第8話 異端児の主張
シド「惜しかったな…やっぱ人数の差はデカい」
そう、結局一日目は勝負に負けてしまった、爆発に巻き込まれたのは両者共にだが最初の戦闘でスケープゴートによって入れ替わりされたシドが負ったダメージの方が大きかったというわけだ、私の方はというと武器を奪われていた為成すすべもなく脳天を打ちぬかれてしまった。
そもそも倍の数がいる相手チームとの勝負は圧倒的にこちらにとって不利なのだ。
結局残ったのは人気投票で私が最下位だったという結果。
ゲームの勝率が絶望的な今こうなったら好感度を稼いで最下位から抜け出すしかない。
コメントに対する返事は欠かさずボランティアに行ったときの写真を張ったりもしてみる、こんな形で使うのは良心が痛むが今は仕方ない。
シド「コツコツ好感度稼ぎは結構な事だが一つ教えておいてやろう、エンターテイメントは国境や考え方の壁を超えるという話、あれは真っ赤なウソだ。
人間は物事を完璧に中立で正統に評価する事は出来ない、嘘を嘘と見抜けなければネットを使うのは難しいと言うが残念ながらそんな能力も大抵の人は持ち合わせていない。
大衆にとって重要なのは誰がやっているかという事、素晴らしい肩書や経歴の持ち主ならどんな言葉にも説得力が増して見えるし嫌われ者の正論は御託や綺麗ごとにしか感じない、寧ろ嫌悪感を産むだろう」
シドはあれからアドバイスをしてくれたりする、でも今回ばかりは納得できない…助けてくれたのは感謝してるけど、それじゃぁどうしろっていうの?
シド「まずは自分のイメージを変える事だな、この業界で人に好かれる最も効果的な方法は良質なコンテンツを提供する事、良質なコンテンツを産み出すコツはズバリありのままの自分だ。
生まれた環境や幼少期の体験、趣味など今まで培ってきた経験はまさにオリジナリティーにあふれた何者にも代えがたい価値有る物なのさ!
誰かの背中を追いかける事も重要だがいずれはそいつの背中にぶち当たんだろ?
ドブ川で育つのは悲しいかなドブガエルに他ならない、だが大多数は通常の水質を持つ川で育っている。
羨ましがられないような過去や社会ではとても必要とは言えない人格が生きるのもまたこの世界の魅力なんだ!」
私はたまらなくなって声を漏らす。
「私を励まそうとしてくれるのはありがたいよ、でもそうやって言えるのはシドが私を知らないから
本当の私を好きになってくれる人なんていないんだよ」
「本当の私はね…汚れてるんだよ?」
こんな事言いたくないよ、でも変えようのない事実なんだ。
シド「どうかな、獄中結婚した殺人犯がいたり過激な事件で話題になったカルト教団にも未だに信者がいるって聞くような世の中だぜ、それに。
汚れてるかどうかを決めるのは誰でもない、お前自身だ
私は汚くなんかないって胸を張って言ってやりゃぁいい。
理想を語れば親や教師が、周りがそんなに世の中甘くないって言ってくるだろう。
だがよ、そいつら本当に胸張って努力したって言える人生を歩んできたのか?
不器用でも良いじゃねぇか。
男だとか
女だとか
五体満足で心身ともに健康で順風満帆に生きてきたやつだとかなんて。
ざらにいる、なぁそうだろ?」
最初は正直最悪の印象だった、乱暴で下品で終始ふざけた変な奴。
そう思ってた。
でも型破りなこの人にどこか救われた自分がいた、こんなに自由で良いんだって思えたんだ。
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