第1639話 奇病

 一度いった場所だが、また航空母艦ラズリズ・デルタでいってみるか。近隣諸国は飛んだと言ってたしな。


「ラズリズ・デルタ、カモーン!」


 と、ドレミを見ながら叫びました。オレ、呼び方知らねーもん。


「マイロード。スマッグって覚えております?」


「なんだっけ?」


 なんか記憶にあるようなないような。まっ、思い出せねーならそれだけのものってことさ。うんうん。


「……すぐに呼びます」


 あれ? なんかドレミに呆れ果てられた? いや、そんなことないよね? ま、まあ、誰からも突っ込まれないから気のせいだね。


 庭の一角を借りてのんびり待つ──のだが、魔女さんたちが誰も近寄ってきません。遠巻きにされてざわざわされてます。


「一緒に連れていかれたらたまりませんからね。近づいてくる人はいませんよ」


「まったく、好奇心のねーヤツらだ。未知に進んで飛び込んでいけよ」


「その結果、報告書に泣かされてますがね」


 それはそれ。見たものを記録するのは当然だろう。オレは心のメモリーに記録するけどな!


「てか、そばかすさんは相変わらずよく食うな」


 タケルやアリザとかみたいな体質ではねーだろうに、それと同じく食えるとか異常だろう。痩せの大食いってレベルじゃねーよな? たい焼き、何個食ったのよ? 三十個は出したぞ。


「うん。美味しいものはいくらでも入るわ」


「奇病ってヤツではないですか?」


 とはレイコさん。


 ちなみにユウコさんを連れてきて取り憑いて団子食ってます。


「奇病?」


「ええ。だいぶ前で忘れてましたが、昔にもライラさんみたいな方いましたね。消化が異常に早くて、胃に入ったらすぐ消化するみたいですよ」


「それならブクブク太るんじゃねーの?」


「その人は異常なまでの体温が高い方で、なんで生きてるの!? と叫びたいくらいの体温でした」 


「本当になんで生きてんだ?」


 種族にもよるが、大抵の種族は三十八度以下だ。※先生調べ。


「わかりません。その体温で寿命をまっとうしてました。まあ、さすがに子は成せませんでしたが」


「生命は神秘だな」


 資料があれば読んでみてーが、長くなりそうなので止めておこう。まだ読んでない本がいっぱいあるんでな。


「魔女、もう一人連れていくか?」


 そばかすさんを記録するために。


「無理っぽいですよ。魔女さんたち、逃げちゃいましたから」


 周りに目を向けたら確かに魔女がいなくなっていた。どんだけ耳がイイんだよ?


「まあ、そばかすさんが元気に動いてんなら問題ねーか」


 別に奇病と決まったわけじゃねー。仮にそうだとしたらエルクセプルを飲ませて結果を見たらイイさ。


「わたし、なにか観察対象になってる?」


「ドレミ。カイナーズホームから体重計、体温計、血圧計、心拍計、あとノートを買ってきて、そばかすさんに渡して毎日三回記録させろ」


「イエス、マイロード」


「……だから、あの、わたしを除け者にしないで欲しいのだけれど……」


 大丈夫大丈夫。なにかあれば話の中心になるんだから、今はたい焼きでも食べてなさいな。ほらほら。


「マイロード。ラズリズ・デルタがきます」


「お、早いな。ボブラ村にいたか?」


「はい。タイミングよく訓練をしていたそうです」


「それはナイス。オレらが上空にいくか。艦長に拾ってくれと伝えてくれ」


 ここじゃ降りるとこもねーし、降りられる場所にいくのもメンドクセー。オレらのほうからいくとしよう。


 空飛ぶ結界を創り出し、マリンベルに向かうヤツらを乗せた。


「よっしゃ! 旨い魚を食いにいくぜ!」


「おー!」


 最初はオレを見て逃げ出したそばかすさんもノリノリだ。バビュンと空に舞い上がった。

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