仕事その3 聖夜の主役たち(1)
「思ったより、スムーズに進んでいますね」
前を見たまま安全運転でハンドルを切る都那戒が、感情の籠もらない声で言った。
時間は大分経ってすっかり夜だけどな。始めた時間が遅かったから、それは当然と言えば当然か。
いい加減俺は疲れた。てか、寝てぇ……
「次は大人数になりますが、大丈夫ですか?」
「ダメだっつっても、しなきゃなんねぇんだろ?」
「当然です」
だったらハナから聞くな畜生。涼しい顔で断言しやがって。
シートに深く身を沈めて舌打ちをする。
俺をチラリと横目で見、都那戒は何も言わずに左に曲がる。
向かう先は街中央部にある広場だろう。どーでも良いけど。
着くまでそんな時間はかかんねぇだろうけど、軽く目を閉じる。少しだけ寝る。もう無理。限界。
隣で都那戒が溜め息をついた気がするけど、それさえ無視。
どうせ、寝ても寝なくても仕事内容は変わんねぇんだ。だったら少しでも体力温存した方が得策だろ。
小さな車の振動が、程よく眠りを誘う。
あと何件仕事すんだろ………
ま、いっか。
*
街中央部の広場には、人が溢れかえっていた。ホント、どっから来んだ? ってくらいの人の山。
どでかいツリーが飾ってあるから、余計に人が集まってくんのか? 老若男女問わず色んなヤツがいるけど、やっぱカップルが多いな。
あー………溜め息が………
「コレはまた、凄い人ですね」
関心したように言うなよクソが。コイツら相手に仕事する俺の身にもなってみやがれ。
舌打ちを堪えて袋を構える。
タイミングは、都那戒からの合図。
てか、こんな大人数を『対象者』にするなんて、上はよほど俺たちを過労死させたいらしい。袋使うのにどれだけ気力使うと思ってやがる。
「そろそろですよ」
「チッ」
思わず舌打ちしちまったじゃねぇか。
息を吸い、瞼を閉じて神経を袋に集中させる。
「
どこにいても、どんな場面でも、冷静さを欠かない都那戒の声。
「
冷たい風が、頬を撫でた。
「
目を開ける。
「0」
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