16話 人選失敗
「ついにきたよ」
「初デーーーーーーート!」
「うるさい。バレるでしょ」
坂上の頭を叩き、黙らせた。
「っていうかさ、その格好おかしくない?」
「サングラスぐらい当たり前でしょ。坂上は普通すぎ」
「マジか。もっと本格的にやればよかった! っていうか、犬飼がそこまでするの珍しいー!」
「たまたま家にあった」
「どんな家だよ!?」
「細かい所はいいから。来たよ」
「お!」
「ごめんんなさい。お待たせしました!」
「いえ全然! それじゃ、行きましょう!」
「行くみたい。最初はどこだっけ?」
「水族館だってよ! 魚楽しみだなー」
「心は少年ね」
私達は前を歩く二人にバレないようにこっそり着いていった。
「見てください! 凄く綺麗ですよ!」
「凄いわ!」
「すっげぇ! すっげぇ!」
「……」
次は遊園地。
「キャーー!」
「すっげぇすっげぇ!」
「……」
最後は小さなカフェのような場所へ入った。
「わあ、可愛いわ!」
「ですよね!」
「美味い!」
「今日はありがとう! 凄く楽しかったわ!」
「いえ! 俺も楽しかったです!」
「犬飼楽しかったな!」
「アンタ、馬鹿ね」
私、人選失敗したわ。
この男、ただ楽しんでるだけじゃない。
何も話せないし、面白くない。
「あ! 目的忘れてた!」
「最悪……」
今日はただただうるさい坂上と二人で色々な場所を回るだけになってしまった。
正直、集中して二人のことを見れていない。
「はあ」
「ごめん! 本当にごめん……」
「大丈夫。これからは坂上と行かないから」
「えー!?」
驚いてるけど当たり前じゃないか。
今までの自分の行動を見返せ。
「どうしたら許してくれる?」
「別に許すとか許さないとかない。怒ってないし」
「本当か?」
「本当」
「ありがとな! 犬飼!!」
素直すぎて対応に困るのはいつまで経っても慣れない。
何で慣れないんだろう……。
「それじゃ、私帰るね」
「了解! また月曜!」
「また」
大きく手を振る坂上はまるで大きな犬のようだった。
「おかえり」
「ただいま」
「……どうしたの? 珍しく『おかえり』なんて言って」
「なんとなく」
「おかしいわね。“お父さん”帰ってきてるわよ」
「そ」
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