第1668話 暴れはっちゃけ魔女

 満腹になって隊商広場に帰ると、なんか騒がしくなっていた。


「なんだい、いったい?」


 ねーちゃんを助けて! とそばかすさんにすがりついていた少年に尋ねた。忙しそうにしてたので。


「嫌がらせですか」


 あふあふ働いていたから一休みさせてやろうと思っただけだよ。


「暴竜が退治されたから急いで仕入れが始まったんだよ!」 


 もうかい。ウワサが駆けんのがはえーな。


「ロイさんは?」


「港にいったよ」


 ってことはアダガさんや巨乳なねーちゃんも戻ってきたってことだな。どこや~?


「べー様、帰ってましたか」


「まったく、一ヶ所にいられない子だよ」


 二人は心臓病だったねーちゃんの馬車の近くにおり、なんか書き物をしていた。なにしてん?


「目録作りですよ。カイナーズホームで買ったものの」


 ふーん。大変だな。


「そばかすさん。今のうちに報告書を進めておいたほうがイイぞ」


「自分はまったくしないんだね」


「そのためのそばかすさんじゃん」


 にっこり笑ってサムズアップ。ガンバ!


「殴っても怒られないよね?」


「このバカは殴ったくらいじゃ直らないわよ」 


「そ、そーね」


 レイコさんが薪をサッと出すと、そばかすさんが目にも止まらぬ勢いでつかんで殴ってきた。


「痛くはねーが、今の会話はなによ!? 止める流れだったよね!」


 一瞬の躊躇いもなかったよね! 笑顔で殴ってきたよね! 酷いよ!


「ハァー。しょうがないか。書かないと館長たちに怒られちゃうしね」


「あ、お茶淹れますね。やるのはユウコさんですけど」


 オレを置き去りにする魔女と幽霊。酷くなーい?


 まあ、オレもコーヒーを飲みたいので土魔法でテーブルと椅子を創り出してマ○ダムタイム。あーコーヒーうめー!


「ちょっといいかい」


 魔女の弟子のばーさんがやってきた。名前なんだっけ?


「マホガニーだよ」


 そうそう。なんか木材の名前みてーな名前でしたね。思い出したよ。


「少し薬の材料を分けてもらえんだろうか? 帰る前に調達しておきたいんだよ」


「それならオババんとこいくか。隊商が出発するのはまだ先っぽいしな」


「バイオレッタ様のところにかい?」


「ああ。あんたの師匠のことも教えてやってくれ」


 今ならオババに会えそうな気がする。まあ、オババはほとんど薬所にいるけどな。


「そうだね。ウワサのバイオレット様に会っておくのもいいかもね。連れてっておくれ」


 と言うことで転移結界門を創り出し、ハブルームに繋いだ。


 ハブルームには魔女さんが詰めており、なんか机が並べられて役所みたいな雰囲気になっていた。


「ご苦労さん」


 別に魔女さんたちに許可を得るわけでもねーので軽く挨拶する。


「また門を増やしたのですか?」


「これは臨時だ。終わったらすぐに消すよ」


 別に転移バッチでいってもよかったんだが、オババと長話するかもしれねーからな。付き合い切れねーときは先に帰らせてもらうために転移結界門でいくとするのさ。


「べー様。もう少しハブルームを拡張できませんでしょうか? 植物を置きたいので」


 まあ、殺風景なところだしな、緑があったほうが落ち着くか。


「あいよ」


 結界使用能力限界まで拡張させた。


「これがオレの限界だ。これでなんとかしてくれや」


「ありがとうございます。充分です」


 それはなによりと、薬所に繋がるドアを開いた。


「オババー、いるかーい?」


「いるよ。まったく、お前はいつも唐突なんだから」


 オババとニーブ。そして、チビッ子さんがいた。


「なんだ。オババに弟子入りしたのかい?」


「館長命令で教えを受けています」


「そうかそうか。イイところにいて助かったよ」


 そばかすさんにここのことも報告させるのは酷だしな。


「……またですか……」


「うん。まただよ。オババ。オババと一緒に飛び出した魔女の弟子を連れてきたよ」


 ばーさんを前に出す。


「初めまして。バイオレッタ様。ラウタナ様の弟子でマホガニーと申します」


「ラウタナの弟子かい。あいつが弟子とはね。そんなことするヤツじゃなかったのにね。時が過ぎると性格も変わるんだね」


「オババだって昔はヤンチャしてたんだろう?」


 そこんとこの話、マジ聞きてー。


「お前は黙っておれ」


 ハイ。お口にチャックします。


「ラウタナは元気かい?」


「もう三十年以上お会いしてませんが、今も元気に過ごしていると思います」


「まあ、簡単に死ぬようなヤツではないしね。元気にしているだろうさ」


 さすがオババと一緒に飛び出した魔女。どんな暴れはっちゃけ魔女なんだろうな?


「マホガニーと言ったね。ラウタナのことを教えてくれるかい。べー。お前は帰ってイイよ」


 えー。オレも聞きてーよ!


「ハァー。まあ、イイさ。女の昔話を聞くのも野暮だしな」


 チビッ子さんが書いた報告書を読めばイイんだしな。今回は素直に諦めておくとしよう。


「ばーさん。終わったらそこから帰ってこいな」


「ああ。わかったよ」


「んじゃな、オババ。ニーブもしっかり昔話を聞いて早く一人前になれよ」


「あんたに言われなくてもなるわよ。さっさと帰りなさい」


 ハイハイ。帰りますよ~。


 転移結界門を潜りハブルームに。せっかくだし、館の食堂で菓子でも補充していくか。たい焼きや団子、もう残り僅かだしな。

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