第1641話 激滅槍

 ガコン! と音がしたと思ったら、部屋の灯りが消えてしまった。なんや?


「──総員第二種戦闘態勢に入れ。飛竜出現。繰り返す。総員第二種戦闘態勢に入れ。飛竜出現。飛竜出現──」


 飛竜? まだこの大陸にいたんだ。どこからか流れて来たか?


「てか、みっちょんとそばかすさんが合わさると変なもんが現れるな」


「べー様はちょっと動いただけで変なものと遭遇しますがね」


 そうだね! 今じゃ幽霊や精霊が空気より軽い存在になってんよ!


「──べーくん、飛竜が出たって!」


 しばらくしてみっちょんを頭に乗せたそばかすさんが部屋に戻ってきた。


「そうみたいだな。まあ、飛竜ぐらいならラズリズ・デルタの連中に任せておけ」


 艦ってくらいなんだから攻撃手段はあんだろう。落とされないようガンバれ、だ。


「だ、大丈夫なの?」


「心配なら艦橋でもいくか?」


 まあ、いったからと言ってなにか安心できる材料があるか知らんけどな。


「あ、わたしは──」


 さっと逃げようとしたそばかすさんの首根っこをつかんだ。


「いくぞ」


 問答無用と、首根っこをつかんだまま部屋を出た。


「艦橋にいく。案内してくれ」


 部屋の外にいた兵士っぽい格好した男に言うと、すんなり艦橋に案内された。


「艦長。観戦させてもらうぞ」


 ってこと言ったら艦橋にいるヤツらが立ち上がってこちらに振り向いた。いや、危ないでしょっ!


「総員第一種戦闘態勢に移行する! べー様に我々の力をお見せするぞ! 奮闘せよ!」


 なんか艦内から雄叫びが。いや、やる気に満ちているとこ悪いけど、別に逃げてもいいんだからね。


「べー様。こちらへ。他の方も」


 艦橋が見えるところに座らされた。まぁ、好きにしてちょうだいな……。


「アーカム隊、発進準備、急げ!」


「艦長! 飛竜、威嚇行動に入りました!」


 雲が晴れ、月明かりに照らされた飛竜が左舷側に見えた。


 ……あまりデカくねーな……。


 距離があるからはっきりとはわからねーが、昔、サプルと倒した飛竜ほどの迫力はねー。そう長く生きてねーかもな。※書籍5巻


 黒髪の乙女さんが発進したようで六機の竜機が飛竜に向かって飛んでいった。


「そういや、竜機に外付けの武器なんてあったっけ?」


 火炎攻撃ならあるのは知ってんがよ。


「カイナーズと博士ドクターの協力を得て激滅槍を開発しました」


 艦長に尋ねたら自慢気に返された。相談したらダメなツートップだな。きっとエゲつないもんなんだろうよ。


「そうか。それは見物だな」


「はい。搭載した次の日にべー様に見ていただけるとは我らは運がいいです」


 横で青くなってるそばかすさんには不運だろうがな。


「それは楽しみだ」


「ラズリズ・デルタ旋回! べー様に見てもらうぞ!」


 正面に飛竜が入り、激滅槍とやらが竜機から発射されたっぽい。オレはそこまで視力がよくねーから、なんか発射されたとかしかわかんねーよ!


 ミサイル、ってわけじゃねーな。ただ、撃ち出したって感じだ。


「あ、突き刺さった」


 視力がイイみっちょんが教えてくれた。


「激滅槍は、撃ち込まれると体内の魔力を滅します。これは飛空船にも有効です」


「破魔系の武器か」


 そう言う魔法があるのは知ってたが、それを放つとかはカイナーズの発想だな。


「てか、よくあの鱗を貫通させたな。オレの結界砲弾でもヒビが入るくらいなのに」


 貫通力はないが、打撃力はあるから飛竜を倒せるけどよ。


「先端に特殊金属を使用しております」


「小人族の技術か?」


博士ドクターです。なにかは我々にも知らされておりません」


 さすが人外の鍛冶師。おっかねー技術を持ってやがる。


「主砲、用意!」


 ん? 主砲?


 なにか機械音が伝わってきた。


「ターゲットスコープオープン」


 おいおい、波動砲でも撃つってのか?


「ロックオン! 主砲、発射!」


 ドン! と、なにか艦首から発射された。な、なに?


「カイナーズより提供されたM1エイブムスの砲塔を積み込みました」


 M1エイブラムスがなんなのか知らんが、ほんと、相談したらダメなツートップを体現したようなら兵器を積み込んでんな!


「飛竜に着弾! 降下していきます!」


「艦長、お見事だ。追い払ったのならそれでイイぞ。拾いにいくのも手間だしな」


「ハッ! ありがとうございます!」


 うん。だからいちいち立ち上がってこちらを見なくてイイんだよ。前見て操縦しろや!

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