第5話 ありきたりな展開
目の前に広がる疑いたくなるような光景、何度も目をこすったがその事実は決して揺るがない。
夢ならば覚めてくれと願うばかりだ。
大勢の視聴者が観ているこの放送で、私が才賀かもめだという事をこの人達は知っている…。その心情を察した相手が口を開いた。
「何故バレたかって顔してるな、冷静になって自分を見つめなおせよ」。
どういう事だ?と考える間もなくにわかには信じがたい現実に直面する。
私のユーザーネームが本名になっている、そんなバカな…まさかこんな間抜けなヘマするはずがない。
嫌な予感がして自分の投稿をチェックする、私の予感は当たっていた。
そこには私の顔写真や身元を特定できるような画像が大量に投稿されていたのだ。
心当たりはある、このアカウントは元バイト先の先輩から譲り受けた物でパスワードを共有していたんだ。
うかつだった、完全にはめられてしまった。
こいつらと大方示し合わせて公開処刑のつもりだろうか。
ゲームエリアにいる集団の一人が話す。
「爆ぜろギルティ、多勢は正義!ハゼルだ、今日は特別にスペシャルゲストをお迎えしてゲームを行いたいと思う。
バイトテロ炎上少女の才賀かもめちゃんだ!」
何の冗談だ、状況に理解が追い付かない。
ハゼルと名乗った、瞳孔の無い瞳に首にタトゥーのような模様があるグループのリーダー格と思われる男が続ける。
ハゼル「愚かな少女に断罪の意を込めて今回開催するオリジナルゲーム企画は、好感度デスゲームだ!
5日間でこのゲームに参加しているメンバーの人気投票を行う。
その中で最も好感度が低かったメンバーにはお仕置きと称して視聴者全員で運営に視聴者全員で違反報告をする。
たちまち凍結かアカウントBANは免れないという訳だ!」
そんな、違反報告は本来ゲームの最中にマナーを破ったり迷惑行為をしたユーザーにたいして使用する物、大体今の行為自体が違反じゃないのか?
もしBANされたりしたら折角の苦労が水の泡だ、やっと300人に届きそうな程登録者を集めたのに、現実に居場所の無い自分がこんなに時間をかけて作った夢への一歩が一瞬でへし折られるなんて。
ハゼル「不満だと言うのかカモメ、5日間の猶予を与えたばかりか民主主義で決めるという最大級の恩情を前にしてこれ以上何を求めるんだ?
この世の中で多数派が間違う事はない、法も規則も常に大多数が正しいように設定されているからだ。
だから間違いだらけの少数派の意見など無視されて当たり前、多勢こそが世界を作り上げてきた歴史がある以上少数の下らん理想論や戯言に耳を貸す余地は無い。」
私は彼らに反論する。
「多数が間違った歴史も沢山あるよ、それにそもそもこのゲームは前提が間違っている、私がバイトテロで炎上したって事!」
「私はただ迷惑行為をされた相手に対して叱った、嫌な事をされたから嫌と言っただけなんだ、拡散された動画は相手の都合の良いように編集されたもの…信じてくれ!」
しかしこの行動は意味をなさなかった、空しくも誰も耳を貸さないばかりか嘘つきだ、言い訳だという言葉が飛び交う。
全く拡散もされない、何故なんだ。
ハゼル「しかし呆れるな、飛んだ大ウソつきの馬鹿野郎が」
ハゼルの取り巻き「そこはブギーマンの言っていたように、自意識過剰のブスと言った方が正確なんじゃ…」
ハゼル「そうだな!この自意識過剰のブスが」
言わせておけば酷い有様だ、画面の前で泣き崩れそうになる。
ハゼル「しかし結果が分かりきっているゲームというのもつまらん、ここはどうだ、ゲーム「フレイムハザード」で一回でも俺達に勝利したら報告を取り下げてやろう」
取り巻き「そこは今のエリアのゲーム、<ソルジャーサイド>で勝負を行うのが良いのでは…」
ハゼル「確かに!」
「カモメ、俺たち4人と戦え、主催者である俺を殺したらお前の勝ちとする、卑怯だとか甘えたこと抜かすんじゃねえぞ、ててめぇみたいな人生間違えてきた人間が俺達と同じ土俵に立つ権利を与えられただけでも感謝しな」
無茶苦茶な提案だが今は飲み込むしかない、この状況を何としてでも打破しなくては。
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