第1650話 気が合う二人

 ロイさんの用意ができたら転移結界門を創り出した。


「これは?」


「こことボブラ村と繋ぐ不思議な扉だよ」


 初めてのヤツにはわからんだろうから簡単に、わかりやすく教えておく。


「……そうかい。なんでもいいよ、もう……」


 理解してくれてなによりだ。


「なにを言っても無駄と悟っただけでしょう」


 うん。頭の上の戯れ言はサラッと流して転移結界門をオープンセサミ。館の食堂に入った。


「あ、そこなメイドさん。婦人かあんちゃん、どっちかいる?」


 オレの出会い運が館にいると語っている。いや、わかんないからここに繋いだんだけどね。


「アバール様とフィアラ様でしたらクレインの町にいっているはずです」


 あれ? オレの出会い運、不発か?


「アダガ様でしたらそこにおりますよ」


 メイドさんが指差す方向にアダガさんがハーゲン○ッツを食べてた。あんたなにしてん!?


「おや、べー様。お久しぶりです。相変わらずいろんな方と出会っているようですね」


 ロイさんを見て一瞬で理解するアダガさん。魔族一の商人は違うな。


「ああ。世界貿易ギルドに入れたい人を連れてきた。ロイさんだ」


 二人がいねーならしゃーねー。世界貿易ギルドを支える一柱、アダガさんに任せるとしよう。


「お初にお目にかかります。わたしは、アダガ。商人をしております。見てとおり、人族ではなくセイワ族と呼ばれる魔族です」


「ま、魔族!? お伽噺話じゃなかったのか?!」


 相当昔から魔大陸から流れている者がいるようで、この大陸でも魔族の存在を知っている者は多い。もっとも、お伽噺話として伝わっているレベルだがな。


「ええ。お伽噺話じゃなく魔族はいますよ。それどころか数万人の魔族がこの下で暮らしていますよ。べー様の働きのお陰で」


 働きってか、なし崩しに働かされってんだけどな。


「失礼。おれは、ロイ・マイゼンド。マリンベル王国クリンシュ族、次期族長です」


「マリンベル王国とは、六ヶ国同盟の一つ、でしたよね?」


「ああ。アーベリアン王国の隣だな。南のほうだから冬でも暖かったぞ。今は飛竜や海竜が暴れてっけどな」


「相変わらずですね、べー様は。どこにいっても問題にぶつかります」


「面倒だから問題に関わってねーけどな」


 いや、もう飛竜も暴竜も関わっちまったが、解決はマリンベル王国にお任せ。オレは魚集めに集中だ。


「いや、おもいっきりズレまくっているわよね?」


 ハーイ! まったくそのとおりデース!


「ともかく、ロイさんを世界貿易ギルドに推薦するからよろしくな。まあ、婦人やあんちゃん、チャンターさんに会わしてからになるがよ」


「全員が揃うのは時間がかかると思いますよ。婦人とアバールはカムラ王国やハイニフィニー王国のことがありますし、チャンターは東の大陸に帰ったばかりですからね」


 だからオレの出会い運がここに向いたのか。


「じゃあ、アガダさんでいいや。時間くれ。マリンベル王国の品を見てもらいたいからよ」


 魔大陸出身でも目利きはイイ。見たことがなくともわかんだろうよ。


「構いませんよ。暇を持て余していたので」


「ありがとよ。ロイさん。アダガさんに品を見せてやってくれや」


「あ、ああ。アダガさん──」


「アダガで構いませんよ。これから長い付き合いとなるんですからね」


「そうか。なら、おれもロイと呼んでくれ」


「はい。では、ロイと呼ばせてもらいます」


 なにか気が合う二人。どちらもコミュニケーション能力が高くてなによりだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る