いってらっしゃい。帰ってくんなよ！！

１５話 信憑性のない

「噂ってさ」

「ん？」

「噂って、何の証明もないよね」

「まあ、それが噂だからな」

「嘘か本当かは本人にしか分からない、か」

　噂で傷つけられる人も少なからずいる。

　噂はいつまで経っても消えることはない。

　誰かの頭に残って、生き続ける。

　つくづく嫌な言葉だ。

「その噂、続きないの？」

「ある」

「それじゃ、話して」

「了解」

　坂上はぽつぽつ話し出した。

「その噂さ、さっきも話した通り鶴貝先輩が中学の頃、グループチャットで噂されてたらしくて」

「チャットね」

「そう、王道だけど。だから、同じ中学だった浩介の耳にも入らなかったわけ。同級生でもそのチャットに入ってた人しか知らねぇらしい」

「そう。鶴貝さんは知ってるのかな？」

「分からない。でも不登校とかボッチになったりとかはなかったらしい」

「なら知らなかった線の方が高いね」

「そうだな！」

「尻軽、ね。風学生なのに妙な言葉を使うことで」

　ませてる。

　年上だけど、思春期拗らせすぎじゃないの？

「尻軽の他にも……」

　眉間に皺が寄るような内容だった。

　正直、本人は知らない方がいいような内容。

　私でも言われた嫌なような言葉ばかり。

「年上だけどさ、子供すぎるでしょ。考えて分からないのかな？」

「分からないからこうなってるんだろうな！　俺でも分かるし」

「その噂ってさ、発信元が誰とか分かるの？」

「そこまでは先輩も知らないってよ。急にグループチャットで言い始めたらしい」

「信憑性もないのか」

　信憑性がなければ証明もできない。

　最低だこと。

「犬飼はさ」

「何？」

「何でそんあに鶴貝先輩と浩介の恋愛に興味示すんだ？」

「……純粋同士の恋愛は見てて飽きないの。ドロドロしてなくて闇もない。こんな恋愛見れるのは今だけよ」

　大人になれば嫌でもドロドロしている恋愛を見るようになる。

　純粋な子なんて高校を卒業すればそうそういないからね。

「なるほどな。でも、その気持ち分かるわ」

「そうだろうね。坂上はドロドロ中心だし」

「心抉るな……」

「坂上はさ」

「？」

「本気で恋愛したいって思ったことないの？」

「……あるよ」

「あるんだ」

「疑ってたのかよ！？」

「当たり前でしょ」

　中学の素行を見てたらそうなるわ。

「その本気で好きだった人、年上だったんだけど告白して付き合って。でも、浮気された」

「へぇ」

「その浮気相手、超金持ちイケメンでさ。完全にスペック負けてた」

「ドンマイ」

「つめてぇ！」

「その人とは縁がなかったってことよ。女なんて山ほどいるわ」

　いつか、アンタが本気で好きって女が現れるわ。

　それまで気長に待ってろ。

「そうだよな。世の中男と女しかいねぇし」

「細かい所を除けばね」

「あぁ……」

「とりあえず、その鶴貝さんの噂のこと引き続き聞いてみて」

「了解！」

「頼んだー」

「任せっきり！？」

「当たり前じゃん。今までの分よ」

　私はお札を置いて店を出た。