの三人は、兄弟姉妹のように育った。
つづく
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