第1653話 マルセール通り
ハイ、マリンベル王国に戻ってきました~。
「べーくん、いきなり消えないでよ! 異国に取り残されたかと思ったじゃない!」
「用があってきてんだから戻ってくんの当たり前だろうが」
「そのまま戻ってこない経験ならあるぞ」
「あ、わたしもそんな話聞いたことあります」
「信用まるでなしですね」
オレの周り敵ばっか! まあ、いつものことだけど!
「そんなことよりねーちゃんの様子はどうだい?」
「食事をしたら眠りました」
「それはなにより。なぜかエルクセプルは栄養がねーからな」
なくした腕を生やすくらいなのに痩せ細ったままなんだよ。どこからエネルギーが生まれてんだろうな?
「ロイさん。買い出しにいくときはこの扉を使いな。カイナーズホームに繋いであるからよ。ねーちゃん。シュンパネは持ってっかい?」
「ああ。エリナからたくさんもらったよ」
そういや、エリナの同志だったっけな。なんかあだ名をつけたような気がするが、腐嬢三姉妹に上書きされて忘れたわ。
「ロイさん、魚が欲しいようだから口利きをしてやってくれや」
「魚? なぜだ? マリンベル王国も漁は盛んだよな?」
「今、マリンベル王国は飛竜と海竜に狙われて漁ができてねーんだよ。カムラ王国で仕入れてやってくれや」
「それはまた厄介なことになっているな。ベーが倒したらいいんじゃないか?」
「それはオレの仕事じゃねー。マリンベル王国の仕事だ」
興味があるなら介入もするが、今は飛竜にも暴竜にも興味はねー。竜の材料は事足りているしな。
「まあ、ベーが出ると余計騒ぎが大きくなるしな。関知しないほうがマリンベル王国のためだろうよ」
どいつもこいつも人をトラブルメーカーみたいに言いやがって。オレは穏便に済ませてんのに周りが騒がしくしているだけだろうがよ。
「とにかく、ロイさんの買い出しは任せる。オレは川魚を探すからよ」
そのために来たんだから他はアダガさんや巨乳のねーちゃんにお任せだ。
「川魚ならおれの故郷にいるぞ」
「ロイさんの故郷に?」
「ああ。大きな湖と海に続く川が二本ある。そこには六種類の魚がいて、塩焼きにすると旨いぞ」
へー。六種類もいんのかよ。随分と豊富な湖と川なんだな。
「それはイイな。じゃあ、そこにいってみるか。どっちの方向だい?」
「品物が揃ったら連れていくよ。妻が世話になったんだ。そのくらいの礼はさせてくれ」
別に礼などいらんが、連れてってくれるならお願いするか。馬車の旅もそう悪くねーしな。
「んじゃ、ロイさんに頼むよ。オレも王都で買い物もしてーしな」
なんかおもしろいものがあったら買っておきてーしよ。
「それならマルセール通りにいくといい。大抵のものはそこで揃えられるし、珍しいものも売っている。眺めるだけでもおもしろいぞ」
マルセール通りね。王都にはよくある蚤の市的なところなんだろうよ。
「ベー様。わたしもいきたいです」
アダガさんも興味があるようで同行を求めてきた。
「ああ。なら、一緒にいこうか」
商人の目からの意見も聞きてーしな。一緒にいくとしよう。
「そばかすさんはどうする?」
「いく。また美味しいものがあるかもしれないし」
「わたしもいきます」
「わたしも~」
うん。いつものメンバーには訊いてません。君らは自由気ままなんださらさ。
「まだ陽は高いし、いってみるか」
時刻は十五時くらい。夜の顔もみてーし、イイ宿があったら泊まってもイイかもしれんな。
「じゃあ、ロイさん。いってくるわ」
そう言って街に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます