第1640話 ラブチュッチュッ

 航空母艦ラズリズ・デルタに乗り込み、海洋国家マリンベルへレッツらゴー! 着くまで夜になると言うので部屋を借りた。


「てか、オレのためだけに豪華な部屋を用意したもんだ。雑魚寝でも構わねーんだがな」


「いいじゃないですか。ゆっくり眠れて」


「あ、お菓子が用意されてるよ」


「てか、なんで皆して入ってきた? 部屋を用意してもらっただろうが」


 同じ部屋か知らんが、寝るだけなんだからなんでも構わねーだろさ。


「もう今さらじゃないですか。べー様にプライベートがないなんて」


「あるよ! いつからないと決めつけてたんだよ!」


「かなり前ですね」


 うん。そこは最近と言って欲しかったです……。


「もう好きにしろよ」


 いや、それこそかなり前から好きにされてっけどな!


 椅子に座り、窓の外を眺める。うんまあ、真っ暗でなにも見えませんでした。


 はぁ~。本でも読もうっと。


 最近なにかと忙しくて読めてなかった。こんなときにでも読まないと積んでいくばかりだぜ。


「漫画は読書に入らないんですか?」


 そんなもん自由に決めろや。オレはクソどうでもイイと思ってます。


「あ、そうだ。エリナさんから送られてきた漫画読まないと」


 エリナから送られてきた漫画? なんか不穏なものも送ってきてんな。有害図書なら燃やすぞ。


「ラブストーリーですよ」


 そのラブが問題なんだよ、エリナの場合は! 


「てか、幽霊がラブとかわかるのか?」


「わかりますぅー。わからないのはべー様のほうじゃないですか。あらゆる方向でラブをへし折っているんですから」


 人をラブクラッシャーみたいに言うなや。オレは他人の色恋に興味はねーし、好きにラブチュッチュッしろ、って派だわ。


「だからそう言うところですよ」


「どこだよ? 意味わかんねーわ。もう大人しくラブでもラムでも読んでろよ」


 あ、なんかうる☆なテメーらが読みたくなった。ドレミ、ある?


「はい。創造主様の本棚にあります」


 あいつのことだから何万冊って持ってそうだな。


「ねぇ、夜はなにか出るのかな?」


 置き菓子をすべて平らげたそばかすさん。君はちょっと遠慮を覚えなさいよ。


「たぶん、食堂があると思うからそこで食ってこいや」


 あるとは聞いてねーが、かなりの数が乗っている。なら、調理とかしてんだろう。前に殿様の飛空船には食堂があったからな。


「おー空の料理か。気になるかも」


「あ、わたしもいく!」


 頭にいたメルヘンがテイクオフ。そばかすさんについていった。


「あの二人、仲いいよな」


 変なもの引き連れて来なかったら、だけどよ。


「ミッチェル様もグルメですからね」


「みっちょん、グルメだったんだ」


 なんでも美味そうに食ってはいたがよ。あと、さっきからしれっとカタカナ語使ってるよね? なんか誰かに毒されたの?


「べー様しかいませんが?」


 あ、ハイ。そうでしたね。ゴメンアルヨ。


「ユウコさんにも食べさせてやったらどうだ? おやつから食ってねーだろう?」


「あまり食べると太るからいいそうですよ」


「太る? まだ細いだろうが」


 ざっと見、五十キロにも届いてねーだろう。女はちょっとポッチャリぐらいが可愛いもんだぞ。怒られるから言わないけど。


「周りが細いから気にしているみたいですよ」


「言われてみれば太っているヤツいねーな」


「サプル様が太るのはよくないって、運動させてると聞いたことあります」


 どこでだよ? 君もミタさん並みにいろんなこと聞いてくるよね。夜中、出歩いてんの?


「そういや、サプルも太るの嫌がってたっけ」


 まだ成長期だって言うのによ。気にせずいっぱい食えよな。


「まあ、好きにしたらイイさ」


 食う食わないは個々人の自由。オレはうる☆テメーらを読んでからにしょうっと。


 ドレミにコーヒーを淹れてもらい、うる☆テメーらを開いた。

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