第1651話 油の名産地

 テーブルにロイさんが持ってきた品を並べた。


 大半は珍しくもねーもんだが、やはり国が違うと珍しいもんはある。


「ロイさん。こいつは油かい?」


 壺の中に黄色い液体が入っていた。


「ああ。花から絞った油だ。こっちは花の種から絞ったもの。魔物の油を絞ったものもある」


 油の名産地、って感じだな。


「なにに使うんだい?」


「主に食用油だな。他にも蝋燭、髪薬、軟膏、虫除けに使ったりする」


 へー。食用油か。ってことは、マリンベルは油を使う料理があるってことか。


 この辺でも油は使うが、大量に使うのはうちくらい。他の家じゃ壺一つも使わねーだろうよ。


「油、いいですね。ヤオヨロズでも消費が増えたので欲しいところです」


「カイナーズホームで買えんじゃねーの?」


 それこそ売るくらいにな。


「カイナーズホームを利用できるのは稼いでいる者だけですよ。一般の者は利用なんてできません」


 ヤオヨロズにも格差があるんだな。まあ、ねーほうがどうかしてるがよ。


「ちなみに一般のヤツらはいくらくらい稼いでんだ?」


「そうですね。一日銅貨三枚から五枚、と言ったところですかね? 生活水準はボブラ村より下くらいです」


 そこそこな暮らしはできているってことか。格差はあるが、貧困にはなってねーようだ。


「ロイさん。これでいくらなんだい?」


 この壺だと二リットルくらいかな?


「銅貨六枚だな」


「随分と安いんだな。ちょっと大きな街なら銀貨一枚は余裕でするぞ」


 それほど需要があるわけじゃねーしな。妥当なところだろうよ。


「アガダさんは、飛空船は持ってんのかい?」


「はい。一隻買いました。今は小人族に教えを受けてますね」


 そうすぐには飛ばせねーか。


「なら、アガダさんよ。一緒にマリンベルにいかねーかい? 買い出しにどうだい? 肌の色ならオレの結界で変えられるからよ」


 さすがに青い肌は目立つし、この大陸にはいねー種族だ。だが、肌の色さえ変えれば南大陸の人に見えるだろうよ。


「それはいいですね。わたしの姿ではいけるところに限りがありますので」


「よし。金はあるかい? ねーなら出すぞ。目利きはアダガさんのほうが上だ。オレの分まで買ってくれたらそれを報酬とすっからよ」


「わかりました。こちらのお金がないので助かります」


 じゃあ、取引成立ってことで金貨を三十枚くらい渡した。てか、オレも金を稼がねーとダメだった。


「あ、カムラに王貨をもらいにいかなくちゃならなかったんだ」


 すっかり忘れてたわ。


「べー様。王貨でしたら預かっております」


 と、顔面凶悪な執事さんが箱を差し出してきた。


 受け取って中を見れば王貨がいっぱい入っていた。何枚あんだよ?


「べー様が取りにこないからとザーネル様が持ってきてくださいました」


 ザーネル? 誰だ?


「カムラ王国の女性商人です」


 あー巨乳のねーちゃんな。そんな名前……だったっけ? 記憶にねーや。


「アダガさん、ねーちゃんに会ったんだ」


 ザーネルが誰かを教えてくれたのはアダガさんね。


「べー様が気に入るだけはありますね。女傑と言うのはああいう人を言うんですね。魔族のわたしをすんなり受け入れましたよ」


「あんちゃんみたいなタイプだからな。人を見た目で判断はしねーヤツだよ」


 まあ、ショタ好きな変態だけどよ。


「そのねーちゃんは帰ったのかい?」


「いや、まだいると思いますよ。カイナーズホームにでもいっているのではないですかね?」


「せっかくだ。ねーちゃんも連れていくか。マリンベルにいったことねーだろうからな」


 世界貿易ギルドに入った──かはわからんが、入ったなら外国を知っておくのもイイだろうよ。ついでだし、連れていくとしよう。


「よし。ねーちゃんを連れてくっか。少し待っててくれや」


 外に出て転移バッチ発動。カイナーズホームへゴー!

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