第1652話 類友

 無駄に広いカイナーズホーム。無駄に捜しても時間の無駄。サービスカウンターで巨乳のねーちゃんを呼んでもらった。あ、オレはフードコートにいるからそちらに来るよう言ってチョンマゲ~。


「な、なんなんだ、ここは?」


 カイナーズホームに驚いていたロイさんがやっと口を開いた。


「世界貿易ギルドの一人がやっている店だ。落ち着いたらゆっくり回ってみるとイイよ」


 あ、シュンパネを何個か渡しておかないとな。転移結界門ばかり創ってっとわかんなくなるからよ。


「ロイさん。なんか食うかい? ここのはなんでも旨いぞ」


 凝った料理はねーが、イイ食材を使ってるみてーでどれもが標準以上なんだよな。百三十円のきつねうどんが料亭並みに旨いんだよな。料亭なんていったことねーけど!


「な、なにがあるんだ?」


「いろいろあるぞ。まあ、今回はたこ焼きでも食うとイイ。酒は飲めるかい?」


 ここ、酒も提供してんだよ。ヤオヨロズ国の観光地みたいなところになってて、酒を出してくれとせがまれたんだとさ。あ、ミタさん情報です。


「ああ。飲める」


 と言うのでやり方を教えるついでにたこ焼きとビールを買った。


「旨いな! こんな旨いの初めて食ったよ!」


「それはなにより。次はアダガさんと来るとイイよ。アダガさんならカイナーズホームをよく知ってからよ」


 アダガさんはカイナーズに属しているわけじゃねーが、よくカイナーズホームで仕入れている。なら、フードコートもよく利用してんだろうよ。


「ええ。もっと美味しいものを紹介しますよ」


「それは楽しみだ」


 満面の笑みでたこ焼きを頬張るロイさん。グルメな人なのかな?


 そんなことを考えながらオレはオムソバをずるずる。こんな味だったっけ?


 もっとチープな味だったと思うんだが、上品に仕上がっていてよーわからんわ。でも、ウメーからなんでもイイや。


 完食してコーヒーを飲んでいると、巨乳のねーちゃんと犬耳ねーちゃんがやってきた。


 服装と髪質から巨乳のねーちゃんの関係者だろう。カムラ王国には半獣人か多いからな。


「……今度はどんな厄介事だい……?」


 失礼なねーちゃんだ。オレイコール厄介事だなんてよ。


「間違ってはいないでしょう」


 自分の身長より高いチョコレートパフェを頬張るメルヘンさん。食うことに集中してろや。


「マリンベル王国にいかねーか誘いに来ただけだよ。あ、こちらロイさん。マリンベル王国の商人だ。世界貿易ギルドに巻き込──入れようと思っている」


「悪意がダダ漏れすぎるだろう」


 本当に失礼なねーちゃん。悪意で入れようとしてるんじゃないのに……。


「まあ、いい。ロイさんだったか? わたしはザーネル・コルセ。カムラ王国の商人だ」


「オレは、マイゼンド。クリンシュ族の次期族長で今は隊商の一つを任せられている修行中の身だ」


「クリンシュ族、聞いたことあるな。マリンベル王国でも一、二を競う部族だったはず」


「よく知っているな。国一つ挟んだ国のことを」


「べーと関わるようになってから外国の情報も集めるようになったのさ。そこの自称村人は顔が広いからな。一国だけ見ていてはその子とは付き合えないんだよ」


「それはよくわかるよ。会って半日もしないで非常識なことばかりしているからな」


「それがこの子の日常さ。半年会わないだけて世界を変えちゃう子だからね」


「おれは常識を変えられたよ」


「アハハ! わたしもだよ」


 なにやら気の合うヤツがまた一人。規格外の商人は規格外の商人を引きつけるものなんだな。


「類友ね」


 だから君はパフェを食べてなさい。余計な突っ込みは結構です。


「そんで、どうする? マリンベル王国にいくかい?」


「もちろんいくさ。一瞬で外国にいける機会はないからね」


 巨乳のねーちゃんならそう言うと思ったよ。チャンスは活かせなタイプだからな。


「そっちの犬耳ねーちゃんもか?」


「いや、ミコトはカムラ王国の窓口として世界貿易ギルドに置かせてもらうために連れてきた。ロイさんも世界貿易ギルドに入るなら誰か寄越したほうがいいぞ」


 なるほど。確かに誰か置いたほうがいいかもしれんな。その国を知る者がいないとギルド職員が大変そうだし。


「わかった。すぐに用意するよ」


「んじゃ、マリンベルにいくぞ」


 レイコ(ユウコ)さんやそばかすさんを置いてきたままだしな。文句言われる前に戻るとしようかね。

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