4話 好きな人

「へー」


 流れが一緒に帰ることになった。


 本当は1人でゆっくり帰るはずだったのに。


「ちょっと気になることできたんだけどさ!」


「どうした?」


「浩介ってさ、彼女いる!?」


「彼女。いるんじゃないの?」


 優しそうだし、話やすいし。


「いない」


「マジか! 意外ー」


「ずっと好きな人がいるんだ。その人には告白できてねぇけど」


「いい話ね」


「それな! 告白ファイトー!」


「大和撫子みたいな綺麗な人だし。彼氏いるんだろうなー」


「大和撫子?」


 そういえば朝、助けたあの先輩。


 大和撫子みたいな美人な容姿してたな。


「犬飼、見覚えでもあるのか?」


「いや。今朝それっぽい人に会ったなって思い出して。


「どんな人だった!?」


「ちょちょ。近い」


「あ、悪い」


 相当好きなんだろう。


 興奮状態だ。


「えっと、黒髪ロングで。少し甘めの顔だった気がするなー」


「名前は!?」


「残念ながら聞いてない」


「嘘だろ!?」


「流石犬飼。名乗った?」


「うん」


「なら、通常運転だな」


「通常運転?」


「ああ! 犬飼はよく自分は名乗るけど相手の名前を聞かない癖みたいなもんがあるんだよ! 中学じゃある意味有名だったなー」


「そうね」


 ただ相手の名前を聞くのが面倒なだけってのが大きな理由だけど。


 名前聞くだけ聞いて、覚えてないと相手に失礼なのもある。


「なるほどな!」


「同じ高校で私の名前知ってるし、聞きまわれば?」


「そんな恥ずかしいこと……」


「やるわ!」


「マジか! 男気つえー」


「絶対に先輩を探してやるぞー!」


「おー!」


「……」


 何だ、この空気。


「ほら、犬飼も!」


「え」


「ほらほら!」


「お、おー」


 いつの間にか巻き込まれてしまった。

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