第3話 アルルカン

アルルカンは、国内最大級のソーシャルネットワーク…いわばSNSだ。

ユーザーはニックネームを登録しプロフィールを作成出来るほか、オンラインゲームとの融合も試みていて様々な年齢や容姿に対応したアバターを選択出来る。

基本的な機能として日常や思っている意見を発信したり返信機能によって会話を楽しんだり、気になっている意見を拡散ボタンによって別の人に共有出来たりグッドorバッドボタンによる評価が可能となっている。

また公式で提供されているゲームが遊べる事に加え個人的にゲームを製作したりプレイ出来るし、ゲーム内で別のルールを設定し企画をする事だって可能だ。

撮影した写真や映像をアップロード出来また、サイト上で録画ボタンをONにする事でゲームの様子等を記録しリアルタイムで配信したり、編集して投稿できる事も魅力の一つ。

それぞれのアカウントには登録ボタンが存在し登録したユーザーの投稿は通知機能によって確認出来る。

登録者数は常に表示されておりユーザーの人気を示す。楽しみ方はそれぞれで遊びの延長線上で投稿している人もいれば、特に影響力の強いユーザーはインフルエンサーと呼ばれ平均的なサラリーマンの給料を遥かに超えるような収入を得ている者もいる。

アルルカンで収入を得る方法は主に二つ、一つはいわゆるアフィリエイトと呼ばれるもので自身の投稿を広告媒体とし広告を付ける事でその観覧者が商品を購入、その利益に応じて企業から報酬を得るという物。

もう一つは観覧者に直接投げ銭機能でお金を提供されるという物である。

コンプライアンスに厳しい現代、低評価の多い投稿をするユーザーは企業のイメージに関わる為クライアントが寄り付かずいずれにしても好感度が重要な世界だ。

とこんな感じでネット記事から拾い集めた情報をまとめてみたがまぁ難しい事は分からない、とにかく物は試しだ。

人は日常の変化を恐れるが、やらなければずっとこのまま…そんなのは嫌だ。

アルルカンを知るきっかけは元バイト先の先輩に勧められたからで、SNSには晒された件の事もあって多少の抵抗はあったが名前を変えて別人になれるという性質は今の私にとって打って付けだった。

アバターはその先輩が使っていたものを初期状態にして譲り受けた物で、指定されたパスワードを入力してすぐ操作出来るようになっていた。

まずは設定を決めなければ、ここは悩みどころだ。

一番気掛かりなのは性別設定、自分は他人に女として見られる事にどうしても恐怖を感じてしまうが一方で男性になりたい訳でもない、どちらにもなりきれない性自認を持っている。

悩んだ末に男性を選ぼうと決意したがどうやら私はいらぬ心配をしていたらしい、性別一覧に中性と記されていたので迷わずそれを選んだ。

最近は多様性に寛容であろうとここまで配慮されているのか、大したものだと感心する。髪型は前から憧れていたショートカットのアシンメトリー、瞳の色を左右違うオッドアイで設定した。

肝心の名前だが、想像力の乏しい私にはこれといってピンとくる物が思いつかず、結局本名と同じ「カモメ」とした。

決意表明の為にもプロフィール欄に目指せインフルエンザーと書いた、これが最後のチャンスになるのかもしれない。

当たるかどうか分からない最大級の博打、期待に胸が膨らむ。私の新しい生活が始まろうとしていた。

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