第10話 私は絶対屈しない
ずっと鍵をかけしまい込んできた私の記憶、否定されるんじゃないか、嫌われるんじゃないかと怖くてたまらなかった。
でも今の私はもう、前とは違う。
「まず始めに、これは弁解や同情を誘うつもりの動画ではないです、私の戦いなのです。あれは小学5年生の冬、今でも当時の事は鮮明に覚えています、忘れたくても記憶にこびりついて離れないのです。
放課後話があると個室に呼び出されました、別に悪さをしたわけでもないのに変だとは思いましたが渋々従い個室に行ったのです。
むりやり服を脱がされました、とても強い力で押さえつけられ怖かった、写真を撮られ逃げたら家族や友人にばら撒くぞと脅されました。
それからはご想像の通りです。
性に対する知識が貧しい年頃ではありましたが、その意味は本能的に分かりました、だからそれ以来異性として見られる事に恐怖を感じるようになった、あの炎上動画も実際はそうした言葉を浴びせられつい怒ってしまった、これが事実なんです。
この動画には実際は同意があったんじゃないか、とか嘘をついているんだってコメントが沢山付くと思います。
でも私は絶対屈しない。
私は私を呪ったりなんかしない、汚れてるかどうか、この世界に必要かどうかも決めるのは私自身だ、例えそこがいばらの道でも必ず切り開いて見せます。
私は同じ被害にあって沈黙を続ける人達を弱いなんて思いません。
恥ずかしい事なんだ、もうお嫁にいけない、嫌われたらどうしよう、そういった気持ちは痛いほど分かるからです。
でも誰かが声を上げなければいけない、それは今日私が引き受ける、そしてこの動画を見て少しでも勇気を貰ったら一緒に戦ってほしい。
意を決して警察に打ち明けたのに門前払いになった人、被害者にも落ち度があったんじゃないかとバッシングを受ける人、自分を責めて塞ぎこんでしまう人、自ら命を捨てる人。
そんな人達がこの世界には沢山いる、こんな世界は間違っているんだ、十字架を背負う必要なんてない、被害者が泣き寝入りして加害者が裁かれないような世の中を作った神様の十字架なんて壊してやる。
失った物は元には戻りません、あったことを無かったことにも出来ない、でも辛い過去を過去として引きずるか真正面から向き合うか決める権利は他でもないあなた自身に委ねられているのです。
失敗は笑い話になる、悲しい経験は時として誰かに勇気を与えてくれる、それでも怖いって感じちゃう人もいるでしょう。
自分もそうでした、でもこの世界に味方がいないなんて事は無いってある人が教えてくれた、だから私は発信する。もしくじけそうなとき、自分が一人だって思う時は私の事を思い出してほしい、いつでもあなたの味方でいるから。
この動画を見て少しでも救われたって人がいたり性犯罪の減少に貢献出来たら光栄です、最後まで見てくれてありがとうございました。」
言いたい事は全部言った、心もとない気持ちは無く今はむしろ背中がとても軽い。
自分なら何にでもなれる、どこへでも行けるという気すら感じる。
二日目の投票結果は動画を投稿した時間が遅かったという事もあって結局私が最下位だった。
でもその後のあの動画の反響は凄まじく、批判もされたがそれ以上に勇気を貰った、ありがとうという感謝のコメントがとても嬉しくて、全身に力がみなぎるようで本気でやってよかったと思えた。
3日目のゲームが始まる、昨日までとは打って変わって私に対する賞賛や応援のコメントが目立つ、それにしても凄い変わりようだ…。
シド
「おいおいおいお前らどういうつもりだ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます