仕事終わり (1)

「マスター、今晩何食べますか?」


 帰りにスーパー寄っていくので、ついでに夕飯の材料を買いましょうと、やけに所帯じみた事を言い、都那戒は車を走らせる。


「お前の嫌いなモン」

「ボンネットに括りつけて時速150キロで走りますよ?」

「ごめんなさい」


 顔がマジだった。今ぜってー本気で言った。本気で俺をボンネットに括りつけて時速150キロで走るつもりだった。

 誤魔化すように視線を窓の外に向け、何が食いたいかを考える。

 温かいモンがいいよなぁ……んで、麺。でも、うどんって気分じゃねぇし……


「蕎麦」

「クリスマスに蕎麦とはなかなか斬新ですね」


 るせー。食いたいモンっていうから食いたいモン言っただけじゃねぇかよ。

 都那戒は小さく笑いやがった。


「分かりました。じゃあ、蕎麦にしましょう。

 具材は何にします?」

「天ぷら」

「ハイハイ」


 物分かりのいい親みたいな口調で軽く返事をし、都那戒はスーパーを目指して車を進める。




 雪はもうすぐ止みそうだ。

 この雪が止む頃には、『聖夜の天使たち』も眠りにつけるのだろうか。




 なんてくだらない事をくだらなくもマジメに考え、俺は少しだけ眠りに落ちることにした。

 明日から一年間また続くであろう、雑用ごなしの日々を思いながら。

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