第1663話 ノープラン

 漁港は小魚の漁で小舟がたくさん。なので、王都を出て人のいないところに向かった。


 一時間ほど歩き、誰もいない砂浜があったので、結界で桟橋を創りながら沖に出てた。


「ここでイイか」


 無限鞄から小さくしたクルーザーを出して元のサイズに戻した。


「随分と立派な船だが、暴竜相手に大丈夫なのか?」


「問題ねーよ。なんなら戦艦でも相手できるさ」


 クルーザーにはオレの結界を纏わせているし、砲塔はオレがなれる。さすがに魚雷に変わるものはねーが、体当たりすりゃイイさ。


「ほれ、乗りな」


 そばかすさんやレイコさんたちはさっさと乗り込んでいる。風の勇者さんたちを促してクルーザーに乗り込んだ。


「好きなところにいてくれや」


 ミタさんからクルーザーの操縦は教わったが、しばらく時が空いている。思い切り出すために慣らしが必要なんだよ。


「あれがこれで、それがあれで、エンジンはキーを回せばよかったんだよな」


 これだけのクルーザーがキーを必要とするとか不思議なもんだ。まあ、他にどんな起動法があるか知らんけどよ。


 暖気が必要かわからんが、まあ、ダメになったらまた買えばイイさ。二、三百万円で買ったもんだしな。


 ……ほんと、こっちまで金銭感覚がバグってくるぜ……。


 ぶつかる心配もないので三十分も操縦すれば感覚がわかってきた。オレ、才能あんじゃね?


「冬の海じゃなかったらサイコーなんだがな」


 結界を纏っているので寒くはねーんだが、どんよりとした空が快適さが出ねー。やっぱ海は夏がサイコーだな。


 一時間ほど走らせたらドレミに任せて皆ところに向かった。


 そういや、クルーザーの中に入んのこれが初めてじゃね? 


 トイレに入るくらいで、ほとんど甲板で過ごしていた。中にリビングがあるの初めて知ったよ。スッゲー豪華だな。


「べーくん、なにか食べるものないの?」


 君、朝たくさん食べたよね? 昼まで待ちなさいよ。


 とは言え、オレもコーヒーが飲みたくなった。少し遅めのオヤツとするか。


 ……あと一時間もしねーで昼だけどな……。


 たい焼きと団子、プララを出してやり、風の勇者さんたちにはコーヒーを出してやった。


「乗せてもらってなんだが、そろそろ暴竜探しをしたいんだが」


「それなんだが、暴竜ってどうやったら出てくんの? てか、どこにいんの? この大海原。海面にいるだけで見つけられんの?」


 つい勢いで来たが、オレはまったくのノープラン。そっちはどうなのよ?


「…………」


 顔を見せ合う風の勇者さんたち。そちらもノープランのようでした。


「まあ、海の生きもん。簡単に出てくてくれたら苦労はしねーわな」


 オレんときはなにもしなくても出てきたのにな。運がイイのか悪いのかわからんけどな。


「あちらにとっては悪かったでしょうね」


 うん。メルヘンはお口にチャックしようね。そっちで団子を食べて喉を詰まらせてなさい。


「暴竜の退治依頼を受けたのかい?」


「ああ。ギルドに無理矢理な」


「A級冒険者も大変だな」


 これだから冒険者なんてなる気にならんのだよな。クソメンドクセーこと押しつけてくんだからよ。


「ちなみに暴竜の個体特定はされてんのかい? それとも海で暴れている竜を退治してくれって曖昧なものかい?」


「……後者だ……」


「どこの冒険者ギルドも同じだな」


 冒険者になりたくねー理由に依頼が曖昧ってのもある。碌な調査もせずに大雑把な依頼を出しやがる。この時代じゃしゃーねーとは思うが、やるほうは堪らねーよ。付き合ってられっか! だ。


「それでもやらねばならぬのが冒険者だ」


「ご立派なもんだ」


 ブラック企業で働く社畜のようだ。


「まあ、しばらく様子を見るしかねーな」


「付き合ってもらえるのか?」


「待てば海路の日和ありって。大した用もねーし、付き合ってやるよ」


 オレの出会い運が働いてねーのならロイさんたちはまだ動いてねーはずだ。動くまでのんびりやるのもイイだろうさ。


「船の中は自由に使ってくれて構わねーよ。確か、その奥が部屋になっているはずだ。二部屋を風の勇者パーティーが使ってくれや」


 部屋は三部屋あったはず。残りはそばかさん&ユウコさんで使ってもらうとしよう。オレは甲板でイイさな。


 とりあえず、風の勇者さんたちに部屋を教え、部屋分けはお任せ。風呂とトイレの使い方を教えた。


「貴族の屋敷以上だな」


 魔術師のじーさんが呆れている。


「まあ、貴族が乗るような船だからな」


 バブリーな船だし、貴族みたいな連中が乗るんだろうよ。前世のオレでは逆立ちしたって乗れなかったわ。


「見張りはこっちでやっからテキトーにしてな」


 オレは甲板へ上がり、座椅子と炬燵をセット。あ、ミカンがまだ残っていたはず。出しておくか。


「べー様。わたしも座椅子ください」


「わたしも」


 なぜかレイコさんとそばかすさんもついてきてた。


 もう突っ込むのもメンドクセーので座椅子を出してやった。


「なかなか乙なものですね」


「鍋が食べたくなるね」


「わたしはすき焼きがいいかな」


 転移バッチ発動。館へ! ミタさんの配下、メイドを三人衆(赤鬼族、セイワ族、蛇人族)を連れて戻ってきた。操縦、料理、見張り、よろしこです!

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