第1665話 簡易海鮮丼

 オレ、イカフライには醤油をつける派だった。


 ソースやタルタルでも食べてたが、この世界のイカは辛子マヨネーズがよく合った。


「これがこんなに美味しいものとは……」


 風の勇者さんたちにも出したら最初は驚いていたが、イカフライの旨さに魅了されたようで、ビールと一緒にたくさん食っていた。


 これならもっと持ってきてもよかったな。こんなに人気になるとは思わなかったぜ。


「イカそうめんもイイかもな」


 いや、乾物にしてマヨネーズと七味で食うのもイイかもしれん。あれってどう作るんだっけ? 


「べー様。これで最後です」


「やっぱ十匹じゃ足りなかったな」


 あれ? イカって匹だっけ? 杯とか言ってた記憶もあるんだが? 


「人魚さんに捕ってきてもらえばどうです? 海の中にいましたよ」


 それもそうだな。人魚ならイカを──。


「──あ、思い出した。イカって光によって来るんだった」


 異世界のイカも同じかわからんが、試してみればイイことだ。


「おーい。休んでるとこワリーがちょっと頼みたいことがあんだわ」


 クルーザーの横で野営(?)している人魚さんたちに声をかけた。


 結界でプールを創ってやり、ゴムボートに野菜やら酒やらを乗せて浮かべてやった。


 ……人魚って菜食なのか肉食なのかわかんねーよな? だからと言って雑食でもねーしよ……。


「どうしました?」


「イカ──こういう生き物を捕まえてーんだが、ちょっと協力してくれや」


 結界でイカを創ってみせた。そういや、人魚って巨大イカを乗り物にしてたっけな。最近見てねーから忘れったわ。


「モルですか。人はなんでも食べるんですな」


「食えるものはたくさんあったほうが生き延びれっからな」


 淡水人魚のように限られたものしか食えねーってのも問題だと思うぜ。


「光で集めるから三十匹ほど捕まってくれや」


 無限鞄から銛を出して人魚さんたちに渡した。


「礼に収納鞄をやっからよ。ついでにその銛もやるよ。久しく使ってねーもんだから」


 銛より網で捕まえるようになってから無限鞄の肥やしになってたもんだ。使ってくれんなら惜しくはねーさ。


「あ、ありがとうございます。任せてください」


 ってことで結界灯を創り出してクルーザーの周りに配置した。


 どうなんやろ? と見てたら人魚さんたちが動き出し、銛でイカを刺してきた。


 イカは甲板に放り投げてもらい、皆で結界桶に入れていった。


 三十匹くらいでよかったんだが、人魚さんたちが乗ってきたのか、次から次へ甲板に放り投げてきた。


 まあ、イカはいくらあっても構わねー。イカはウメーからな。


 結界桶がいっぱいになったので収納鞄に放り込んでいく。無限鞄は生き物はいれられねーんでな。


 収納鞄が満杯になる頃に人魚たち熱も冷め、プールに上がってきた。


「すみません。夢中になってしまいました」


「構わねーよ。大漁でなによりだ。てか、あんたらはイカ──モルはくわねーのかい?」


 イカは魚に入らんだろう。


「食べる部族もいるとは聞きますが、バルデラル王国では食べませんね」


 ハルヤール将軍やウルさんもイカは食ってなかったな。カニやエビも食ってなかったっけ。


「海の幸がいっぱいあんのに食えねーってのも可哀想だな」


 宇宙から来たから食える体になってねーのかな?


「メイドさん。イカフライと焼きを頼むよ」


 イカそうめんはオレが作るとする。寄生虫がいるかもしれんしからな。


 無限鞄から捌き包丁、月花美人を出してイカの脚を切り、ワタを取る。イカなんて捌いたことねーが、今日はそうめんにするので海にポイ。まだ透明な胴体を細く切っていった。


 サッと結界で通して生きているものを排除した。


「メイドさん。皿ちょうだい」


 すぐに出してくれた皿に醤油をたらしてわさびを少々。イカそうめんを箸でつまんで醤油につけてツルンとな。うん。旨い。


「べーくん、わたしも食べたい!」


 ハイハイ。ちゃんとやるから頭を揺らさないでください。


 料理はいまいちだが、捌くのは職人にも負けてねー。あらよ、ほらよ、どっこいしょーで、イカそうめんの山を作った。


「さあ、たーんと食えや」


 オレも箸を伸ばしてツルリンコ。やっぱ獲り立て捌き立てはウメーや。


「風の勇者さんたちもいっぱい食えよ。イカそうめんはなかなか食えねーからな」


 この時代じゃ生で食うなんてできねー。オレみたいな能力がねーと死ぬかもしらねーしな。


「これは、生姜と青ネギが欲しいな」


 あ、青ジソもイイな。カイナーズホームで売ってっかな?


「こうなると海鮮丼が食いたくなるよな~」


 前世じゃ安いものしか食ったことねーが、今生では最高級の海鮮丼が食えそうだ。ウニイクラ、あるかな? 今度探してみようっと。


「メイドさん、飯ある?」


 今日はイカ丼で我慢しておこう。


「館から持って参ります」


「なら、薬味もお願い」


 サプルがいたら大体のものは揃えてくれるはずだ。


「畏まりました。すぐに用意致します」


 ハーイ! よろしくでーす!


 そうだ。小魚をたたきにして一緒にのっけよう。簡易海鮮丼だ。


 小魚を出してたたきを作り出した。

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