第1666話 岩礁地帯

 十二分に海の幸を楽しんだし、暴竜がいる岩礁地帯へ向かうことにする。


 人魚の泳ぎで半日のことだが、クルーザーでも半日くらいかかった。


「結構岩が隆起してんな」


 まだ数キロ離れているが、オレの視力でもわかるくらい岩が隆起しており、クルーザーで入るには危険とわかった。


「あんたら! ここまででイイぞ! ありがとな!」


 場所がわかればあとはこっちでやるさ。


「いえ、おれらも手伝います! あの海竜がいると狩りができないので!」


 あ、そういや、ロットラーってのを狩るとか言ってたっけ。すっかり忘れったわ。


「あいよ! なら頼むわ!」


 相手は海竜。海の中に逃げられたら人魚じゃねーと相手できんわな。


「風の勇者さんらも人魚の冒険者と共闘で構わねーかい?」


 オレは手伝い。メインの意向を大切にしますぜ。


「ああ、構わない。もう暴竜を退治して終わらせたいからな」


 仕事とは言え、こんな面倒な仕事はさっさと終わらせてーんだろうな。親父殿も海竜退治に苦労させられていたかな。※書籍三巻の番外編で。


 つーことで、暴竜退治は人魚たちとの共闘となり、報酬は分け前、とはならねー。


 地上の金は地上でしか使えねー。人魚の金は真珠だ。なので、人魚の分け前はオレがもらい、オレが真珠を渡すことに取り決めた。


 結界で小舟を創り出し、そばかすさんはワンダーワンド(空飛ぶ箒ね)で空から見張ってもらうことにした。ちなみに、みっちょんもそっちに移りました。


「メイドさんらはここで待機な。なんかあったら逃げろよ」


「畏まりました。お気をつけて」


 おう! と答えて小舟に乗り込んだ。


 波が荒いが、オレの結界に意味はナッシング~。難なく岩礁地帯に入っていった。


「そばかすさん、なんか見えるか~?」


「なにも~! 岩と海だけ~」


 てことは、海の中にいんのかな?


 まあ、まだ陽は高い。そう急ぐこともねーとテキトーに進んだ。


「べー様。あれがロットラーじゃないですか?」


 レイコさんが指差す方向にトドだかセイウチだかみたいな獣が岩の上に寝そべっていた。


「あんなのもいるんだな」


 もっと寒い地にいそうな体型だが、人魚が好きそうな感じだ。


「美味しいかな?」


 生き物すべて食べれっか食べれねーかで判断するようになったそばかすさん。イイ傾向だ。


「どこがですか?」


 ユウコさんの体に入っているときくらい心を読まないでください。


「べー様。暴竜はもっと奥の環礁にいると思います」


 環礁か。ここって珊瑚地帯なのか?


 人魚さんたちは長いことここで狩りをしているようで、そこまで案内してもらうことにした。


 途中途中に結界マークをつけて迷わないようにしていった。


「べーくん! いたよ!」


 空を飛ぶそばかすさんが大声を上げた。


 すぐに風の勇者さんたちが剣を抜くが、海のもんに意味はナッシング~。近づいたらひっくり返されるのがオチだ。


「風の勇者さんたちの足に魔法をかけた。それで海面を歩ける。ただ、転んだら沈むから注意しろよ」


 言っても信じられねーだろうから小舟から降りて海面に立ってみせた。これこの通り。


 やはりA級冒険者は理解力が早く、すぐに小舟から降りて海面に立った。


 あとは冒険者のお仕事。オレらは小舟でコーヒーブレイク。あーウメー。


 そばかすさんも冒険者たちの戦いに興味がないようで小舟に降りてお茶にした。


「風の勇者さんたち、大丈夫かな?」


 心配そうに暴竜との戦いに目を向けるそばかすさんだが、団子を食べる手は止まらない。口の中に食べ物を入れてしゃべらないの。


「問題ねーさ。安心して待ってりゃイイよ」


 ………………。


 …………。


 ……。


 で、やっとこさ暴竜が討伐されました~。お疲れしやした!


 小舟を向かわせると、暴竜が今にも沈みそうだったので結界で浮かばせた。


「なかなか狂暴な面構えだな。風の勇者さんたち。討伐の証ってどこだ?」


 角はねーし耳もねー。鱗がありタイプでもねー。どこが証になんだ?


「……首、か……?」


 なにやら決まってねーようだ。冒険者ギルドも曖昧だな。


「じゃあ、首を斬り落として持っていくとすっか。結界斬!」


 暴竜は所謂首長竜。頭から首の真ん中辺りで斬れば問題ねーだろう。


「……おれたちが戦った意味があったか……?」


「風の勇者さんたちが受けた仕事なんだから意味はあんだろう。胴体はどうする? いらねーならオレがもらうぞ」


 胴体だけでクルーザーくらいはある。食い応えがあるだろうよ。


「あ、ああ、構わない」


 ってことで無限鞄に放り込んだ。


「暴竜の首はクルーザーの船首にでも飾るか」


 結界で包んで人魚さんたちにクルーザーまで運んでもらった。


 ひょいと船首に乗せて紐で縛りつける。なんかシュールだな……。


「……おれらがきた意味ってあったか……?」


「あるある。A級冒険者が暴竜を討伐した。これほど民衆が納得することはねーだろう」


 無名の通りすがりが倒したって言われても納得できねーだろう。


「まあ、納得できねーなら納得しなくてもイイよ。暴竜を倒したのはあんたら。その真実は変わらねーよ」


 その結果が大事なんだからな。


「付き合ってありがとな。これは礼だ」


 真珠を詰めた革袋を人魚さんに渡した。


「じゃあ、気をつけてな」


 人魚さんたちとはそこで別れ、王都の港へレッツゴー! これにて暴竜問題は解決しました~。

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