仕事終わり (2)
豪奢な広場。その中央にある池の前に佇む、長身の影があった。
池に写るのはある街の風景。そして、やる気のなさそうな青年の姿。
「此方にいらっしゃったのですか」
幾分呆れを含んだ少年の声に、影はゆっくりと振り返った。
動きに合わせ、腰まで伸ばした銀髪が揺れる。
「やぁ、キミでしたか」
「やぁじゃありませんよ」
少しだけ怒ったように呟き、影の横に並んで少年は池を覗き込んだ。
「何を見てらっしゃるのです?」
「下界の様子を、少し」
しかし少年はその言葉を無視し、影の見ていた人物を認め感心したように頷く。
「彼らですか。史上最年少にして最速の回収率を誇る『サンタクロース』は」
やる気の無い『サンタクロース』に、まるで従者のように側についている『トナカイ』
ウワサ好きの上層部の間では、少しだけ話題の二人組だ。
「今年も、一番早かったそうですよ」
楽しそうに笑う少年に、「そうですか」と薄く笑って返し、影は再び池を見る。
写るのは、変わらない青年の姿。
誰よりもこの『仕事』を厭い、好いている幼い『サンタクロース』
「難儀な人ですよね、貴方も」
微笑む影の服を軽く引き、少年は動かない彼に、少し焦る。
「そうだ、そろそろ会議が始まります! 遅刻したら私が怒られるっ!
早く行きましょう、『神様』!」
「ハイハイ」と軽く返事をし、影と少年の姿は重厚なドアの向こうに消えた。
戯れに、鈴の音を響かせて。
聖夜の天使たち 月野 白蝶 @Saiga_Kouren000
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