いってらっしゃい。帰ってくんなよ！！

７話 先輩

「あ。犬飼ちゃん！！」

「お久しぶりです」

「どしたー？　急に私に会いたいなんて、私ドキドキしたよ！」

「ありがとうございます」

「相変わらずー！」

「話変わりますけど。この学校に大和撫子みたいな人います？」

「大和撫子？」

「清楚で綺麗な女性のことです」

「あーいるいる！」

「どの人ですか？」

「え。もしかして……！」

「そのもしかしては一生ないです」

「えー」

　ここで残念がるのはおかしくない？

「早く教えてくださいよ」

「はーい！　私と同じ学年で２年３組、鶴貝宮子（つるかいみやこ）ちゃん！」

「鶴貝宮子さんですね？」

「そうそう！　学年１の美人！」

「たしかに。綺麗な人でしたね」

「見たの！？」

「はい」

「ほえー」

「何かありますか？」

「特になにも！」

「あ、そうですか」

「そういえばさ」

　これは長くなりそうだ。

「坂上くんもこの学校に入学したんだって！？」

「あー」

「犬飼ちゃん坂上くんと仲良いでしょ！！　いい加減紹介してよー」

「嫌です」

「えー」

　先輩はいつも坂上のことを紹介してほしいと頼んでくる。

　別に紹介するのが嫌なわけじゃない。

　面倒くさいだけ。

　人に人を紹介するとかトラブルのもとになるでしょ。

「それでは。聞きたいこと聞けたんで失礼します」

「はーい！　いつでも遊びに来てねー」

「もう来ないと思います」

「冷たいー！」

　私は先輩の教室を出た。