第3話 ずっと前から好きでした
「ぐはっ!」
俺はオークルの強い一撃を喰らい昏倒した。
一瞬、意識を失い掛ける。
その時、俺の頭の中に、シュキイ姫との子供の頃の思い出が走馬灯のように駆け巡った。
◇
「シュキイ姫、待ってください。そっちは危ないですよ!」
「だって、あのウサギが逃げるんだもん」
俺とシュキイ姫は城を抜け出して、森に遊びに来ていた。
シュキイ姫は動物好きで、図鑑片手に森の動物たちを探し回っていた。
そこにシュキイ姫が大好きな、白うさぎが飛び出してきたのである。
お転婆なシュキイ姫は、そのウサギを追いかけまわしていた。
俺はその姿を可愛らしく思いながらも、何か起きるんじゃないかとハラハラしながら見ていた。
「あっ!」
突然、ウサギがシュキイ姫を出し抜くように、直角に曲がった。
姫は拍子抜けしたと同時に、足がもつれ斜面を転がって行った。
その先には崖が待っていた。
それを見た俺は、全速力で姫を助けるために走った。
「助け……」
シュキイ姫は助けを求めると同時に、空に身を躍らせていた。
ガシッ!!
「ユキイチロウ!」
俺にしっかりと腕を掴まれ、姫は崖から落ちることを免れていた。
シュキイ姫を崖から引き上げ、二人は一息ついていた。
「ありがとう、助けてくれて」
「なんのこれしき! 姫のためなら、何だってやりますよ!」
子供の頃から俺はシュキイ姫のためなら何だってできた。
城の門の前に赤ん坊のころ捨てられた俺は、王様に拾われ、それ以来、同じ年のシュキイ姫の遊び相手、友達として育ってきた。
王にも恩があるが、何より、シュキイ姫のことを愛していたんだ。
「ユキイチロウ、私が何かあった時は、助けに来てね」
「はい……」
いずれは王妃となるシュキイ姫は、常に敵国やモンスターから命を狙われていた。
俺は笑顔のシュキイ姫を見てこう思ったんだ。
姫は俺のこと頼りにしてるんだ! ……ってね。
あれ?
ちょっと、自惚れすぎかな。
「あっ!?」
スライムがいる。
シュキイ姫の背後に。
「姫、どいてください!」
腰の剣を素早く抜き取り、スライムに応戦する。
だが、このスライムは上級のスライムで牙を持っていた。
当時レベル3の俺にとっては手ごわい相手だった。
「くっ……!」
プルプルの身体を弾ませ飛びついて来た。
俺の右頬に牙が食い込む。
痛い。
だが、耐えろ。
姫を救うんだ。
俺は恐怖を抑え込み、力を振り絞った。
「どらああ!」
俺は上級スライムの脳天に剣を突き立てた。
透き通った体に剣が通り抜けて行く。
「ぷびゅ、ぷびゅ」
気持ち悪い音(声?)を上げ、上級スライムは煙になって消えた。
この世界のモンスターは死ぬと消える。
そして、数%の確率で
上級スライムはポーションの
勝利した俺はめでたくレベル4に上がった。
だが、頬に傷を受け、そこから毒が入り込んだらしい。
体中が痺れだした。
「ユキイチロウ、私のためにこんな目に、今、治してあげるわ」
レベル3のシュキイ姫は、治癒魔法使いだ。
「
自身のMP《精神力》を消費し、その魔法を使うことで、俺の毒を取り去ってくれた。
「姫……ありがとうございます」
「私こそ、ありがとう」
この時、俺は改めて思ったんだ。
彼女を一生守ろうと。
◇
意識を失いかけた俺は、頬の傷が疼くことで意識を取り戻した。
「姫を絶対この魔王から取り戻す」
つづく
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